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育休後、退職を選ぶのはアリ?後悔しないための決断と注意点

育児休業は、育児・介護休業法で定められた大切な制度。職場復帰を前提とするものの、育休後に「退職」を選ぶことは決して非常識ではありません。育児と仕事の両立の難しさ、キャリアプランの変化など、理由は人それぞれ。しかし、一度決断したら後戻りは難しいもの。この記事では、育休後退職を選ぶことのメリット・デメリット、後悔しないための判断軸、そして注意すべきポイントを徹底解説します。

育休後の退職は可能?法律と会社への影響

育児休業、通称育休は、育児・介護休業法に基づき、小さなお子様を育てる従業員が、原則として1歳に満たない子を育てるために取得できる休業制度です。育休は働く人の権利として法律で守られていますが、育休が終わってから退職すること自体は、法律で特に禁止されていません。育休は職場への復帰を前提とした制度ではありますが、退職するかどうかは、あくまで従業員本人の自由な意思によって決めることができます。家庭の事情の変化や、育休中に心境が変わるなど、様々な理由から育休後に退職という選択をする人もいます。

育休後に退職する理由とは?

育休から復帰した後に退職を選ぶ理由は、人それぞれです。主な理由として、次の5つが考えられます。

  • 育児が思った以上に大変だった: 夜中の授乳や頻繁な夜泣きなど、育児は想像以上に体力と精神力を消耗します。仕事と育児を両立させるのが難しいと感じ、退職を選ぶケースがあります。

  • 育休復帰後の仕事内容が変わっていた: 育休中に会社の組織再編などがあり、復帰後に仕事内容が大きく変わっている場合があります。自分のスキルが追いつかないと感じたり、新しい業務を覚えるのが大きな負担となり、退職につながることもあります。

  • 子供の体調不良などで働き続けるのが難しい: 小さな子供は体調を崩しやすく、急な発熱などで保育園からの呼び出しがあったり、予定していた日に出勤できないということもあります。会社に迷惑をかけていると感じたり、人事評価への影響を心配して、退職を選ぶ人もいます。

  • 職場でのハラスメント: 育児休業を取得した人に対するハラスメントが、残念ながら起こることがあります。「あなたの分の仕事を代わりにやっているんだから」といった心無い言葉をかけられたり、重要なプロジェクトから外されるなどの不当な扱いを受け、精神的につらくなり退職を選ぶ人もいます。

  • キャリアアップが難しいと感じた: 育休から復帰後、簡単な作業ばかりを任されたり、昇進の機会が与えられないなど、今後のキャリアアップが見込めないと判断することがあります。将来に対する不安から、退職を検討するケースがあります。

出典:出産後に復職した女性の離職要因 - 労働者健康安全機構

.https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/kadai/pdf_slide/r2/tochigi.pdf

育休後に退職する場合の注意点:事前に確認すべき5つのポイント

育休後に退職する際には、注意すべき点がいくつかあります。退職を決める前に、以下の5つのポイントをしっかりと確認しておきましょう。

退職後の失業保険の受給資格

育休後に退職した場合でも、一定の条件を満たしていれば失業保険を受け取ることができます。失業保険を受給するためには、主に次の2つの条件を満たす必要があります。1つ目は、すぐに働くことができる状態であり、積極的に就職活動を行う意思があること。2つ目は、退職日より前の2年間に、雇用保険に加入していた期間が合計で12ヶ月以上あること(会社都合による退職や解雇の場合は、1年間に6ヶ月以上の加入期間で受給資格が得られます)。

再就職の難しさ:不利になる点

育休を終えた後に退職し、改めて仕事を探す場合、再就職の難易度は上がることが予想されます。小さなお子様がいることが前提となるため、どうしても勤務時間を選べる仕事に偏りがちですが、時短勤務制度などは、労使協定によって入社後1年未満の従業員を対象外とする企業も見られます。育休後の転職は、スムーズな職場復帰を妨げる可能性があることを認識しておきましょう。

