漁獲量に合わせた人員配置へ。人件費が半減し、引き抜き採用に成功した市場の生鮮食品物流会社

「水産業界の仕事を、一見さんに任せるのは無理だろうと思い込んでいた」そう語るのは、豊洲市場を中心に生鮮食品の物流を支える株式会社東発の代表取締役社長 松本さんと業務部営業室室長の木村さん。

タイミー導入前の課題と導入による効果、そして価値観の変化について伺いました。

株式会社東発
(左)業務部 営業室 室長 木村さん(右)代表取締役社長 松本さん

漁獲量が予想できない中、人手不足と人件費の高騰に頭を悩ませていた

株式会社東発 代表取締役社長 松本様

ー まずは事業内容を教えてください

代表取締役社長 松本さん(以下、松本さん):東発のビジネスは、大きく分けて「市場向け」と「小売業者向け」の2種類の業務があります。市場向け業務では、様々な業者からの水産物を中継し、九州から北海道まで全国の市場へ発送しています。小売業者向け業務では、業者からの商品を入庫・管理し、オーダーを受けて店舗向け配送センターへ発送しています。

 

ー タイミー導入前の課題を教えてください

松本さん:人手不足ということもあり、もともとは派遣を利用していました。派遣の場合だと1ヶ月以上前に必要な人数を依頼する必要があったのですが、正直1ヶ月前に必要な人数なんて分かるはずがないんですよね。

特に水産業界は、水揚げをしてみないとどれだけの漁獲量があるか分からず予想どおりにいかないことが多い業界です。漁獲量が分かるのは、早くても前日なんてことも当たり前の世界。人がいないことで毎日の定期便が遅れてはいけないため、派遣ではフルタイムで多めの人数を依頼していました。その影響もあり、人件費が高騰していたんです。

倉庫作業の忙しさのピークは、実際には3~4時間程度。ピンポイントの時間で人材を集められる方法を探していた時に、同業の会社から「タイミーが結構良いですよ」と勧められて試してみることにしました。

 

ー導入する上で懸念はありましたか。

松本さん:はたして市場の仕事に人が集まるのか?と不安でした。センターによっては、500アイテムある取扱商品を1日に200店舗へ発送することもあり覚えることも多いため「一見さんには水産業界の仕事は無理だろう」と、正直そこまで期待はしていませんでした。

ところが、募集をしてみると想像以上に物流の仕事に慣れている方が多くいらっしゃったんです。若手は大学生から主婦(夫)さんやWワーカーの会社員、そして体力自慢のシニアまで色んな方とマッチングすることができました。特に印象に残っているのは、重いマグロの荷下ろしの募集に体育会系の大学生が来てくれたこと。筋トレの代わりになるのが良いらしく、元気に働いてくれていました。



ータイミーでは、どのような職種やお仕事で募集をしていますか?

松本さん:ワーカーさんにお願いしているのは、「ピッキング」をメインに「氷詰め」、「配送店舗のラベル貼り」「配り(寿司ネタを200店舗別に分ける)」などです。リピーターや経験者の方には「一次仕分け」という在庫から発注アイテムを出す業務もお任せしています。深夜帯でも人が集まるので、重宝しています。今は社員が1から10まで担当していた作業を切り出している最中で、「荷崩れ防止のラップ巻き」なども今後おまかせするつもりです。

短時間募集を活用して、人件費は半分に。2ヶ月募集を出し続けると、経験者の集まる土台ができ、良い人材と出会いやすくなる

ー実際にタイミーを利用してみていかがでしたか?

業務部 営業室 室長 木村さん(以下、木村さん):必要な時間だけピンポイントで募集ができるため、フルタイム派遣1名の人件費で2名のタイミーワーカーさんに稼働してもらえています。特に年末年始や節分などの繁忙期は、少ないコストで多数のワーカーさんを募集することができて助かりました。

募集タイミングに関しては、派遣の場合は1ヶ月前の発注でしたが、タイミーは最短1時間前に募集をしてもマッチングするんです。このマッチングの速さには驚きました。業務の進捗を見ながら、必要な人数に合わせて募集ができるのも嬉しいですね。

 

ータイミーを利用する上でのコツはありますか?

