採用単価10万円がタイミー導入で8,600円に!創業100年超の企業、株式会社入船が実現した「求人媒体費用ゼロプロジェクト」とは

飲食業界では、深刻な人手不足や採用コストの高騰、そして人材のミスマッチといった課題に、多くの企業が頭を悩ませています。そんな中、タイミーを戦略的に活用することで、採用課題を見事に解決したのが株式会社入船です。今回は、同社が推進された「求人媒体費用ゼロ採用プロジェクト」について、担当者の皆様にお話を伺いました。


兵庫県を拠点とする飲食企業。採用コストの高騰とミスマッチに長年悩んでいた

―――はじめに、御社の事業内容と皆様の担当業務について教えていただけますか?

芳さん:私たちの会社は、兵庫県を中心に「ごちそう村」や「讃岐の製麺所あやがわうどん」といったレストラン事業と、給食事業を展開しています。私は主に、26店舗あるレストラン事業の採用や人事周りの業務を担当しています。

 

―――タイミーを導入される前は、採用に関してどのような課題をお持ちでしたか?

芳さん:レストラン事業では、学生さんの卒業など入れ替わりの時期もあり、年間で500〜600名ほどのアルバイト採用が必要でした。しかし、従来の求人媒体ではなかなか人が集まらず、採用コストも上がり続けていました。1名採用するのに10万円以上かかってしまうこともあったほどです。また、せっかくご応募いただいても連絡が取れなくなったり、現場の条件と合わなかったりと、当時はミスマッチも頻繁に起こっていました。

現場の店長たちからは、「応募が来ないから、もっとお金をかけて求人広告を出してほしい」という声が日々上がってきましたが、本社としてもこれ以上広告費を膨らませるわけにはいかない…という、非常に厳しいジレンマを抱えていたんです。やっとの思いで応募があっても面接に現れなかったり、連絡が途絶えてしまったりすることも日常茶飯事でした。仮に採用できても、実際のスキルや勤務条件が合わずに早期に離職してしまうというミスマッチも頻発していました。

さらに深刻だったのは、採用に苦しむ店舗ほど、既存従業員のエンゲージメントが低下し、お店全体の雰囲気が悪化してしまうという内的な要因も絡み合っていたことです。人手不足が店舗運営の質を低下させ、それがさらなる採用難を招くという、出口の見えない負のスパイラルに陥っていたのです。

 

 

スポットワーク市場の可能性に着目し、「求人媒体費用ゼロ」への挑戦を決意

株式会社入船 人財企画部 部長 兼 広報担当 芳さん

―――多くの飲食店様が抱える、非常に深刻な課題ですね。その状況を打開するために、どのような解決策を考えられたのでしょうか。

芳さん:これまでは本部で一括採用を行っていましたが、本部だけの努力ではなく、店舗を含めた会社全体で採用に本気で向き合おうと決意しました。そして、スポットワークを活用して働きに来てくれた方を長期採用につなげる「求人媒体費用ゼロ採用プロジェクト」を立ち上げたのです。

ちょうどその頃、「スキマバイト」という働き方が注目され始めていました。新聞などでもスポットワークの利用者が急増しているという情報を見て、これは無視できない市場だと感じたんです。

 

―――タイミーを導入される決め手となったのは、どのような点だったのでしょうか。

芳さん:タイミーに注目した理由はいくつかあります。まず、従来の求人媒体の影響力が相対的に低下し、若い世代を中心にタイミーのようなサービスで仕事を探すのが当たり前になるだろうと予測したこと。次に、ワーカーさんが実際に働くことで、職場の雰囲気や仕事内容を理解した上で長期採用に進むかを判断できる「体験機会」を提供できる点です。これは私達にとっても、面接だけでは分からない働きぶりや適性を見極められる大きなメリットだと感じました。

また、面接に来てもらえない、連絡が取れないといった従来型の採用における無駄をなくせること、掲載は無料で必要な時に必要な分だけ利用できるというコスト面の魅力もありました。早期離職による損失も大きな課題だったので、タイミーを通じたマッチングがミスマッチを防ぎ、定着率の向上にも貢献してくれるのではないかと考えたのです。

 

 

