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皆勤手当とは?支給条件・相場・有給との関係性などを解説

こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。

この記事では、欠勤や遅刻・早退などが多く作業が計画通りに進まない、などでお悩みの企業担当者の方に皆勤手当について解説します。

皆勤手当の内容や導入に際しての法律面や計算実務に関する注意点について詳しく説明していきます。皆勤手当を導入して欠勤や遅刻・早退者を少しでも減らし、職場の活性化にお役立てください。

目次[非表示]

  1. 1.皆勤手当とは
    1. 1.1.皆勤手当と精勤手当の違い
  2. 2.企業が皆勤手当を導入するメリット
    1. 2.1.組織全体の生産性向上につながる
    2. 2.2.勤怠に問題がある従業員の意識・行動変容に役立つ
    3. 2.3.離職率の向上を抑えられる
  3. 3.皆勤手当の計算方法・相場
  4. 4.皆勤手当を導入している企業のデータ
  5. 5.有給を取った従業員の皆勤手当の扱いについて
  6. 6.企業が皆勤手当制度を導入する際の注意点
    1. 6.1.支給条件を明確に設定する
    2. 6.2.金額は他の手当や給与とのバランスを考慮して決める
    3. 6.3.最低賃金には含めない
    4. 6.4.運用ルールを社内に周知する
  7. 7.皆勤手当に関するよくある質問
    1. 7.1.皆勤手当は違法じゃない?
    2. 7.2.皆勤手当は時代遅れって本当?
    3. 7.3.皆勤手当は残業単価に関係する?
    4. 7.4.遅刻・早退・半休がある従業員は皆勤手当の対象になる?
  8. 8.まとめ

皆勤手当とは

皆勤手当は、一定の期間中に1度も欠勤せずに出勤し続けた場合に支給される手当です。ご自分の会社に皆勤手当がある場合は、就業規則や賃金規程などに条件が定められています。

ただし、皆勤手当を導入するか否かは各企業の自由です。したがって、欠勤はないが、早退や遅刻があった場合は手当がつくのかなども、それぞれの企業によって違いがあります。

皆勤手当を導入する理由は、従業員の労働意欲を高めて組織の生産性を向上させるためです。

真面目に勤務する従業員に対し、多少なりとも手当を支給し、仕事への満足度や会社に対する帰属意識を高めるなどの効果が期待できるでしょう。

皆勤手当と精勤手当の違い

精勤とは、熱心に職務に取り組むという意味で、精勤手当は無欠勤または熱心に仕事に取り組んだ場合に支給される手当です。

精勤の意味は曖昧であり、解釈も企業によってさまざまです。仮にやむを得ない欠勤や遅刻・早退があっても職務への取り組みが熱心であると会社が判断すれば精勤手当を出すケースもあるでしょう。

精勤手当を導入する企業は、皆勤手当同様に従業員への労働意欲を高め、遅刻・欠勤の防止を目的としています。

精勤手当を導入する企業は皆勤手当も同時に導入し、無欠勤の場合は皆勤手当、欠勤・早退などがあった場合に精勤手当と定める場合があります。


企業が皆勤手当を導入するメリット

欠勤なく真面目に勤務する者に経済的なベネフィットを与え、会社や職場、従業員個人への労働意欲の向上を図ります。結果、組織全体が活性化し、生産性の向上や離職率を抑制するメリットもあるでしょう。

組織全体の生産性向上につながる

皆勤手当は従業員の欠勤などをなくす目的で導入する手当です。就業規則などで定めたルールに該当する者に支給します。

したがって、皆勤手当の支給者が増えれば、それだけ現場の業務が計画通りに遂行できると考えられます。

従業員側も皆勤手当を受給できれば励みとなり、労働意欲の向上にもつながるため、業務への好影響が期待できるでしょう。

会社側にとっては、シフト通りに計画的な業務遂行ができれば、皆勤手当の支給による人件費負担よりもメリットがあるケースもあります。

従業員側も経済的なメリットや会社に対する貢献意欲の高まり、あるいは承認欲求なども満たされ、組織全体の生産性向上に貢献できるでしょう。

勤怠に問題がある従業員の意識・行動変容に役立つ

例えば、交代制で勤務する工場の作業員や飲食店の店員などで、急な欠勤や遅刻でシフトに穴が開く状態があったとします。現場では、シフトの穴埋めに奔走する羽目となり、業務全体に悪影響を及ぼすでしょう。

欠勤・遅刻の多い従業員に対して意識改革を促すためにも皆勤手当は役立つと考えられています。少しでも手当を増やして、従業員の意識が変わり、欠勤や遅刻が減るなどの効果があれば、会社全体としては業務が円滑に進むため有効な手段です。

