
年俸制とは?月給制との違い・メリット・ボーナスについて詳しく解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
「年俸制」とは、年単位で給与総額を確定し、月々に分けて支払う給与体系の1つです。一般的な月給制と異なり、年次での評価や成果を基準に給与が決まるため、人件費の管理がしやすく、従業員の生産性向上にもつながるとされています。しかし、残業代やボーナスの支払いに関する規定が企業によって異なり、導入時には慎重な検討が必要です。
本記事では、年俸制の基本的な仕組みや月給制との違い、年俸制のメリットやデメリットについて分かりやすく解説します。年俸制の導入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.年俸制とは
- 1.1.年俸制と月給制の違い
- 2.年俸制の場合の残業代やボーナスはどうなる?
- 2.1.規定時間を超えた分は残業代が支払われる
- 2.2.ボーナスについては会社の規定によって異なる
- 2.2.1.年俸とは別でボーナスが支払われるケース
- 2.2.2.年俸にボーナスが含まれるケース
- 3.年俸制が「やばい」「やめとけ」といわれる理由は?
- 4.企業が年俸制を導入するメリット
- 4.1.年間の人件費が計算しやすい
- 4.2.生産性向上に期待できる
- 5.企業が年俸制を導入するデメリット
- 6.年俸制に向いている業界・職種
- 7.企業が年俸制を導入する際の注意点
- 7.1.残業代やボーナスに関する規定を明確化する
- 7.2.人事評価制度の見直し
- 7.3.労働組合や個々の従業員の同意を得る
- 8.まとめ
年俸制とは
年俸制とは、従業員の給与総額を年単位で確定し、それを月ごとに分割して支払う制度です。月給制とは異なり、年単位で給与が固定されるため、一人ひとりの貢献度を明確にし、企業の成長に貢献した従業員を正当に評価したいという考えから導入されるケースが多いといえるでしょう。
年俸額は一般的に、前年度の業績評価、目標達成度、スキルや経験などを総合的に評価し、あらかじめ定められた計算式に当てはめて算出していきます。この算出した金額を従業員に提示し、両者が合意することで最終的な年俸額が決定するという流れです。ボーナスについては、別途支払われるケースと、年俸額に含まれるケースがあり、企業ごとに運用方法が異なります。
また、誤解されやすい点ですが、年俸制は年単位で給与を決めるものの、その給与を1回にまとめて支払うのではありません。労働基準法第24条により「賃金は毎月1回以上、一定の期日で支払うこと」が義務付けられているので、年俸は少なくとも12カ月に分割して月ごとに支払う必要があります。
年俸制と月給制の違い
年俸制と月給制の最も大きな違いは、1年間の給与があらかじめ確定しているかどうかです。月給制の場合、ボーナスは企業の業績や個人の成果に応じて変動しますが、年俸制では、年度の給与総額は事前に決定され、契約が成立した後に変更されることは基本的にありません。仮に業績不振などに陥った場合であっても、会社の一方的な判断で給与額を減額することは認められず、契約違反となります。
また、年俸制では、従業員一人ひとりの成果や貢献度をもとに労使間で協議の上、年単位で給与を決定するのが一般的です。一方、月給制は基本給が毎月一定で、給与規定に基づいて安定的に支給されます。月給制で成果や業績が反映されるのは、ボーナスや昇給の際であることが多く、年俸制のように年次契約での調整は行われません。
年俸制と月給制の違いをまとめると、以下の通りです。
年俸制 |
月給制 |
|
給与決定方法 |
年単位 |
月単位 |
給与支給方法 |
年間給与額を決定し、月ごとに分割して支給 |
毎月の給与額が規定に基づき安定して支給 |
成果・業績の反映 |
年間給与額に反映 |
主に賞与に反映 |
途中減額の可否 |
契約期間中の一方的な減額は不可 |
給与は固定されているが、ボーナスが業績次第で減少する可能性がある |
年俸制の場合の残業代やボーナスはどうなる?
