
採用代行とは?導入のメリット・デメリット、代行会社選びのポイントを徹底解説
採用活動の負担増大や採用手法の多様化に対応するため、近年注目を集めているのが採用代行(RPO)です。これは、企業が行う採用業務の一部または全部を外部の専門業者に委託するサービスです。採用担当者の業務を軽減するだけでなく、企業の採用力向上にも貢献します。本記事では、採用代行の導入を検討している企業に向けて、そのメリット・デメリット、そして代行会社を選ぶ際の重要なポイントを徹底的に解説します。
採用代行(RPO)とは?その定義と注目される理由
採用代行(RPO)は、Recruitment Process Outsourcingの略称であり、企業の採用活動における一連の業務を、専門的な知識やノウハウを持つ外部の企業に委託するサービスを指します。一般的に「RPO」という名称で広く知られています。近年、企業の人事担当者の業務量は増加傾向にあり、その背景には、転職市場の活発化やキャリア採用の一般化、そしてWebやSNSといった多様なメディアの普及による採用手法の複雑化などが挙げられます。採用代行(RPO)は、採用担当者の負担を軽減するだけでなく、優秀な人材を確保し、企業の採用力を高めるための戦略的な手段としても注目されています。
採用代行(RPO)とBPOの違いについて
アウトソーシングサービスには、採用代行(RPO)の他に「BPO(Business Process Outsourcing)」という形態が存在します。BPOは、企業の業務プロセスの一部を、企画、設計、実行に至るまで一括して外部に委託するサービスであり、その中でも特に採用業務に特化したものが採用代行(RPO)と呼ばれています。
採用代行(RPO)の種類:担当者の形態による分類
採用代行(RPO)サービスを提供する企業は、採用業務を担当するメンバーの働き方によって、大きく分けて「社員中心」「業務委託中心」「フリーランス」の3つのタイプに分類できます。それぞれの特徴をしっかりと把握し、自社の状況やニーズに最も適した形態を選択することが重要です。
社員中心の採用代行
担当者が社員として雇用されている採用代行(RPO)サービスでは、業務の進め方や採用に関するノウハウが組織内で共有されているため、安定した品質のサービスが期待できます。また、特定の分野(例えば、エンジニア採用や新卒採用など)に特化している場合が多く、専門的な視点に基づいた効果的な採用活動を推進することができます。
業務委託型の採用代行
採用代行(RPO)サービスの中には、業務委託契約を結んだ担当者が業務を行う形態があります。業務を細分化し、各業務に最適なスキルや経験を持つ担当者を配置することで、特定の業務において高い効果が期待できます。正社員中心の採用代行会社と比較して、多くの担当者を確保できる場合があり、企業専任の担当者がつくサービスも存在します。ただし、契約時に定められた業務範囲外の依頼は難しい場合があるため、事前に確認が必要です。
独立系(フリーランス)の採用代行
フリーランスの採用代行を活用する最大のメリットは、担当者の経歴やスキルを直接確認し、納得した上で依頼できる点です。実際に業務を担当する人物を自社で選べるため、安心感があります。稼働日数や時間、業務範囲などを柔軟に調整してもらいやすく、臨機応変な対応が期待できます。また、採用代行会社に依頼するよりも、費用を抑えられる傾向があります。ただし、自社のニーズに合致するフリーランスを見つけるには、ある程度の時間が必要となる可能性があります。
採用代行(RPO)で委託可能な業務範囲
採用代行(RPO)サービスでは、採用計画の策定や課題分析といった戦略コンサルティングから、母集団形成、応募者対応、書類選考、面接などの実務まで、採用プロセス全体を幅広くサポートしています。ただし、委託可能な業務範囲はサービスによって異なるため、自社の採用課題を明確にした上で、最適なサービスを選定することが重要です。
採用計画の策定・設計
採用戦略や具体的な採用計画の策定を外部に委託することで、専門的な知識やノウハウを活用できます。採用計画は企業の経営戦略に深く関わる重要な領域であるため、豊富な採用実績と専門知識を持つサービスを選びましょう。主な業務内容としては、採用市場の動向分析、採用ターゲットの明確化、採用目標の設定、KPI設定、採用予算の策定などが挙げられます。
人材プール構築
