
育休取得で変わる父親の働き方と家族の未来
育児休業は、育児・介護休業法で定められた制度で、企業に雇用される男女が取得できます。この記事では、育休取得が父親のキャリア、夫婦関係、そして子どもの成長に与える影響について掘り下げていきます。
育児休業(育休)制度とは?
育児休業、通称「育休」は、育児・介護休業法という法律で定められた、子育てをサポートするための休業制度です。会社に雇用されている従業員であれば、性別に関わらず、所定の条件を満たせば育休を取得する権利が保障されています。原則として、お子さんが1歳になるまでの期間、育児に専念するために休むことができます。育休期間中は、雇用保険加入期間をはじめとした条件を満たせば、育児休業給付金を受け取ることが可能です。
育児休業と育児休暇の違い
育児休業は、国の法律に基づいた公的な制度です。労働者の権利として、会社の規定に関わらず取得できます。一方、育児休暇は、会社が独自に定めている休暇制度であり、育児を目的として利用できますが、会社に規定がなければ利用できません。子どもが誕生したあとは、まず公的制度である育児休業を利用し、上乗せとして企業が用意している育児休暇制度を利用できる場合があります。
男性の育休取得の現状
厚生労働省のイクメンプロジェクトが実施した「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によると、男性の育休取得期間は平均で46.5日となっています。この調査は610社を対象としたアンケート結果に基づいているため、あくまで参考値ですが、平均的な期間は1ヶ月強と考えて良いでしょう。また、厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」」によると、育休を取得した男性のうち、育休期間が「5日未満」だった人の割合は15.7%、「5日~2週間未満」の人は22.0%となっています。つまり、約4割の方が2週間未満の育休を取得している状況です。「令和6年度育児休業取得率の調査結果」によると、令和6年度における男性の育休取得率は40.5%であり、令和4年度の17.13%、令和5年度の30.1%と比較すると、近年で着実に増加傾向にあることがわかります。
出典:令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について
.https://www.jinji.go.jp/content/900024275.pdf
出典:厚生労働省「令和6年度育児休業取得率の調査結果」
https://tomoiku.mhlw.go.jp/assets/pdf/activity/document_R6.pdf
男性の育休取得率は今後どうなる?政府目標と企業の取り組み
政府は、2025年までに育休取得率50%の達成を目標としています。令和5年度に取得率が大きく伸びたことから、今後も取得率は上昇していくと予想されます。2023年3月には、岸田首相が男性の育休取得率に関する政府目標を大幅に引き上げ、2025年度に50%、2030年度には85%とすることを明らかにしました。
2025年4月1日からは、育児・介護休業法の改正により、従業員300人超の企業に、男性労働者の育児休業取得率等を年1回公表することが義務化されています。
一方、従業員100人超の企業については、2025年4月1日以降に一般事業主行動計画を策定または変更する場合、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づき、育児休業等の取得状況や労働時間の状況把握と数値目標の設定が義務付けられました。
出典:厚生労働省 .令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について
.https://ikumen-project.mhlw.go.jp/assets/pdf/event/report_R5_2.pdf
男性の育児休業期間:原則1年、最長で2歳まで延長可能
男性が育児休業を取得できる期間は、基本的に子供が1歳になるまでの1年間です。保育園に入れないなどの事情がある場合は、男女問わず、最長で子供が2歳になるまで育休を延長することが認められています。。一方、産後パパ育休(出生時育児休業)は、出生後8週間以内に最大28日(2回分割可)取得でき、通常の育休とは別枠で活用できます。
2022年法改正による育休期間の柔軟性向上
2022年4月に行われた育児・介護休業法の改正により、育休取得のタイミングがより柔軟になりました。改正前は育休期間を分割することが原則として認められていませんでしたが、改正後は男女ともに、子供が1歳になるまでの育休期間を2回に分けて取得することが可能になったのです。さらに、2022年10月からは産後パパ育休(出生時育児休業)という新しい制度も導入されました。これにより、男性の育児休業が取得しやすくなり、制度の積極的な活用が期待されています。