店長と本部、そしてタイミー担当者とで作り上げた「『共感採用』の教科書」

―――「求人媒体費用ゼロ採用プロジェクト」について、詳しく教えてください。

芳さん:プロジェクトを始めるにあたり、特に採用に苦戦していた店舗の店長たちに集まってもらいました。そして私たちが目指すべき姿として、お客様が行列を作る繁盛店だけでなく、「採用待ちで人が行列を作るような繁盛店」を掲げたのです。

そのためには、これまでのように求人広告を出してただ待つだけの「待ちの採用」から脱却し、求職者から「選ばれる」存在になるための努力、つまり会社の理念や想いに心から共感してくれるファンを増やし、共に成長していける仲間を採用していく「共感採用」へと舵を切る必要があることを伝えました。

 

―――「讃岐の製麺所あやがわうどん」店長の喜多さんにお伺いします。これまで本部一括だった採用を店舗でも強化していくことについて、運営上の懸念などはありましたか?

喜多さん:いえ、むしろ「もっと早く自分たちに任せてくれればよかったのに」と思っていました。求人を出して待っているというのがどうも我慢できなくて。だからこそ、こちらから攻めの採用をしていこうという考えには、すぐに納得しましたね。

讃岐の製麺所 あやがわうどん 太子店店長 喜多さん

―――プロジェクトはどのように進めていかれたのですか?

芳さん:具体的な推進体制として、2ヶ月に1度の頻度で店長と、そしてタイミー担当者の藤岡さんにも毎回参加していただき、会議を行う形でスタートしました。期間は6ヶ月間と定め、集中できる環境で議論を重ねました。タイミーの担当者さんには、専門家としての的確なアドバイスや、私達だけでは気づかない視点からの意見をいただくことができ、非常に心強かったです。

会議では、各店舗でのタイミー運用状況、成功事例や失敗事例、そこから得られた学びなどを徹底的に共有しました。「長期採用歓迎の募集を出しても、結局スキマバイト希望の人しか集まらない」「思ったより簡単に運用できるものじゃないな」といった悩みも出てきましたが、それら一つひとつに全員で向き合い、解決策を探していく中で、確かなノウハウが組織全体に蓄積されていきました。

 

 

求人媒体費ゼロ達成、平均年齢20歳以上の若返り、そして「共感」が生んだ、活気あふれる組織風土の変化

―――店長やタイミーの担当者の方も巻き込んで、まさに全社一丸となってプロジェクトを推進されたのですね。その結果、具体的にどのような効果や変化がありましたか?

喜多さん:効果は私たちの想像を遥かに超えるものでした。まず、最も採用に苦戦していた兵庫県西部のうどん店で、なんと運用開始からわずか1ヶ月で2名の長期採用に成功。半年後には、この店舗だけで6名もの長期採用が実現したのです(うち5名がタイミー経由、1名はそこからの紹介)。あれだけ高騰していた採用単価は、ワーカーさん稼働分の人件費を除けば1人あたり8,600円と劇的に削減できました。そして何よりも、プロジェクトの最大の目標であった「求人媒体費用ゼロ」を、この店舗では完全に達成することができたのです。

さらに驚いたのは、採用できた方々の顔ぶれです。以前は60代後半から70代といったシニア層の応募がほとんどでしたが、タイミー経由で採用できた方々の平均年齢は34歳と、一気に20歳以上も若返りを果たしました。これは、店舗の活性化という面でも非常に大きなインパクトがありました。

芳さん:成果はこれらの定量的な数字だけに留まりません。プロジェクトを通じて、現場レベルで本当に多くの貴重な「生きたノウハウ」が蓄積されました。例えば、単に仕事をこなしてもらうだけでなく、ワーカーさんにいかにして「このお店のファン」になってもらうかを考え、下記のようなことを徹底しました。

  • ワーカーさん同士が情報交換する上での「口コミ・レビュー」の圧倒的な重要性や「迎え入れの準備」
  • 信頼できるワーカーさんをリスト化して次回以降の募集に繋げる「ワーカーのリスト化」
  • 闇雲に募集をかけるのではなく、来てほしい方がアクティブな時間帯に求人を公開するといった「求人公開タイミング」の最適化
  • ワーカーさんからの店舗レビューを「店舗の成績表」と真摯に受け止め、ネガティブな評価があれば必ず改善に繋げるという意識

こうした取り組みを通じて、ワーカーさんをいい加減に、穴埋め的に利用してしまうと、あっという間に悪い評価が蓄積され、人が全く集まらなくなる「負の遺産」になってしまうという危機感も共有されました。