年俸制を導入する際には、従業員の残業代やボーナスの支給方法がどのように取り扱われるのかを確認しておくことが重要です。年俸制だからといって、残業代やボーナスが不要になるわけではなく、企業の規定に応じた対応が求められます。
それぞれの支給方法について、以下で詳しく見ていきましょう。
規定時間を超えた分は残業代が支払われる
年俸制は、従業員の年間の成果に基づいて給与が決定される制度であるため、「実際の労働時間とは関係ない」と誤解されがちです。しかし、年俸制であっても、法定労働時間である「1日8時間、週40時間」を超えた分については、残業代を支払わなければなりません。
では、なぜ「残業代を出さなくてもいい」という誤解が生じるのでしょうか。その一因として、「固定残業代」が挙げられます。固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代を年俸に含めてしまう制度です。この場合、含まれている時間分の残業代については、別途支払う必要はありません。しかし、この固定残業時間に含まれる時間数を超えて働かせた場合は、超過分について残業代の支払いが求められます。
また「みなし労働時間制」も、残業代に関する誤解を生みやすい制度の1つです。この制度は、業務の性質上、労働時間を正確に計測することが困難な場合に、あらかじめ労働時間を定めて、その時間分の賃金を支払うというものです。しかし、みなし労働時間制を適用している場合でも、休日労働や深夜労働については、原則として割増賃金の支払いが義務付けられています。
ボーナスについては会社の規定によって異なる
年俸制におけるボーナスの支給方法は、企業ごとに規定によってさまざまです。年俸額にボーナスを含むケースもあれば、年俸額とは別にボーナスを支給するケースもあります。
例えば、ボーナスを年俸に含む場合は年俸額を「14分割」や「16分割」して、そのうち2〜4カ月分をボーナスとして支給する方法がとられます。ただし、法律上は企業にボーナスの支払い義務がないため、この「ボーナス」は通常の賞与とはみなされません。あくまでも、あらかじめ決まっていた「年俸の一部」という扱いになり、企業側で自由に金額を変更することはできません。
年俸とは別でボーナスが支払われるケース
実際に、年俸とは別でボーナスが支払われるケースを見ていきましょう。例えば、年俸500万円の従業員がいる場合、年俸額を12等分して毎月支払う形となりますが、これとは別に個人の成果や会社の業績に応じてボーナスが支給されます。
例:年俸とは別でボーナスが支払われるケース(年俸500万円の場合)
- 年俸500万円÷12カ月 = 月収約41万6,667円
- 上記に加えて、業績・成果に応じてボーナスを支給
このケースでは、ボーナスの支給額や支給の有無は事前に固定されていないことが多く、企業の業績や従業員のパフォーマンスに応じて変動するのが一般的です。企業側としては、業績が好調であればボーナス額を増やし、業績が悪化した場合にはボーナス額を抑えるといった柔軟な対応が可能です。
年俸にボーナスが含まれるケース
企業によっては、年俸にボーナスが含まれている形で支給されるケースもあります。この場合、年俸を単純に12等分して毎月支給するのではなく、例えば14等分した額を月々の給与として支払い、残りの2カ月分をボーナスとして年2回(夏と冬)に支給するといった形式です。
例:年俸にボーナスが含まれるケース(年俸500万円、賞与1カ月分×2回の場合)
- 年俸500万円÷14カ月 = 月収約35万7,143円
- 上記に加え、年2回、各1カ月分のボーナスとして約35万7,143円を支給
ただし、この2回分のボーナスは年俸額に含まれている前提のため、労働基準法上の「賞与」には該当せず、企業業績によって変動はできません。企業の業績が悪化したとしても、ボーナスを削ることは年俸を減額することなので、契約違反になります。
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年俸制が「やばい」「やめとけ」といわれる理由は?
