
インターンシップ:大学生のキャリア形成を支援する実践的な職業体験
大学生のキャリア形成において、インターンシップは実践的な職業体験を提供する貴重な機会です。企業の一員として働くことで、仕事内容への理解を深めるだけでなく、自身の適性や興味関心を見つめ直すきっかけにもなります。座学だけでは得られないリアルな経験を通して、将来の進路を具体的にイメージし、社会に出るための準備を始めることができるでしょう。インターンシップは、学生と企業双方にとって、成長と発見の場となるのです。
インターンシップとは?海外大学生受け入れの定義
インターンシップは、学生が企業などで一定期間、業務を体験する制度です。特に海外の大学生にとって、インターンシップは実際の仕事内容や自身の適性を見極める貴重な機会となります。企業側は、学生の学習意欲に応えるため、質の高い教育体制と綿密な実習計画を準備する必要があります。インターンシップは「就業体験」とも呼ばれ、多くの企業では6月頃から「夏季インターンシップ」、10月頃から「秋冬インターンシップ」を実施しますが、時期は企業によって様々です。
海外の大学生をインターンシップ生として受け入れる際、必要となるビザの種類は、給与の有無、滞在期間、大学の単位認定の可否によって異なります。
特定活動ビザ(インターンシップ):概要と条件
特定活動ビザは、インターンシップに対して報酬が支払われる場合に適用されます。正式には特定活動ビザ(9号)と呼ばれます。インターンシップの期間は原則として1年以内であり、かつ在籍する大学の修業年限の2分の1を超えないことが条件です。また、学生の大学での専門分野とインターンシップの内容に密接な関連性があることが求められます。以前は関連性の要件は緩やかでしたが、現在は就労ビザと同程度の関連性が重視されています。
- 報酬:あり(報酬額に制限はないものの、労働関連法規が適用されます)
- 期間:1年以内、かつ在籍大学の修業年限の2分の1以内
- 大学の単位:取得可能であること
- 大学との協定:必要
- 専攻との関連性:必須
出典:出入国在留管理庁
在留資格「特定活動」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities.html
文化活動ビザ:概要と条件
文化活動ビザは、インターンシップに対して報酬が発生しない場合に適用されます。インターンシップ期間は90日を超え、1年以内であることが条件です。ただし、交通費や宿泊費といった必要経費の実費弁償は、報酬とはみなされません。対象となる活動は、大学や研究機関を拠点とした学術研究や指導、日本の建築や伝統芸能といった日本特有の文化・技術に関する活動や研究などが挙げられます。
- 報酬:なし(交通費、宿泊費等の実費弁償は除く)
- 期間:90日超、1年以内
- 大学の単位:取得可能であること
- 大学との協定:必要
- 専攻との関連性:必須
出典:出入国在留管理庁
在留資格「文化活動」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/culturalactivities.html
短期滞在ビザ:概要と要件
90日以内の無報酬インターンシップには、短期滞在ビザが適用されます。必要な手続きは、日本大使館または領事館などの在外公館で行います。ただし、ビザ免除対象国の学生は申請の必要はありません。交通費や宿泊費といった実費弁済は、報酬とは見なされません。
- 報酬:無し(交通費、宿泊費等の実費弁済を除く)
- 期間:90日以内
- 大学の単位:取得可能であること
- 大学との協定:必要
- 専攻との関連性:必要
出典:出入国在留管理庁
在留資格「短期滞在」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/temporaryvisitor.html
特定活動ビザ(サマージョブ):概要と要件
特定活動ビザ(サマージョブ)は、大学の休暇期間を利用し、3ヶ月以内の有償インターンシップを行う際に必要となります。
- 報酬:有り
- 期間:3ヶ月以内(大学の授業期間外)
- 大学の単位:必須条件ではない
- 大学との協定:必要
- 専攻との関連性:必須条件ではない
出典:出入国在留管理庁
在留資格「特定活動」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities.html
在留資格「特定活動」インターンシップによる海外大学生受け入れの利点
海外からの学生をインターンシップとして受け入れることは、企業と学生の双方にとって有益です。
学生側の利点
給与を得ながら、通常のアルバイトでは得られない貴重な社会経験を積むことが可能です。日本の文化や生活を体験できることも大きな魅力です。
企業側のメリット
将来的に、卓越した能力を持つ人材を雇用できる可能性が広がります。グローバル化が加速する現代において、外国からの人材を受け入れるための環境を整備することは、企業の競争力を高める上で不可欠です。インターンシップビザの取得プロセスを通じて、外国人を受け入れるための体制を構築し、必要な知識を習得することは、今後増加が見込まれる外国人雇用において、企業にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。
インターンシップビザ取得の条件:企業側の注意点
インターンシップビザを取得するためには、企業側が適切な受け入れ態勢を構築していることが求められます。単なる労働力確保を目的とした受け入れや、十分な指導体制が整っていない状態での受け入れは、厳格に審査されます。適切な受け入れ体制を整えることで、インターンシップ制度を最大限に活用することが可能になります。
インターンシップビザの対象となる学生の条件
インターンシップビザの対象となる学生は、まず海外の大学に在籍している現役の大学生であることが必須条件です。学位取得を目的とした教育プログラム(短期大学や大学院も含む)に在籍している学生が対象となります。また、日本への入国時点で18歳以上である必要もあります。通信教育課程に在籍する学生は対象外となります。
インターンシップの内容に関する条件
インターンシップは大学の教育プログラムの一環として実施されるため、業務内容は学生の大学での専攻分野と密接に関連している必要があります。一定レベルの知識や技術を習得できるような活動内容が求められ、単純な作業のみを行うことは認められません。
受け入れ企業の要件:組織体制と人員
インターンシップビザの取得可否を左右する重要な要素として、適切な受け入れ体制の確立が挙げられます。受け入れ体制、および指導体制における重要なポイントは以下の通りです。
- 明確なインターンシップの目的、綿密な指導計画、客観的な評価方法を記載した実施計画の策定
- インターンシップ生の専門的な指導を担当する指導担当者の配置
- インターンシップ生が気軽に相談できる相談窓口の設置
- 安全かつ衛生的な職場環境を維持するための管理体制の整備
在留資格認定証明書とは?