離職率の向上を抑えられる

欠勤や遅刻が多い職場では、シフトなどのしわ寄せが周囲の従業員に及び、労働意欲も下がり気味になります。真面目に出勤している従業員にとっては、不平不満などが溜まり、最終的に離職を選択する可能性もあるかもしれません。

皆勤手当の導入メリットは、こうした悪影響を食い止め、離職率の向上を抑えられる点です。

会社にとっては無欠勤で真面目に勤務する意義を従業員に示すことが重要です。金銭の付与により、欠勤や遅刻の多い従業員と待遇に差をつけ、区別できます。

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皆勤手当の計算方法・相場

皆勤手当を計算する場合の概要を示します。

項目

内容

備考

支給条件・支給額

所定期間内(月単位)に欠勤がない場合に支給される
就業規則などに明記

企業によりルールは異なる
(例:早退をカウントするかしないかなど)

手当の種類

法定外手当

残業のように労働基準法で支給は義務付けられていない

残業代の計算

含める

残業代の1時間当たりの賃金に上乗せになる

最低賃金の計算

含めない

皆勤手当は毎月決まって支給される手当ではない

課税

給与所得と見なされ課税対象

児童手当、通勤手当など非課税の手当と区別する

皆勤手当は、通常のシフト通りに勤務するのが普通であり、月単位で金額も決められています。実際に支給する場合は、「月によって定められた賃金」として残業代の計算の基礎に入れる必要があります。

皆勤手当(精勤手当、出勤手当など含む)の相場については、2020年の調査では、平均9,000円でした。

参考:厚生労働省「就労条件総合調査2020年 第19表

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皆勤手当を導入している企業のデータ

精勤手当・皆勤手当などの支給は、年々減少傾向です。2015年調査で導入していた企業は29.3%ありましたが、2020年の調査では25.5%まで減少しました。一人当たりの平均支給額も1万5,000円から9,000円に減少しています。

参考:厚生労働省「就労条件総合調査2020年 第19表

従業員数が少ない企業ほど手当の導入率も支給額も高い傾向があります。有給休暇の取得義務化で、従業員が休暇を取得しやすくなり、皆勤手当の支給意義が薄れ、人員に余裕がある大企業中心に廃止が進んでいるのでしょう。

一方、中小企業では一人当たりの業務分担量が多く、急な欠勤などがあると他の従業員でカバーは容易ではありません。


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有給を取った従業員の皆勤手当の扱いについて

労働基準法附則第136条で、会社は有給休暇を取得した従業員に対して、賃金その他で不利益な取り扱いをしないように定めています。

したがって有給休暇を取得しても皆勤手当は支給されます。会社側が、有給休暇を欠勤と見なした場合、賃金計算において従業員に不利益になるからです。

就業規則に、皆勤手当の不支給要件に有給休暇の取得と記載がある場合は、労働基準法の趣旨に反している可能性があるため、改定の検討が必要です。


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企業が皆勤手当制度を導入する際の注意点

これから皆勤手当を導入しようとお考えの人事担当者様は以下の注意事項を参考にしてください。

まず、就業規則などで支給条件や支給額を明確に定めます。その際、最低賃金法に留意しましょう。導入後は会社一丸となって従業員にPRしましょう。

支給条件を明確に設定する

どのような勤務態度や成果の従業員に支給するかを明確に決めましょう。支給条件は企業により異なりますが、一般的には以下の2点を明確に就業規則や賃金規程で定めています。

  • 出勤率:一定期間以内に欠勤が一定数以下である
  • 遅刻率・早退率:一定期間以内に遅刻や早退の回数、時間が一定以下である

全従業員に受給資格がある点を明示し、ルールの公平性と労働意欲を高めていきます。

毎月の勤務状況を基に月額で皆勤手当を支給するケースが多いようですが、定期的に評価して四半期ごとや年1回でも問題ありません。

金額は他の手当や給与とのバランスを考慮して決める

皆勤手当の平均は9,000円でした。他の手当の平均も参考までに紹介します。

同じく厚生労働省「就労条件総合調査2020年」における主な諸手当の種類別平均支給額は以下の通りです。

(単位:千円)

