
新卒通年採用とは?:就活の新たな潮流と企業戦略
従来の「新卒一括採用」の枠を超え、企業が年間を通して人材を募集する「通年採用」が、新卒採用の新たな潮流として注目を集めています。グローバル化の進展や産業構造の変化に伴い、企業は多様なスキルや経験を持つ人材をタイムリーに確保する必要に迫られています。本記事では、通年採用の現状と背景、企業にもたらすメリット、そして導入に向けた戦略について掘り下げて解説します。
通年採用とは?新卒一括採用との違い
通年採用とは、企業が一年を通して、新卒・既卒といった区別なく、必要に応じて人材を募集・採用する方式です。従来の春に一斉に行われる新卒一括採用とは異なり、企業が求める人材像やタイミングに合わせて選考活動を行います。この採用方式によって、企業はより多様な人材を獲得しやすくなり、学生は自身のスケジュールや状況に合わせて就職活動を進めることが可能になります。通年採用は、主に以下の3つのケースで見られます。
- 海外大学卒業者や帰国子女など、卒業時期が異なる学生を対象とした採用
- 特定の専門スキルや経験を持つ学生を対象とした採用
- 事業拡大や欠員補充など、急な人員ニーズに対応するための採用
従来の新卒一括採用においては、経団連が提唱した就活ルールが存在していましたが、近年そのルールが形骸化しているとの指摘がありました。経団連の就活ルールは2018年に廃止され、2021年卒業予定者からは政府が主導する新たな就活ルールが適用されています。この新たなルールでは、従来のスケジュールの多くが踏襲されつつも、具体的な変更点や新たな取り組みも導入されています。
出典:
・2018/10/9 . 日本経済新聞 . 新卒一括採用、転機に 経団連が就活ルール廃止発表 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36281670Z01C18A0MM8000/
・2018/10/29 . 日本経済新聞 .就活、面接解禁6月を維持 政府、21年卒のルール決定 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37073090Z21C18A0MM8000/
・2023/12/08 . 就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議 . 2021 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方
https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/002116143.pdf
なぜ通年採用?企業側のメリット・デメリット
企業が通年採用を導入する背景には、グローバル化の進展や人材の多様化といった社会的な変化に対応したいという意図があります。従来の一括採用では、海外の大学を卒業した学生や帰国子女の採用が難しく、これが企業にとっての課題となっていました。通年採用を通じて、企業は必要なスキルを持つ人材を必要な時に採用し、組織の活性化や競争力の向上を目指しています。一方で、通年採用には採用計画の柔軟性やコスト面の課題、選考の公平性を保つための対策が求められるなど、考慮すべき課題も存在します。ただし、これらのメリット・デメリットは企業の特性や市場の状況によって異なる場合があります。
企業側のメリット
- 優秀な人材の確保: 従来の一括採用では出会うことのできなかった、多様な経験や知識を持つ学生にアプローチできる。
- グローバル化への対応: 海外大学の卒業時期に合わせた採用活動が可能となり、海外大卒者や留学生の採用を促進できる。
- 欠員補充の迅速化: 必要なタイミングで適切な人材を採用できるため、組織運営の効率化に繋がる。
企業側のデメリット
- 採用コストの増加: 採用活動が長期にわたるため、採用担当者の業務が増え、結果として採用コスト全体が上昇する可能性がある。
- 採用担当者の負担増: 一年を通して継続的に採用活動を行う必要があるため、採用担当者の業務負荷が大きくなる。
- 一括採用企業との競合: 一括採用を行う大手企業に人気が集中しやすく、企業規模や知名度が低い企業には競争上の不利が生じることがある。
学生にとっての通年採用:利点と留意点
通年採用は、学生にとって多くの恩恵をもたらす一方で、注意すべき点も存在します。従来の就職活動の枠にとらわれず、自身のペースで就職活動を進められる点が大きな魅力ですが、自主的な行動が不可欠となります。また、選考の難易度が上がる可能性も視野に入れておく必要があります。ただし、これらのメリット・デメリットは学生の状況や選択する企業によって異なることを理解しておくことが重要です。
学生側のメリット
- 早期内定の可能性: 大学入学直後から内定を得る機会があり、その後の学生生活を落ち着いて過ごせる。
- 活動への専念: サークル活動、留学、勉学など、学業や課外活動に打ち込める。
- 複数回の応募機会: 関心のある企業に何度でも挑戦できる機会がある。
- 応募企業数の増加: スケジュール管理が容易になり、より多くの企業に応募できる。
学生側のデメリット
- 長期的な就活意識: 大学生活全体を通して就職活動を意識する必要があり、精神的な負担が増すことも考えられる。
