
雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや注意点を分かりやすく紹介
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
労務管理の中で、「雇用契約書」は従業員と企業が契約内容に合意したことを示す書類です。労働条件を明確にしておけば、トラブルを未然に防げますが、記載事項や運用方法のミスが、思わぬリスクになる可能性もあります。
この記事では、雇用契約書について分かりやすく解説します。労務管理をより効率的に行う方法をぜひチェックしてください。
目次[非表示]
- 1.雇用契約書とは?法的効力はある?
- 2.雇用契約書を交わしていない場合はどうなる?
- 3.労働条件通知書と雇用契約書の違いは?
- 3.1.法的な作成義務の有無
- 3.2.署名押印の有無
- 3.3.記載事項が決まっているか
- 4.雇用契約書が労働条件通知書を兼ねるケースもある
- 5.雇用契約書に記載する項目
- 6.雇用契約書の不備によって生じるトラブルの具体例
- 6.1.1. 給与や労働時間に関するトラブル
- 6.2.2. 解雇や退職に関するトラブル
- 6.3.3. 業務内容の曖昧さによるトラブル
- 7.雇用契約書と労働契約の変更・解除について
- 7.1.労働契約の変更
- 7.2.労働契約の解除(解雇・退職)
- 8.雇用契約書を作成する際の注意点
- 8.1.正社員・契約社員・アルバイト・パートごとの内容を明記する
- 8.2.外国人労働者と雇用契約を結ぶ場合は必須項目を明記する
- 8.3.人事異動・転勤・職種変更の有無を明記する
- 8.4.労働時間制を検討して明記する
- 8.5.試用期間を明記する
- 9.まとめ
雇用契約書とは?法的効力はある?
雇用契約書とは、企業と労働者の間で結ばれる契約内容を明確にするために作成される書類です。労働条件や権利・義務を文章化して、後々トラブルの元となるあいまいな部分を減らします。
法律上、雇用契約自体は口頭の合意でも成立します。しかし、労働基準法によって、労働条件通知書を交付することは義務となっています。
雇用契約書に記載する事項は、法律に定めはありませんが、労働条件通知書の交付義務があることから、そこで定められた労働条件に関する重要事項を明確に記載するべきです(雇用契約書に法定事項が記載されていれば、別個に労働条件通知書を作って交付する必要はありません。)。
一般的には、給与(賃金)・就業場所・時間・業務内容・昇給・退職などが記載されます。これに会社と労働者が署名押印して契約が締結されます。
雇用契約書は法的効力を持つ書類です。労使間での紛争発生時には、証拠として活用される場合もあります。
アルバイトやパートと雇用契約書の関係について詳しく知りたい方は「アルバイトを採用する際にも雇用契約書は必要?書き方や注意点を解説」「パートの契約更新をする・しない時の注意点|無期契約についても解説」の記事も併せてご覧ください。
雇用契約書を交わしていない場合はどうなる?
雇用契約書を交わしていない場合であっても、労働契約は成立します。しかし、口約束のみの契約にはリスクがつきものです。
労働契約内容が書面で取り交わされていないと、雇用側と雇用される側の立場の違いなどによって、同じ言葉でも違った意味で受け取られることもあります。のちに「言った言わない」で、雇用契約トラブルになる可能性も少なくありません。
お互いに納得して雇用関係を結び、良好な労使関係を維持するためには、書面として雇用契約書を交わしておいた方がいいでしょう。
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労働条件通知書と雇用契約書の違いは?