出典:厚生労働省「短時間勤務等の措置」

育休期間中の転職活動の困難さ

育児休業中に転職活動を行う際は、お子様の預け先が確保できていることが前提条件となります。企業側も、預け先が決まっていない状況では、採用後の勤務状況が予測できず、採用に踏み切るのは難しいでしょう。復職時と同様、お子様の預け先探しが重要です。。

育児休業給付金の扱い:時期による注意点

退職するタイミングによって、育児休業給付金の取り扱いが変わってくる点にも注意が必要です。育休期間中に退職した場合、その時点で育児休業給付金の支給はストップし、社会保険料の免除も受けられなくなります。育休終了と同時に退職する場合は、育児休業給付金は満額支給され、社会保険料の免除も最大限に活用できます。育休明けに一旦職場復帰し、その後退職する場合も同様に、育児休業給付金は満額支給され、社会保険料の免除を最大限に利用した後の退職となるため、経済的な損失は少ないと言えます。


育児休業を経てスムーズに退職するための秘訣

育児休業後に会社を滞りなく退職するためには、以下の点を考慮することが重要です。

育休期間の再確認:法的な権利を把握する

育児休業は法律で認められた制度であり、企業は法律に則って育休を取得させる義務があります。まずは、ご自身の育休期間を正確に把握しましょう。

有給休暇の消化:退職前でも権利はある

育休後に一度職場復帰してから退職する場合、未使用の有給休暇を取得することは可能です。有給休暇の取得は労働者の正当な権利です。退職を理由に遠慮する必要はありませんが、職場での理解が得られるように配慮しましょう。

退職理由の丁寧な説明:誠意をもって伝える

会社は通常、従業員が育休後に職場へ戻ることを想定して業務計画を立てています。育休後に退職を考えている場合は、会社側も業務の引継ぎや人員補充の準備が必要となるため、できるだけ早く退職の意思を伝えることが大切です。育児と仕事の両立が困難であることは社会的に理解されているため、事情をきちんと説明すれば、上司も理解してくれるはずです。

企業が取り組むべき離職防止策:育休復帰後の手厚いサポート

育休から復帰した従業員の離職を防ぐためには、企業側からの積極的なサポートが欠かせません。ここでは、具体的な対策を8つご紹介します。

育児休暇中のコミュニケーション:定期的な情報共有

育児休業中の従業員とは、定期的に連絡を取り合うように心がけましょう。会社側からは、育休期間中に職場であった変化などを伝えることで、復帰後のスムーズな業務移行を促せます。従業員の状況や復帰後の不安点などをヒアリングし、職場環境を改善することも重要です。定期的なコミュニケーションは、育児復帰後の早期離職を防ぐために非常に有効です。

育児への理解と配慮:働きやすい環境づくり

時短勤務制度などを設けるだけでなく、育児に対する理解と配慮を示す職場環境を構築することが重要です。管理職向けの研修を実施し、育児と仕事の両立への理解を深めることが大切です。さらに、周囲の従業員にも育児の大変さを理解してもらうために、育児体験プログラムなどを導入することも効果的です。仕事と育児を両立している社員がいれば、ロールモデルとして紹介し、安心して働ける職場であることを積極的にアピールしましょう。

子の看護等休暇制度の整備:急な休みにも対応

お子様の発熱やけがなどで、急遽お休みが必要になる状況に備え、育児・介護休業法では「子の看護等休暇制度」を設けています。2025年4月の法改正により、対象が「小学校3年生終了までのお子様」に拡大しました。就業規則の見直しを行うとともに、従業員への周知と利用促進を図ることで、従業員の心理的な負担を軽減し、安心して業務に取り組める環境を作りましょう。

出典:厚生労働省「子の看護等休暇」

短時間勤務制度の導入:多様な働き方をサポート

仕事と育児の両立を積極的に支援するため、育児・介護休業法では企業に「短時間勤務制度」の導入を義務化しています。具体的には、「3歳に満たない子を養育する従業員」を対象に「1日の所定労働時間を原則6時間とする措置」を設けなければなりません。

短時間勤務制度の導入が困難な場合は、以下で解説する「柔軟な勤務時間制度」「テレワーク制度」「フレックスタイム制」の導入など代替措置を取ることも認められています。制度設計においては、複数の制度を導入することで従業員の選択肢を増やすことも検討してみましょう。