- 新卒の優位性の低下: 卒業生や第二新卒も競争相手となり、新卒という立場だけでは有利とは限らなくなる。
- 情報格差の拡大: 就職活動への意識が高い学生とそうでない学生の間で、情報収集力に差が生じる可能性がある。
- 積極的な行動の必要性: 企業によって異なる採用スケジュールや選考方法に対応するため、自発的に情報を集め、積極的に行動することが求められる。
新卒の通年採用を行っている企業一覧
ここでは、新卒者を対象に通年採用を導入している企業をリストアップしてご紹介します。これらの企業は、多様な才能を持つ人材を積極的に採用し、組織の活性化を目指しています。興味のある企業があれば公式情報を確認してみてください。
企業一覧
- ヤフー株式会社: 日本を代表するインターネット企業であり、検索エンジンの「Yahoo! JAPAN」やキャッシュレス決済サービス「PayPay」など、幅広いサービスを提供しています。
- 株式会社サイバーエージェント: インターネット広告事業を基盤とし、動画配信プラットフォーム「ABEMA」など、メディア事業も展開しています。
- 株式会社リクルート: 就職情報サイト「リクナビ」をはじめ、住宅情報サイト「SUUMO」、結婚情報誌「ゼクシィ」など、多様な分野で情報サービスを提供しています。
- 楽天グループ株式会社: Eコマースプラットフォーム「楽天市場」を中心に、金融サービス、通信事業など、多岐にわたる事業を展開する総合企業です。
- 株式会社DeNA: モバイルゲーム「Mobage」の運営のほか、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」の経営など、エンターテインメント事業を幅広く展開しています。
- KDDI株式会社: 携帯電話サービス「au」や固定通信サービスを提供する大手通信事業者です。
- ソフトバンク株式会社: 携帯電話事業「SoftBank」に加え、「Yahoo!」の親会社として、通信・投資分野で存在感を示しています。
- 株式会社メルカリ: スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」を運営し、個人間の売買を活性化させています。
- 株式会社U-NEXT: 動画配信サービス「U-NEXT」やUSENの音楽配信など、エンターテインメントコンテンツを提供しています。
- 株式会社ファーストリテイリング: 「ユニクロ」や「GU」などのブランドを展開する、世界的なアパレル企業です。
- ユニリーバ・ジャパン: スキンケア、ヘアケア製品など、幅広いパーソナルケア製品を製造・販売するグローバル企業です。
- ネスレ日本株式会社: 食品メーカー「ネスレ」の日本法人として、多様な食品・飲料製品を提供しています。
- PwC Japanグループ: 世界最大級のコンサルティングファームとして、様々な業界の企業に対し、経営戦略や業務改善などのコンサルティングサービスを提供しています。
- 富士通株式会社: テクノロジーソリューションを中核とし、幅広い分野で事業を展開する総合電機メーカーです。
- 株式会社日立製作所: 社会インフラ、情報・通信システムなど、幅広い分野で事業を展開する大手電機メーカーです。
- サイボウズ株式会社: 企業向けグループウェアの開発・販売を手掛けています。
- TDK株式会社: 電子部品を製造する大手メーカーです。
- 株式会社ガイアックス: SNS運用やWEBマーケティング事業を行う企業です。
- GMO TECH株式会社: ウェブ広告のコンサルティング事業などを行う企業です。
- アイリスオーヤマ株式会社: 家電や日用品などを製造販売する企業です。
- 株式会社じげん: 「スモッカ」や「転職EX」など自社メディアを運用する企業です。
- 株式会社ジンズ: メガネの製造・販売を手掛ける企業です。
- 株式会社ファインデックス: 病院向けシステムを提供する企業です。
- 面白法人カヤック: ゲームやインターネット事業を展開する企業です。
- コンドーテック株式会社: 工事現場向け工具・部品などを製造販売する企業です。
- 株式会社コロプラ: スマホ向けゲームを提供する企業です。
- みんなのマーケット株式会社: ECサイト「くらしのマーケット」を運営する企業です。
- ADT株式会社: LSI設計・レイアウト設計・ソフトウェア開発を行う企業です。
- 株式会社ビービット: UXコンサルティングを行う企業です。
- 株式会社ボーダレス・ジャパン: ソーシャルビジネスを展開する企業です。
- 株式会社ネクストビート: HRTechに力を入れる企業です。
- Oriri株式会社: 経営コンサルティングを行う企業です。
- 株式会社プレスマン: WEBサイトの開発・運用などを行う企業です。
- 株式会社新大陸: Webマーケティングを主力とする企業です。
- スカイライトコンサルティング株式会社: 顧客に寄り添ったコンサルティングを行う企業です。
- チームラボ株式会社: アプリ開発やWebサイト構築などを行う企業です。
- 株式会社メタップス: フィンテック事業を行う企業です。
- 株式会社ユーグレナ: 微細藻類に関する研究・開発を行う企業です。
