パートの残業代の計算方法は?支払い条件・手当・割増賃金についても解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
アルバイト・パートを雇っている方は、残業についてのルールを正確に把握しておかなければ、訴訟やトラブルに巻き込まれることもあります。
「正社員では残業代を支払う機会が多いけれど、パートの場合はどのように支給すればよいか知りたい」
「深夜手当や休日手当と残業手当が重複した時のルールが知りたい」
このような悩みを持つ担当者の方は、本記事を最後まで読んで残業代についての仕組みを理解しましょう。
目次[非表示]
- 1.そもそも残業とは?
- 2.パートに残業代を払う必要はある?
- 3.パートの残業代の計算方法
- 4.パートの残業時間の上限
- 4.1.労働基準法による残業時間
- 4.2.36協定による残業時間
- 4.3.特別条項付き協定を結んだ場合の残業時間
- 4.4.例外とされる業種
- 5.残業代のケース例
- 5.1.1日8時間労働以内の場合
- 5.2.1日8時間、1週間40時間を超える勤務の場合
- 5.3.法定休日に勤務する場合
- 5.4.午後10時以降に勤務する場合
- 6.残業代と各種手当の関係
- 6.1.残業代と深夜手当の関係
- 6.2.休日手当と深夜手当の関係
- 7.残業代を計算する際の注意点
- 7.1.勤務時間は拘束時間で決まる
- 7.2.残業代未払いは訴訟される可能性がある
- 7.3.パートにもみなし残業代が適用される
- 8.まとめ
そもそも残業とは?
残業の定義や、残業について考えるうえでつきものとなる割増賃金・割増賃金率についても解説していきます。残業を正しく理解した上で、パートの残業代について考えてみましょう。
残業とは
残業とは、所定労働時間外に働くことを指します。所定労働時間とは、雇用契約時に勤務先が決めている労働時間となるため、企業によってバラバラです。
たとえば勤務時間を「9:00〜18:00(休憩1時間)」で定めている企業の場合、所定労働時間は8時間になります。この場合残業時間は、9時前もしくは18時以降に所定労働時間を超過して働いた時間となります。
アルバイトやパートスタッフも同様に、たとえば勤務時間「10:00〜15:00」で契約していれば、所定労働時間は5時間となり、10時前もしくは15時以降に超過して働いた時間は残業時間に当てはまります。
割増賃金とは
割増賃金とは、残業や深夜労働をした際に支給する、通常賃金に上乗せした賃金を指します。割増賃金に該当するケースは、法定労働時間を過ぎた労働賃金・22時〜翌5時の深夜労働賃金・休日出勤の賃金の3つです。
法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間のことで基本的には1日8時間・週40時間とされています。アルバイト・パートの場合でも、1日8時間以上・週40時間以上の勤務を依頼したケースや22時以降のシフトを依頼したケースでは割増賃金を支払う必要があります。もし、休日出勤が深夜労働と重複した場合は、割増分もそれぞれプラスして支払います。
雇用主の方に注意してもらいたい点は、賃金を払いさえすれば、たくさん働かせてもいいわけではないということです。法定労働時間を超えて働かせる場合は、労働基準監督署に届け出る必要があり、さらに時間外労働には限度が定められています。労働環境を整えるためにも、仕組みを理解した上で所定労働時間内におさまる業務依頼を心がけましょう。
参考:厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」
割増賃金率とは
割増賃金は、項目によって割増率が異なります。
- 所定労働時間内、及び所定時間外労働:通常時給のまま
- 法定時間外労働:25%以上割増
- 月60時間以上の法定時間外労働:50%以上割増
- 22時~翌5時までの深夜労働:25%以上割増
- 深夜帯の法定時間外労働:50%以上割増
所定時間外労働とは、所定労働時間を超えているものの、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えていない範囲の労働を指します。法定時間外労働のことを、一般的には残業代として認識している人が多いかもしれません。他の深夜労働や深夜の法定時間外労働の割増分についてもチェックしてみてください。
パートに残業代を払う必要はある?
