ガバナンスとは？意味、定義、企業経営における重要性を徹底解説

近年、企業経営において「ガバナンス」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、その意味を正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。ガバナンスとは、組織が健全に運営され、持続的な成長を遂げるための重要な基盤となる概念です。本記事では、ガバナンスの基本的な意味や定義から、企業経営における具体的な重要性、そして具体的な取り組みまでを徹底的に解説します。

ガバナンスの基本

ガバナンス（governance）は、組織がその目的を達成し、持続的な成長と発展を遂げるために不可欠な、意思決定を監視し、評価するシステムを指します。これは、組織の活動を統制するための統治および支配行動であり、健全な企業経営を追求するための、企業自身による管理体制と捉えることができます。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは、企業が株主をはじめとする様々なステークホルダーの立場を踏まえ、透明・公正かつ迅速な意思決定を行い、持続的な成長と企業価値の向上を実現するための企業統治の仕組みを指します。

ガバナンスと関連用語の違い

ガバナンスと類似した意味を持つ言葉として、コンプライアンス、内部統制、リスクマネジメント、ガバメントなどが存在します。これらの用語との差異を理解することで、ガバナンスに対する理解をより深めることが可能です。

コンプライアンスとの違い

コンプライアンス（compliance）は、「法令遵守」を意味します。遵守の対象となるのは、企業に関連する法令や条例だけでなく、CSR（企業の社会的責任）や倫理、規範なども含まれます。ガバナンスが企業の管理体制を指すのに対し、コンプライアンスは法令を遵守するという行為そのものを指します。ガバナンスを強化することで、企業の管理体制が整備され、結果としてコンプライアンスの強化につながります。

内部統制との違い

内部統制とは、企業が健全な経営を行い、組織目標を達成するために構築する仕組みのことです。具体的には、「業務の効率性」、「財務報告の信頼性」、「法令遵守」、「資産の保全」という4つの目標達成を目指します。

リスクマネジメントとの違い

リスクマネジメントとは、企業経営におけるリスクを特定し、その影響を最小限に抑えるための活動です。ガバナンスが企業全体の管理体制を指すのに対し、リスクマネジメントは、経営上のリスクに個別に対応するための手段と言えます。近年、事業の複雑化やアウトソーシングの普及により、企業が直面するリスクは多様化しています。リスクマネジメントは、健全な企業経営に不可欠であり、ガバナンスにおける重要な機能の一つです。

ガバナンスの理解で知っておきたい用語

ガバナンスをより深く理解するために、関連する用語を把握しておきましょう。

ガバナンス効果

ガバナンス効果とは、ガバナンス体制を強化することで企業が得られるさまざまな恩恵を指します。例えば、適時適切な情報開示や法令を遵守する意識の向上によって、企業内部における不正行為や不祥事の発生を抑制し、結果として株主をはじめとするステークホルダー全体の利益に繋がります。ガバナンス効果が及ぼす影響範囲は非常に広く、経営層や従業員の意識改革、株主の利益保護など、企業に関わる多くの関係者に恩恵をもたらします。企業に対する社会的な信頼性や魅力度が増すことで、優良企業としての評価が確立されます。企業の社会的価値の向上は、株主やステークホルダーの利益を守るだけでなく、企業の長期的な成長を支える基盤となります。また、企業価値は株価を算出する際の重要な基準となります。企業価値が高まることで金融機関からの信用力も向上し、投資や融資を受けやすくなるなど、財務基盤の安定にも貢献することが期待できます。

ガバナンス強化

ガバナンス強化とは、企業組織内の体制を改善し、ガバナンス機能を高める取り組みを意味します。具体的な例としては、明確な企業理念の策定、独立した社外取締役や監査役の導入、倫理的な行動規範の整備などが挙げられます。また、国は企業がコーポレートガバナンスを効果的に実行するための実践的な指針として、コーポレート・ガバナンスシステムに関するガイドライン（CGSガイドライン）やグループ・ガバナンス・システムに関するガイドライン、社外取締役に関するガイドラインなど、様々なガイドラインを策定し、企業におけるガバナンス強化の方向性を示しています。

