派遣の契約更新をしない場合の企業側の注意点は?法律上の注意点も公開
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
派遣社員を雇う中で、契約の在り方を見直したいと考えている企業もあるでしょう。
しかし契約を更新しない判断は、やり方を間違えると大きなトラブルに繋がる恐れもあります。この記事では、派遣の契約を更新しない場合の注意点について詳しく解説します。
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「派遣」の仕組みとは
まずは、派遣の仕組みについて簡単に紹介します。派遣元会社と派遣先会社、派遣社員の関係性について押さえてください。
派遣先企業が派遣社員を配置したい場合は、派遣元会社と契約を結びます。費用を支払うことで、人材を派遣してもらえる仕組みです。
派遣社員が直接雇用契約を結ぶ先も派遣元会社です。派遣の手配や給料の支払いについても、派遣元会社が全て担当します。
登録が完了した派遣社員は、派遣先会社の指示を受けながら労働を提供します。契約期間は原則3年以内であれば自由に設定できます。また、派遣元会社と、無期で契約を結ぶことも可能です。有期の場合、契約の更新の有無は、派遣元会社を通して行われます。
このように三者間契約によって、人材や働き先を提供している点が派遣の特徴です。
人材派遣についてより詳しく知りたい方は、「人材派遣業とは?仕組みや種類、必要な要件を解説!」も参考にしてください。
派遣の契約更新しないことはいつまでに伝える?
派遣先会社が契約の更新を希望しない場合は、派遣元会社に対して1カ月〜数カ月前にはその旨を伝えましょう。派遣元会社は下記の条件に当てはまる社員に対して、30日前には契約終了の通知をする必要があるためです。
- 3回以上契約を更新している
- 勤務期間が1年間を超えている(月単位の契約が更新されて1年継続した場合も含む)
上記の条件に該当しないケースでも、早めに伝えた方がトラブルも防ぎやすくなるでしょう。特段の事情がなければ契約期間にかかわらず、数カ月前には派遣元会社に契約更新しない旨を伝えるようにしてください。
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派遣契約の更新をしない際には契約更新の判断基準の明示を
はじめに、派遣元会社の採るべき行動について紹介します。仮に派遣社員の契約を更新しないと判断するときは、有期労働契約を結ぶ際に提示した判断基準に則る必要があります。
派遣社員が「契約が更新されない理由を教えてほしい」と請求があった場合、派遣元会社は証明書を発行しなければなりません。
なお、主な判断基準の例として挙げられるのが以下のとおりです。
- 派遣社員の能力を参考に判断する
- 勤務態度や成績を見て総合的に判断する
- 業務量および進捗状況から判断する
- 企業の経営状況も加味して判断する
契約を更新しなかった理由が、これらの内容に準拠していなければ労働基準監督署からの助言や指導の対象となります。決して、判断基準を無視しないように気を付けてください。
次に、派遣先会社はどのように行動すべきかを記載します。判断基準の作成や明示は、主に派遣元会社の業務です。これらの業務に限定すれば、特に派遣先会社が自ら対応することはありません。
一方で、派遣元会社から派遣社員に対する情報提供を求められることがあります。仮に何か質問をされたら、しっかりと対応するようにしてください。
参考:有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について
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契約期間の観点から見る、派遣の契約更新を切る際の注意点
派遣の契約更新を切る方法として、期間の観点で見ると主に以下の2種類があります。
- 雇止め
- 中途解除
雇止めは、契約期間が満了したタイミングで雇用関係を終了することです。一方で、契約期間の途中で解約するのを中途解除と呼びます。
それぞれの方法によって、派遣先会社と派遣元会社の対応は変わります。ルールが細かく定められており、違反すると派遣社員とのトラブルにも繋がりかねません。ここでは雇止めと中途解除に分け、派遣先会社および派遣元会社における注意点をまとめます。