求める人物像に合致する人材を効果的に集めるためには、適切な人材プールの構築が不可欠です。近年、企業が主体的にターゲット層へ働きかけるダイレクトリクルーティングに注力する傾向が強まっています。求人媒体の運用やスカウト活動に関する専門知識を持つ代行サービスを選定することが重要です。具体的な業務範囲としては、魅力的な求人広告の作成と掲載、ダイレクトリクルーティングの実施、説明会やイベントの企画・運営、そして企業の魅力を発信する採用広報活動などが含まれます。
応募者対応とデータ管理
選考プロセスにおける応募者とのスムーズなコミュニケーションは、応募者が企業に対して抱く印象(候補者体験)を大きく左右します。応募者の視点に立ち、迅速かつ丁寧な対応を心がけることは、企業イメージの向上に繋がります。採用代行サービスを活用することで、これらの業務を効率的に行えます。また、応募者から提供された情報の管理や、採用に関するデータの蓄積も代行業務に含まれます。主な業務内容としては、応募受付、応募者への連絡、選考スケジュールの調整、合否結果の通知、そして応募者情報の適切な管理などが挙げられます。
選考プロセスと研修
応募者が多数にのぼり、面談に費やす時間や人員が不足している場合、選考業務の一部を外部の採用代行サービスに委託することが可能です。ただし、企業の核となる業務である面接の代行には慎重な検討が必要です。特に面接においては、企業の文化や雰囲気、言葉では表現しにくいニュアンスなどを正確に伝えることが難しいためです。代行可能な業務としては、書類選考、一次面接の代行、適性検査の実施、採用イベントの企画・運営などが挙げられます。
採用代行(RPO)の費用構造と相場
採用代行サービスの費用は、委託する業務の範囲や、委託先の企業が採用している料金体系によって変動します。一般的な料金体系としては、月額固定料金型と、業務量に応じて費用が変動する従量課金型が存在します。
月額固定料金型
これは、依頼する業務範囲に基づいて毎月の料金が決定される方式です。業務量に関わらず料金が変わらないため、採用代行にかけられる予算があらかじめ決まっている場合に適しています。
成果報酬型
成果報酬型の採用代行は、採用成功に応じて費用が発生するサービスです。初期費用を抑えられ、採用活動にかかるコストを最適化できます。企業は、書類選考通過や面接実施、内定承諾といった成果に応じて費用を支払うため、無駄なコストを削減し、費用対効果の高い採用活動を実現できます。採用難易度の高いポジションや、採用予算を抑えたい企業に適しています。
採用代行(RPO)を利用する利点
採用代行(RPO)を導入することで、企業は様々な恩恵を受けることができます。
採用戦略のレベルアップ
採用代行(RPO)サービスを提供する企業は採用のエキスパートであるため、企業ごとの状況に合わせた最適な採用方法の提案や、採用に関する問題を解決するための支援が期待できます。採用期間の短縮、事業計画に必要な人材の確保、定期的なレポートやフィードバックを通じた自社の採用力強化などが期待できます。
採用費用の抑制に貢献
採用代行(RPO)の利用には費用が発生しますが、社内の採用担当者の人員が不足している状況では、新たに社員を採用するよりも経済的な場合があります。新規に採用担当者を雇用する場合、研修費用や企業の文化・採用戦略の浸透に時間を要します。採用の専門家である採用代行(RPO)を活用すれば、導入後比較的早い段階で一定の成果が期待できます。その結果、採用活動全体の期間が短縮され、費用対効果の向上が見込めます。
採用担当者の負担を減らし、重要な業務に専念できる
応募者の情報管理や面接日の調整、求人広告の作成といった定型的な業務を採用代行(RPO)に委託することで、採用担当者は時間的な余裕を持つことができ、候補者とのコミュニケーションや面接といった、より重要度の高い業務に集中できる環境を構築できます。
採用の専門家に委託することで業務品質が向上し、問題点の改善につながる
豊富な知識や経験を持つ専門の担当者に依頼することで、高い品質を維持しながら採用業務を進めてもらえる可能性があります。迅速かつ適切な対応により、選考通過率の低下といった採用における課題の改善に繋がることも期待できます。
採用代行(RPO)の注意点
採用代行(RPO)は多くの利点がある一方で、注意すべき点も存在します。導入を検討する際は、デメリットも考慮に入れることが大切です。
企業内に知識や経験が蓄積されにくい
採用代行(RPO)を利用する際、全てを外部に委託してしまうと、企業内にノウハウが蓄積されにくくなるという懸念があります。定期的に進捗状況を共有してもらいながら、採用に関する知識や経験を自社にも提供してもらうなど、企業内でノウハウを蓄積できるような仕組みを構築することが重要です。