木村さん:私の経験から言えば、「2ヶ月は様子を見て、募集を出し続ける」ことです。

当たり前ですが、ワーカーさんは最初は誰しも「一見さん」です。毎日別の人に作業をレクチャーするのは苦労もありました。しかし、導入をはじめて2ヶ月で状況が変わったんです。

その頃には、当社で働くワーカーさんの人数もある程度の母数になり、リピートで働いてくれる人や当社をお気に入りにしてくれるワーカーさんも増えていきました。ここまでくれば、募集を出せばすぐに埋まり、いつものワーカーさんが働きに来てくれる。この状況をつくり出せるまで諦めずに募集を続けることが大切だと思います。

 

ータイミーを導入してよかったことを教えてください

木村さん:タイミー経由でワーカーさんを引き抜いて正社員として採用することができました。ワーカーさんの働きぶりを見ていた現場長が非常に評価して、長期で働いてくれることが決まりました。引き抜きをした本人からも「時間をムダにせず集中できる職場が自分に合っている」と言っていただけています。
※タイミーは、ワーカーの引き抜きが無料です
 

「どんな現場環境なのか」「自分にできる仕事量なのか」など知った上で正社員として働くため、これまでのように寒さ暑さやにおい、水濡れなど市場特有の環境を理由に辞めることは少ないはずです。面接だけではお互いにマッチしているのかが分からないことも多いと思います。   

働いてもらってから採用する。これが可能なタイミーは、スポット募集だけでなく「人材獲得ツール」としても優秀な存在です。タイミーに対して昔の日払いバイトのようなイメージを持たれている会社もあると思いますが、使ってみた印象は大きく異なります。食わず嫌いせず、まずは試してみることをオススメしたいです。

「1から10までできて一人前」の価値観が一変。2024年問題に対して、分業制や業務改善をより推進していきたい

ーリピーターを増やすために行っている工夫はありますか?

松本さん:これはタイミーを活用する前から使っていたのですが、業務改善につながったのは、豊海センターでデジタルピッキングを導入したことです。これまで1万枚以上の伝票が飛び交っていた現場でペーパーレス化を実現でき、働きやすくなったと思います。

電子掲示板に表示された通りに商品を仕分けすればいいので、初心者や外国人の方でもすぐに作業できるんです。要は、「社員でなければできないコア業務」と「そうではないノンコア業務」に分解して、誰でもできる形に落とし込む。最初は「自分でやったほうが早い」「面倒くさい」と感じるかもしれないですが、将来を見据えるなら必要になってくることだと思います。
 

ー今後のタイミーをどのように活用していきたいですか?

松本さん:タイミーでは、ワーカーさん向けにフォークリフト資格取得支援の取り組みも実施していると聞いています。豊洲市場では現場での商品移動も多いため、そういった場面で活用を考えてみるのもありですね。
※時期によっては実施していない場合もあります

また、2024年問題にもタイミーを活用した対策を検討中です。例えば、現状ではドライバーによる積み込みや荷下ろしの作業時間と待ち時間が、運転時間を上回ってしまうことも珍しくありません。そこでタイミーのワーカーさんに現地集合してもらい、積み込みや荷下ろしを代わりに行ってもらう。そうすればドライバーの負担軽減になるのではないでしょうか。   

まだ古い考えが多く残っている水産業界ですが、分業制の考え方や新しい視点を取り入れることで、仕事の仕方も働き方もアップデートできるはず。分業制や業務改善を推し進めて、従業員たちが1週間以上の長期休暇を取りやすい環境にして従業員満足度の向上を目指していきたいです。

取材協力:株式会社東発
1948年に設立。卸売市場間や物流センター間といった拠点間運送を中心に物流業を展開