インターネット上などでは「やばい」「やめとけ」といわれることもある年俸制ですが、一体なぜこのような意見が上がっているのでしょうか。
その理由の1つとして挙げられるのが、成果が給与にすぐ反映されない点です。年俸制では年単位で給与が決定されることから、仮に年初に大きな成果を上げたとしても、その評価が給与に反映されるのは翌年の年俸決定時になります。そのため、成果が即座に報酬に反映されないことに、不満を感じる場合もあるでしょう。
また、年俸制では成果を上げられなかった場合、翌年の年俸が減額されるリスクも伴います。これにより、評価に対する過度なプレッシャーがかかり、「逆にパフォーマンスが発揮しにくくなるのでは?」と考える人も少なくありません。
年俸制が「やばい」「やめとけ」といわれる理由としては、以下の点も指摘されています。
- 年収額は高く見えるものの、月給換算すると低くなるケースがある
- 企業によって評価基準が不透明な場合があり、納得しにくいことがある
このような理由から、長期的な安定収入を求める従業員にとって、年俸制は不安要素が多い制度と受け止められることが多いのです。しかし、年俸制は成果次第で高収入が期待できる一面もあるため、従業員の働き方や価値観に合えば、メリットも大きい制度といえます。
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企業が年俸制を導入するメリット
日本では多くの企業が月給制を採用していますが、なぜあえて年俸制を導入する企業があるのでしょうか。ここからは、企業が年俸制を採用するメリットを2つ紹介します。
年間の人件費が計算しやすい
企業が年俸制を導入する最大のメリットは、年間の人件費が計算しやすくなることです。年俸制では、従業員の給与が年間を通じて確定しているため、企業はその金額をベースにして1年間にかかる人件費をあらかじめ把握しやすくなります。これにより、経営計画や予算編成がシンプルになり、事業の運営においても資金繰りや投資計画を立てやすくなるでしょう。
また年俸制の場合、従業員に支払う給与は変動しないため、突発的な支出が発生しにくいこともポイントです。特に、月給制では、個人の成績や評価に応じてインセンティブや昇給が必要となるので、年間の人件費を正確に予測するのは困難です。
その点、変動要素が少ない年俸制であれば、年間の支出が大きく増減するリスクが抑えられ、予算編成や経営計画の策定がスムーズになります。
生産性向上に期待できる
年俸制は、個人の成果や能力に基づいて給与額が決定されるため、従業員のモチベーションや生産性を高める効果が期待できます。
年功序列型の賃金制度では、個人の業績よりも勤続年数や年齢が給与に反映されやすく、若手とベテランの間で給与格差が生じるのが一般的です。しかし年俸制では、成果を出せば年齢に関係なく高い評価を得られることから、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上が見込めます。
また、年俸制では、ベテランであっても成果が伴わなければ報酬が減額されることがあるため、従業員全体が目標達成を意識し、仕事への意欲が高まりやすくなるでしょう。このような成果重視の仕組みによって、従業員個々がパフォーマンス向上を意識することから、結果的に組織全体の業績向上にもつながりやすくなるのです。
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企業が年俸制を導入するデメリット
年俸制には多くのメリットがある一方、給与を柔軟に調整できない点や、成果主義によって従業員のモチベーションが下がる可能性があるなどのデメリットもあります。
それぞれのデメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
経営状況に応じて給与を変更できない
年俸制では、年度初めに年間の給与総額が決定されるため、企業の業績が悪化した場合でも年度内に給与額を変更することは基本的にできません。
例えば、予期せぬ売上減少やコスト増加に直面した場合でも、企業には事前に定めた年俸額を支払う義務があり、一方的な減給は認められないので注意が必要です。仮に年俸額の減額を従業員に申し出たとしても、従業員が同意しなければ減額は認められません。
こうした特性から、業績が悪化した際には固定費としての人件費が重くのしかかることになります。特に業績が不安定になりやすい業界においては、年俸制は大きなリスクともなり得るでしょう。
