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採用基準:最適化で採用成功へ導く

はじめに:採用基準を定めることの重要性

多くの企業が、採用活動において、なかなか採用に至らない、入社後の早期退職が多い、あるいは面接担当者によって評価が大きく異なるといった問題に直面しています。これらの問題を解決し、採用活動をより効果的にするためには、明確な採用基準を設定することが非常に重要です。採用基準とは、応募者の採用の可否を判断するための尺度であり、評価の軸となるものです。

採用基準を明確にすることの利点

採用基準を明確にすることで、企業は以下のような具体的な利点が得られます。具体的には、企業が求める人物像とのずれを防ぎ、公平な選考を実施、早期退職を防止し、採用活動全体の効率を高めることが可能になります。

ミスマッチの防止と人材の適材適所配置

明確な採用基準があれば、企業で能力を発揮できる可能性のある人材が不採用になったり、採用されたもののすぐに辞めてしまったりするようなミスマッチのリスクを減らすことができます。採用基準が明確であれば、複数の面接官がいる場合でも、一貫性があり公平な評価が可能となり、採用された人材をその能力に合った部署に配置できます。  
採用基準が曖昧な場合、人事担当者と現場の管理職で求める人物像にずれが生じ、面接官の個人的な意見が重視されてしまうことがあります。その結果、募集している職務に必要な能力を持たない人材が採用され、早期退職や職場への定着の遅れにつながる可能性があります。

選考プロセスの最適化と効率の向上

採用基準として設定した項目をもとに、どのような選考方法であれば応募者を正しく評価できるか、どのような質問をすれば応募者の適性を見抜けるかを検討することで、選考プロセスをより良くすることができます。無駄な選考を減らしたり、時間をかけるべき段階が分かったりするため、採用活動の効率化も期待できます。  
採用基準を明確にしておくことで、選考プロセスごとに異なる面接官が担当したり、担当者が退職したりしても評価の基準を統一しやすくなり、選考が特定の人に偏ることを防ぐことができます。新しい面接官への引継ぎが簡単になるだけでなく、担当者が複数人になっても採用基準を確認すれば、業務に支障が出なくなり、採用活動の効率向上につながります。

最適な採用方法の選択

採用基準を定めることは、どのような人材を求めているのかをより明確にし、採用活動全体を見直す良い機会となります。求める人物像がはっきりすることで、企業にとって最適な採用方法を選ぶことができるようになります。

早期退職を防ぐ

採用基準がない場合、募集している職務にふさわしくない人材や、能力が過剰な人材を見抜くことが難しくなります。もし採用基準がなければ、仕事内容と給与が見合わない、あるいは仕事についていけないといった理由で、早期に退職する人が増える可能性があります。人材の定着を促進し、採用活動にかかる手間を減らすためにも、採用基準をしっかりと定めることが重要です。

採用基準の3つのポイント

採用基準は、主に「知識・スキル」、「思考力・行動特性」、「人柄(意欲・価値観・考え方)」の3つのポイントに分けられます。これらの要素を総合的に評価することで、より的確な採用判断を行うことができます。

知識・スキル:目に見える能力の評価

学歴、資格、専門知識、コミュニケーション能力など、候補者が後から身につけたものを指します。学習や訓練によって習得できるものが多く、「目に見える能力」とも言えます。これは、誰が見てもわかる一般的な能力のことです。候補者自身も自分の強みとして認識していることが多く、評価基準が明確であれば、選考で見極めることは難しくありません。  
面接でコミュニケーション能力を見極めて採用を判断するには、学生時代にどのようなことに取り組んだかを尋ね、そこでどのような役割を果たし、どのように問題を解決したかを詳しく聞くと良いでしょう。

思考特性・行動特性:人物像の理解

思考の癖や行動のパターンは、「人物タイプ」として捉えられます。これは、知識やスキルとは異なり直接的な評価は難しいものの、適性検査などを活用することで一定の評価が可能です。

人格(動機・価値観・信念):秘めたる可能性の発見

人の根源的な動機、大切にしている価値観、根底にある信念などは、幼少期からの経験や育った環境によって培われます。また、生まれ持った資質や才能もこの領域に含まれます。これらは行動特性よりもさらに深い部分で、個人の判断や行動を左右するものであり、目標達成への強い「原動力」となります。「潜在能力」とも呼ばれるこれらの要素は、候補者自身も自覚していないことが多く、外部からは見えにくいものです。そのため、採用評価項目として意識的に組み込むことが重要です。  
過去の経験や将来の展望に関する具体的な質問、仕事に対する目的意識や意義といった「仕事観」を尋ねることで、候補者の行動を突き動かす動機を把握することができます。

