
採用戦略フレームワーク:成功への道筋を体系的に構築する
競争激化する現代において、採用は企業成長の重要な要素です。しかし、場当たり的な採用活動では、求める人材の獲得は困難でしょう。本記事では、事業目標達成に貢献する人材を「戦略的」に獲得するためのフレームワークを解説します。体系的な採用戦略を構築し、組織の長期的な成功へと導きましょう。
採用戦略とは
採用戦略とは、企業や組織が事業の目標を達成するために、新たな人材を計画的に獲得し、組織に適合させるための一連の取り組みです。単に人員を補充するだけでなく、長期的な視点から組織の成長に貢献できる人材を確保することを目的としています。
採用戦略は、企業が目標を達成するために必要な人材像を明確にし、その人材を効率的に獲得するための道筋を示すものです。戦略なき採用活動は、場当たり的な対応に終始し、結果としてコスト増、目標未達のリスクを高めます。さらに、採用のミスマッチや早期離職といった問題を引き起こす可能性もあります。
採用戦略を構成する主な要素は以下の通りです。
- 将来的な人材ニーズの予測
- ターゲットとなる人材像の明確化
- 最適な採用チャネルの選択
- 効果的な選考プロセスの設計
- 魅力的な採用ブランディングの構築
採用戦略で得られる3つのメリット
綿密な採用戦略を策定することで、企業は以下の3つの重要なメリットを享受できます。
- 求める人物像に合致した人材を効率的に採用できる
- 採用プロセス全体の効率化
- 事業戦略の実現を加速させる
採用活動の展開 以下に、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
求める人物像に合致した人材を効率的に採用できる
適切な採用戦略を構築することで、企業は求める能力や資質を備えた人材を効率的に獲得することが可能になります。戦略がない場合、採用活動は手探り状態となり、費用対効果が悪化し、採用目標を達成できない可能性が高まります。告知のタイミングや媒体選定の誤りは、採用の質の低下を招き、早期離職につながるリスクも高まります。
採用戦略がない場合のリスク:
- 採用コストの増大
- 採用目標の達成困難
- 採用の質の低下
- 採用後の早期離職
適切な採用戦略を策定し実行することで、企業は競争優位性を確立し、持続的な成長と成功を実現することができます。
採用業務が効率化される
明確な採用戦略がない場合、進捗状況を把握するための具体的な目標設定が困難になります。進捗管理が不十分な状態では、計画の遅延や予算超過といった事態に直面しやすくなります。
例えば、「日々の業務に忙殺され、採用活動の開始時期を逸してしまった」り、「採用目標人数に達しないため、高額な追加費用を投じて追加の対策を講じざるを得なくなった」といった状況に陥ることがあります。
採用戦略に基づいて進捗管理を徹底することで、問題が発生した場合でも、早期段階で適切な対応策を講じることが可能になります。品質を維持しながら柔軟な対応ができるため、不要な追加コストや工数の増加リスクを低減できます。
事業戦略実現を後押しする採用活動
事業計画の成功には、適切な人員配置が不可欠です。従業員数の不足や、求めるスキル・能力を持つ人材の不足は、企業成長の足かせとなり、組織全体の弱体化を招く恐れがあります。
採用戦略は、事業計画に基づいて具体的な採用計画を立てる際の羅針盤となります。迷いや判断の難しい状況においても、事業計画と一貫性のある意思決定をサポートします。
採用戦略を持たずに採用活動を進めると、目の前の問題に場当たり的に対応してしまい、結果として事業計画との整合性を欠いた行動につながりやすいため注意が必要です。
採用戦略の鍵は、必要な人材と求める人材を明確に定義することです。人材要件定義シートなどを活用することで、より明確な戦略を立てることが可能になります。
採用戦略策定の手順
採用戦略の策定は、以下の手順で進めます。各項目のポイントを参考に、自社の採用戦略策定にお役立てください。
- 採用戦略策定チームの編成
- 採用計画の策定