雇用契約書と似た書類に労働条件通知書があります。労働条件通知書と雇用契約書は、どちらも労働条件を明確にする書類ですが、その目的や法的な役割が違います。それぞれの違いを理解して、適切に作成・運用してください。
法的な作成義務の有無
雇用契約が成立した際には、雇用主は労働条件を明示することが義務付けられています。労働条件通知書は、「労働基準法第15条」に基づいた、企業が労働者に対して必ず交付しなければならない書類です。違反した場合は罰則が適用されることもあります。
雇用契約書は、作成が法律で義務付けられていません。ただし、口頭での契約よりも契約内容がはっきりするため、トラブル防止の観点から推奨されています。
署名押印の有無
労働条件通知書は、企業が一方的に作成し、署名や押印はいりません。これに対し雇用契約書は、企業と労働者双方が労働条件に合意した証明として、署名押印が必要です。
労働条件通知書は労使の合意が必要ない書類ですが、雇用契約書は労使の合意を必要とします。つまり、トラブルが発生した場合に、雇用契約の際に労働条件に双方が合意していたことを証明できるのは、雇用契約書のみです。
記載事項が決まっているか
労働条件通知書は、労働基準法によって記載が義務付けられている項目が定められています。具体的には、労働契約の期間や就業場所、業務内容、賃金、労働時間など、労働者が安心して働けるための基本情報などです。
一方、雇用契約書にはこれらの法定事項に加え、企業独自の取り決めや補足的な内容を自由に盛り込めます。例えば、秘密保持契約といった内容も含めることが可能で、より詳細に雇用の取り決めができます。
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雇用契約書が労働条件通知書を兼ねるケースもある
雇用契約書と労働条件通知書は、それぞれ異なる役割の書類ですが、労働条件の通知という似たような役割を持っています。そのため、両方を「労働条件通知書兼雇用契約書」などの名称で、1つの書類として作成することも可能です。
この方法では、書類作成の手間も紙も約半分になることから、多くの企業では2つの書類をまとめて作成しています。ただし、労働基準法に定められた労働条件通知書に明示すべき絶対的明示事項(賃金、労働時間、契約期間など)が正確に記載されていることは必須です。
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雇用契約書に記載する項目
雇用契約書は、企業と労働者の間で雇用条件を明確にする書類ですが、トラブルを防ぐためにも、必要な事項を正確に記載する必要があります。法律で記載事項が定められているのは「労働条件通知書」ですが、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合、労働条件通知書に記載が求められる事項は雇用契約書にも記載しなければなりません。
労働条件通知書の記載内容は、法律によって記載が必要な絶対的明示事項、法律には明示されていないが記載するべき相対的明示事項、場合によって記載する必要のある事項に分かれます。
絶対的明示事項
絶対的明示事項は、法律により記載が義務付けられており、以下の項目が該当します。
- 労働契約の期間
- 就業場所・従事する業務の内容・業務の変更範囲
- 始業時刻と終業時刻
- 休憩時間
- 交代制のルール(労働者を2つ以上のグループに分ける場合)
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休日、休暇
- 賃金、計算ルール、割増賃金、支払方法、締切日、支払日、昇級ルール
- 退職や解雇に関する規定
- 有期契約の場合、更新の基準、更新の上限の有無と内容
- 有期契約の場合、無期転換の申込機会・無期転換後の労働条件
- 短時間労働者の場合、昇給の有無
- 短時間労働者の場合、退職手当の有無
- 短時間労働者の場合、賞与の有無
- 短時間労働者の場合、雇用管理についての相談窓口の担当部署名・担当者名など
相対的明示事項
相対的明示事項は、該当する制度があれば記載が必要となる項目です。以下のような場合があります。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算方法、支払方法、支払時期
- 臨時に支払われる賃金、賞与、精勤手当、奨励加給、能率手当について
※退職手当を除く - 最低賃金額
- 労働者に負担させる食費、作業用品など
- 安全、衛生に関する事項
- 職業訓練
- 災害補償および業務外の傷病扶助
- 表彰、制裁に関する事項
- 休職に関する事項
その他必要事項
その他、以下のような項目も雇用契約書に記載すれば、意思の疎通がしやすく認識の齟齬(そご)が起こりにくいでしょう。
- 副業が許可される場合の条件や注意事項
- 社内規則の順守義務: 服装やマナーなど、労働者に守ってもらいたい具体的な内容
- 機密保持契約や競業避止義務に関する内容
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雇用契約書の不備によって生じるトラブルの具体例
雇用契約書の不備は、労使間での信頼関係を損ね不信感につながりやすいだけでなく、深刻なトラブルの元にもなります。ここでは、具体的な例を挙げて、リスクを解説します。
1. 給与や労働時間に関するトラブル
終業後に勉強会を開催した場合など、雇用契約書に残業代の支給条件が明記されていなければ、労働者は「残業代が支給される」と考えていたのに支給されないなど、給与のトラブルが発生するかもしれません。