出典：2022.7
経済産業省.<https://www.meti.go.jp/press/2022/07/20220719001/20220719001.html>

ガバナンスプロセス

ガバナンスプロセスとは、企業や組織における意思決定、監督、および管理を実行するための構造化された枠組みと手順を指します。このプロセスは、組織が目標を達成し、リスクを管理し、法令遵守を徹底するために不可欠です。ガバナンスプロセスでは、組織が実施すべき具体的な活動が明確に定義されており、組織全体のガバナンスの実効性を確保するために重要な役割を果たします。

ガバナンスモデル

ガバナンスモデルとは、企業や組織が効果的にガバナンスを実践するための全体的な構造とアプローチを意味します。組織の特定の目標やニーズに合わせてカスタマイズされ、組織内での意思決定プロセスや管理方法を定義します。適切なガバナンスモデルは、透明性、説明責任、および公正な行動を促進し、組織の長期的な成功を支えます。

コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンス・コードは、企業が健全な経営を行うための原則や指針をまとめたものです。金融庁と東京証券取引所が中心となり、2015年3月に策定・公表されました。その目的は、上場企業における不正行為を未然に防ぐとともに、日本企業の国際競争力を高めることにあります。このコードは、企業統治を実現するための具体的な道しるべとして機能し、以下の5つの基本原則を掲げています。

● 株主の権利の尊重と平等性の確保

● 株主以外のステークホルダーとの適切な連携

● 透明性の高い情報開示

● 取締役会等の責任の明確化

● 株主との建設的な対話

なお、コーポレートガバナンス・コードは2021年6月に改訂され、サステナビリティに関する課題、取締役会の機能強化、女性活躍推進を含む多様性の確保などが新たに盛り込まれました。上場企業は、このコードに基づいた報告書の提出が義務付けられており、原則を遵守していない場合は、その理由を「コーポレートガバナンス報告書」にて説明する必要があります。中小企業への適用は必須ではありませんが、近年では長期的な収益性向上を目指し、自主的に活用する企業が増加傾向にあります。

出典： 2015.06.01.日本取引所グループ（JPX）公式ウェブサイト, URL:
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html,

ガバナンスが整備され機能している企業のメリット

企業においてガバナンスが適切に機能することで、主に以下のような利点が生まれます。

● 不正行為や不祥事の抑止

● 健全な経営の実現と企業価値の向上

● 企業に対する信頼性の向上、ひいては企業とステークホルダー双方の利益につながる

ガバナンス体制の整備によって得られる最大のメリットは、企業における不正や不祥事を未然に防ぐ可能性が高まることです。組織内の監視体制が強化されることで、組織の腐敗やデータ改ざんなどの不正行為を防止し、健全な経営へと繋げることができます。さらに、ガバナンス強化に積極的に取り組む企業であるという認識が外部に広まれば、優良企業としての評価が高まり、企業全体の信頼性向上に繋がります。企業の信頼性は、株主を含むすべてのステークホルダーにとって大きな利益をもたらすでしょう。

ガバナンスが効かないと起きるデメリット

一方で、ガバナンスが十分に機能しない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

● 管理体制の不備による内部統制の機能不全

● 不正行為や不祥事の発生リスク増加

● 企業に対する信頼性の低下

● 企業経営の透明性欠如による投資家からの評価低下、市場競争における劣勢

特に深刻なのは、不正行為や不祥事を防止することが困難になる点です。コンプライアンスが重要視される現代において、不正や不祥事の発覚は企業イメージを大きく損ない、業績に悪影響を及ぼします。ガバナンスが不十分な状態では、企業内部の監視体制が不徹底となり、経営や業務プロセスにおける不正や不祥事のリスクが高まります。