採用基準策定の手順

採用基準は、以下の3つの段階を経て具体的に策定していきます。各段階を丁寧に進めることで、企業にとって最適な採用基準を確立することができます。

段階1:理想の人材像の明確化

まず最初に、どのような人材を求めているのかを明確に定義しましょう。その際には、「事業計画、現場からの情報収集、コンピテンシー」という3つの視点から人材像を深く掘り下げていくことを推奨します。  
新卒採用、中途採用のどちらの場合でも、求める人材像は経営層、人事担当者、現場担当者の意見を総合的に考慮して作成することが重要です。これにより、事業計画の達成に貢献し、現場のニーズに応えられる人材の採用が可能となります。人物像を決定する際は、できる限り詳細に設定することが肝要です。

①募集背景の明確化

採用活動を行う理由、すなわち採用の目的を明確にすることが重要です。採用の目的は、大きく分けて以下の2つが考えられます。

  • 企業目標や経営戦略の達成  
  • 組織の活性化と強化

採用活動は、事業戦略の一環として捉えるべきです。企業が抱える課題を解決するために、どのようなスキルや経験を持つ人材が、いつまでに必要なのかを具体的に定義しましょう。

②現場担当者へのヒアリング

採用予定のポジションのチームメンバーから意見を収集します。ヒアリングでは、業務を円滑に進めるために必要な専門知識やスキルを中心に情報を集めます。また、求める人物像に合わない要素についても確認しておくと良いでしょう。

③コンピテンシー分析

コンピテンシーとは、高い成果を上げている社員に共通して見られる行動特性のことです。情報の確認が必要です。  
コンピテンシーモデルの作成手順:

  • 優秀な社員にインタビューを実施する  
  • 高い成果に繋がった具体的な行動だけでなく、その背景にある思考プロセスを深掘りする  
  • 採用したいポジションに必要なコンピテンシーを洗い出し、優先順位をつける

コンピテンシーの例:問題解決能力、計画力、実行力、対人関係能力、自己管理能力など。

ステップ2:評価項目の設定

求める人物像が明確になったら、市場の状況や採用の難易度を考慮して、評価項目を絞り込みます。評価項目は多ければ良いというわけではありません。項目が多すぎると、選考プロセスが煩雑になり、採用基準を満たす人材が見つかりにくくなる可能性があります。  
評価項目を絞り込む際には、入社後の育成可能性も考慮に入れる必要があります。入社後の研修制度やサポート体制が充実していれば、現時点で不足しているスキルを持つ人材でも採用できる可能性があります。次に、入社後に育成可能なスキル(WANT:歓迎要件)と、入社時に必須となるスキル(MUST:必須要件)を区別し、各項目の重要度を設定します。これにより、評価の優先順位が明確になります。  
評価項目が多すぎると面接官の負担が増えるため、20個程度に絞り込むのが理想的です。評価項目は、定量的な側面と定性的な側面の両方を考慮することが重要です。定量的な評価項目は、売上目標達成率などの数値で表しやすいですが、定性的な評価項目は定義が曖昧になりやすく、面接官の主観に左右される可能性があります。  
どのような項目を評価基準に含めるべきか迷う場合は、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」を参考にすると良いでしょう。  

<社会人基礎力>  

前に踏み出す力(アクション)
  • 主体性:自ら積極的に行動する力  
  •  働きかけ力:周囲を巻き込み、影響を与える力  
  • 実行力:目標を設定し、着実に実行する力
考え抜く力(シンキング)
  • 課題発見力:現状を分析し、課題を明確にする力  
  • 計画力:課題解決に向けたプロセスを設計し、準備する力  
  • 創造力:新たな価値を生み出す力
チームで働く力(チームワーク)
  • 発信力:自分の意見を分かりやすく伝える力  
  • 傾聴力:相手の意見を丁寧に聞き、理解する力  
  • 柔軟性:異なる意見や立場を尊重する力  
  • 状況把握力:自分と周囲の関係性を理解する力  
  • 規律性:社会のルールや約束を守る力  
  • ストレスコントロール力:ストレスの原因に対処し、管理する力