2. 解雇や退職に関するトラブル
「解雇予告期間」や「退職金の有無」が曖昧に設定されている場合、労働者が不当解雇を訴えたり、企業が不要な賠償請求を受けたりするリスクがあります。
3. 業務内容の曖昧さによるトラブル
業務内容が明確に記載されていない場合、労働者が「契約外の業務を押し付けられた」と感じる場合があります。一方で、企業側も「期待していた業務を実施していない」と不満を持ち、評価を下げるなどして、労働意欲の低下や退職につながることもあります。
雇用契約書と労働契約の変更・解除について
雇用契約書は、労働契約の内容を明確にする重要な書類ですが、内容を変更したり、解除したりするケースもあるでしょう。ここでは、労働契約の変更と解除について説明します。
労働契約の変更
業務内容や勤務条件、勤務時間の変更など、労働契約を変更する場合があります。労働契約の変更は、同意の必要性によって2つに分けられます。
労働者の合意が必要となる場合は、給与の減額や労働時間の大幅な変更など、労働者の生活や権利に直接影響を与えるケースです。この場合、必ず労働者の同意が必要になります。
一方で、就業規則に基づいた合理的な範囲内での変更は、企業側が一方的に行っても問題ないケースもあります。例えば、経営上の必要性に応じた部署の異動などです。ただし、変更内容が労働者にとって不利になる場合は、その正当性を説明し、納得を得るよう努力してください。
労働契約の解除(解雇・退職)
労働契約の解除には、企業からの解雇と労働者からの申し出による退職があります。それぞれのケースで注意すべきポイントを押さえておくことが重要です。
解雇は、企業が労働契約を終了させる行為で、多くの法的な制約があります。正当な理由なく解雇すると、不当解雇とみなされ、労働者から法的な訴えを受けるかもしれません。
解雇理由には、業務上の不適格性や企業の経営悪化などが含まれますが、具体的かつ合理的な理由が必要です(労働者から争われた場合、使用者が超えなければいけないハードルは高く設定されています。)。また、解雇予告や退職金の支払いなど、法的な手続きの順守が求められます。
退職は労働者側からの労働契約の終了で、申し出によるものです。退職は基本的に労働者の自由ですが、会社側は引き継ぎのための期間を設けるなど、円滑な退職手続きが行われるよう配慮が必要です。
雇用契約書を作成する際の注意点
ここからは、雇用契約書を作成する際の注意点について解説します。
正社員・契約社員・アルバイト・パートごとの内容を明記する
雇用契約書には、それぞれの雇用形態に適用される制度に沿った内容を記載しなければなりません。
雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合には、契約社員をはじめとする有期雇用労働者や、パート・アルバイトなどの短時間労働者は、正社員よりも多くの記載事項が必要です。雇用形態ごとに記載すべき内容を確認し、漏れのないように注意してください。
外国人労働者と雇用契約を結ぶ場合は必須項目を明記する
外国人労働者との契約では、内容によっては在留資格の取り消しなどにもつながりかねません。日本人と同様に始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換・退職に関する事項を記載するとともに、以下の項目についても気をつけて記載しましょう。
- 就業場所、業務は在留資格申請書類の内容と矛盾がないように注意する
- 賃金、計算および支払方法、賃金の締切日、支払の時期、昇給に関する項目
- 雇用契約の期間は外国人の「在留期間」と合わせる
- 研修内容は「業務に必要な内容の研修」であることと「研修期間」を明記する
人事異動・転勤・職種変更の有無を明記する
人事異動や転勤、職種変更の可能性がある場合は、雇用契約書に人事異動や転勤、職種変更の可能性についても明記しておいてください。労働者は、あらかじめ納得して契約でき、労務トラブルを回避できます。転勤命令の同意が得られず業務が停滞するリスクも低下します。
転勤が発生する場合、転勤範囲や費用負担の有無を具体的に記載します。また、職種変更については、その理由や条件を記載しておけば、労働者の不安なく働けるでしょう。
労働時間制を検討して明記する
雇用契約書には、労働時間に関する取り決めを明記します。通常の労働時間制のほか、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制、みなし労働時間制、固定残業制など、従業員との認識のズレを防ぐよう詳細に記載しましょう。
例えば、フレックスタイム制の場合、コアタイムやフレキシブルタイムの時間帯が必要です。また、残業の可能性がある場合、その上限時間や割増賃金率について記載します。
試用期間を明記する
試用期間の設定がある場合は、その期間や条件を雇用契約書に明記します。試用期間中の賃金や待遇が本採用後と異なる場合には、詳細に記載し認識に齟齬がないようにする必要があります。
また、試用期間終了後に本採用となる基準も具体的に記載して、試用期間中の労働者が必要以上に不安にならなくて済むように配慮します。試用期間中の解雇条件についても明記しておいてください。
まとめ
雇用契約書は、企業と従業員の間で労働条件や義務を明確にする書類です。労働条件通知書と兼ねて作成することもできます。作成の際には、記載すべき事項を網羅し、労使間のトラブルを防止しましょう。
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