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新卒通年採用とは?企業が年間を通して行う採用活動のメリット・デメリット

近年、年間を通して採用活動を行う「新卒通年採用」を導入する企業が増加傾向にあります。優秀な人材を確保するため、時期に縛られず広く門戸を開く通年採用。本記事では、企業が年間を通して採用活動を行うことのメリット・デメリットを詳しく解説します。貴社にとって最適な採用戦略を検討する上で、ぜひ参考にしてください。

通年採用とは?

通年採用とは、企業が1年を通して、新卒・中途といった区別なく採用活動を行うことです。これまでの日本では、多くの企業が春に新卒者を一斉に採用する方式が一般的でしたが、近年、多様性への対応やグローバル人材のニーズの高まりから、通年採用によって優秀な人材を獲得しようとする企業が増加しています。欧米や外資系企業においては、一般的な採用方法となっています。

通年採用へとシフトする背景

従来の新卒採用市場では経団連主導の一括採用が主流でしたが、近年は多様な採用形態が並存する状況に変化しています。この背景には、大企業優位の採用競争を回避するために、中小企業や特定業界が独自の採用スケジュールを採用する動きが拡大していることが挙げられます。特にIT・ベンチャー企業では通年採用が導入され、海外大学卒業生や既卒者を対象とした秋採用が増加しています。経団連は2018年10月に「採用選考に関する指針」を廃止し、政府が新たなルール策定を主導するようになりましたが、依然として多くの企業が従来のルール(広報3月1日解禁・選考6月1日解禁)を遵守しており、学業優先の原則も維持されています。通年採用の拡大は、企業が自社の採用ニーズ(グローバル人材確保や中途採用との統合など)に柔軟に対応した結果であり、今後の採用市場では「一括採用」「通年採用」「秋採用」が並存する構造が定着する可能性があります。
出典: 内閣官房 . 就職・採用活動に関する要請 . https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou_yousei/index.html

通年採用と一括採用の違い

通年採用と一括採用の主な違いは、採用活動を行う時期と対象となる人々にあります。一括採用は、企業が同じ時期に新卒学生を対象に集中的に採用活動を行うのに対し、通年採用は、年間を通して新卒・中途を問わず、必要に応じて採用活動を行います。新卒一括採用の場合、3月に就職情報サイトのエントリーが開始され、6月から面接が解禁されるなど、短期間に集中して採用が行われる傾向があります。

通年採用のメリット

通年採用は、企業側と学生側の双方に利点をもたらします。

企業側のメリット

企業にとっての利点として、従来の採用方法では出会うことが難しかった優秀な学生と巡り合うチャンスが広がるという点が挙げられます。特定の時期に集中して行われる従来の採用活動では、学生側も応募先を絞り込むため、企業が接触できる学生の数には限りがあります。しかし、年間を通して採用を行うことでより多くの学生にアプローチでき、従来の方法では見つけられなかった、多様な才能を持つ学生を発掘できる可能性が高まります。次に、海外からの留学生や既卒者など、多様な人材に対応できる点も重要な利点です。新卒一括採用が主流の時期には、留学生や既卒者は応募しにくい状況がありました。通年採用は、このような状況を改善し、多様なバックグラウンドを持つ人材に門戸を開くことができます。グローバル化が進む現代において、多様な人材を求める企業にとって、これは大きなメリットとなります。さらに、応募期間や締め切りにとらわれず、時間をかけて慎重に選考を進めることができるため、応募者との相互理解を深め、ミスマッチを防ぐことにもつながります。

