
育休中の副業:知っておくべき法律・会社規定・給付金との関係
育児休業中に「少しでも家計の足しに」「スキルアップのために」と副業を考える方は少なくありません。法的には副業は禁止されていませんが、育児休業給付金を受け取る上での注意点や、会社規定との兼ね合いなど、事前に確認しておくべき点がいくつか存在します。知らずに副業を始めてしまうと、給付金が減額されたり、最悪の場合、返還を求められる可能性も。この記事では、育休中の副業に関する法律、会社規定、そして育児休業給付金との関係について詳しく解説します。
育休中に副業を始める前に知っておくべきこと
育児休業期間中の副業自体は、法律で禁止されているわけではありません。しかし、勤務先の会社の就業規則において、副業が認められていないケースも考えられますので、事前に確認しておくことが大切です。加えて、育児休業給付金を受給するには、労働時間や収入に一定の制限があるため、注意が必要です。
育児休業と育児休業給付金制度の概要
育児休業、通称「育休」は、育児・介護休業法という法律で定められた制度です。原則として、お子さんが1歳になるまでの間、育児のために勤務を休むことができる制度です。特別な事情があれば、最長で2歳まで延長することが可能です。育休中は給与収入がなくなるため、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。これは、育児に集中できるよう、定められた条件を満たす場合に支給されるものです。
育児休業給付金の受給資格
育児休業給付金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。
育児休業開始日より前の2年間に、雇用保険の加入期間が合計12ヶ月以上あること
育休中の1ヶ月における就業日数が10日(または就業時間が80時間)を超えないこと
育休期間中に支払われる賃金の額が、育休開始前の賃金の80%を下回ること
これらの条件を満たしていれば、正社員の方だけでなく、パートやアルバイトとして働いている方も受給資格を得られます。ただし、雇用期間に定めがある契約の場合、お子さんが1歳6ヶ月になるまでの間に雇用契約が満了することが明らかでないことが条件となります。
育児休業給付金の支給額
育児休業給付金の支給額は、育休開始からの期間に応じて変動します。
育児休業開始から180日目まで(最初の6ヶ月間):支給額は休業開始時の賃金日額に支給日数(通常は1支給単位期間30日)を掛けた額の67%が支給されます。
育休開始から181日目以降の育児休業給付金は、休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 50%で計算されます。
ここで使われている「休業開始時賃金日額」は、育休開始前の6ヶ月間に支払われた給与の総額(ボーナスは除く)を180で割った金額のことです。例えば、育休開始前の6ヶ月間の給与総額が120万円だった場合、1ヶ月あたりの給付金は最初の6ヶ月間でおよそ13万4千円、それ以降はおよそ10万円となります。育児休業給付金は非課税であり、社会保険料も免除されるため、支給された金額がそのまま手取りとして受け取れます。
なお、2025年4月に「出生後休業支援給付金(育児休業給付金に休業開始時賃金日額の13%を上乗せ支給)」が新設されました。出生直後の一定期間に両親ともに(配偶者が就労していない場合などは本人が)14 日以上の育児休業を取得した場合、出生後休業支援給付金が最大28 日間支給されます。
出典:厚生労働省.育児休業等給付の内容と支給申請手続.