採用のずれが生じるリスク
求める人材像は、募集職種が変わらなくても、現場の状況変化に伴い変化することがあります。社内での情報共有はもちろんのこと、採用代行サービス利用時にも、その変化を共有しなければ、結果的に要件のミスマッチを招き、期待外れの結果となる可能性があります。常に最新の社内状況を採用代行業者に伝えられる体制と仕組みを構築することが重要です。
自社に最適な採用代行業者選びが重要
採用代行サービスは多岐にわたり、各社のサービス内容も異なります。そのため、自社のニーズに合わない業者を選んでしまうと、期待通りの成果を得られないことがあります。事前に自社の課題を明確に把握した上で、複数の会社を比較検討し、最適な採用代行業者を見つけることが大切です。
採用に関する知識や経験が社内に蓄積されない
採用代行サービスを導入しても、社内担当者の協力体制が整っていないと、サービスが十分に機能しないことがあります。例えば、面接の日程調整などを外部に委託しても、社内担当者の動きが鈍ければ、スムーズな採用活動は期待できません。逆に、社員と外部委託先が協力し合うことで、より良い採用活動に繋がります。
採用代行(RPO)サービスの選定ポイント
採用代行サービスを最大限に活用するには、自社の状況に最適なサービスを選ぶことが不可欠です。ここでは、サービス選定において確認すべき重要なポイントをご紹介します。
自社の採用ニーズへの対応力
類似企業への支援実績を確認することが有効です。中途採用といっても、大量採用を得意とするか、高度人材の採用に強みがあるかなど、企業によって得意分野が異なります。商談の際に、業種、職種、採用人数を伝え、類似事例の有無を確認しましょう。また、自社の採用課題を明確にしておくことも重要です。採用担当者の不在により採用計画の策定に苦労しているのか、担当者が多忙でリソース不足なのかなど、課題は企業の状況によって異なります。課題を整理せずに導入した場合、効果測定が困難になるため、課題解決に繋がりそうな代行サービスを選びましょう。
サービス支援範囲は自社に合っているか
採用代行サービスは、総合的な支援を行うものから、スカウトに特化したもの、特定の職種に強みを持つものなど、多岐にわたります。まずは、自社で対応すべき業務と、採用代行に委託したい業務を明確に区分しましょう。その際、目先の業務だけでなく、採用代行サービスを活用した場合、数ヶ月後の状況も想定しておくことが大切です。例えば、最初は事務作業から任せて、うまくいけば母集団形成も依頼したい、という場合は、スカウト代行や人材エージェントとの連携が可能な採用代行サービスを選ぶ必要があります。事務作業しか対応できないサービスでは、ニーズとのずれが生じてしまいます。したがって、採用代行サービスの活用によって実現したい理想像を描き、「自社のコア業務は何か」「どこまで採用代行サービスに任せたいか」を明確にしておくことをおすすめします。
費用対効果は適切か
採用代行サービスの利用には、当然ながらコストが発生します。契約期間は会社によって異なり、1ヶ月単位で契約できる会社もあれば、半年単位の契約が必要な会社もあります。「思ったより効果が出ない」「作業量に対して費用が高い」と感じても、契約期間中は利用せざるを得ないため、契約前に費用対効果をしっかりと見極めることが重要です。作業量については、契約前に「このプランでは、どれくらいの事務作業に対応できるか」「スカウトを何通送付できるか」など、おおよその見積もりを確認した上で判断するようにしましょう。また、現在利用している媒体以外も活用する場合、当初の想定よりも媒体費用が上乗せされることもあります。そのため、契約前に採用戦略について、ある程度すり合わせを行うと良いでしょう。
採用代行(RPO)サービスの導入に向いている企業
採用代行(RPO)サービスの導入は、以下のような特徴を持つ企業に適しています。
コア業務に手が回らない企業
採用担当者の業務範囲が広く、日々の応募者対応に追われ、採用計画の見直しや分析といった重要な業務に時間を割けない企業は、必要な業務量を洗い出した上で、外部委託できるノンコア業務を整理し、採用代行サービスに依頼することで、コア業務に集中できる環境を構築すると良いでしょう。
専任の採用担当者がいない企業
