
育休明けの社会保険料:免除期間から時短勤務の影響まで徹底解説
育休からの復帰は、喜びと同時に社会保険料に関する疑問も生まれる転換期です。育休中は社会保険料が免除されますが、所定の手続きが必要です育休明けに時短勤務を選択すると、給与が減少するため、手取り額への影響が気になる方もいるでしょう。この記事では、育休期間中の社会保険料免除の条件、免除期間、そして時短勤務が社会保険料や将来の年金額に与える影響について、詳しく解説していきます。
育休・時短勤務と社会保険料の基礎知識
育児休業や時短勤務は、子育てをしながら働く上で重要な制度です。これらの制度を利用する際は、社会保険料への影響を理解しておくことが大切です。
育休中は、一定の条件を満たせば社会保険料が免除されます。一方、時短勤務の場合は給与が減額されます。そのため、社会保険料も変動します。
制度を利用する前に、ご自身の状況に合わせた確認が必要です。社会保険料がどのように変わるのかを事前に把握しましょう。そうすることで、安心して制度を活用できます。
社会保険とは何か?
社会保険は、国民の生活を支えるための公的な保険制度の総称であり、具体的には「健康保険」「介護保険(40歳以上が対象)」「年金保険(厚生年金・国民年金)」「雇用保険」「労災保険」などが含まれます。これらの保険は、病気やケガ、老後の生活、失業といった様々なリスクに備えるもので、法律によって加入が義務付けられています。
社会保険料はどのように決まるのか?
社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は、個々の給与(報酬)に基づいて計算されます。具体的には、給与の額を一定の範囲で区切った「標準報酬月額」という金額を算出し、それに各保険の保険料率を掛けて保険料を決定します。原則として、毎年4月から6月に支払われた給与の平均額を基に、その年の9月から翌年8月までの保険料が決定される仕組みです。
出典:2024/11/29 .人事労務の基礎知識
.https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/what-standard-monthly-income-is/
育休期間中の社会保険料免除について
育休期間中は、申請を行うことで健康保険と厚生年金の保険料が免除されます。これは、育児・介護休業法に基づく制度であり、会社員(被保険者)だけでなく、会社側の負担分も免除される点が大きな特徴です。保険料が免除される期間は、「育児休業等を開始した日の属する月」から「育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月」までです。令和4年10月以降は、開始月と(終了日の翌日が属する月)が同じなどのケースでも、開始月内で14日以上育休等を取得した場合はその月の保険料が免除となる取扱いが加わりました。
社会保険料が免除されることで、育休中の経済的な負担は大きく軽減されます保険料が免除された期間も、将来の年金額を計算する際には、保険料をきちんと納付した期間として扱われます。つまり、将来の年金額が減少する事態を避けられます。また、健康保険についても、通常と変わらず給付を受けることができます。
なお、産前産後休業または育児休業期間中に賞与が支給された場合、健康保険料と厚生年金保険料が全額免除されます(会社・従業員負担分とも)。 具体的には、賞与支給月の末日が休業期間に含まれることが要件です。
社会保険料免除の手続き
育児休業中の社会保険料免除を受けるには、会社が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出する必要があります。この手続きは、産休に入る前に行われるのが一般的ですが、産休中や育休中でも可能です。従業員が行うことは、会社に育休を申請することのみで、その他の手続きは会社が行います。
育休後の社会保険料:いつから引かれるか?