出典:厚生労働省「短時間勤務等の措置」

柔軟な勤務時間制度の導入:送迎の負担を軽減

育児中の従業員にとって、保育園や幼稚園への送迎は大きな負担となりがちです。仕事と育児の両立をサポートするため、フレックスタイム制度や時差出勤制度などを導入し、勤務時間の柔軟性を高めましょう。複数の勤務パターンを用意することで、従業員はそれぞれの都合に合わせて働き方を選択でき、送迎の負担を軽減できます。

テレワーク制度の導入:通勤の負担を軽減

仕事と育児の両立は、想像以上に精神的、体力的な負担が大きくなります。テレワーク制度を導入することで、従業員の負担を軽減し、両立を支援しましょう。オフィスへの通勤が不要になるため、通勤時間を育児や家事に充てることができます。また、お子様の様子を見ながら働くことも可能です。

柔軟な働き方:フレックスタイム制

仕事と育児の両立を支援する制度として、フレックスタイム制は有効です。この制度では、所定の総労働時間を守れば、出勤・退勤時間を自分で調整できます。お子様の急な体調不良や学校行事などに合わせて、柔軟に勤務時間を調整することが可能です。

充実した福利厚生:仕事への集中を支援

育休から復帰した従業員が安心して働けるよう、福利厚生の充実を図りましょう。例えば、企業内保育施設の設置や、提携保育園の利用補助などは、従業員の負担を軽減し、仕事に集中できる環境作りに貢献します。また、育児と仕事の両立は精神的な負担も大きいため、カウンセリングサービスなどのメンタルヘルスサポートも重要です。

育休後の退職と失業給付:条件と算出方法

育児休業後に退職を選択した場合でも、失業給付金(雇用保険の基本手当)を受け取れる場合があります。ここでは、失業給付を受け取るための条件と、給付額の計算方法を詳しく解説します。

失業給付の受給資格:満たすべき2つの条件

原則として、失業給付を受けるためには、離職日より前の2年間に、雇用保険の加入期間が合計12ヶ月以上必要です。ただし、会社の倒産や解雇といった理由で離職した方(特定受給資格者)、または契約期間満了による雇い止め(特定理由離職者)の場合は、離職日より前の1年間に、雇用保険の加入期間が合計6ヶ月以上あれば受給資格を得られます。

育児休業が失業給付の計算に及ぼす影響:計算期間の調整

育児休業期間や産前産後休業期間のように、給与の支払いがない期間は、雇用保険の被保険者期間としてはカウントされません。賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ないと被保険者期間とは認められないからです。そのため、基本手当日額(1日あたりの失業手当の金額)の計算基礎となる賃金日額(離職前6ヶ月の1日あたりの賃金額)は産休・育休前の賃金を基に計算します。つまり、産休や育休で無給の期間があっても失業給付の計算には影響(減額されない)しません。

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」

失業手当の算出方法:段階的な手順

失業手当は、以下の手順で計算されます。①1日あたりの賃金額(賃金日額)を算出、②基本手当日額を算出、③受給できる金額の総額を算出。失業手当は、失業中の生活を支えるために支給されるため、金額が極端に高すぎたり、低すぎたりしないように、上限額・下限額が定められています。

育休後の退職と保育施設:退園の可能性と対応策

育児休業後に退職を選択する場合、お子様が通う保育施設の退園についても検討する必要があります。「仕事復帰を前提に保育施設の入園許可を得ている」状況で退職を決めた場合は、入園許可が取り消されることがあるため、注意が必要です。

退職後の保育施設利用:利用できるケースと利用できないケース

退職後、しばらくの間専業主婦(夫)として家庭に入る予定の場合、原則として保育施設は利用できなくなります。保育施設は、「就労などの理由により、家庭で保育を行うことが難しい保護者に代わって、お子様を保育する施設」と定義されているため、家庭での保育が可能な場合は利用できません。転職活動の結果、次の仕事が決まっている場合は、通常通り保育施設を利用できるでしょう。「支給認定変更認定申請書兼申請内容変更届」と「勤務証明書」(申請書名称や必要書類は自治体によって異なることもあります)を提出し、勤務先変更の手続きを行う必要があります。