学生側のメリット

学生にとっての利点としては、応募できる企業の選択肢が広がる点が挙げられます。一括採用では、説明会や面接の日程が重なることが多く、応募できる企業数は限られてしまいます。しかし、通年採用では、採用時期が分散されるため、学生はより多くの企業に応募しやすくなります。また、時間的な余裕を持って就職活動に取り組める点も大きなメリットです。一括採用は、学生にとって短期間での集中的な活動となり、多くの説明会や面接をこなす必要があり、スケジュール管理が煩雑になりがちです。通年採用では、より落ち着いて、じっくりと企業研究や自己分析に取り組むことができます。さらに、部活動や留学、病気など、様々な理由で一時的に就職活動から離れざるを得ない状況になった場合でも、リカバリーしやすいという利点もあります。さらに、一社ごとの選考に集中して臨める点もメリットです。一括採用では、複数の企業の選考を同時並行で進める必要があり、各企業への準備が不十分になることも少なくありません。そのため、企業分析が不十分なまま選考に臨み、本来の力を発揮できないケースも見られます。その結果、内定を得ることが難しくなることもあります。一方、通年採用では、選考時期が分散されるため、一社ずつに集中して対策を講じることができます。企業研究や自己分析に十分な時間を費やし、万全の準備で選考に臨むことで、内定獲得の可能性を高めることができます。

通年採用のデメリット

通年採用は、多くのメリットをもたらす一方で、いくつかのデメリットも存在します。

企業側のデメリット

企業側にとってのデメリットとして、まず考慮すべき点は、採用活動が長期化することによる採用担当者の負担増加です。年間を通して採用活動を行う通年採用は、短期間で集中的に行う従来の採用方法と比較して、採用期間が長期にわたります。そのため、採用担当者の業務負担が増加し、特に人事部門が少人数の企業や、他の業務と兼任している担当者の場合は、綿密なスケジュール管理が不可欠となります。また、通年採用では、採用情報を常に発信したり、広報活動やイベントへの参加頻度が増加したりするため、一括採用と比較して採用コストが全体的に高くなる傾向があります。さらに、入社時期が分散することで、研修を複数回実施する必要が生じるなど、研修コストの増加も想定されます。さらに、従来の一括採用を実施している企業の影響を受ける可能性がある点もデメリットとして考慮する必要があります。今後、通年採用を導入する企業が増加することが予想されますが、従来型の一括採用が完全に無くなるわけではありません。そのため、採用活動を一括採用の時期に集中させないと、優秀な人材を獲得する機会を逃すリスクが高まります。また、通年採用を実施している企業は、学生から「いつでも応募できる」というイメージを持たれやすく、第一志望ではなく、いわゆる「滑り止め」として捉えられてしまう可能性もあります。さらに、採用解禁日前後には、学生が一斉に企業研究を始めるため、知名度の低い企業でも学生の目に留まる機会が増えますが、通年採用のみを実施している場合、学生の関心を集めることが難しく、不利な状況に陥る可能性があります。

学生側のデメリット

通年採用は、学生にとって必ずしも良いことばかりではありません。採用選考の難易度が上がる可能性があるという点は、大きなデメリットの一つとして考えられます。通年採用では、企業側もより慎重に候補者を見極めるため、結果として選考基準が高くなることが予想されます。そのため、学生はより高いレベルを求められることになり、内定を得るのが難しくなる可能性があります。また、学生自身が積極的に動く必要性が高まるという点もデメリットです。通年採用では企業ごとに採用スケジュールや選考方法が異なるため、常にアンテナを張り、自ら積極的に情報収集を行い、行動していくことが求められます。受け身の姿勢では、十分な成果を上げられない可能性が高くなります。

通年採用を成功させるためのポイント

通年採用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、明確なKPI(重要業績評価指標)を設定すること。次に、採用環境を正確に把握すること。そして、学生のニーズや考え方を理解することも不可欠です。さらに、AIなどの最新技術を活用した効率的な管理システムやツールを導入し、採用活動を行うエリアを拡大することも重要になります。これらの要素を踏まえ、自社の状況に合わせた戦略を綿密に立てることが、通年採用を成功に導く鍵となります。