経営計画を立てやすいというメリットがある一方で、経営状況に応じた給与調整が難しい点は年俸制のデメリットといえます。
従業員のモチベーションが下がる可能性がある
年俸制では、1年間の給与総額が事前に決まります。その期間中の個人成績がいくら良くても、年俸額が変わることはありません。このため、従業員は自身の努力が評価に反映されるまでに時間がかかり、報酬面での実感が得られにくいことがあります。
また、成果が上がらなかった際には翌年度の年俸が減額されるプレッシャーもあり、過度なストレスにつながることも少なくないでしょう。さらに、評価基準が不明確であると、努力が給与に結びつかず不満がたまり、結果的に離職リスクが高まる可能性もあるため、企業側には公平かつ透明な評価制度の運用が求められます。
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年俸制に向いている業界・職種
年俸制は、特に外資系企業を中心に採用が進んでいる給与制度です。
終身雇用が一般的だった日本の企業とは異なり、海外の多くの企業では、個人の成果が評価され、給与に直接反映される「成果主義」の文化が根付いています。入社年数にかかわらず高いパフォーマンスを発揮した社員は、早期に昇進したり、高額な報酬を得たりするケースも珍しくありません。このような成果主義の考え方を支えるのが、年俸制なのです。
また、外資系企業だけでなく、国内企業においても、プログラマーやシステムエンジニア、デザイナーといった専門スキルを必要とする職種で年俸制が導入されるケースが増えています。これらの分野では、成果が目に見えて評価しやすいため、特に年俸制が適しているといえるでしょう。
なお、厚生労働省の調査によると、日本の企業でも約11.7%が年俸制を採用していることが報告されており、業界では不動産業、金融・保険業が約20%の導入率となっています。
参考:厚生労働省「賃金制度」
企業が年俸制を導入する際の注意点
年俸制についての理解が深まったところで、ここからは、企業が年俸制を導入する際に注意したいすべき点を3つ解説します。
残業代やボーナスに関する規定を明確化する
年俸制を導入する際に最も注意すべき点は、残業代やボーナスの取り扱いに関する規定を明確にすることです。
年俸制は月給制や時給制と異なり、年間の給与額が確定しており、支給額の内訳が不透明になりがちです。そのため「どのケースで残業代が発生するか」「ボーナスがどのように計算されるか」といった項目について、従業員がしっかりと理解できるようにしておかなくてはなりません。
特に、年俸額に残業代が含まれている場合には、どの範囲がみなし残業代としてカバーされるのかを契約書や就業規則に明示する必要があります。こうした規定が不明確な場合、従業員との間でトラブルに発展する可能性があるので、十分に注意してください。
人事評価制度の見直し
年俸制のように個人の業績を重視する賃金制度を導入する際には、従業員が納得できるよう、透明性のある評価基準を設定し、公正な人事評価を行うことが求められます。
評価基準が曖昧だったり、評価プロセスが不透明だったりすると、従業員は「なぜ自分が評価されないのか?」「評価基準が恣意的なのではないか?」といった不満を抱き、信頼関係が損なわれかねません。
そのため、評価基準の内容や評価プロセスの流れ、苦情があった際の対応フローなども明確に定め、透明性が高く、公正な人事評価制度を構築することが大切です。
労働組合や個々の従業員の同意を得る
年俸制を導入するに当たって就業規則を改定する場合は、労働組合や従業員と話し合い、合意を得ることが重要です。
年俸額を提示する際は、「どうしてその額になったのか」「評価基準に基づいているか」などを丁寧に説明し、従業員の納得を得た上で最終決定に至ることが重要です。年俸額の減額が必要になった際にも、合意を得ずに一方的に減額すると契約違反とみなされ、法的な問題が発生する可能性もあります。
まとめ
本記事では、年俸制の基本的な仕組みや月給制との違い、年俸制のメリットやデメリットについて解説しました。
年俸制は従業員との合意のもと、就業規則や雇用契約に適切な記載があれば、業種や職種を問わず導入が可能です。導入する際は、年俸制のメリットとデメリットを理解した上で、評価基準をしっかりと見直し、公正な制度運用を実現しましょう。
なお、できるだけ採用に要する手間やコストを抑えたい場合は、スキマバイト「タイミー」の利用がおすすめです。
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