求職中の保育園利用:猶予期間について

育児休業後に退職し、求職活動を行う場合でも、すぐに保育園を退園しなければならないわけではありません。求職活動は「保育の必要性」があると認められるためです。ただし、求職活動が長引くと退園となる場合があります。この猶予期間は、お住まいの自治体によって異なり、通常は1ヶ月から3ヶ月程度です。待機児童が多い地域では、猶予期間がさらに短くなることもあります。求職活動を開始する前に、必ず自治体に猶予期間を確認するようにしましょう。

育休後の退職と再就職:乗り越えるべき3つの壁

育児休業後に退職し、再就職を目指すことは容易ではありません。独身時代とは異なり、幼いお子様を育てながらの就職活動には、特有の困難が伴います。ここでは、再就職において直面しやすい3つのハードルについて解説します。

時短勤務や有給休暇の取得条件

お子様が3歳になるまで、時短勤務を希望する方は多いでしょう。しかし、時短勤務制度は、入社後1年未満の従業員を対象外とする企業が少なくありません。労使協定で対象外と定められていないか、求職活動中に確認しておきましょう。また、有給休暇も、一般的に勤続6ヶ月以上でなければ付与されないため、注意が必要です。

保育園入園決定の重要性

再就職活動を進めるためには、まずお子様の預け先を確保する必要があります。「保育園が決まっていないため、勤務開始時期が未定」という状況では、企業は採用を見送らざるを得ない場合があります。

子育てにかかる費用

一般的に「子ども一人を育てるには、成人するまでに1000万円を超える費用が必要」と言われるように、子育てには多額の資金がかかります。もし、次の仕事が決まらない状態で退職してしまうと、世帯収入が減少し、将来の生活設計に大きな影響を与える可能性があります。経済的な不安から、家庭内の雰囲気が悪化する事態も考えられます。

育休後の選択肢:退職以外の道を考えてみましょう

育休後に職場復帰せずに退職することは可能ですが、仕事を辞めてしまうと再就職は容易ではありません。企業には「育児短時間勤務制度」を設ける義務がありますので、まずは「時短勤務」または代替措置を申請して、職場復帰を試みるのも一つの方法です。それでも、就業が困難な場合は、退職も選択肢の一つですし、リモートワークが可能な企業への転職も視野に入れてみましょう。

まとめ

育休後の退職は、法律上は問題ありませんが、様々な影響を考慮し、慎重に判断することが大切です。この記事では、育休後の退職に関する注意点や手続き、企業側の対策について解説しました。育休後のキャリアプランを検討する際に、ぜひ参考にしてください。

よくある質問

質問1:育休から復帰後、すぐに退職しても法的に問題ありませんか?

はい。育休後に退職すること自体は、法律に違反するものではありません。育児休業は職場への復帰を前提とした制度ですが、退職するかどうかは最終的に労働者の意思によって決定されます。

質問2:育児休業期間中に退職を申し出た場合、育児休業給付金はどうなるのでしょうか?

育児休業中に退職の意思表示をすると、原則として、退職日に育児休業給付金の支給は停止されます。また、育児休業の終了に伴い、社会保険料の免除措置も終了します。

質問3:育児休業終了後に退職した場合、失業保険の受給は可能ですか?

はい。いくつかの条件を満たせば、失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。主な条件としては、退職後すぐに就職活動を開始できる状態であり、積極的に仕事を探す意思があること、そして退職日より前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が合計12ヶ月以上あることなどが挙げられます。

監修:社労士 西岡秀泰
監修:社労士 西岡秀泰
西岡 秀泰(にしおか ひでやす) 西岡社会保険労務士事務所 代表 生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険や損害保険等の販売。 その後、社労士事務所を開設し労働保険や社会保険を中心に労務全般について企業をサポート。日本年金機構の年金相談員を兼務。 「ひと」が抱えるさまざまなリスクや悩みに有効な制度や金融商品を、社会保険労務士とFPの立場から紹介します。

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