明確なKPI策定

一括採用と同様に、通年採用においてもKPI(重要業績評価指標)を明確に定めることが不可欠です。KPIとは、目標達成までのプロセスを評価するための指標であり、これを設定することで、採用活動の進捗状況を客観的に把握し、改善点を見つけることができます。通年採用は、選考に時間をかけることができるため、「面接実施率」と「内定承諾率」を特に重視すると良いでしょう。これらのKPIを達成するために必要な広報戦略を立て、ターゲットとなる学生層の母集団形成を行うことが重要です。KPIを明確にすることで、目標達成への道筋が明確になり、通年採用で懸念されるコスト増大を抑制することにもつながります。

採用環境を的確に把握する

通年採用は、今後ますます主流になることが予想されますが、導入する企業が増えるにつれて、これまで競合しなかった企業との人材獲得競争が激化する可能性があります。例えば、従来の一括採用では有利な立場にあった大企業が、成長著しいベンチャー企業と競合するケースも考えられます。また、以前から通年採用を実施してきた外資系企業も強力なライバルとなるでしょう。これからの採用戦略においては、学生の志向やニーズを的確に捉えるとともに、競合他社の動向を分析するなど、幅広い視点から採用市場全体を把握することが不可欠です。

学生への理解を深める

採用活動の成否は、採用対象となる学生をどれだけ深く理解できるかにかかっています。学生を評価する上で重要なのは、彼らの特性を多角的に把握することです。通年採用においては、採用時期の柔軟性が鍵となります。そのため、ターゲットとする学生層のスケジュールを理解することは、通年採用を成功させる上で不可欠です。時代の変化とともに学生の価値観やキャリア観も変化するため、常に最新の学生の傾向を把握し、採用戦略に反映させることが重要です。

効率的な管理システムとツールの活用

多くの企業が、採用活動の効率化のために管理システムやツールを導入しています。特に面接や選考においては、担当者の経験や主観に左右される判断が課題となることがあります。しかし、AIなどの最新技術を活用することで、人事領域においても業務の標準化や最適化が進んでいます。一括採用と通年採用では重視すべき指標が異なるため、それぞれの採用手法に適した管理システムやツールを選択することが重要です。自社の採用戦略に合致した管理方法を検討することが大切です。

採用活動エリアの拡大

通年採用を導入することで、従来の採用活動よりもターゲット層を広げ、対象エリアを拡大することが容易になります。オンライン説明会やオンライン面接を実施する企業が増加しており、国内だけでなく海外の学生とも繋がりやすくなりました。オンラインを積極的に活用することで、学生との接点を増やし、より質の高いコミュニケーションを実現することが可能になります。

通年採用導入企業の事例

実際に通年採用を導入している企業の事例を参考にすることで、自社への導入イメージを具体化できます。以下に主要企業の特徴を整理します。

ソフトバンク

ソフトバンクは、学生が自らの意思で自由に就職活動の時期を選べるよう、「ユニバーサル採用」という形で通年採用を実施しています。独自の選考プログラムとして、No.1採用や実践的な就労体験ができるインターンシップなども展開しています。詳細は公式サイト(https://www.softbank.jp/recruit/graduate/recruit/universal/)をご確認ください。

ファーストリテイリング

ファーストリテイリングは、学生一人ひとりが自身のキャリアについて深く考え、主体的に行動し、納得のいく将来を描けるよう、年間を通して新卒採用を行っています。再チャレンジ制度を設けることで、短期間では見えにくい学生の潜在的な能力や可能性を見出すことを重視しています。詳細は公式サイト(https://www.fastretailing.com/employment/ja/fastretailing/jp/graduate/recruit/)をご確認ください。

LINEヤフー

LINEヤフーは、年齢とポテンシャルを重視する「ポテンシャル採用」を導入し、新卒、既卒、第二新卒を問わず、30歳以下であれば応募可能な制度を設けています。留学経験者や博士号取得者など、就職活動のタイミングが多様化している状況に対応し、多様なバックグラウンドを持つ人材の獲得を目指しています。詳細は公式サイト(https://www.lycorp.co.jp/ja/recruit/)をご確認ください。