上記は一例であり、新卒通年採用を実施している企業は他にも多数存在します。就職活動サイトなどを活用することで、より多くの企業情報を効率的に収集できます。
通年採用の企業から内定を獲得するための3つのコツ
通年採用を実施する企業から内定を得るためには、従来の就職活動とは異なる戦略が求められます。特に、企業が重視する能力や経験を的確に把握し、それに基づいた効果的な自己PRを行うことが重要です。この記事では、通年採用を行う企業から内定を獲得するための3つの重要なポイントを紹介します。なお、これらのポイントは企業や業界によって異なる場合がありますので、具体的な戦略は各自で調査・検討することをお勧めします。
コツ1:長期インターンシップなどで「実績」を積み上げる
通年採用を実施している企業の中には、新卒採用において即戦力となる人材を求める傾向がある企業も存在しますが、全ての企業が専門的な知識や具体的な実績を重視するわけではありません。長期インターンシップに参加することは、多くの学生にとって実務経験を積み、企業が求めるスキルを習得するのに有効な手段となります。このようなインターンシップでの経験は、面接時の自己PRにおいて客観的な根拠を提供し、入社後の活躍を期待させるアピール材料となることが多いです。
コツ2:企業の情報を自力で徹底的にリサーチする
通年採用を実施している企業は、合同説明会などの就職イベントに参加しない場合がある一方で、参加する企業も存在します。そのため、企業に関する情報を自ら積極的に収集することが重要です。企業の公式ウェブサイト、IR情報、信頼できるニュース記事などを参考にし、企業理念、事業内容、求める人物像について深く理解する必要があります。また、OB・OG訪問を通じて社員の生の声を聞くことも、企業理解を深めるための非常に有効な手段といえるでしょう。情報収集の際は、情報の信頼性にも注意を払うことが大切です。
コツ3:むやみに多くの企業にエントリーしない
通年採用は応募期限がないため、焦って多くの企業に応募する必要はありません。それよりも、一社ずつ丁寧に企業を調べ、自身の強みや適性をしっかりと伝えることが大切です。企業研究が不十分な状態で選考に臨むと、企業とのミスマッチが起こりやすく、内定を得るのが難しくなります。
新卒の通年採用企業を探せる就活サイト
新卒の通年採用を行っている企業を探す際には、逆求人型の就活サイトが役立つ場合があります。これらのサイトでは、自分の経歴やスキルを登録することで、企業からスカウトを受けることが可能です。ただし、すべての企業が逆求人型サイトを利用しているわけではないため、複数の情報源を確認することが重要です。また、企業が求める人材や採用に関する情報も確認できるため、積極的に活用し、自分に合った企業を見つける手助けにしましょう。
おすすめの就活サイト
- OfferBox: プロフィールを登録すると、企業からスカウトが届く逆求人型サイト。幅広い業種の企業が利用。
- キャリアチケットスカウト: 5つの質問に答えることで、企業からスカウトを受け取ることができ、マッチングの精度が向上。
- キミスカ: 簡単なプロフィール入力を行うことで企業から選考のオファーが届く仕組みで、特に新卒や若手向けのサービスとして人気。
まとめ
通年採用は、企業と学生にとって、より多様な選択肢を提供する新たな採用手法です。しかし、これには企業の採用プロセスや学生の心理的負担など、さまざまな考慮事項が伴います。通年採用の利点と欠点を理解し、自分に合った就職活動を進めるためには、早めに準備を始め、積極的に情報を収集し、自己PRを磨くことが重要です。これにより、理想のキャリアを実現する可能性が高まります。
よくある質問
質問1:通年採用は、いつから始まるのでしょうか?
回答:通年採用は、企業ごとに異なる開始時期が設定されており、特定の時期に限定される従来の採用方法とは異なり、年間を通じて採用活動が行われます。各企業の採用情報ページや就職活動支援サイトで最新の情報を確認することが重要です。また、通年採用には企業によって異なる特徴やメリットがあるため、詳細な情報を収集することをお勧めします。
質問2:通年採用と従来の一括採用では、どちらが有利でしょうか?
回答:通年採用と従来の一括採用のどちらが有利かは、応募者の個々の状況や志望する企業の特性によって異なります。通年採用は、自分のペースで就職活動を進められるため、柔軟性がある一方で、自己管理能力が求められます。対して、一括採用は、同時期に多くの学生が活動するため、情報交換がしやすいという利点がありますが、スケジュールが集中しやすく、競争が激化する傾向があります。このため、どちらの採用方式が適しているかは、応募者の目指すキャリアや企業文化に依存すると言えるでしょう。
質問3:通年採用を実施している企業を受ける際の注意点はありますか?
回答:通年採用を実施している企業に応募する際の注意点には、まず企業に関する深い理解を深めることが挙げられます。自身の強みや適性を明確に伝える準備も重要です。長期インターンシップなどの実務経験は、多くの企業で選考において有利に働く可能性がありますが、企業ごとの求める人物像をしっかり把握し、それに合った効果的な自己PRを展開することが鍵となります。


