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有給取得義務化とは?企業と従業員が知っておくべきポイント

「有給取得義務化」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。これは、2019年4月の労働基準法改正によって、企業が従業員に年間5日間の有給休暇を取得させることが義務付けられた制度です。働き方改革の一環として導入されたこの制度は、従業員のワークライフバランス改善や、休養による生産性向上を目的としています。企業と従業員、双方にとって重要なポイントを理解し、制度を有効に活用していきましょう。

年次有給休暇の取得義務化とは

2019年4月の労働基準法改正によって、企業には従業員に対し、年間5日間の年次有給休暇を確実に取得させる義務(年5日の時季指定義務)が課せられました。これは働き方改革の一環として、長時間労働の是正と、従業員の仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を実現することを目的として導入された制度です。

出典: 2019/4/1 .厚生労働省.年5日の年次有給休暇の確実な取得

URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf


年次有給休暇取得義務化の背景と目的

この義務化は、日本における低い有給休暇消化率を改善するために実施されました。以前から労働基準法で有給休暇の権利は定められていましたが、実際には取得が進んでいない状況が続いていました。厚生労働省の調査によれば、日本の有給休暇取得率は欧米諸国と比較して低い水準にあります。そのため、義務化によって労働者の権利を保護し、心身のリフレッシュを促進することが目的とされています。

義務化の背景には、労働者のワークライフバランスを向上させ、過労死やメンタルヘルスの問題を軽減するという狙いがあります。また、有給休暇の取得を推進することで、労働者の生産性向上や企業の活性化にもつながることが期待されています。

義務化の対象となる従業員

年間の有給休暇付与が10日以上となる全ての従業員が、この取得義務化の対象です。正社員はもちろんのこと、パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣社員も含まれます。管理監督者や期間雇用契約者も例外ではありません。ただし、公務員は労働基準法の適用を受けないため、有給休暇の年5日取得義務化も原則対象外です。企業は、自社に適用される法律をしっかりと確認することが重要です。

有給休暇が付与される条件は、原則として入社日から6ヶ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していることです。週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下のパートタイム労働者については、労働日数に応じて付与されます。

年次有給休暇の付与日数と計算方法

年次有給休暇の付与日数は、労働者の勤続年数と労働日数・時間によって変動します。正社員の場合、入社から6ヶ月後に10日の有給休暇が付与され、その後は勤続年数に応じて段階的に増加し、6年6ヶ月以上の勤務で年間20日の有給休暇が付与されることになります。

パートタイム労働者の場合、週の所定労働時間や日数に応じて、有給休暇の日数が比例配分されます。例えば、週3日勤務(所定労働時間が週30時間未満)のパートタイム労働者の場合、入社6ヶ月後には5日の有給休暇が付与されます。

年次有給休暇の付与日数の詳細な計算方法については、厚生労働省の公式ウェブサイトや関連資料で確認するようにしてください。

有給休暇の取得方法:時季指定と計画年休

企業が従業員に年次有給休暇を取得させる方法としては、「時季指定」と「計画年休」の2つが主な手段として挙げられます。

時季指定

時季指定とは、企業が有給休暇を10 日以上付与した従業員の意向を考慮しながら、有給休暇の取得日を個別に決める方法です。従業員から有給休暇の申請がない場合に、企業が時季を指定して取得を促します。労働者の希望を尊重し、可能な限り希望に沿った時季に有給休暇を取得させることが重要です。既に5日以上の有給休暇を取得済みの労働者に対しては、会社側が時季を指定することはできません。

計画年休

計画年休とは、企業が労使協定を締結し、従業員の有給休暇のうち、5日を超える部分について、計画的に取得日を割り当てる制度です。企業全体、または部署ごとに一斉に有給休暇を取得させるなどしてあらかじめ取得日を確定することで、有給取得率の向上が期待できます。従業員は気兼ねなく休暇を取りやすく、使用者側としては管理が容易になり、確実に有給休暇を取得させられるという利点があります。計画年休制度を導入して5日以上の取得日があらかじめ確定すれば、、年5日の時季指定義務を果たしたことになります。使用者側で有給の取得日を定めることができるため、確実に従業員に休んでもらうことが可能になります。

計画年休を導入する際には、就業規則に明記し、労使協定を締結する必要があります。

有給休暇管理簿の作成と保管

企業は、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、5年間(当面の間は3年間)保管する義務を負っています。管理簿には、有給休暇の付与日、取得日、残日数などを記録する必要があります。この管理簿は賃金台帳と合わせて作成することが認められているため、勤怠管理システムなどを利用して一元的に管理するのが効率的です。保管期間は、有給休暇を付与した期間の満了後から当面は3年間となります。年次有給休暇管理簿に記載が必要な項目は以下の3点です。これらは、労働基準法施行規則第24条の7に定められており、従業員ごとに記録する必要があります。