リクルート

グループ内新卒採用を集約し、応募資格を「大学3年生3月~30歳以下」に拡大。既卒者や職務経験者を含む幅広い層に対応しています。詳細は公式サイト(https://www.recruit.co.jp/employment/students/requirements/)をご確認ください。

楽天

楽天では、エンジニア職を中心に通年採用を実施。職種ごとに随時募集し、入社時期を柔軟に設定しています。詳細は公式サイト(https://corp.rakuten.co.jp/careers/graduates/)をご確認ください。

通年採用を検討中の企業様へ:採用支援サービスのご紹介

通年採用を始めるにあたって、どのようなサービスを活用すれば効率的な採用活動を展開できるのでしょうか。ここでは、通年採用に適した「ダイレクトリクルーティング」と「新卒紹介」のサービスについて解説します。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業が主体的に学生にアプローチする採用手法です。代表的なサービスとして、dodaキャンパス、OfferBox、キミスカなどが挙げられます。

dodaキャンパス

dodaキャンパスは、早い段階から就職活動に取り組む意欲的な学生との出会いをサポートするサービスです。

OfferBox

OfferBoxは、新卒採用市場におけるダイレクトリクルーティングという手法を先駆けて導入したサービスです。

キミスカ

キミスカは、採用担当者の事務的な負担を軽減し、より本質的な採用活動に注力できるようなサポートを提供します。

新卒紹介

新卒紹介とは、人材紹介会社が企業のニーズに合致する学生を紹介するサービスモデルです。

就職エージェントneo

就職エージェントneoは、全国各地の約120もの大学との連携を通じて、採用活動が活発な時期に限らず、年間を通して企業に新卒人材を紹介しています。

career ticket

career ticketは、企業と学生の質的なマッチングを重視したサービスです。学生にはプロのキャリアアドバイザーがマンツーマンでエントリーシートの添削や面接対策を提供しています。企業側は、内定承諾までの期間において無料でサービスを利用できる成果報酬型モデルを採用しています。

まとめ

通年採用は、様々な個性や能力を持つ人材を迎え入れるための有効な選択肢となります。しかし、導入を検討する際には、その利点と注意点をしっかりと把握し、自社の状況に合わせた最適な計画を立てることが大切です。この記事でご紹介した成功するためのヒントや企業の事例を参考に、通年採用の導入を検討してみてはいかがでしょうか。貴社にとって最良の採用戦略を見つけ、優秀な人材の獲得を実現してください。

よくある質問

通年採用とは、具体的にどのような採用の仕組みですか?

通年採用とは、企業が一年を通して、新卒・中途といった区別なく採用活動を行う方式のことです。従来の、特定の時期に新卒を一斉に採用する方式とは異なり、企業が必要とするタイミングで随時、採用活動を行います。

通年採用のメリットとデメリットについて教えてください。

通年採用のメリットとしては、企業側は多様なバックグラウンドを持つ人材を獲得できるチャンスが増えること、学生側は応募できる機会が広がることが挙げられます。デメリットとしては、企業側は採用活動が長期にわたるため、コストが増加する可能性があること、学生側は自ら積極的に就職活動を進める必要があることが考えられます。

通年採用を成功に導く秘訣とは?

年間を通して採用活動を円滑に進め、確かな成果を得るためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。まず、達成すべき目標を数値で明確に示すKPIを設定することが不可欠です。次に、常に変化する採用市場の動向を的確に捉え、自社の置かれている状況を正しく把握することが求められます。そして、学生のニーズや考え方を深く理解し、彼らに響くような魅力的な情報発信を心がけることも重要です。さらに、応募者情報を効率的に管理し、選考プロセスをスムーズに進めるためのシステムやツールの導入も検討しましょう。最後に、従来の採用活動エリアにとらわれず、より広範囲な地域に目を向けることで、優秀な人材の発掘につなげることが期待できます。  

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