
育休1年未満で得られるメリットと知っておくべきこと
育休は、子育てをしながらキャリアも諦めたくないと願う方にとって、非常に重要な制度です。しかし、「1年未満の育休でも意味があるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。短い期間だからこそ得られるメリットや、知っておくべき注意点があります。この記事では、1年未満の育休取得を検討している方が、より充実した育休期間を過ごせるよう、具体的な情報をお届けします。
育休の基本:産休との違いと社会保険料免除
育児休業(育休)は、働く人が仕事と育児を両立できるよう設けられた制度です。育休について詳しく見ていく前に、まずは産休との違いを明確にしておきましょう。産休は、女性労働者が労働基準法に基づいて取得できるもので、出産前6週間と出産後8週間の休業期間を指し、これは勤続年数に関わらず誰でも取得できます。一方、育休は原則として1歳に満たない子を育てる労働者が申請することで取得できる休業で、最長で2歳になるまで延長することが可能です(育児・介護休業法)。育休は男性も取得可能であり、夫婦が共に育休を取得する場合には、所定の要件を満たせば育休期間は子どもが1歳2ヶ月になるまで延長されます。女性の場合、産休が終わった日の翌日から育休を取得する人が多いでしょう。
産休および育休期間中は、会社が手続きを行うことで、健康保険料(40歳以上の方は介護保険料も含む)と厚生年金保険料の支払いが免除されます。社会保険料が免除されても、医療機関を受診する際には健康保険を使用でき、将来受け取る年金の金額にも影響はありません。免除期間も保険料を納付した期間として計算されます。
出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf
出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20140122-01.html
入社1年未満でも育休は取れる?原則と例外
基本的には、入社して1年経っていなくても育休を取得することは可能です。ただし、雇用契約の内容や会社の就業規則によっては、育休を取得できない例外的なケースも存在します。労使協定を締結することによって一部の労働者を育休の対象から除外することが認められているからです。除外できるのは次の人に限定されます。
入社1年未満の労働者
育休申出日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
勤務先が労使協定を締結して、入社1年未満の従業員を育休の対象としないと決めていれば、育休は取得できません。
労使協定とは、会社と従業員が労働条件に関して合意した内容を記した書面による合意です。労使協定を締結していない場合、会社には育休を拒否する権利がありません。
会社側が育休の取得を認めるのであれば、入社1年未満の従業員であっても育休を取得することができます。入社時には、育休取得の対象者について定めた就業規則の内容や労使協定の有無を確認しておくことが大切です。
出典:厚生労働省「育児休業制度特設サイト」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/childcare/
育休取得の判断基準:入社1年以上か未満かはどこで判断する?
入社から1年以上経過しているかどうかは、入社日と育休開始予定日を基準に判断します。会社の就業規則や労使協定において、育休を取得するには入社から1年以上の勤務が必要であると定められている場合でも、入社1年未満で子どもが生まれたとしても、育休開始予定日に入社から1年以上が経過していれば、申請できます。育休の申請は原則として育児休業を開始したい日の1ヶ月前まで(産後パパ育休は休業開始予定日の2週間前まで)に行う必要があるため、注意が必要です。
出典:厚生労働省「「産後パパ育休|育児休業制度」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/paternity/
入社1年未満で育休が取れない場合はどうすればよい?