もし自貴社に専任の採用担当者がおらず、経営層やマネージャーが採用業務を兼務している状況であれば したら、採用に関する専門知識がないまま試行錯誤したり、十分な時間を確保できずに採用活動の改善が進まない、といった課題が生じがちです。そのような場合は、自社で採用担当者を雇用し、育成するまでの間、採用代行サービスを活用して、効率的に採用活動を進めることを推奨いたします。
改善活動を行ってもなかなか成果に繋がっていない企業
採用担当者がいるにも関わらず、改善策を講じてもなかなか成果が出ない場合、企業内部からは見えにくい課題が存在する可能性があります。第三者である採用代行サービスを利用することで、豊富な他社事例に基づいた客観的なアドバイスが得られ、自社だけでは気づかなかった魅力の発掘やアピール方法が見つかる可能性が高まります。
募集ポジションが幅広い・採用ボリュームが大きい
募集する職種が多岐にわたる場合、それぞれのポジションに最適な母集団形成や選考方法を選択する必要があります。採用プロセスが多様化すると、業務が増加し、管理が煩雑になる傾向があります。採用に関連する事務作業などを外部に委託し、職種ごとの最適な媒体選定や求人要件の分析といったコア業務に集中することで、採用成功に近づきます。また、採用人数が多い場合も、採用代行の活用は有効です。採用人数が増えるほど応募者数も比例して増加するため、事務作業の負担は膨大になります。特に、一時的に大量の採用を行う場合、採用担当者をすぐに増員できないこともあります。外部サービスを利用し、自社で対応する業務範囲を絞り込むことで、期日内に採用目標を達成することを目指せます。
採用を急いでいる
企業内の事情により、採用を急ぐ必要が生じた場合にも、採用代行は有効な手段となります。特に、外部のリクルーターを社内に配置するタイプのアウトソーシングはよく利用されます。主にダイレクトリクルーティングなどを活用して、応募者集めを支援してもらいます。それ以外にも、人材紹介会社との連携窓口や、候補者との面接日程調整なども依頼できるため、即戦力としてすぐに業務に取り掛かってもらうことが可能です。自社内に席を設けて対応してもらうため、コミュニケーションが円滑に進みやすく、情報共有も容易であるというメリットがあります。
採用代行(RPO)サービスを有効活用するための秘訣
採用代行(RPO)サービスを最大限に活用し、成功を収めるためには、以下の重要なポイントを押さえることが不可欠です。
採用の目的と明確な課題設定
「何のために採用代行を導入するのか?」「どのようなスキルを持つ人材を、どれくらいの人数採用したいのか?」を明確にすることで、サービス提供企業との認識のずれを防ぎ、円滑なサービス利用へと繋げることができます。
事前に対応範囲と役割分担を明確化
採用プロセスの中で、どの部分を代行会社に委託するのか、また自社ではどの範囲まで対応するのかを明確に定義しましょう。求人情報の作成、応募者への対応、面接日の調整、内定後のフォローなど、詳細な役割分担を事前に決定しておくことで、業務の漏れを防ぎ、スムーズな進行を実現できます。
サービス提供企業の実績と専門領域を見極める
即戦力となる人材の採用に強みを持つ企業、新卒採用に特化した企業、特定の専門職やITエンジニアの採用に長けた企業など、自社の採用ニーズに合致する企業を選定することが非常に重要です。過去の事例や評判なども参考にしながら、実績をしっかりと確認しましょう。
まとめ
採用代行(RPO)は、採用活動の効率化と品質向上に寄与する有効な手段です。しかし、導入にあたっては、自社の課題を明確にし、最適なサービスを選定し、委託先企業との緊密な連携を築くことが重要です。この記事が、貴社の採用活動における最良の選択を支援できれば幸いです。
よくある質問
質問1:採用代行(RPO)はどのような企業に最適ですか?
採用担当者の人員が足りない企業、採用に関する知識や経験が少ない企業、採用プロセスを効率化したい企業、事業拡大に伴って採用活動を強化したい企業などに適しています。
質問2:採用代行サービスの料金はどの程度が目安ですか?
依頼する業務内容や、サービスを提供する企業によって費用は大きく変動します。月額固定料金制や、採用成功に応じた成果報酬型など、料金体系は様々です。導入前に必ず見積もりを取得し、コストパフォーマンスをしっかりと見極めることが大切です。
質問3:採用代行サービスを導入する上で注意すべき点はありますか?
まず、自社の採用における課題を明確に把握することが重要です。その上で、課題解決に最も適したサービスを選びましょう。また、委託する業務範囲を明確に定義すること、サービス提供企業との緊密な連携を保つことも成功の鍵となります。