- 採用ターゲットの明確化
- 採用基準の設定
- 採用スケジュールの確定
- 自社の魅力を明確化
- 予算に応じた採用手法の選定
各ステップについて詳細を解説します。
採用戦略策定チームの編成
まず、採用戦略を策定するためのチームを組織します。採用戦略は事業計画と密接に関わるため、事業計画への深い理解を持つ経営層や上級管理職などを含めることが重要です。
企業規模が小さい場合や、採用担当者が会社全体の状況を十分に把握している場合は、採用担当部門のみで構成しても問題ありません。
チームで採用戦略を策定する目的は、特定の部門や個人の意見に偏らないようにするためだけでなく、策定した戦略が実行可能なものとなるよう、関係者全員が主体性を持つためでもあります。
採用の実務担当者だけでなく、配属予定部門の担当者、社員教育担当者、若手社員など、多様なバックグラウンドを持つメンバーをチームに含め、オープンな議論を行うことで、幅広い視点からの採用戦略の検討が可能になります。
チーム構成のポイントは以下の通りです。
- 経営層または上級管理職を参加させる
- 採用実務担当者だけでなく、多様な背景を持つメンバーを含める
- 自由な意見交換ができる場を設ける
全体の方向性などの大局的な要素を定めた後、採用実務担当者が専門的な知識を必要とする詳細な戦略を策定するとスムーズです。また、認識のずれを防ぎ、状況の変化に柔軟に対応するため、チーム内での情報共有を定期的に行うようにしましょう。
必要に応じて、RPO事業者などの外部専門家やコンサルタントをチームに迎え、新たなアイデアや最適な手法を検討することも有効です。
採用計画の策定
次に、いつ、どのようなスキルや経験を持つ人材を採用する必要があるのかを明確にした、採用計画を策定します。
採用計画は、事業戦略への深い理解がなければ策定できません。まず、事業戦略の目標や期間などに基づき、どのような人材配置が求められるのかを予測します。
「事業戦略を実現するためには、どのようなスキルや経験を持つ人材が何人、いつまでに必要なのか」「現在自社にいる人材の育成や異動を考慮すると、何人不足するのか」「新規採用では、どの程度のスキルや経験を持つ人材が何人必要になるのか」といった点を明確にします。
上記のように、既存の人材で不足する部分を新規採用で補えるように計画を立てます。計画立案の際には、新規採用の目標人数、募集人数、入社時期、予算、各選考プロセスの通過率などを決定しておきます。
求める人物像を明確にする
次に、貴社が求める人物像を具体的に定義していきます。ここでは、具体的な例を参考にしながら、人物像を明確にする方法を解説します。
事業戦略
新たな事業として、AI技術を駆使した顧客管理システムを開発し、3年後の売上目標を10億円と定める。
採用計画
2024年8月までに、現在の従業員数◯◯名に対し、◯◯分野での経験を持つ人材を3名追加する。
求める人物像の明確化
上記の採用計画を踏まえ、どのようなスキルや経験を持つ人材が最適かを検討します。
ペルソナ分析(ターゲット像の明確化)
詳細なフレームワークについては後述しますが、ここでは採用したい人材をより鮮明にイメージするためのペルソナ設定について説明します。
例えば、エンジニアの採用を検討している場合、以下のような人物像を想定します。
- 年齢:20代後半
- 性別:男性
- 居住地:東京都
- 最終学歴:大学卒業
- 職務経験:3年以上の実務経験
- スキル:Python、TensorFlow、Kerasの知識
- 趣味:機械学習に関する情報収集
価値観:技術革新への貢献
このように詳細なペルソナを設定することで、ターゲット人材がどのような情報源を利用し、どのようなアプローチが効果的かを把握することができます。これにより、より効果的な採用戦略を構築することが可能になります。
採用基準の明確化
具体的な人物像が明確になったら、採用の合否を判断するための基準を定めます。
採用基準の設定は、以下の4つのステップで進めます。
- 評価項目の選定
- 評価基準の設定
- 優先順位付け