入社1年未満であることを理由に育休を取れない場合は、育休を取得時期を調整するか、会社と話し合うことが重要です。条件を満たしていれば、育休を取得することは従業員の正当な権利であるため、以下では育休を取得できない場合の対処方法について解説します。
入社1年以上経過後に申し出を行う
会社によっては就業規則や労働協約で入社後1年を経過していない従業員の育児休業取得を認めていない場合があります。もしそのような規定がある場合、入社から1年が経過するまでは育休を取得することはできません。しかし、1年以上勤務した後であれば、育休を取得できる可能性があります。育休取得を検討する際は、就業規則で育休の取得要件をきちんと確認し、適切なタイミングで申し出ることが大切です。
産休から育休までの期間について
入社後1年未満で出産した場合、産前産後休業の終了後から育休取得が可能となる日まで期間が空いてしまうことがあります。育休を取得できない期間に休んでしまうと、この期間は欠勤扱いとなり給与は支払われません。有給休暇が残っていれば、有給休暇を取得することで、収入の減少を抑えることが可能です。
入社1年未満で育休を取得したい場合の伝え方:例文
入社1年未満で育児休業の取得を希望する際には、まず会社の就業規則や労働協約の内容を確認した上で、上司や人事担当者に相談する必要があります。育休を申請する際には、育休を希望する理由、期間、そして業務への影響とそれに対する対応策などを明確に整理し、口頭で申し出るのが基本です。しかし、直接会えないときは書面またはメールを利用することもあります。書面またはメールを利用するときの例文を記載します。
「お世話になります。〇〇(ご自身の名前)です。〇月〇日に出産を予定しており、育児休業の取得についてご相談させて頂きたくご連絡いたしました。就業規則を確認したところ、入社1年未満の社員は育休取得の対象外とされておりました。しかしながら、出産直後は子育てに専念いたしたく、育児休業の取得をご検討頂けないでしょうか。大変恐縮ですが、ご確認の上、ご指示頂けますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。」
万が一、会社の規定により入社1年未満での育休取得が難しい場合でも、特例として認められる可能性がないかを確認してみる価値はあります。
入社1年未満の従業員から育休の相談を受けた場合
従業員から育児休業について相談を受けた際には、会社(上司や人事担当者など)は不当な扱いをすることなく、関係法令に基づいて適切に対応しなければなりません。入社1年未満の従業員は、育休を取得できないケースがあります。もし取得できない場合は、会社として「育休を取得できない」旨を明確に伝え、育休制度の内容や取得条件について詳しく説明することが重要です。また、将来的な育休取得の希望や、会社として提供できるサポートについて、従業員の意向を確認しましょう。育児休業給付金の受給資格については、特に複数の会社で勤務している場合に判断が難しいケースが多いため、ハローワークに確認することが推奨されます。
入社1年未満の育休は無給?育児休業給付金の活用
育児休業中は、原則として給与は支払われません。育休は法律で認められた労働者の権利ですが、休業期間中に給料が支給されるケースは多くありません。なぜなら、給与は労働に対する対価として支払われるものなので、休業中は支給されないのが原則となるためです。
しかし、給与が支払われないからといって、収入が途絶えるわけではありません。本人が雇用保険に加入していれば、「育児休業給付金」を活用することで、育児休業開始から180日目までは育児休業開始前の賃金のおよそ67%(育児休業開始から181日目以降は50%)に相当する額を受け取ることができます。ただし、勤務先が入社1年未満の従業員の育休取得を認めていない場合、育児休業給付金は支給されません。
育休取得が認められた場合、育児休業給付金を受け取るには、労働者自身が以下の条件を満たしている必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 育児休業開始日より前の2年間に、賃金支払いの基礎となる日数が11日以上ある(ない場合は賃金支払い基礎時間数が80時間以上ある)月が12ヶ月以上あること(入社1年未満の人は前職を通算して判定します)
- 育児休業期間中の1ヶ月あたりの賃金が、休業開始前の賃金の8割を超えないこと
- 育児休業期間中の就業日数が、1ヶ月あたり10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)であること
勤務先で育休取得が認められ上記条件を満たしていれば、入社1年未満の方でも育児休業給付金を受け取ることが可能です。
入社1年未満の産休・育休でもらえるお金・もらえないお金
入社して1年経っていない場合でも、産休・育休期間中に受け取れるお金について確認しておくことは非常に重要です。育休中に経済的な不安を抱えないように、入社1年未満でも支給される可能性のあるお金について、以下で詳しく解説します。