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf
育休中の副業と育児休業給付金
育児休業期間中でも、一定の条件を満たせば育児休業給付金を受け取りながら副業を行うことが可能です。ただし、給付金を受け取るためには、就労日数や収入に制限があるため注意が必要です。例えば、育休中に別の企業でアルバイトやパートとして働く場合、1ヶ月あたりの就労日が10日を超えると、育児休業給付金が支給されない可能性があります。また、育休期間中に元の職場に一時的に復帰する「半育休」を選択した場合も、働き方によっては給付金が減額または停止されることがあります。育児休業給付金に関する規定では、雇用保険に加入している事業主から一定金額以上の賃金が支払われると、給付金が減額されることが定められています。ただし、育児休業中に他の仕事から得た収入については、一定の条件を満たす限り減額対象とならず、育児休業給付金を全額受け取ることが可能です。重要なのは、就労日数や就労時間が就業可能な範囲を超える場合、育児休業中と認められず、給付金が支給されない可能性がある点です。このため、事前に詳細を確認することが推奨されます。
育休中の社会保険料の免除
育児休業期間中は、健康保険や厚生年金保険といった社会保険料が、事業主による手続きによって、被保険者本人と事業主の両方とも免除されます。この免除制度は、育児休業開始月から終了する日の翌日が属する月の前月まで適用されます。また、同月内に育児休業を開始・終了した場合、育児休業を14日以上取得した月も社会保険料は免除されます。育休中に副業を行った場合でも、この社会保険料の免除は継続して適用されます。ただし、賞与にかかる社会保険料については、賞与月の末日を含む連続した1ヶ月を超える育児休業を取得した場合に限り、免除の対象となります。
出典:日本年金機構.6-4:育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき.https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140403-01.html
育休中にできるおすすめの副業
育児休業中の時間を有効活用して収入を増やしたいと考えている方もいるでしょう。ここでは、自宅で取り組みやすい副業をいくつかご紹介します。
ポイントサイト
ポイントサイトは、広告閲覧、ゲーム参加、サービス登録などを通じてポイントを貯めることができるプラットフォームです。獲得したポイントは、現金、電子マネー、ギフト券などに交換できます。ちょっとした空き時間を有効活用し、地道にポイントを貯めるのが好きな方に向いており、育児中でも無理なく始めやすいのが魅力です。作業時間によって収入は変動しますが、月5,000円~1万円程度を見込むのが現実的でしょう。
アンケートモニター
アンケートモニターは、企業や調査機関から依頼されたアンケートに回答したり、商品やサービスを試用して意見を提供する仕事です。特別なスキルや経験は不要で、スマートフォンやパソコンを使って、都合の良い時間にどこでも作業できます。報酬はポイントや現金などで支払われ、初心者でも取り組みやすいのが魅力です。多くの場合、Webアンケートはメールで送られてくるものに答えるだけなので、手軽に始められます。ただし、報酬は一件あたり数十円から数百円程度と、比較的低い水準です。
クラウドソーシング
クラウドソーシングは、企業や個人がインターネット経由で仕事を発注するサービスです。データ入力、Webライティング、デザイン、プログラミングなど、多岐にわたる仕事があります。自身のスキルや経験を活かして、自宅で仕事を受注できます。経験者は有利ですが、未経験者でも可能な案件も少なくありません。スキル次第で高収入も期待できますが、業務委託であるため、納期を守り責任感を持って取り組む必要があります。初心者におすすめなのはデータ入力です。アンケートや名刺などのアナログ情報を、WordやExcelなどの形式で入力する作業です。また、インタビューや講演などの音声データをテキスト化する文字起こしも、初心者でも比較的取り組みやすいでしょう。Webメディアの記事作成を行うWebライティングや、Webサイトやアプリのデザインを手がけるWebデザインは、自身のスキルを最大限に活かしたい方におすすめです。
ハンドメイド販売
手芸やアクセサリー作りが得意な方は、ハンドメイド作品をオンラインで販売できます。minneやCreemaなどのハンドメイドマーケットプレイスを利用すれば、手軽に自身の作品を販売できます。一般的なデザインの雑貨は価格競争が激しく、利益を上げるのは容易ではありません。しかし、購入者に喜んでもらえるハンドメイド販売は、やりがいがあり、自身のスキルアップにもつながるため、挑戦する価値は十分にあります。
アフィリエイト
アフィリエイトは、自身のブログやWebサイトに広告を掲載し、その広告を経由して商品購入やサービス申し込みがあった場合に、報酬を得られる仕組みです。Webサイト構築やSEO対策など、専門知識が求められる場合もありますが、成功すれば安定収入につながる可能性があります。必ずしも高度なスキルが必要というわけではありませんが、収入を増やすためには、Webページの検索順位向上やコンテンツの充実が不可欠です。成果報酬型であるため、収入がゼロになるリスクも考慮する必要があります。アフィリエイトを始めるには、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)への登録が必須です。