出典:厚生労働省 .育児・介護休業法について
.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
産後パパ育休(出生時育児休業)とは
産後パパ育休(出生時育児休業)は、女性の産後休業期間(出生後8週間以内)に、男性が最長4週間まで、2回に分割して休業できる制度です。通常の育休とは別に取得できるため、育休を2分割した場合と合わせて、最大で4回に分けて育休を取得することが可能です。産後パパ育休期間中は、育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象となり、休業開始時賃金の67%が支給されます。さらに、2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が新設され、両親がそれぞれ14日以上の育休を取得した場合、最大28日間、給付率が13%上乗せされ、合計80%(手取りで実質10割相当)の給付を受けることができます。また、一定の条件を満たせば就業することもできます。産後パパ育休は、原則として休業開始の2週間前までに申請すれば取得できるという点も大きな特徴です(ただし、労使協定を締結している場合は最大1ヶ月前までとされることがあります)。通常の育休では、休業開始の1ヶ月前までに申し出が必要ですが、産後パパ育休を利用すれば、出産予定日がずれた場合でも、育休の開始日を柔軟に設定できます。ただし、2回に分割して取得する場合は、最初の申請時にまとめて申し込む必要がある点に注意が必要です。
パパ・ママ育休プラスとは?1歳2ヶ月まで延長可能な制度
パパ・ママ育休プラスは、夫婦両方が育休を取得することを条件に、子供が1歳になるまでの育休期間を、最長で1歳2ヶ月まで延長できる制度です。ただし、1人あたりの育休取得期間は変わらず最長1年間であるため、女性と男性の育休開始日をずらす必要があります。パパ・ママ育休プラスの取得条件は以下の通りです。①配偶者が、子供が1歳になるまでに育児休業を取得していること②自身の育児休業開始予定日が、子供の1歳の誕生日以前であること③自身の育児休業開始予定日が、配偶者が取得している育児休業の開始日以降であること
育児休業給付金とは?受給資格と給付額
育児休業期間中に給与が支払われないなど、一定の条件を満たす場合に支給されるのが「育児休業給付金」です。育児休業給付金は、休業開始時賃金の67%(6か月経過後は50%)が基本です。加えて2025年4月からは、一定要件を満たす場合に出生後休業支援給付金が上乗せされ、育児休業給付と合わせて給付率80%(手取り10割相当)の説明が可能になりました。さらに、時短勤務による賃金低下を補う育児時短就業給付金も創設されています。
社会保険料の免除期間
社会保険料の免除期間は、育児休業の開始日が属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までとなります。その月の末日が育児休業期間中である場合、毎月の給与や賞与にかかる社会保険料(本人負担分と会社負担分)が免除対象となります。なお、賞与にかかる社会保険料については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に免除の対象となります。
出生時育児休業給付金について
産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した従業員は、出生時育児休業給付金を受け取ることができます。この給付金を受け取るには、いくつかの条件を満たす必要があります。
①休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業した時間数が80時間以上)ある完全月が12か月以上あること
②休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること
③休業期間中に、休業開始前の1か月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
有期契約労働者の場合は、上記の条件に加えて、子どもの出生日から起算して8週間後の翌日から6か月以内に労働契約が満了しないことが条件となります。出生時育児休業給付金の申請は、子どもの出生日から8週間経過した日の翌日から可能となり、申請書はその日から2か月後の月末までに提出する必要があります。支給額は、「休業開始時賃金日額✕休業期間の日数×67%」で計算されます。なお、休業期間の上限は産後パパ育休の上限である28日間です。
育休開始時期は変更できる?出産予定日のズレへの対応