育休中は社会保険料が免除されますが、育休が終わると、社会保険料の支払いが再び始まります。社会保険料は、育休終了日の翌月分から発生するため、育休復帰後の最初の給与から社会保険料が差し引かれることになります。社会保険料は月単位で計算され、日割り計算はありません。
ただし、免除されるのは「終了日の翌日が属する月の前月分まで」のため、原則として(終了日の翌日が属する月)分から保険料が発生します。そのため、給与天引きのタイミングは会社の給与計算ルールにより異なる点を押さえておきましょう。
時短勤務の場合の社会保険料
育休後、時短勤務を選ぶ人は少なくありません。時短勤務で給与が減っても、すぐに社会保険料が下がるわけではありません。社会保険料は、通常、4月から6月の給与をもとに計算された標準報酬月額で決まり、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。そのため、育休後に時短勤務を始めた場合、最初の数ヶ月は、フルタイム勤務時の給与をもとに計算された高い社会保険料が引かれることがあります。
育児休業終了時改定:社会保険料を減らす制度
育休後の社会保険料の負担を軽くするための制度があります。それが「育児休業等終了時改定」です。
この制度では、育休から復帰後の3ヶ月間の給与平均をもとに標準報酬月額を再計算します。そして、4ヶ月目から社会保険料が変更されます。
この制度を利用すると、時短勤務による給与の減少に合わせて社会保険料も減額されます。その結果、手取りを増やせる可能性があります。
なお、育児休業等終了時改定は、子が3歳未満であることなどの要件があります。育休終了翌日に連続して産休に入る場合は、適用されない点に注意が必要です。
出典:2025/3/25 .日本年金機構 .育児休業等終了時報酬月額変更届の提出
.https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html
育児休業終了時報酬月額変更届を提出することで、時短勤務開始から3ヶ月間の標準報酬月額を基準とした社会保険料に変更できます。ただし、新しい保険料が適用されるのは時短勤務開始から4ヶ月目となるため、それまでは以前の保険料を支払う必要があります。
【申請条件】
【申請方法】会社を通して育児休業終了時報酬月額変更届(※)を日本年金機構へ提出※書式は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
【提出方法】オンライン申請、郵送、窓口への持ち込み
【提出時期】復職後、できるだけ早く提出
育休明けに社会保険料が安くなっても、将来の年金は減らない!
育児休業後の社会保険料軽減による年金受給額への影響が気になる方もいるかもしれませんが、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」を活用すれば、その心配は無用です。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」とは、3歳未満の子を養育する厚生年金被保険者が、育児短時間勤務などで標準報酬月額が低下した場合に活用できる制度です。この制度を利用するには、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出します。
対象期間は、お子さんが3歳になるまでです。この間、社会保険料の負担が軽減されても、将来受け取る年金額は変わりません。
この制度が適用されると、育児休業や時短勤務を選択した場合でも、年金額の計算では「養育前の標準報酬月額」が用いられます。その結果、短時間勤務による年金額の目減りを抑えられます。。
出典:2025/1/24 .日本年金機構 .6-7:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を受けようとするとき
. https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20141203.html
ただし、育休開始直前に社会保険の被保険者でなかった場合は、過去1年間で最後に社会保険に加入していた月の報酬月額が適用されます。た直近1年間に被保険者期間がない場合は、みなし措置の対象外となる点に注意しましょう。
【申請条件】
【申請方法】事業主を経由して、厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書を日本年金機構へ提出します。書式は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
【提出方法】電子申請、郵送、または窓口への持参が可能です。
【提出時期】被保険者から申し出があった際に、速やかに手続きを行います。
各種申請手続きと注意点
育児休業後の社会保険料負担を軽減するには、適切な手続きが必要です。必要書類は、勤務先の総務担当に問い合わせることで入手できます。年金事務所でも入手可能です。日本年金機構のウェブサイトからダウンロードもできます。必要事項を記入後、会社を通して提出しましょう。
育休復帰後に時短勤務などで給与が下がった場合、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出できます。この制度により、標準報酬月額を早期に引き下げることが可能です。標準報酬月額が下がれば、社会保険料の負担は軽減されます。
ただし、育休復帰後すぐに次の出産を予定している場合は注意が必要です。出産手当金の額は、標準報酬月額に基づいて計算されます。復帰から次の産休までの期間が短い場合、保険料の減額分より出産手当金の減額分が大きくなる可能性があり得るのです。