フリーマーケットアプリを活用した収入
ご不要になった品物をフリーマーケットアプリに出品することは、手軽な副業の選択肢の一つです。手作りのアクセサリーや可愛らしいぬいぐるみを制作し、それらをフリマサイトで販売する方法も考えられます。フリーマーケットで得た収入が一時的なものであり、生活用品の処分とみなされる場合、確定申告は不要です。ただし、継続的に販売を行い、利益を得る目的でフリマサイトを利用している場合、事業所得とみなされ、所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。具体的な基準や条件については、税務署などで確認することをお勧めします。
育児休業中の副業が勤務先に露見する原因と対策
育休中に副業を行う際、会社に知られたくない場合は細心の注意が必要です。副業による収入増加が原因で住民税が増加することがありますが、給与所得者の場合、住民税は給与天引き(特別徴収)となるため、勤務先の担当者が副業に気づく可能性があります。企業は市区町村から送付される「個人住民税特別徴収税額通知(自治体によって名称は異なる)」に基づいて給与天引きを行うため、通知内容を見れば収入がわかるからです。住民税の納付方法を「普通徴収」に指定することで、税額の通知が会社に送られなくなりますが、自治体によっては普通徴収への変更が認められないこともあります。さらに、同僚に副業の話をしたり、SNSで情報を発信したりすることも、発覚の原因となる可能性があるため、行動には注意が必要です。
育児休業中の副業と税金申告
育休期間中に副業で収入を得た場合、状況に応じて確定申告が必要となることがあります。会社員の場合、副業による所得(収入から必要経費を差し引いた金額)が年間20万円を超えると、確定申告を行う義務があります。20万円以下の所得でも、医療費控除などの理由で確定申告を行う場合には、副業の所得も併せて申告する必要があります。確定申告を行う際は、副業による収入と経費を正確に記録しておくことが重要です。経費として計上できるものには、業務に使用する物品の購入費、通信費、交通費などが含まれます。自宅で副業を行う場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上できることがありますが、その具体的な計上方法については注意が必要です。また、副業による年間所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要なことがあります。確定申告を行った場合、その情報は自動的に市区町村に共有され、住民税の申告は不要となることが多いですが、自己申告を求められる場合もあるため、事前に確認が必要です。さらに、副業の種類によっては消費税の申告が必要になることがあり、特にインボイス制度に対応して適格請求書発行事業者の登録を行った場合には消費税の納税義務が発生します。
育児休業中の副業における留意点
育休中に副業を行う際は、以下に留意しましょう。
勤務先の就業規則を確認する:副業が許可されているかどうか、事前に確認しておきましょう。
育児休業給付金の受給条件に注意する:労働時間や収入が一定の基準を超えないように注意が必要です。
ご自身の体調を最優先に考える:過度な労働は避け、体調や育児に支障が出ない範囲で副業を行いましょう。
税金の申告を適切に行う:所得が一定額を超えた場合は、忘れずに確定申告を行いましょう。
育休は、あくまで育児に専念するための期間であることを念頭に置き、無理のない範囲で副業に取り組むようにしましょう。
まとめ
育児休業中の副業は、家計の足しになり、能力向上にも役立つ有益な手段です。しかし、育児休業給付金の受給資格や税務処理、会社への影響など、注意すべき点もいくつか存在します。本記事で紹介した情報を参考に、ご自身の状況やライフスタイルに合わせて無理のない範囲で副業を検討し、有意義な育児休業期間をお過ごしください。
よくある質問
質問1:育休中に副業をしたら、育児休業給付金は支給停止になりますか?
必ずしもそうではありません。育休中に副業を行っても、一定の条件を満たせば育児休業給付金を受け取ることができます。具体的には、1ヶ月あたりの就労時間が10日(または80時間)以内であること、そして、育休期間中に得た収入が育休開始前の給与の80%を下回ること(減額されないためには13%以下)が条件となります。
質問2:育休中の副業を会社に知られないようにするにはどうしたら良いですか?
住民税の納付方法を「特別徴収」ではなく「普通徴収」にする(自治体によって変更できないこともあります)ことで、会社に副業が発覚する可能性を低くすることができます。さらに、職場の人々に副業の話をしたり、SNSなどで副業に関する情報を公開したりすることは避けることが賢明です。
質問3:育休中に副業で得た収入は、確定申告の対象になりますか?
はい。副業で得た所得(収入から経費を差し引いた額)が年間で20万円を超える場合は、確定申告を行う必要があります。所得が20万円以下であっても、医療費控除などの理由で確定申告を行う場合は、副業による所得も併せて申告しなければなりません。