育休の開始日は、会社に申請することで変更できるため、開始日を早めたり遅らせたりすることが可能です。出産予定日よりも早く出産した場合、会社に申請することで育休の開始日を繰り上げることができます。一方、出産予定日よりも遅れて出産した場合、会社との相談によって育休の開始日を繰り下げることも可能ですが、繰り下げを行わない場合は、当初の出産予定日が育休開始日となります。ただし、育児休業給付金の対象となるのは出産日以降となるため、出産予定日から育休を開始していても、実際の出産日までは給付対象とならない点に注意が必要です。
就業規則の見直しと従業員への周知
産後パパ育休を導入する際には、就業規則の変更が不可欠です。改定を行う際は、必ず記載すべき事項を漏れなく記載してください。必須記載事項の不足は罰則の対象となるため、注意が必要です。また、産後パパ育休の制度内容を従業員に丁寧に説明し、取得希望の有無を確認することが重要です。事前に従業員の意向を把握することで、企業は人員配置の調整や代替要員の確保などを円滑に進めることができます。
2025年法改正:育児休業取得率の目標設定と公表義務化について
2025年4月1日から、企業に求められる対応は2つの法令に分かれます。
① 育児・介護休業法:従業員300人超の企業は、男性労働者の育児休業取得率等を年1回公表することが義務化されます。
② 次世代育成支援対策推進法(次世代法):従業員100人超の企業は、2025年4月1日以降に一般事業主行動計画を策定または変更する場合、育児休業等の取得状況や労働時間の状況把握と、数値目標の設定が義務付けられます。
つまり、政府としては情報開示をきっかけに、国全体で育児休業の取得を促進しようとしているのです。
出典:2024/12 .厚生労働省 .育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
.https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
育休取得のメリットと夫婦間の役割分担
男性が育休を取得することにより、夫婦が協力して育児に取り組むことが容易になり、一方に負担が偏るワンオペ育児を防ぐことができます。育児や家事の負担を夫婦で分担することは、少子化、労働力不足、ジェンダー平等の実現といった社会的な課題の解決に貢献することが期待されています。
育休中は、パートナーが産後の体調回復に専念できるよう、家事の主担当を明確にしましょう。育児は分担ではなく「一緒にやる」姿勢を持つことで、スキルの差を減らせます。定期的に夫婦で振り返りの時間を設け、役割分担が機能しているか確認すること、お互いの睡眠時間を確保できるよう、夜間の対応も計画的に交代することも重要なポイントです。
周囲とのコミュニケーションも大切です。職場には育休取得の意向を早めに伝え、業務の引き継ぎを計画的に行いましょう。両親や親族にも育休取得の目的を説明し、理解と協力を得ておくことで、スムーズな育休生活が送れます。同じように育休を取得した男性のコミュニティに参加し、経験談やアドバイスを共有することも有益です。
育休取得が日本経済の活性化と国際的な家族観の多様化に貢献する
父親の育児参加は、個人の生活を豊かにするだけでなく、社会全体にも良い影響をもたらします。育休を機に夫婦で協力して子育てを行うことで、家庭内のコミュニケーションが深まり、より良い関係性を築けます。さらに、父親の育児参加は、女性の社会進出を後押しし、男女平等の実現に貢献します。育休取得が当たり前になれば、働きがいのある環境が整備され、働くモチベーション向上にも繋がるでしょう。男性育休は、育児と仕事の両立を可能にし、持続可能な社会を構築するための重要な取り組みなのです。
まとめ
この記事では、男性の育児休業に関する疑問を解消し、制度の活用を後押しすることを目指しました。育休は、子育てというかけがえのない時間を家族と共に過ごし、父親としての喜びを深く味わう絶好の機会です。制度を理解し、一歩踏み出すことで、仕事と育児の調和を実現し、人生をより豊かに彩ることができるでしょう。育休制度を活用して、仕事と育児の両立を実現し、より豊かな人生を送りましょう。
よくある質問
質問1:産後パパ育休は、いつまでに申請が必要ですか?
原則として、育児休業を開始する日の2週間前までに会社に申請する必要があります。ただし、労働組合と会社の間で協定がある場合は、通常の育児休業と同様に1ヶ月前までの申請とすることが可能です。
質問2:育児休業給付金は、いつ頃もらえますか?
育児休業給付金は、基本的に2ヶ月ごとに、指定した銀行口座に振り込まれます。最初の支給は、申請から支給決定までにある程度の時間がかかる場合があります。詳しくは、新政策のハローワークに相談するとよいでしょう。
質問3:育児休業中に転職活動を行うのは問題ない?
法律上、育児休業期間中に転職活動を行うことは禁止されていません。しかしながら、育児に集中するという育児休業の本来の目的から逸脱する可能性があるため、よく考えることが大切です。さらに、育児休業給付金を受け取るための条件を満たさなくなり、給付が停止するケースもあり得ます。