海外の大学生をインターンシップビザで受け入れる場合、「在留資格認定証明書」の取得が不可欠です。インターンシップビザの申請にあたり、「在留資格認定証明書」とは一体どのようなものなのか、その本質を理解しておきましょう。
日本の法律に則った形で滞在するためには、「在留資格」と「上陸許可」という2種類の許可を得る必要があります。「在留資格」とは、日本に上陸後の身分や活動内容が日本の法律に適合しているかどうかを示すものであり、「上陸許可」とは、外国人の日本への入国を許可するかどうかを判断するものです。日本への上陸後、スムーズに在留資格を取得するために、事前に入国管理局から交付されるのが「在留資格認定証明書」なのです。
在留資格認定証明書交付申請の手続き
「在留資格認定証明書交付申請」の手続きは、海外の大学と日本の企業がインターンシップに関する合意を結び、受け入れる学生が決定した後に行われます。
インターンシップのためのビザ申請は、原則としてインターンシップを受け入れる側の企業の担当者が行います。しかし、通常の就労ビザとは異なり、受け入れ環境の整備や、インターンシップの概要を示す書類、実施計画、評価基準などの作成が必要となるため、専門家のサポートなしで準備を進めるのは容易ではありません。
在留資格認定証明書の審査期間は、個別の状況によって異なります。申請を検討される場合は、出入国在留管理庁の情報を確認するか、専門家にご相談ください。インターンシップの計画に支障が出ないよう、余裕をもって準備を進めることが重要です。
インターンシップビザで受け入れた後の注意点
海外からインターンシップ生を受け入れた場合でも、報酬が発生するのであれば社会保険への加入が必要となります。適用事業所の場合、「労災保険」への加入は必須です。「雇用保険」に関しては、学生には加入義務はありません。ただし、雇用保険の手続きを行わない場合は、「外国人雇用状況届出書」の提出が求められます。雇用時と退職時には、忘れずにハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を提出してください。
大学との協定:産学連携について
インターンシップビザを利用して海外の大学生を受け入れる際には、産学連携(産学協定)の締結が求められる場合があります。産学連携とは、企業と大学などの教育・研究機関が協力し合う取り組みのことで、共同での研究・開発などがその例として挙げられます。連携可能な大学を探し、協議を行い、合意内容を書面で取り交わすのが一般的な流れです。
まとめ
海外の大学生をインターンシップ生として受け入れることは、企業にとってグローバルな人材を獲得し、企業文化の多様性を促進する上で非常に有益な機会となります。本記事でご説明したビザの種類、申請条件、受け入れ体制の構築など、必要な情報をきちんと理解し、十分な準備を行うことが成功の鍵となります。海外大学生のインターンシップ制度を積極的に活用し、企業のさらなる発展を目指しましょう。
よくあるご質問
Q1: 海外の大学と連携するには、どのような手順を踏めば良いですか?
海外の大学との連携(産学連携を含む)を進めるには、まず協力関係を築ける可能性のある大学を探し、交渉を行います。合意に至れば、契約書などの書面を作成し、正式に協定を締結します。大学との共同研究や共同開発などが連携の代表的な例です。
Q2: インターンシップに参加する学生に支払う報酬額は、どの程度が適切でしょうか?
報酬額は、最低賃金を遵守しつつ、学生のスキルや貢献度を考慮して決定します。最低賃金額は、業種や事業所の所在地によって異なるため、事前に確認するようにしてください。
Q3: 家賃補助、食費補助、交通費支給などの実費負担は、報酬と見なされるのでしょうか?
家賃、食費、交通費などの実費を会社が負担する場合は、実費弁償として扱われるため、給与や報酬には含まれません。