雇用主はアルバイト・パートであっても残業代を支給しなければなりません。残業代は雇用形態を問わず、正社員・契約社員・アルバイト・パート・派遣などすべての従業員に支給する必要があります。
正社員であれば給与に固定残業代として残業代が含まれているケースもありますが、アルバイト・パートのように労働時間分の給料が支給される雇用形態では、1分単位できっちりと計算し超過分は残業代を支給しましょう。
もともと深夜勤務がある案件は深夜割増を含めた時給を提示して募集するなど、あらかじめ計算しておきましょう。労働時間は1分単位で計算するよう定められており、15分ごとに端数を切り捨てるなどは許されませんので、タイムカードや勤怠管理には注意が必要です。
派遣社員の残業代については「派遣社員に残業依頼はできる?時間上限や残業代の計算方法についても解説」の記事もご覧ください。
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パートの残業代の計算方法
アルバイト・パートの残業代を計算する際、まずは法定時間外の労働時間を集計します。集計した時間については25%割増で金額を割り出しましょう。月60時間を超える法定時間外の労働があれば超過分にはさらに25%を上乗せします。
また、22時〜翌5時までの深夜勤務の有無もチェックします。深夜時間に働いていた場合は、その時間にも通常時給に25%の割増が必要です。
基本的にパートスタッフのようにシフトで時間が決まっている雇用形態で大きく残業が増えることはないですが、働いてもらった分はしっかり計算して支払うようにしましょう。
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パートの残業時間の上限
パートの残業時間には、労働基準法や36協定で決められた残業時間の上限があります。例外のケースも含めて解説していきますので、雇用主のみなさんはそれぞれの仕組みについて把握しておきましょう。
労働基準法による残業時間
労働基準法では、次の通り労働時間と休日について定められています。
- 労働時間の限度は1日8時間・週40時間
- 休⽇は週1日もしくは4週間に4日以上
主に正社員に向けて取り決められているため、アルバイト・パートのように短時間かつ少ない日数で働くことが多い雇用形態だと、上記の時間・日数を超えることは考えにくいです。
しかし、職種や業種によってもしこれらを超過して従業員を働かせたい場合は、労働基準法36条に基づいて「36協定」という労使協定を雇用主と従業員で結ばなければなりません。
36協定による残業時間
36協定とは法定労働時間を超えて働いてもらうために雇用主と従業員が締結する協定です。以下の通り、残業時間の助言を取り決めています。
- 一般労働者の場合、1年360時間以内かつ1カ月45時間以内の残業が可能
- 3カ月以上・1年単位の変形労働時間制をとっている場合は、1年320時間以内かつ1カ月42時間以内の残業が可能
上記に該当しない業種・職種もありますが、アルバイト・パートでは対象者は少ないと考えてよいです。万が一違反した雇用主には「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科される可能性もあるため注意が必要です。
参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
特別条項付き協定を結んだ場合の残業時間
さらに「特別条項付き協定」を締結するとさらに多く残業時間を依頼することが可能になります。臨時的に上限時間を超えて残業をしてもらわなければならない「特別な事情」があれば、「特別条項付き協定」を結ぶことができます。締結した際の上限時間は以下の通りです。
- 月45時間を超える労働は、1年間で6カ月におさめる
- 法定時間外労働は、年間720時間までにおさめる
- 法定時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満かつ2~6カ月平均80時間までにおさめる
もし違反してしまうと、雇用主に「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科される可能性もあります。
参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
例外とされる業種
例外とされている業種は以下の通りです。基本的には法改正まで猶予がある業種が多く、2024年4月1日までと後でルールが変わる業種もあります。
たとえば、建設業界は2024年3月31日まで、残業時間の上限規制が適用されません。2023年現在は、月45時間以上残業をしてしまっても、しかるべき残業代を支払っていれば違反とはならないということです。また、2024年4月1日以降についても、たとえば災害時の復旧工事などは上限規制の対象外です。
ほかにも自動車運転の業務(物流業界におけるドライバーなど)、医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業なども同じように例外業種として個別の取り決めがされています。
参考:「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
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残業代のケース例
残業代の具体的な金額をそれぞれのケース別に紹介していきます。
- 1日8時間労働以内の場合
- 1日8時間、1週間40時間を超える勤務の場合
- 法定休日に勤務する場合
- 午後10時以降に勤務する場合
1日8時間労働以内の場合