ステップ3:評価基準の明確化

評価項目を定めたら、次は評価の尺度をはっきりさせることが重要です。採用におけるミスマッチの一因として、評価尺度の曖昧さが挙げられます。よくある評価方法として、項目ごとに【(不十分)1・2・3・4・5(十分)】のように数値を割り当てる形式がありますが、各数値が示すレベルが明確でない場合、面接官の主観が入り込み、結果としてミスマッチに繋がる可能性があります。  
その対策として有効なのが、「ルーブリック評価」です。これは特にアメリカで教育評価に用いられる手法で、評価の段階やレベルごとに「どのような状態であればそのレベルに達していると見なせるか」を具体的に記述します。これにより、多様な評価項目を客観的に判断することが可能になります。 

<ルーブリック評価の例>

  • 企業への共感性(志望動機や入社後の展望に関する評価)
    • レベル1:志望動機や入社後の展望について話せる。
    • レベル2:志望動機や入社後の展望について、自身の価値観を交えながら説明できる。
    • レベル3:企業の理念と合致した形で、志望動機や自身のキャリアプランを明確に語ることができる。  
  • 主体性(積極的な姿勢や自発的な行動に関する評価)
    • レベル1:これまでの自身の取り組みについて説明できる。
    • レベル2:これまでの取り組みに対し、独自の視点や解釈を持っている。
    • レベル3:これまでの経験や能力を分析し、企業でどのように活かせるかという積極的なビジョンを持っている。  
  • 人間関係構築力(チームワークやリーダーシップに関する評価)
    • レベル1:誠実なコミュニケーションを取ることができる。
    • レベル2:相手の話に耳を傾け、共感する姿勢が見られ、会話を円滑に進めることができる。
    • レベル3:相手に新たな視点を与え、共通の目標を見つけるための工夫ができる。

採用基準設定における注意点

採用基準は外部に公開されるものではないため、人材選考の目的達成のために自由に設定できます。しかし、応募者本人の責任ではない事柄や、本来自由であるべき事柄に関して不公平な扱いをしないよう配慮が必要です。厚生労働省は、公正な採用選考の基本として「応募者の人権を尊重し、適性と能力に基づいて判断すること」を定めています。性別や人種など、差別につながる可能性のある項目を評価基準に含めないよう注意しましょう。

就職差別につながる基準の排除

厚生労働省が示すように、応募者の人権を尊重し、能力と適性に基づいた選考を行うことが最も重要です。つまり、「応募者自身がどうすることもできない事柄」や「個人の自由であるべき事柄」について、応募書類への記載を求めたり、面接で質問したりすることは、就職差別と見なされる可能性があります。  
応募者の能力や適性に関係のない事柄について、応募書類に記入させたり、面接で質問したりして把握しないようにすることが大切です。  
【就職差別につながる可能性のある項目】

  • 本人に責任のない事柄の把握:本籍地や出生地、家族構成、住居状況、生活環境など。  
  • 本来自由であるべき事柄の把握:宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、労働組合への加入状況、購読している新聞など。  
  • 採用選考の方法:身元調査、能力や適性と関係のない応募書類の使用、必要性の低い健康診断の実施。

上記の項目に該当するような採用基準を作成しないように、十分注意してください。  
出典:厚生労働省 .公正な採用選考の基本  
.https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm

現場や上層部の意見の取り入れ

採用基準は人事担当者のみで決定するのではなく、現場の従業員や上層部の意見も積極的に取り入れることが重要です。特に中途採用の場合、人事担当者が設定した評価基準が、現場のニーズと合わないケースが見られます。現場の従業員はどのような人材が活躍できるかを最もよく理解しているので、彼らの意見を参考にしながら採用基準を定めるようにしましょう。

企業の戦略・理念との調和

採用の基準は、企業の戦略や理念と合致していることが不可欠です。もし、企業の戦略・理念と一致しない採用基準を設けてしまうと、入社後に期待とのずれが生じる可能性があります。例えば、企業戦略として「新たな市場への進出」を目標とするならば、「自主性」や「困難に立ち向かう精神」といった特性を持つ人材を採用することが重要になります。

明確な表現と定義

採用基準を具体的に表現する際には、抽象的な言葉の使用を避けるように注意しましょう。採用基準の記述があいまいであると、面接官の間で解釈の相違が生じ、適切な評価が難しくなる可能性があります。評価基準を具体的に記述するために、ルーブリック評価などを参考にすると良いでしょう。