- 評価項目・採用基準の共有と面接における質問項目の準備
各ステップについて詳しく見ていきましょう。
1. 評価項目の選定
応募書類、適性検査、面接など、各選考プロセスにおいてどのような点を評価するのかを決定します。以下に例を挙げます。
書類選考
- 最終学歴
- 職務経歴詳細
- 専門スキル
- 保有資格
- 自己PRの内容
適性検査
- パーソナリティ
- 潜在能力
- ストレス耐性度
面接
- 意思伝達能力
- 筋道を立てた思考力
- 課題解決能力
- チームワーク
- 統率力
- 入社意欲
業界や職種によって重視する点は異なりますが、自社の採用活動に最適な評価項目の設定が不可欠です。
2.評価基準の明確化
続いて、選定した各項目に対する評価基準を明確にします。数値化、または具体的な言葉で表現し、関係者間で認識の相違がないように定めることが重要です。
例えば、積極性であれば「自発的に計画を立案し、実行する力がある。実績あり」「計画の立案は可能だが、実行には支援が必要」「他者の支援があれば計画を提案できる」といったように、誰が見ても判断できる基準を作成します。
3.優先順位の設定
複数の評価項目の中から、採用選考において特に重視する項目、つまり優先順位を決定します。
配属先の責任者と、最重要視する項目について認識を共有しておくことが大切です。優先度に応じて点数配分を調整することで、選考結果の判断が円滑に進みます。
4. 評価項目・採用基準の共有と面接での質問設計
採用におけるミスマッチを減らすには、採用に関わる全員が評価の基準をしっかりと理解することが不可欠です。まずは、各選考段階でどの評価項目に注目し、どのような基準で判断するかを明確にし、関係者全員に共有しましょう。
適切な評価を行うには、限られた面接時間の中で効果的な質問を投げかける必要があります。求める回答を引き出すための質問を事前に準備することが重要です。
面接には、面接官に質問内容を委ねる「非構造化面接」と、事前に全員共通の質問を設定する「構造化面接」があります。それぞれの長所と短所を考慮し、自社の状況に最適な方法を選択しましょう。
採用スケジュールを明確にする
次に、採用計画で決定した採用時期に基づいて、具体的な採用スケジュールを策定します。
以下の4つのステップで進めます。
- 各部署への確認
- 面接官のスケジュール確保
- 採用手法の選択
各部署によって選考に必要な時間が異なる可能性があるため、事前に確認を行い、必要なリードタイムを設定します。入社日から逆算し、設定したリードタイムが適切かどうかを判断してください。
面接官が面接に費やせる時間を把握します。採用計画で定めた採用目標を達成するために必要な選考日程と、確保すべき面接官のスケジュールを想定し、決定します。そして、その情報を基に次のステップへ進みます。
上記の所要時間と、採用市場の動向や最新トレンドを踏まえ、採用時期から逆算して、どの採用手法をいつから開始するか、また、計画通りに進まない場合にいつ別の手法に切り替えるかなど、採用活動全体のスケジュールを具体的に計画します。
初めて採用活動を行う場合は、これらの想定が難しいこともあります。そのため、求人媒体社や人材紹介会社などから積極的に情報を収集し、計画の精度を高めるようにしましょう。
自社の強みを明確化する
自社の強みを言葉で明確に表現することは非常に重要です。多くの企業が、自社の本当の強みを十分に理解していないケースが見受けられます。
自社の強みを明確にするためには、競合他社との比較検討や、求職者の視点から見た企業の魅力的なポイントを想定することが有効です。最近入社した社員に意見を聞いてみるのも良いでしょう。
もう一つの重要な点は、組織全体で強みに対する共通認識を持つことです。全員が同じ理解を共有することで、企業ブランディングや面接の際に一貫性のあるメッセージを伝え、誤った情報の発信を防ぐことができます。
強みを明確化することは、採用活動にも様々なメリットをもたらします。
- 応募者の意欲向上
- 採用ミスマッチの防止
- 採用後の定着率向上