一度不祥事が発生すると、社会的信用を失うことは避けられません。消費者や投資家からの強い批判を受け、経営不振から倒産に至る可能性も考えられます。グローバル化が進む現代において、市場競争を勝ち抜くためには、ガバナンスの強化は不可欠です。企業統治が確立されていない状態では、経営の健全性や透明性、業務執行の効率性を確保できず、変化の激しい世界経済に柔軟に対応することが難しくなります。特に海外市場への進出を検討している企業にとっては、異文化間の価値観の違いから生じるリスクにより、経営状況が悪化する懸念もあります。

コーポレートガバナンスを強化する方法

コーポレートガバナンスを強化するためには、具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか。ここでは、企業が取り組むべき効果的な施策をご紹介します。

内部統制の構築・強化

ガバナンスの強化には、実効性のある内部統制システムの構築と維持が不可欠です。強固な内部統制があってこそ、企業はステークホルダーに対し、透明性の高い情報開示を実現できます。社内における明確なルール策定と、その遵守状況を監視・指導する体制を確立しましょう。取締役会や内部監査部門といった各組織の役割を明確化することが、その基盤となります。

第三者視点での監視体制をつくる

特定の経営層や従業員による不正行為を抑止するためには、外部の視点を取り入れた監視体制が有効です。内部監査に加え、独立した立場から客観的な評価が可能な専門家による監視体制を構築することが推奨されます。外部監査の導入により、社内では見過ごされがちな不透明なルールや業務プロセスを特定しやすくなります。社外取締役や社外監査役、報酬委員会などの設置が有効な手段となるでしょう。

コーポレートガバナンスを社内へ浸透させる

コーポレートガバナンスの強化を図るには、株主や社外関係者だけでなく、従業員一人ひとりへの意識改革と浸透が重要です。行動規範や倫理憲章を策定し、従業員が日々の業務遂行や意思決定を行う際の明確な判断基準を提供しましょう。また、従業員の業務プロセスを可視化し、業務内容の把握に努めることも大切です。業務フローを文書化し、マニュアルとして整備するなどの対策が有効です。

まとめ

企業の健全な発展に不可欠なのがガバナンス、つまり組織運営を管理・監督する体制です。これは、不正行為や問題発生を抑止し、企業としての信頼性を高め、結果として持続的な成長を支える基盤となります。ガバナンスを強化するためには、社外取締役や監査役の導入、内部統制システムの構築、コンプライアンスの徹底などが重要となります。

現代社会においては、ビジネスの国際化やデジタル変革が急速に進展しており、企業を取り巻く環境は常に変化しています。このような状況下では、変化するリスク要因を考慮し、各企業に最適なガバナンス体制を構築することが求められます。務効率化や財務基盤強化のための外部サービス活用も一案です。ガバナンス体制の強化は、企業が長期的な成功を収めるために不可欠な取り組みであり、不祥事の予防だけでなく、企業の社会的評価の向上、経営の円滑化、そして全ての関係者の利益最大化に貢献します。

よくある質問

ガバナンスとは何ですか？

ガバナンスとは、組織がその目標を達成し、持続的に成長するために、意思決定プロセスを監視し評価する仕組みのことです。特に企業においては、健全な経営を実現するための管理体制を意味します。

コンプライアンスとガバナンスの違いは何ですか？

コンプライアンスは、法令や社会的な規範を遵守することを指しますが、ガバナンスは、それらの規範を遵守するための組織的な管理体制を意味します。効果的なガバナンス体制を構築することで、コンプライアンス遵守も自然と強化されます。

コーポレートガバナンス・コードとは何ですか？

コーポレートガバナンス・コードは、上場企業がガバナンス体制を構築・運用する際に参照すべき原則や指針をまとめたものです。このコードは、金融庁と東京証券取引所が中心となって策定されています。