将来的に再び妊娠・出産する可能性がある方は、慎重な判断が必要です。保険料負担の軽減額と、出産手当金の減額を比較しましょう。その上で、この制度を利用するかどうか検討することをおすすめします。
申請手続きにおける注意点
各種手続きは、会社が代行してくれる場合もありますが、従業員自身が申請手続きを行う必要がある場合もあります。また、制度の内容を十分に理解していないと、本来受けられるはずの経済的な利益を受けられず、損をしてしまう可能性もあります。そのため、制度の内容をしっかりと把握し、必要な手続きを忘れずに行うように心がけましょう。
介護による時短勤務の場合
介護を理由とした時短勤務や、育児休業を挟まない育児のための時短勤務であっても、社会保険料の随時改定の条件を満たせば、「随時改定」により、標準報酬月額の見直しが適用されます。
社会保険料の随時改定とは、給与の昇給や降給など、被保険者の固定的な賃金に大きな変動があった場合に、通常の改定時期を待たずに標準報酬月額を変更する制度です。直近3ヶ月間の平均給与額が、それ以前の給与額と比較したとき、原則として2等級以上の変動があった際に適用されます。
ただし、この制度を利用するには、該当する3ヶ月全てにおいて17日以上の出勤日数が必要です。また、実際に社会保険料が減額されるのは、時短勤務開始から4ヶ月後となります。
【申請条件】上記参照
【申請方法】事業主を通じて、被保険者報酬月額変更届(※)を日本年金機構へ提出します。※書式は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
【提出方法】電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口への持参が可能です。
【提出時期】変更事由が発生した後、速やかに提出してください。
育休明けを見据えた準備
育休明けには、経済的な側面だけでなく、育児と仕事の両立という大きな課題が待っています。特に、保育園への送迎や子どもの急な体調不良など、予期せぬ事態に備えて、育児をサポートしてくれる体制を確立しておくことが非常に重要です。
育児サポート体制の構築
育児をサポートしてくれるのは、必ずしも祖父母などの親族だけではありません。育児サポートの選択肢として、保護者同士の助け合いやファミリーサポートセンターの利用も検討できます。ただし、それぞれに制約や課題があるため、複数の選択肢を組み合わせて準備しておくことが大切です。。
ベビーシッターサービスの活用
急な用事などでどうしても対応できない場合には、ベビーシッターサービスを利用することも有効な手段です。ベビーシッターのマッチングプラットフォームを利用すれば、スマートフォンから手軽にベビーシッターを探すことができます。夜間の対応や病児・病後児保育に対応してくれるシッターもいるため、万が一の事態に備えて、事前に登録しておくと安心です。
なお、多くの自治体でベビーシッター利用補助を用意しています。「利用料の〇割」「一律〇円」などの補助を行っているため、確認してみてください。
まとめ
育休中は申請により社会保険料が免除されます。保険料を払わない期間も、将来の年金額には影響しません。育休終了後、社会保険料の支払いが再開されます。
時短勤務を選択した場合、給与は減少します。しかし、すぐに社会保険料は下がりません。通常は翌年9月まで以前の保険料が適用されます。
この負担を軽減する制度が「育児休業等終了時改定」です。復帰後3ヶ月の給与平均で標準報酬月額を再計算します。4ヶ月目から保険料が減額されます。
さらに「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」を併用できます。この制度により、時短勤務で保険料が減っても、将来の年金額は育休前の水準で計算されます。
これらの制度を活用するには、会社を通じた適切な手続きが必要です。制度内容を理解し、忘れずに申請しましょう。
よくある質問
質問1:育休中に会社を辞めた場合、育児休業給付金はどうなりますか?
育児休業給付金は育休後の職場復帰が前提のため、育休の当初から退職予定だった場合は原則として支給対象になりません。一方、育休開始時点では復職予定だったものの、やむを得ず退職(離職)する場合は、2025年4月1日以降の退職であれば退職日まで支給対象となります(支給単位期間の途中で退職する場合も同様)。退職日・支給単位期間の区切りを含め、最終判断は事業主経由でハローワークに確認してください。
質問2:育休が終わってすぐに退職しても大丈夫ですか?
法律上は問題ありませんが、育児休業給付金の扱いに注意が必要です。
育児休業給付金は職場復帰を前提とした制度のため、当初から退職予定だった場合は不正受給とみなされ、返還請求(場合によっては3倍)の対象になります。
一方、当初は復職予定だったものの、やむを得ない事情で退職することになった場合は、すでに受給した給付金の返還は不要です(退職後の支給は停止されます)。
また、保育園に入園している場合、退職後一定期間内に就職しないと退園を求められる可能性があるため、こちらも確認が必要です。
質問3:育休明けの社会保険料を安くするには、どんな手続きをすれば良いですか?
育休から復帰した後の社会保険料を減額するためには、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構に提出することが必要です。この手続きを行うことによって、育休復帰後の給料に応じた社会保険料が計算されるようになります。