予算に合わせて採用手法を選ぶ
最後に、採用計画時に決定した予算を考慮しながら、具体的な採用手法を選定します。最適な採用媒体は、募集する職種や採用人数によって異なります。
採用予算には限りがあるため、各採用手法に割り当てられる予算を事前に計画しておくことが重要です。予算オーバーによって予定していた採用活動が実施できなくなると、事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
予算を考慮した採用手法の選択について、以下の3つのポイントをご紹介します。
- 優先的に採用したい職種を決定する
- 費用別に複数の採用方法を検討する
- 採用手法に関する最新情報を収集する
募集ポジションの優先順位付け
採用計画を策定する上で、事業戦略上重要なポジションを明確にし、優先度を設定することが重要です。特に優先度の高いポジションの採用活動が停滞した場合に備え、代替案を実行するタイミングや判断基準を事前に定めておくことが肝要です。
例えば、「採用が困難になった場合、優先順位〇位以下の採用予算を充当して人材紹介サービスを利用する。その判断は、他の採用手法である〇〇の効果測定結果を踏まえて行う」といった具体的な基準を設けることが有効です。
予算に応じた採用手法の選定
採用手法には様々な費用帯が存在するため、予算を考慮する際には、投資効果の高い手法と低コストで実施できる手法を組み合わせることで、費用対効果を最大化できます。
ただし、効果を得るためには、一定の投資が必要となる場合もあるため、慎重な検討が必要です。例えば、最も安価な広告プランを利用した結果、検索順位が低く、期待した応募数が得られないといったリスクも考慮する必要があります。
採用に関する最新情報の収集
採用手法のトレンド、ターゲット層に効果的な媒体、新たな採用手法など、常に最新情報を収集するように心がけてください。
人材不足を背景に、従来よりも母集団形成にコストがかかる傾向があります。採用の専門家からアドバイスを得ることも有効な手段です。
採用戦略策定に役立つ6つのフレームワーク
採用戦略を構築する際に役立つ、以下の6つのフレームワークをご紹介します。
- ペルソナ分析
- ファネル分析
- 4C分析
- 3C分析
- SWOT分析
- TMP設計
これらのフレームワークは、TMP設計を除き、もともとマーケティング分析の手法として使用されていたものを、採用活動に応用したものです。
ペルソナ分析
ペルソナ分析は、マーケティング戦略において不可欠なフレームワークです。年齢、性別、居住地、家族構成、職業、収入、趣味、ライフスタイルといった属性で顧客を分類し、自社製品やサービスを利用する顧客層の行動特性や購買パターンを深く掘り下げて分析します。
採用活動におけるペルソナ分析では、上記の要素に加え、過去の職務経験などを考慮して、理想的な人物像(ペルソナ)を具体的に設定します。そして、そのペルソナが興味を持つ業界、職種、キャリアパスなどを想定し、採用メッセージに魅力的な訴求ポイントを盛り込むことで、求める人材の獲得成功率を高めることを目指します。
例えば、エンジニアのペルソナを設定する際には、以下のような項目を詳細に分析します。
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 最終学歴
- 職務経歴
- スキルセット
- 趣味
- 価値観
これらの情報を基に、具体的な人物像を鮮明に描き出し、その人物がどのような企業文化や待遇に魅力を感じるかを分析することが重要です。
ファネル分析
ファネル分析は、マーケティングの世界で広く用いられる手法であり、製品やサービスの認知から購入に至るまでのプロセスを段階的に分解し、各段階での顧客離脱率とその原因を特定し、購入を促進するための戦略を策定します。
採用活動におけるファネル分析は、応募から採用までの各段階における候補者の推移を分析し、改善点を見つけ出すのに役立ちます。採用戦略においては、各選考段階でどの程度選考を進めるのが適切か、そのためにはどのような採用手法を用いるべきかなど、具体的な施策を立案する上で重要な指針となります。