定期的な見直しと改善

採用基準は、作成して終わりではありません。採用活動において問題が発生した場合は、その都度、見直す必要があります。現在の課題と採用背景のずれ、転職市場の動向、採用したい人物像などを定期的に確認し、必要に応じて修正を行いましょう。

新卒採用とキャリア採用における基準の違い

新卒採用とキャリア採用では、重視すべき採用基準が異なります。新卒採用では、潜在能力や将来性を重視する一方で、キャリア採用では、すぐに活躍できるスキルや実績を重視します。

新卒採用で重視すべき基準

新卒採用においては、将来的な成長を見据え、以下の点を特に重要視します。

  • 円滑な意思伝達能力  
  • 困難に立ち向かう意欲  
  • 真摯な姿勢  
  • 仕事への情熱  
  • チームワークを尊重する姿勢  
  • 自ら考え行動する力

面接では、学生時代の活動内容や経験について深く質問し、上記のような資質があるかを見極めます。

中途採用で重視すべき基準

中途採用では、入社後すぐに活躍できる能力や経験、企業の価値観との調和を重視します。

  • 即戦力となる専門スキル  
  • 企業が求める人物像との一致

面接では、過去の職務経歴や実績、転職理由などを詳細に確認し、自社で貢献できる人材であるかを判断します。

採用基準に基づいた適切な採用判断

明確な採用基準に基づいて適切な採用判断をするためには、以下の方法が有効です。

書類選考での候補者絞り込み

書類選考の段階から採用基準に沿って選考を進めることで、効率的に次のステップに進むことができます。事前に採用基準に対応した評価シートを作成しておくことで、候補者の絞り込み作業を効率化できます。

能力検査の活用

選考過程で能力検査を導入することで、応募者の潜在的な能力を客観的に評価できます。能力検査には、求める人物像に合わせてカスタマイズ可能なものや、手軽に実施できるものなど、様々なタイプが存在します。まずは、自社にとって最適な能力検査の種類を検討し、情報収集を行うことをお勧めします。

評価項目に準拠した面談の実施

事前に明確化した評価項目に基づいて面談を進めることで、公平な判断が可能になるだけでなく、面談時間の効率化にも繋がります。複数回の面談を実施する場合でも、人事担当者、現場責任者、経営層それぞれが評価基準を共有しておくことが重要です。

まとめ:採用基準の見直しによる企業発展

この記事では、採用基準の重要性、設定方法、注意点、新卒採用と中途採用における基準の相違点、適切な判断方法について詳しく説明しました。明確な採用基準を設け、定期的に見直すことで、採用のミスマッチを減らし、企業の成長を促進することができます。この記事を参考に、貴社に最適な採用基準を確立し、優秀な人材の確保と定着を実現してください。採用基準は、企業の将来を大きく左右する要素の一つです。この記事が、皆様の採用活動の一助となれば幸いです。変化し続ける市場の状況や企業の戦略に応じて、採用基準を柔軟に修正し、最適な人材を獲得し続けることで、持続的な発展を達成していきましょう。

よくある質問

質問1:採用基準は固定すべき?見直すべき?

回答1:必ずしもそうではありません。採用基準は、定期的な見直しを推奨します。なぜなら、市場環境、企業の戦略目標、そして現場の要求は常に変化しているからです。これらの変化に対応するため、採用基準も柔軟にアップデートしていく必要があります。少なくとも年に一度は現状を評価し、必要に応じて修正を行いましょう。

質問2:採用基準設定で、最も重視すべき点は?

回答2:最重要ポイントは、企業の戦略や理念との整合性を確保することです。採用基準が企業の進むべき方向と一致していなければ、入社後の期待とのずれや早期退職のリスクが高まります。企業の戦略と理念を深く理解し、それに適した人材像を明確に描くことが不可欠です。

質問3:採用基準に含めてはいけない項目は?

回答3:はい、採用選考において不当な差別を生む可能性のある項目は避けるべきです。具体的には、応募者本人の責任ではない事柄(本籍地、出生地、家族構成など)、および本来自由であるべき事柄(宗教、支持政党、人生観など)は含めるべきではありません。応募者の能力と適性のみを公正に評価できる基準を設定することが重要です。  

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