契約期間が満了している場合
契約期間が満了している場合は、適切な手続きを行えば雇止めが認められます。ただし、手続きを踏む際にはしっかりとルールを守らなければなりません。雇止めに関する注意点を、派遣先会社と派遣元会社に分けて見ていきましょう。
派遣先会社の対応
契約期間が満了している場合は、基本的に派遣先会社は更新するか否かを自由に決められます。仮に契約を更新しなくとも、雇用安定措置の義務を負うのは派遣元会社の方です。
ただし、条件を満たすと派遣元会社側は30日前に雇止めの告知を行うため、派遣先会社は前もって契約を更新しない旨を伝えてください(基本的には派遣元会社から更新の有無について連絡が来る)。
また派遣元会社に対して、派遣社員の評価を報告するケースもあります。評価について求められたら、しっかりと情報提供をしましょう。さらに業務に取り組んでくれた派遣社員へ感謝の言葉を述べ、快く送り出してあげることが大切です。
派遣元会社の対応
派遣元会社は「派遣の契約更新しないことはいつまでに伝える?」の見出しで紹介したように、30日前に雇止めの予告が必要です。
一方で「次回も継続になる」と派遣社員が期待することに合理的な理由があれば、雇止めが制限されます(詳しくは後述の見出し「雇止め法理」で解説)。過去にも当該ルールでトラブルに発展したケースもあるため、派遣元会社は注意しましょう。
さらに、派遣社員側が雇止めの理由を求めるケースもあります。この場合は、派遣元会社が雇止めの理由を証明書として発行しなければなりません。こちらの内容については「雇止め理由の証明書の発行準備をしておく」の見出しで詳述します。
契約期間中の場合
やむを得ない事情があった場合は、契約期間中に派遣社員を解除するケースもあります。この場合は、派遣先会社と派遣元会社による派遣社員の生活を守るための取り組みが必要です。それぞれに求められる対応を簡単にまとめましょう。
派遣先会社の対応
原則として、派遣先会社による契約の中途解除はできません。事業を縮小せざるを得なくなったときなど、やむを得ない事情がある場合に限られます。
仮にやむを得ない事情があったとしても、中途解除は派遣社員の生活にも大きな影響を与えてしまいます。そのため経営状況の悪化のように派遣先会社に責任がある場合は、関連会社へあっせんするといった対応を講じましょう。
関連会社へのあっせんができない場合には、遅くとも解除日の30日前に予告しなければなりません。予告できないのであれば、派遣元会社へ賃金相当分の損害賠償をする義務を負います。仮に次の派遣先が見つからない場合は、休業手当以上の賠償金が必要です(賃金と同様に派遣元会社へ支払い)。
また契約の中途解除に際して、派遣元会社側から理由が求められるケースもあります。そのときは、理由の明示を行ってください。
参考:1 労働者派遣契約が中途解除された場合には
派遣先が講ずべき措置に関する指針
派遣元会社の対応
派遣社員の契約が中途解除となったときは、派遣元会社も対応しなければなりません。派遣先会社と連携して、関連会社へあっせんするなどと対策を講じてください。
契約の中途解除については、派遣先会社に合意の意思表示をすることで正式に決まります。一方で、派遣元会社との雇用関係が継続している限りは賃金の支払いが必要です。また中途解除を理由に、法律を無視して即時に解雇することも認められていません。
次の派遣先会社が見つからずに休業してもらう場合、派遣元会社に責任があると認められるときは平均賃金の6割以上の休業補償を支払う義務を負います。
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派遣の契約を更新しない場合の法律上の注意点
派遣の契約については、労働契約法や労働基準法などの法律が複雑に絡んでいます。企業側は真摯に対応したつもりでも、違法とされるケースもあります。そのため、契約を更新するか否かの判断は慎重に行うことが重要です。
特に法律の場合は「知らなかった」は通用しません。今後の経営にも支障が出る恐れもあります。こうした事態を防ぐべく、派遣の契約を更新しない場合の法律上の注意点を押さえましょう。
無期転換ルール