また、過去の採用活動を振り返り、ボトルネックを特定するためにも有効な分析手法です。
例として、「応募、書類選考、適性検査、一次面接、二次(最終)面接、内定、入社」というファネルを設定した場合を考えてみましょう。
適性検査と一次面接で大幅な絞り込みを想定している場合、十分な数の応募者を集める必要が生じます。そのため、求人広告の掲載期間を延長したり、求職者が重視する働き方に焦点を当てたコンテンツを作成するなどの工夫が求められます。
一方、応募者数が十分に確保できる見込みがある場合は、求人情報に求める人物像やスキルを明確に記載し、応募数をある程度絞り込むといった、選考段階ごとの目標人数に合わせた戦略が不可欠です。
4C分析
4C分析とは、顧客価値(Customer Value)、費用(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)という4つの要素に着目する分析手法です。これらは顧客が製品やサービスを選択する際に重視するポイントとなります。
マーケティングにおいては、これらの4Cを詳細に分析することで、顧客のニーズや要望を深く理解することが可能になります。例えば、顧客がどれだけの価値を感じているか、価格は適切か、使いやすさはどうか、企業とのコミュニケーションに満足しているかなどを評価します。
採用活動に応用する場合、採用ペルソナをより深く理解し、最適な採用手法の選定、効果的な採用フローの設計、そして求職者に響く情報の選択に役立てることができます。
例えば、応募者が企業に求める価値が「成長の機会」である場合、充実した研修制度や明確なキャリアパスを整備するなどの対策が考えられます。
3C分析
3C分析は、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から、市場と顧客のニーズ、競合の強みと弱み、自社の強みと弱みを分析し、自社が置かれている状況を把握し、取るべき戦略を明確にするためのフレームワークです。
採用活動に適用する場合、以下の要素に置き換えることができます。
- Customer(候補者):どのようなスキルや経験を持つ人材が市場に存在するか、どのような企業文化や待遇を求めているか
- Competitor(競合):競合他社はどのような採用戦略を展開しているか、どのような人材を獲得しているか
- Company(自社):自社の強みと弱みは何か、どのような人材を必要としているか
これらの情報を総合的に分析することで、自社がどのような採用戦略を採用すべきかを明確にすることができます。
SWOT分析
SWOT分析は、企業が置かれた状況を、外部環境と内部環境の両面から分析し、強み、弱み、機会、脅威を明確にするためのフレームワークです。それぞれの要素の頭文字を取り、SWOT分析と呼ばれています。
内部環境要因:採用活動への適用
- 強み(Strengths):自社の魅力、競合他社に対する優位性
- 弱み(Weaknesses):改善点、競合他社に劣る点
外部環境要因:採用活動への適用
- 機会(Opportunities):採用市場における有利な外部要因、活用可能なトレンド
- 脅威(Threats):採用活動における不利な外部要因、警戒すべきリスク
内部環境と外部環境の両側面から客観的に自社を評価することで、採用活動において今後取り組むべき課題や、実行すべき戦略が明確になります。
TMP設計
TMP設計は、採用活動における戦略立案のフレームワークとして活用されており、以下の3つの要素の頭文字で構成されています。
- Target(採用ターゲットの明確化)
- Message(採用メッセージの策定)
- Process(採用プロセスの構築)
まず、TMP設計を用いて、採用ターゲットを具体的に設定します。性別、年齢層、必要な経験やスキル、潜在的な能力、キャリアに対する志向などを定義します。