勤務手当

役付手当など

41.6

特殊作業手当など

14.4

特殊勤務手当など

25.0

技能・技術(資格)手当など

18.8

生活手当

家族・扶養・児童支援手当など

17.6

地域・勤務地手当など

22.8

住宅手当など

17.8

単身赴任・別居手当など

47.6

参考:厚生労働省「就労条件総合調査2020年 第19表

手当の設定や支給条件は企業によってさまざまです。皆勤手当は本来、所定通りに勤務すれば誰でも支給される性格の手当です。

高すぎると、勤務手当など従業員の職務能力に応じた手当と比べて不公平感が生じます。また、企業にも負担になるでしょう。

最低賃金には含めない

最低賃金は、最低賃金法で定められている企業が労働契約を結ぶ全ての従業員に支払う最低限の賃金です。最低賃金は、基本給と諸手当が含まれます。

ただし、諸手当のうち皆勤手当、通勤手当、家族手当や賞与は最低賃金に含めません。最低賃金の対象となる賃金は毎月支払われる基本的な賃金です。

皆勤手当は一定期間内に欠勤・遅刻などがない場合に支給する手当であり、毎月確実に支給するものではありません。

仮に最低賃金に含めた場合、欠勤や遅刻が生じた期間は皆勤手当が支給されず、その期間は最低賃金を下回る事態が生じ、最低賃金法の違反となります。

運用ルールを社内に周知する

手当などは就業規則や賃金規程に明記されます。しかし、すべての従業員が社内の規程類を十分に理解しているわけでもありません。会社側からも積極的にPRしていきましょう。

経営陣自ら従業員向けのスピーチなどで説明するなど、トップ自ら従業員に直接説明すると効果が高いでしょう。

一定期間に活躍した従業員を皆勤賞などで評価・表彰すると、他の社員への刺激になり周知されるようになります。

また、人事研修で給与体系を説明し、その中で皆勤手当の条件や支給状況など詳細を説明してみるのも良いでしょう。e-ラーニングなどで従業員に回答させるなども検討してください。


皆勤手当に関するよくある質問

皆勤手当について、質問が多い項目を選んで解説していきます。導入企業数や支給額が減少傾向にある皆勤手当そのものに関する疑問と、導入後の実務担当者によくある疑問にお答えします。

皆勤手当は違法じゃない?

最近では皆勤手当を支給する企業の割合は減少傾向です。したがって自社も廃止すべきか、と考える担当者も多いでしょう。

しかし、単純に廃止すると労働条件の不利益変更に該当してしまいます。労働条件の不利益変更とは、従業員の合意なく労働条件を不利に変更することで、労働契約法第9条で原則禁止されています。

したがって、会社側のみの意向で勝手に廃止することは違法です。廃止理由を明確に示し、全従業員に十分な説明を行い、対象者が少ない場合には個別に説明し、書面で同意を得るのがよいでしょう。

単に廃止するだけでなく、出勤状況を賞与の査定に反映するなど無欠勤の従業員に対する労働意欲を下げない工夫などもあると良いでしょう。

皆勤手当は時代遅れって本当?

そもそも従業員は、有給休暇を除き、あらかじめ労働条件で決められた日に出勤するのが義務です。したがって、出勤すべき日に出勤するだけで基本給に上乗せ賃金を支給するのはおかしいのではないか、と考える傾向が強くなっています。

また、年功序列や終身雇用など企業への忠誠心を求める人事慣行から、成果主義やジョブ型雇用などパフォーマンス重視の人事へシフトしています。

働き方改革などで、テレワークやフリーランスを含め働き方の多様化が進み、皆勤手当の支給条件に合わないことなども影響しているのではないでしょうか。

皆勤手当は残業単価に関係する?

結論は、皆勤手当は残業単価に含まれるため、残業代に関係します。

残業単価とは、残業代を計算する際、1時間当たりの賃金単価で、この残業単価を基に従業員の残業手当を計算します。各種手当は残業単価に含まれるか、それとも除外するのか、は複雑です。

労働基準法第37条では、家族手当、通勤手当、その他厚労省令で定める賃金は残業単価に含めないと規定されています。言い換えると皆勤手当は法令などで規定されておらず、残業単価に含めて残業代を算定しなければなりません。

つまり、基本給が同じ従業員で、皆勤手当を受けている人とそうでない人が同じ時間残業すると、残業代は前者の方が多くなると理解してください。

遅刻・早退・半休がある従業員は皆勤手当の対象になる?

各企業によります。皆勤手当の支給条件が各企業の定められるため、まずは社内にある規程類を確認しましょう。

就業規則や賃金規程には、出勤率や遅刻率・早退率などの支給基準が記載されています。そこに例えば、「遅刻・早退は〇回で欠勤とみなす」とか、「途中入社の社員は入社月は皆勤手当の対象外」などと記載されているでしょう。

精勤手当がある企業では、遅刻・早退・半休がある場合は皆勤手当でなく精勤手当を支給するケースが多いようです。


まとめ

皆勤手当は一定期間内に欠勤などがない場合に支給する法定外手当です。できるだけ欠勤者をなくし、従業員の労働意欲を高め、組織全体の生産性向上を目的に導入されています。

皆勤手当を支給する場合には、就業規則などに支給条件を明確にし、運用ルールを社内に徹底して通知しましょう。

給与計算において皆勤手当は、最低賃金に含めない、残業単価には含めるなどの点に留意してください。


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監修:社労士 涌井好文
監修:社労士 涌井好文
涌井社会保険労務士事務所 社労士 涌井好文|平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録し、企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動。退職時におけるトラブル相談など、労働者からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めています。近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っています。

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