出産育児一時金
出産育児一時金は、お子様を出産した際に、加入している公的医療保険制度から支給される一時金です。出産は病気やケガとは異なり、健康保険の適用範囲外となります。しかし、出産にかかる経済的な負担を軽減するために、この一時金が支給されます。出産育児一時金の対象となるのは、妊娠4ヶ月(85日)以上での出産で、早産、死産、人工妊娠中絶の場合も含まれます。出産育児一時金の支給額は、令和5年4月から42万円から50万円に引き上げられました。ただし、妊娠週数が22週未満の場合や、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は、48.8万円となる点に注意が必要です。
出典:厚生労働省「出産育児一時金等について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html
出産手当金
出産手当金は、出産のために会社を休んだ場合に支給される手当です。出産手当金は、産休中の女性が安心して休業するための健康保険の給付金であり、産休に入る前の1年間の給与(標準報酬月額)を基に計算された手当金が支給されます。出産手当金の対象となるのは、会社の健康保険または公務員共済組合の被保険者本人です。原則として、出産日以前42日から出産の翌日以後56日目までの間で、会社を休んで給与が支払われない期間が支給対象となります。出産手当金の1日あたりの支給額は、被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額です。標準報酬日額は、産休前1年間の標準報酬月額の平均額を30で割った金額となります。会社を休んだ日に給与の支払いがあり、その給与が出産手当金よりも少ない場合は、出産手当金と給与の差額が支払われる仕組みです。
出典:全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3290/r148/
妊婦のための支援給付
従来の「出産・子育て応援ギフト」制度を再編し、2025年4月に「妊婦のための支援給付」制度が始まりました。妊娠・出産時に給付金を支給することで、妊婦を経済的にサポートします。給付金は次の通り2回に分けて支給されます。
妊婦給付認定申請後:5万円
子どもの人数の届出後(出産予定日の8週間前以降):子どもの人数×5万円
児童福祉法に定める伴走型の相談支援(妊婦等包括相談支援事業)と組み合わせて妊婦のサポートを行います。国の事業ですが、申請先は居住地の市区町村です。
出典:こども家庭庁「妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施」
https://www.cfa.go.jp/policies/shussan-kosodate
出生時育児休業給付金(産後パパ育休給付金)
出生時育児休業給付金(産後パパ育休給付金)は、産後パパ育休を取得したときに支給される給付金です。産後パパ育休は、子どもの出産後8週間以内に最大4週間(28日)まで、2回に分割して取得できます。産後パパ育休は男性の育児休業取得を促進するための制度であり、産後パパ育休取得者を経済的にサポートするために給付金を支給します。。出生時育児休業給付金の対象者は以下の通りです。
- 出生時育児休業を取得した雇用保険の被保険者(休業開始日前の加入要件あり)であること
- 子の出生日(出産予定日より早く生まれた場合は、出産予定日)から8週間後の翌日までの期間内に、4週間(28日)を上限として出生時育児休業を取得していること
- 休業期間中の1日あたり、支給対象期間中に就業している日数が10日以下であること(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)
出生時育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(最大28日)×67%」で計算されます。休業開始時賃金日額には上限があり、1万6,110円(令和8年7月31日までの額)となっているため、注意が必要です。
なお、2025年4月に「出生後休業支援給付金(育児休業給付金に休業開始時賃金日額の13%を上乗せ支給)」が新設されました。出生直後の一定期間に夫婦ともに(配偶者が就労していない場合などは本人のみ)14日以上の育児休業を取得した場合、出生後休業支援給付金が最大28日間支給されます。(出生時)育休手当を合わせて給付率は80%となり、社会保険料や税金の控除がないことを考えると休業前の手取り額とほぼ同じ給付を受けられることになります。
出典:厚生労働省「「出生後休業支援給付金」を創設しました」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001372778.pdf
入社1年未満の育休中に確認すべきこと