1日8時間労働以内のケースとは、たとえば所定労働時間が6時間のパートスタッフが、雇用主の依頼で休憩をのぞき2時間残業をしたとします。その場合、1日の労働時間は8時間以内におさまるため、残業代の割増分はなく通常時給で計算します。
時給1,200円で働くパートスタッフであれば、以下の計算式で1日の給与を算出できます。
<給与の計算方法>
時給1,200円×6時間+時給1,200円×2時間=1日 9,600円
1日8時間、1週間40時間を超える勤務の場合
法定労働時間である1日8時間もしくは1週間40時間を超える勤務の場合には、超過分に対して25%上乗せした賃金を支払わなければなりません。
たとえば所定労働時間が6時間のパートスタッフが、雇用主の依頼で休憩をのぞき4時間残業をしたとします。その場合、1日の労働時間は8時間を超えてしまうため、1日の法定労働時間を超過することになります。超過した分は2時間となり、2時間分の時給については、25%割り増しした残業代を支給しなければなりません。
時給1,200円で働くパートスタッフであれば、以下の計算式で1日の給与を算出できます。
<給与の計算方法>
時給1,200円×8時間+時給1,500円×2時間=1日 12,600円
法定休日に勤務する場合
法定休日はパートスタッフにも適用され、「週1日または4週間あたり4日以上の休日」を与えなければならないと定められています。もしパートスタッフに法定休日に働いてもらう場合は、通常時給に35%の賃金を上乗せして支払わなければなりません。
ちなみに、法定休日とは別に「所定休日」というくくりの休みもあります。これは会社が定めた休日のことを指します。所定休日の出社については休日手当の上乗せは必要ないため、混同しないように気を付けましょう。
午後10時以降に勤務する場合
労働基準法では、22時〜翌5時までの時間を深夜帯と定めており、深夜手当が発生する時間となります。深夜手当は通常時給に25%を上乗せして計算します。
深夜手当は別の割増分と重複して上乗せするべき手当となります。たとえば深夜に残業を行った場合、深夜手当として25%、残業手当としてさらに25%、合計50%を上乗せした賃金を支払う必要があります。
労働者にとって、残業するだけでも身体的な負担が重くなります。深夜帯ともなればさらに負担のある働き方になるため、経済的な負荷をかけることで深夜残業を減らす意図もあります。
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残業代と各種手当の関係
残業代と深夜手当、休日手当と深夜手当の関係についてそれぞれ解説します。
残業代と深夜手当の関係
法定労働時間を超えた業務に対しては、アルバイト・パートであっても25%の残業手当がつきますが、さらに残業時間が深夜(22時〜翌5時)にあたる場合、さらに25%の深夜手当を支給しなければなりません。
重複した場合はどちらの手当も支給しなければならず、割増分の負担が重くなります。
休日手当と深夜手当の関係
法定休日に勤務したアルバイト・パートに対しては35%の休日手当を支払い、さらに法定休日かつ深夜帯の勤務であればプラスで25%の深夜手当が発生します。
合計すると通常時給に60%も上乗せしなければなりません。経済的な負担はもちろんですが、従業員の過労も疑われますので、よっぽどの理由や特別な事情がない限り、業務量の調整を行いましょう。
残業代を計算する際の注意点
残業代を計算する際には3つの注意点があります。あらかじめ把握しておくことで、間違えてしまわないように気を付けましょう。
- 勤務時間は拘束時間で決まる
- 残業代未払いは訴訟される可能性がある
- パートにもみなし残業代が適用される
勤務時間は拘束時間で決まる
残業代を算出するためには、正確な勤務時間を把握しておく必要があります。勤務時間は、業務終了後の片付けや日報の記入などを含めた拘束時間から決まるため、注意が必要です。
また、所定労働時間を過ぎた分だけではなく、業務開始時刻が早くなる早出のパターンも残業に含まれます。勤務開始時刻から終業時刻まで、業務上のちょっとした依頼も含めて拘束した時間すべてを踏まえて残業時間を算出するようにしましょう。
残業代未払いは訴訟される可能性がある
残業代を従業員に支払わない企業は、訴訟の恐れもあります。
従業員は未払いの残業代について過去2年分遡って企業に請求することができます。そのため、意図的に支払わないという姿勢を見せている企業は改善の見込みなしとして労働審判や労働訴訟を起こされてしまう可能性もあります。
実際に、残業代を支払わない企業に対して過去2年分の勤務記録をしていた従業員が勝訴し、950万近い賃金を支払うことになったケースなどもあります。計算ミスで未払いが発生してしまった場合であっても、気が付いた時に迅速に対応することが重要です。
パートにもみなし残業代が適用される
パートの場合にもみなし残業代が適用されることがあります。
みなし残業代とは、一定業種の正社員によくある給与形態です。たとえば営業職のように、ある程度最初から残業をせざるを得ない職種の場合、もともと固定残業代が含まれた賃金設定がされています。その場合は、固定残業代とみなし残業時間がセットで提示されている必要があります。
パートの場合でも、みなし残業制度を導入することはできますが、時間と金額を分けて明確に提示しなければなりません。
まとめ
パートの残業代について、具体的な事例を挙げて解説しました。残業代は、法定時間外労働となる場合は通常時給の25%割増で支給しなければなりません。とくに深夜手当・休日手当は割増率も異なるため、正確に理解しておく必要があります。
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