
人手不足バイトの現状と対策:今すぐできること
アルバイトの人手不足が深刻化しています。飲食業や小売業を中心に、「求人を出しても応募が来ない」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった声が後を絶ちません。人手不足は、サービスの低下や従業員の負担増加につながり、企業の存続をも脅かす問題です。本記事では、アルバイト人手不足の現状を分析し、企業が今すぐ取り組むべき対策を具体的に解説します。
アルバイト人手不足の現状
多くの会社がアルバイトやパート従業員の確保に苦労しています。株式会社帝国データバンクの調査によると、2024年12月の時点で「非正規雇用者の人員不足を感じている」と答えた企業は28.8%に達し、2018年10月以来で最も高い数値となりました。その背景には、新型コロナウイルス感染症の影響下における医療・介護分野への就業者の増加や、契約期間満了後の再雇用が進んでいない状況などが考えられます。
*出典:帝国データバンク.人手不足に対する企業の動向調査(2024年).https://www.tdb.co.jp/resource/files/assets/d4b8e8ee91d1489c9a2abd23a4bb5219/5b7a109e947645e6a7d718e0010d755b/20240822_%E4%BA%BA%E6%89%8B%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AE%E5%8B%95%E5%90%91%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%882024%E5%B9%B47%E6%9C%88%EF%BC%89.pdf
人手不足が深刻な業界:飲食・宿泊業
特に状況が深刻なのは、飲食業です。アルバイト人材について「不足している」と感じている企業の割合が最も高かった業種は「飲食」で67.5%となり、前年の同じ時期と比較して6.8ポイント増加しており、他の業種よりも際立って人手が不足している状況が伺えます。2024年時点で「非正規雇用者の人員不足を感じている」と回答した企業は、飲食店で73%、小売では56.5%と、他の業種と比べても高い割合を示しています。
アルバイト人手不足の根本原因
アルバイトやパートの人手不足には、様々な要因が複雑に絡み合っています。根本的な原因としては、労働人口の減少と、必ずしも十分とは言えない労働条件が挙げられます。少子高齢化による生産年齢人口(15歳から64歳まで)の減少は、労働市場全体における働き手の不足を招き、アルバイトやパートの人手不足に大きな影響を与えています。内閣府が発表した令和4年版高齢社会白書によると、少子高齢化の影響で日本の生産年齢人口は1995年に8716万人でピークを迎え、総人口も2008年に1億2808万人をピークに減少傾向にあり、人手不足の深刻化に大きく影響していると考えられます。
出典:内閣府.令和4年版高齢社会白書.https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/index.html
労働条件と職場環境の重要性
労働条件や職場の環境も、アルバイト・パートの人材不足に大きく影響を与えます。ある大手人材サービス会社の調査によると、退職理由の上位には、職場の人間関係、シフトの融通、休日、給与などの労働条件が挙げられています。一方で、勤務を続ける理由としては、給与などの条件面が最も多く、次いで職場の人間関係や雰囲気の良さが挙げられています。また、職場環境とほぼ同じくらい、「仕事内容の難易度が適切である」という回答も見られました。業務において過度な要求をすることは、アルバイトやパートの従業員にとって負担となることが考えられます。労働条件や職場環境を改善していくことは、従業員の定着率を高め、人手不足の解消につながるはずです。
求人増加と有効求人倍率の上昇
人手不足の深刻化には、求人数の増加も影響しています。アルバイト市場は2020年4月頃から新型コロナウイルスの影響を受け始め、「飲食物調理」や「接客・給仕」といった職種の有効求人倍率は2021年に大きく低下しました。しかし、2023年2月には、有効求人倍率はコロナ禍前の2019年の水準には届かないものの、2021年と比較すると大幅に上昇しました。2024年3月時点で1.31倍となっています。。このように有効求人倍率が上昇すると、企業間で人材獲得競争が激化し、人手不足はさらに深刻になります。
出典:マイナビ.アルバイト市場 総括レポート 2024年版(2023年度実績)
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20240618_80866/
賃上げの現状と課題
企業は賃上げの重要性を認識し、対策を実行していますが、まだ課題が残っています。2022年に企業がアルバイト人材確保のために実施した施策として、[ホールキッチン・調理補助(飲食・フード)]と[接客(ホテル・旅館)]のいずれの職種でも「給与の増額」が最も多く挙げられました。しかし、業種別の2022年賃金構造基本統計調査の結果を見ると、非正規社員の賃金は産業全体で平均22万1300円であるのに対し、飲食・宿泊業は18万5000円と、非正規社員の中でも特に低い水準に留まっています。賃上げは進んでいるものの、十分とは言えず、更なる改善が求められます。
出典:厚生労働省.令和四年 賃金構造基本統計調査.https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/
休日休暇の拡充と多様な働き方の推進
人材を確保するためには、休日や休暇制度の充実が不可欠です。アルバイトやパートとして働く理由として、「家事、育児、介護などとの両立がしやすい」という点が上位に挙げられ、特に主婦層においてはその傾向が顕著です。多様な働き方のニーズに応えるため、短時間勤務制度やフレキシブルな勤務体系を導入することが有効です。育児や介護を理由とした離職を防ぐために、育児・介護休業法の改正に沿って、アルバイトやパート社員も休暇を取りやすい環境を整備することが重要となります。
まとめ
アルバイトやパートの人手不足は、労働人口の減少、労働条件、求人件数の増加、働き手の価値観の変化など、様々な要因が複雑に絡み合って発生しています。人手不足を解消するためには、給与水準の引き上げ、休日休暇の充実、柔軟な働き方の提供、効果的な採用手法の導入など、総合的な対策が求められます。変化する労働市場に柔軟に対応し、働きやすい職場環境を整備することで、人材の確保と定着を図り、人手不足の解消を目指しましょう。