入社1年未満で育児休業を取得する場合、注意点があるため、事前に確認しておくことで問題を防ぐことができます。以下に、確認しておきたい事項をまとめました。
給与は原則として支給されない
育児休業期間中は、基本的に給与は支払われません。給与は労働に対する報酬であるため、休業中は原則として支給対象外となります。企業によっては育休中にも給与の一部または全額が支給されるケースもありますが、一般的には支給されないと認識しておきましょう。
社会保険料は免除される
育休期間中は、企業が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出することで、健康保険および厚生年金の保険料が免除されます。
給付金には税金がかからない
育児休業給付金は非課税扱いとなるため、所得税は課税されません。健康保険法に基づき支給される出産育児一時金や出産手当金も非課税です。
入社1年未満の育休における会社側の対応
入社後1年未満の従業員から育児休業の申し出があった場合、育児休業の対象者に関する労使協定を締結していない企業は、原則として育休の申請を拒否できません。そのため、従業員が安心して育休を取得できるよう、企業は必要な手続きを確実に行う必要があります。以下に、企業が行うべき手続きについて説明します。
育児休業の申請手続き
従業員から育児休業開始希望日の1ヶ月前(出生時育児休業の申請は2週間前)までに「育児休業申出書」が提出された際、記載内容に漏れや誤りがないかチェックし、提出後2週間後くらいを目途に「育児休業取扱通知書」を交付します。
社内規定に沿った対応
従業員から育児休業の申請があった場合、会社は就業規則と労使協定に基づいて対応しなければなりません。育児・介護休業法では、労使協定を結ぶことで、入社後1年未満の従業員を育児休業の対象外とすることが可能です。労使協定がない場合は、入社1年未満の従業員からの育休申請を拒否することは認められません。
年次有給休暇の確認
入社1年未満の従業員から育児休業の申し出があった際には、年次有給休暇の保有状況を確認することが重要です。これは、育休を取得できない場合でも、従業員が年次有給休暇を利用して休むことができるようにするためです。例えば、従業員が5日の年次有給休暇を保有している場合、産後休業後で育児休業給付金の対象とならない期間に年次有給休暇を利用することで、一定の収入を維持しながら休業することが可能です。
産休・育休期間中の出勤率の取り扱い
従業員が産休・育休を取得している期間であっても、労使協定を締結することにより、労使が合意した範囲内で就業することが認められています(産後8週間は禁止、産後6週間は例外なく禁止)。また、出勤率は年次有給休暇の付与要件であるため、注意が必要です。労働基準法に基づき、年次有給休暇は過去1年間の出勤率が8割以上の場合に付与されます。産休や育休の期間は「出勤したもの」とみなして計算します。
育休明けの復帰時に企業が配慮すべき点
社員の育児休業が終了し職場に復帰する際、企業側は社員が安心して業務に戻れるような環境を準備する必要があります。ここでは、社員の職場復帰にあたって企業が留意すべきポイントを説明します。
労働時間や勤務条件の再検討
社員が職場復帰する際は、労働時間や勤務条件を見直しましょう。見直しを進めることで、社員が育児と仕事を両立しやすい環境を提供でき、スムーズな職場復帰を促進できます。労働時間や勤務条件を見直すにあたっては、復帰前に社員と面談を行い、育児の状況や希望する働き方をヒアリングしてください。その上で、時短勤務制度の利用や勤務開始・終了時間の調整、リモートワークの導入など、柔軟な働き方を提案します。社員の意見を尊重しながら見直すことによって、社員の働きやすさが増し、企業側も有能な人材の確保につながります。
給与や待遇における不平等がないか
育児休業から復帰する社員に対して、給与や待遇にほかの社員との不均衡がないかを確認することも重要です。育休を取得したことを理由とした不利益な扱いは法律で禁じられている点を認識しておきましょう。育児・介護休業法では、育児休業の取得を理由とする解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いを禁止しています。
復帰後の手厚いフォローアップ
育児休業から復帰する社員に対して、十分なサポートを提供することは、企業の重要な責務です。企業が支援体制を構築することで、社員の意欲向上や離職率の低下につながります。企業は復職者に対し、フレキシブルな勤務制度の導入や業務プロセスの見直しを含め、手厚いサポートを提供することが求められます。
まとめ
入社後1年未満であっても、一定の条件を満たせば育児休業を取得できる可能性は十分にあります。育休は、仕事と育児の両立をサポートする非常に重要な制度であり、企業は従業員が安心して育休を取得できるような環境を整備することが重要です。この記事を参考に、育休に関する理解を深め、ご自身の状況に合わせて適切な対応をご検討ください。