次に、採用メッセージを策定します。設定した採用ターゲットに響くようなメッセージを検討し、求人媒体、SNS、説明会、面接、座談会などのあらゆるチャネルを通じて伝えます。自社の特徴を伝える際も、ターゲットに応じて訴求すべき点や表現方法を工夫することが重要です。
採用ターゲットを想定した上で、採用プロセスを設計します。ターゲットが転職市場で人気が高い人材である場合、面接時間の柔軟な対応、迅速な合否通知、オンライン面接の導入など、ターゲットに合わせた最適な採用プロセスを構築します。
TMP設計を活用することで、より緻密な採用戦略を策定することが可能になります。
採用戦略策定における留意点
採用戦略を立案する上で重要な注意点は、市場の動向、求職者のニーズ、そして採用したい人物像について深く理解すること、そして、採用戦略の実行と改善をセットで検討することの2点です。
競争優位性を確立し、計画の実効性を高めるためにも、これらは不可欠な要素となります。
ターゲット視点の欠如は、机上の空論を生む
採用戦略の策定には、現在の求人市場における自社の立ち位置、求職者が何を求めているのかを把握した上で、採用ターゲットを設定し、そのターゲットが重視するポイントを深く理解することが不可欠です。
ターゲットの視点を取り入れずに採用戦略を練ると、理想ばかりが先行し、実際の採用活動との間に大きなギャップが生じやすくなります。結果として、採用計画は頓挫し、予算も浪費されることになりかねません。
ターゲット不在の採用戦略の例
- 求職者が習得したいスキルと、企業が求めるスキルにズレがある
- 求職者が希望する働き方と、企業が提示する働き方が合致しない
- 求職者が重視する企業文化と、実際に企業が持つ文化が異なっている
これらの要素を理解した上で採用戦略を立案すれば、計画的かつ効率的に人材を獲得しやすくなり、事業戦略を力強く推進する採用活動を実現できます。
実行と改善を一体で捉える
もう一つ重要な点は、採用戦略は策定して終わりではなく、実行しながら継続的に情報収集や分析を行い、常に改善を心掛けることです。定期的に戦略と実際の結果を比較分析することで、入社後に活躍する人材の共通点や特徴、入社の決め手となった自社の魅力、選考過程で好印象を与えたポイントなどを把握できます。
このようなデータを蓄積していくことで、年々ペルソナ分析や3C分析といった分析の精度が向上し、より効果的な採用戦略の策定につながります。
常に実行と情報収集を繰り返しながらPDCAサイクルを回し、企業の成長を牽引する人材の採用を目指してください。
まとめ
人材採用は、採用する人材の経験、能力、資質が企業の事業戦略と合致していなければ、企業と求職者の双方にとって不幸な結果を招きかねません。
採用戦略の策定を通じて、採用活動の確実性を高めていきましょう。リスクや課題の明確化、一貫性のある方針の共有など、活動を着実に実行できる基盤が構築されます。また、採用をゴールとするのではなく、入社後の丁寧なフォローアップと情報収集を行い、採用活動の改善に活かしてください。これらのサイクルを回していくことで、より効率的で最適な採用活動が実現するはずです。
採用戦略は、企業の成長に必要不可欠な要素です。今回ご紹介した考え方や手順を参考に、自社に最適な採用戦略を立案し、優秀な人材を獲得してください。
よくある質問
質問1:採用戦略の定義とは?
採用戦略とは、企業が求める人材を効率的に獲得するための総合的な計画です。組織の成長に不可欠な人材を確保し、長期的な成功に貢献するための、戦略的なアプローチと言えます。
質問2:採用戦略策定の利点は何ですか?
綿密な採用戦略を立てることによって、企業は、最適な人材の効率的な獲得、採用プロセスの合理化、そして事業目標達成を加速させる採用活動の実現、という3つの大きなメリットを享受できます。
質問3:採用戦略策定における留意点はありますか?
採用戦略を構築する上で重要な注意点は、市場の動向、求職者のニーズ、そしてターゲット人材に関する深い理解を持つこと、そして、採用戦略の実行と継続的な改善を一体として捉えること、の2点です。