まず、派遣に関して覚えておきたいのが無期転換ルールです。無期転換ルールとは、派遣社員(有期契約)の契約期間が通算5年を超えた場合、無期労働契約へ転換する規定を指します。こちらのルールが適用されるには、派遣社員側が派遣元会社に申請しなければなりません。2018年4月1日よりスタートし、労働契約法第18条1項に定められています。
契約期間が1年であれば、5回の更新がなされたタイミングで切り替え可能です(1年×5回=5年)。派遣元会社と派遣社員のやり取りになるため、派遣先会社は特に影響しません。派遣社員として、派遣元会社に通算5年以上契約している人が対象です(契約期間により要件有り)。
雇止め法理
雇止め法理とは、企業の雇止めに対して法律で制限を加えることです(労働契約法第19条)。労働者を保護する観点で定められており、要件を満たす場合は原則として雇止めが認められなくなります。その要件は以下の2点です。
- 過去に反復更新されており、雇止めが無期契約における解雇と同一視できるもの
- 派遣社員が契約更新を期待することに合理的な理由がある
雇止め法理が効力を発揮するには、派遣社員による有期労働契約の申し込みを必要とします。合理的な理由が見られず、世間一般の常識と照らし合わせて(社会通念上)相当と認められない場合は、申し込みを拒絶できません。合理的な理由や社会通念上相当に当てはまるかは、業務内容や派遣社員に対する評価などを総合的に見て判断します。
3年ルール
派遣先会社が特に押さえたい知識として、3年ルールがあります。3年ルールは、基本的に、派遣社員を3年を超えて雇うことはできないとする規定です。かつては専門26業種のみに適用されていたものの、2015年の労働者派遣法改正によって全ての業種が対象となりました。
仮に3年を超えて従事してもらいたい場合は、派遣先会社が正社員登用か部署異動で対応する必要があります。また、派遣元企業が無期雇用で契約することも方法の一つです。
ただし、派遣社員の交代や部署異動を求める際には当該社員の意見を聞く必要があります。また部署異動したにもかかわらず、業務内容を全く変えないのは違反です。行政からペナルティを受ける可能性もあるため、適切な対処を心がけてください。
法律上の注意点についてより詳しく知りたい方は、「派遣の期間制限とは?3年ルールや例外、よくある疑問を解説」も参考にしてください。
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契約更新しない派遣社員とのトラブル事例
契約更新しないことで、派遣社員とトラブルになるケースも実際に起こっています。リスクを最小限に抑えるには、過去どのような問題があったかを把握することが大切です。
ここでは、契約を更新しなかったためにトラブルとなった事例を2つ紹介します。自社ではどのように対処するかをイメージしてみてください。
契約更新しないことでクレームを言われるなど逆恨みされる
まずは、契約を更新しないことでクレームに発展した事例を紹介します。ここで取り上げるのは、とある小規模な人材派遣会社の例です。当該企業では、コロナ禍により派遣先から人員整理の依頼がありました。そのため、スタッフに対して契約満了に伴う雇止めの報告をします。
しかし、当該スタッフは自分だけ雇止めになるのが納得できず「派遣先の嫌がらせによる不当解雇だ」と強く抗議しました。これまで派遣先会社に対するスタッフからのクレームはなく、今回も嫌がらせなどの問題はないと判断されたそうです。
このように、たとえ正当な理由で契約を更新しなくともクレームを付けられるケースがあります。派遣先会社は契約更新の有無を慎重に判断をしつつ、派遣元会社もそれぞれの立場に立って対応することが求められます。
派遣会社から次の派遣が来なくなる
派遣社員が退職したものの、派遣元会社から次の人材が派遣されなかったケースについても紹介します。とある派遣先会社では、毎年事務員を派遣してもらっていたそうです。あるときスタッフが退職したことで、後任に新人の派遣社員を配置します。
しかしその派遣社員には必要な業務遂行能力が不足しており、さらに金銭トラブルなどが発生したため、社内の仕事が回らなくなります。他の事務員の要望もあり、新人には辞めてもらったとのことです。一方で新たな派遣社員を依頼したものの、人手不足を理由に派遣されない状況が続いてしまったそうです。
上記の事例のように、派遣元会社側も人材を確保できていないことも考えられます。とはいえスタッフが派遣されない場合、派遣契約を解除するかの判断も含めての検討が必要です。