これらのノウハウや各店舗の取り組みは、最終的に「共感採用の教科書」という、弊社独自の詳細なマニュアルとしてまとめ上げました。この教科書は、プロジェクト開始前に課題として挙がっていた「ワーカーさん向けの業務マニュアルがない」「既存従業員が新人さんに的確な指示を出せない」といった点を解消するための、具体的な行動指針となっています。

店舗ごとに手作りのマニュアル

藤田さん:この教科書には、責任者向けの運用マニュアルとは別に、店舗のパートさんたち自身に作成してもらった手書き風のウェルカムマニュアルと、既存従業員向けの「ワーカーさんが来てくれた時にご案内することリスト」の事例も盛り込んでいます。内容は「お店のテーブル番号はここに書いてあります」といった非常に基本的なことなのですが、こうした手作りの温かみのあるツールがあるだけで、ワーカーさんの安心感は格段に向上します。

特にこだわったのは、「タイミーさんと呼ぶことを禁止し、必ず本名で呼び、シフト表にも『タイミーから申し込んだ〇〇さん』と個人名を明記する」ということです。これは、ワーカーさんを単なる「一時的な労働力」としてではなく、一人の大切な「仲間」として尊重するという、私たちの「共感採用」の根幹をなす考え方です。

レストラン事業部 営業部 フィールドマネジャー 藤田さん

藤田さん:そして、ワーカーさんがスムーズに業務に入れるよう、事前に必要な備品や情報をまとめた「受け入れ準備セット」を必ず用意しておくことなどをルール化しました。活用の進んだ店舗では、その場で直接雇用の手続きができるように、入社書類一式を準備しておくといった工夫もしていました。

こうした地道な取り組みの積み重ねが、現場に劇的な変化をもたらしました。以前はピリピリしていた店舗の雰囲気が和らぎ、スタッフの言葉遣いが自然と丁寧になったり、新人さんに対して積極的に声をかけ、フォローしたりする光景が当たり前のように見られるようになったのです。従業員アンケートのエンゲージメントに関する数値も、実際に目に見えて改善しました。

そして、非常に嬉しかったのは、タイミーを通じて働いてくれたワーカーさんが、後日、純粋にお客様として店舗に食事に来てくれるようになったことです。これは、我々の取り組みがワーカーさんの心に響き、本当の意味での「ファン」が生まれている証拠であり、結果として売上にも貢献してくれるという、素晴らしい好循環に繋がっています。

 

 

選ばれ続ける企業と、「採用待ちで人が行列を作るような繁盛店」を目指して

―――まさに「共感採用」という言葉が、全ての取り組みを貫いているのですね。今後タイミーをどのように活用していくご予定でしょうか?

芳さん:タイミーは、活用方法次第で素晴らしい武器になると、このプロジェクトを通じて確信しました。しかしその一方で、明確な目的意識を持たず、ただ目先の欠員補充のためだけに安易に利用してしまうと、ワーカーさんからの評価は下がり、結果として人が全く集まらなくなるという「負の遺産」を抱え込んでしまう危険性も常に隣り合わせであると、認識しています。

ですから、今後も、タイミーの運用を単に店長任せにするのではなく、会社全体として明確な目標を設定し、主体的に、そして戦略的に活用していく姿勢が不可欠だと考えています。

今後、労働市場における人材獲得競争は、ますますその激しさを増していくでしょう。そして、スキマバイトという働き方がより一層一般化する中で、ワーカーさんが働く場所を選ぶ目も、よりシビアになっていくはずです。

そのような時代の中で、弊社が「選ばれる企業」であり続けるためには、時給や条件面だけでなく、ワーカーさん一人ひとりが「ここで働けて良かった」「またこのお店で貢献したい」と心から思えるような、働きやすく、かつ自己成長を実感できる魅力的な職場環境を提供し続ける努力が不可欠です。そして、その証として、ワーカーさんからの温かいレビューを一つでも多く積み重ねていくこと。これが私たちの目指す「採用待ちで人が行列を作るような繁盛店」につながると考えています。

取材協力:株式会社入船
1916年(大正5年)に兵庫県高砂市で料亭として創業。現在は「ごちそう村」や「讃岐の製麺所 あやがわうどん」等のレストラン事業と給食事業を展開。