契約更新しない派遣社員とのトラブルを防ぐためにするべきこと
契約更新しない旨の判断をするときは、派遣社員とのトラブルを未然に防がなければなりません。手続きは法律上問題なかったとしても、接し方が悪いと不要なトラブルを招く恐れがあります。SNSなどで悪く書かれてしまうと、今後のビジネスにも悪影響が及ぶでしょう。
派遣社員とのトラブルを防止するために、派遣元会社と派遣先会社が採るべき対策について紹介します。リスクを最小限に抑えるべく、前もって準備を進めておきましょう。
雇止め理由の証明書の発行準備をしておく
派遣社員を雇止めすると、相手からその理由について問われるケースがあります。仮に雇止め理由の証明書を求められた場合、派遣元会社は遅滞なく発行しなければなりません。「遅滞なく」の明確な基準はないものの、おおむね1カ月以内には対応した方が賢明です。
下記は、正当な雇止め理由として挙げられる代表的な例です。
- 前回の契約を更新した際に、次回は更新しないことに合意していた
- 担当していた業務が終了した
- 職務命令に対する違反行為を行った
単に「契約期間が満了したため」だけでは不適切であるため、上記のように具体的に記載してください。
更新を行わない際の理由は契約内容に準じたもののみ可
理由を提示する際には、契約内容に準じたものでなければなりません。契約を更新する際に「次回は更新しない」などの文言を明示したものが不更新条項です。
あらかじめ不更新条項を設けておくことで、派遣社員側も余計な期待を抱かずに済みます。下手に期待させてしまうと、雇止めが不当になる可能性もあるので注意してください。
ただし、これまで何度も更新を繰り返していたにもかかわらず、予告なく一方的に契約に不更新条項を設けるなど、契約更新への期待が合理的だった場合、不更新条項が無効になるケースがあります。
したがって一方的に不更新条項を提示するのではなく、派遣社員からの理解を得る努力も必要です。十分な時間を確保し、話し合いの場を設けることをおすすめします。
派遣契約更新でトラブルが発生した際の対処法
入念に対策を講じていても、派遣契約更新ではトラブルが生じる可能性はあります。トラブルを未然に防ぐ方法に加えて、トラブルが発生した際の対処法も念頭に置きましょう。
問題が大きくなるのであれば、第三者機関を交えて話し合うことも選択肢の一つです。ただし双方に大きな負担がかかる点から、裁判沙汰にするのは避けたいと考える企業もあるでしょう。そこで、おすすめな方法がADR(裁判外紛争手続き)です。
こちらの手続きは、大きく分けて調停・あっせん・仲裁の3種類があります。調停とあっせんは、話し合いに重点を置いた解決法です。仲介者(労働局の紛争調整委員会)が間に立つものの、決定に強制力はありません。一方で、仲介者が解決法を導く仲裁では、決定に強制力が働きます。
2020年4月の労働者派遣法改正により、派遣労働者もADRの対象となりました。裁判では数カ月〜数年かけて争うことになりますが、ADRは原則1回で解決できる点がメリットです。
再雇用を行う場合の注意点
派遣社員として再雇用する際には、クーリング期間に注意が必要です。クーリング期間とは期間制限がリセットされる空白期間のことで、派遣の場合は3カ月設けられています。
同じ派遣社員が3年間従事した場合、期限が切れた翌日から3カ月を超えないと当該社員を同一事業所に配置できません。また、クーリング期間を利用して3カ月後に再雇用する方法は、指導の対象となるので避けましょう。
なおクーリング期間は「事業所単位」の見方もあります。事業所が3年間派遣社員を従事させたら、たとえ1年ごとに別人を配属しても3カ月の空白期間が設けられるので気を付けてください。
「まとめ」
今回は、派遣契約を更新しない場合の派遣元会社と派遣先会社の注意点について紹介しました。雇止めは、契約期間や法律などさまざまな問題が絡みます。派遣契約を結ぶ企業は、仕組みや判断基準を押さえなければなりません。
また契約を更新しない判断をすると、正当か否かにかかわらずトラブルが発生する恐れはあります。未然に防止する対策のほか、実際に生じたときの対処法も企業内で考えましょう。
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