  • 基準日: 従業員に有給休暇を付与した日。

  • 日数: 基準日から1年間のうちに、従業員が取得した有給休暇の日数。

  • 時季: 従業員が実際に有給休暇を取得した日。時間単位で取得する場合は、時間帯も記載。

出典: 2019/4/1 .厚生労働省.年5日の年次有給休暇の確実な取得

URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

有給休暇取得義務違反に対する罰則

企業が年5日の時季指定義務を遵守しない場合、労働基準法に抵触し、罰則の対象となることがあります。具体的には、従業員一人につき最大30万円の罰金が科される可能性があります。違反対象となる従業員数が多いほど、罰金の総額は高くなる可能性があります。さらに、労働基準監督署からの是正指導や企業名が公表されるといった事態も想定され、企業の社会的信用を大きく損なうリスクがあります。

また、年次有給休暇の取得時季を指定する対象労働者の範囲と方法に関して、就業規則に明記しなかった場合、労働基準法第89条に違反し、30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法第120条)。労働者が希望した時季に有給休暇を与えない場合は、より重い罰則が科せられ、労働基準法第39条違反として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることがあります(労働基準法第119条)。

有給休暇の取得促進策

企業が有給休暇の取得を積極的に促すためには、以下のような対策が効果的です。

  • 年次有給休暇取得計画の策定:従業員が計画的に休暇を取得できるよう、年間計画を作成し、休暇の取得を推奨する。

  • 休暇を取りやすい環境づくり:上司や同僚が率先して有給休暇を取得することで、周囲も休暇を取得しやすい雰囲気を作り出す。

  • 勤怠管理システムの導入:従業員の有給休暇残日数や取得状況を明確にし、休暇管理を効率化する。

  • 制度の周知徹底:年5日の時季指定義務や関連制度について、従業員全体への情報提供を徹底する。

  • 個別面談の実施:有給休暇の取得状況が思わしくない従業員に対して、個別に面談を実施し、休暇取得を促す。

  • インセンティブ制度の導入:有給休暇の取得率が高い部署や従業員に対し、報酬や表彰などのインセンティブを与える。

有給休暇に関する注意点

有給休暇に関して、企業が注意すべき点として、以下のようなものが挙げられます。

  • 有給休暇の買い上げは原則違法:労働基準法上、有給休暇の買い上げは基本的に認められていません。ただし、退職時に消化しきれなかった日数や、法定付与日数を超過して企業が任意に付与した有給休暇については、例外的に買い上げが認められる場合があります。

  • 有給休暇の理由を詳細に尋ねるのは不適切:従業員が有給休暇を取得する理由は原則として自由であり、企業が詳細な理由を尋ねることは適切ではありません。ただし、業務への影響が懸念される場合は、時季の変更を相談することは可能です。

  • 有給休暇取得を理由とした不利益取扱いの禁止:有給休暇の取得を理由に、賃金の減額や人事評価を下げるなど、従業員に不利益となる扱いをすることは労働基準法で禁じられています。

有給休暇制度の見直しと改善

企業は、定期的に有給休暇制度を見直し、改善に努めることが重要です。従業員の多様なニーズや働き方の変化に対応し、より柔軟で利用しやすい制度へと改善することで、有給休暇取得率の向上や従業員の満足度向上に貢献します。例えば、時間単位での有給休暇取得を可能にしたり、有給休暇の繰り越し日数を増やすなどの改善策が考えられます。

他社の成功事例から学ぶ

有給取得を推進し、成果を上げている企業の事例は参考になります。例えば、IT関連のC社では、従業員一人あたり年間最低12日の有給消化を目標とし、その進捗を定期的にチェックしています。目標達成のため、管理職が率先して有給を取得し、周囲も取得しやすいように配慮しています。また、メーカーのD社では、計画的な有給取得を推奨しており、夏季休暇や年末年始などに有給を組み合わせて長期休暇を取得することを推奨しています。これらの事例を参考に、自社に適した方法を検討し、導入することで、有給取得率の向上に繋げることが期待できます。

中小企業における有給休暇管理のポイント

中小企業では、大企業と比較して人員などの経営資源が限られているため、有給休暇の管理が行き届かないことがあります。中小企業が有給休暇を適切に管理するためには、以下の点が重要となります。

  • シンプルな管理方法の採用: 複雑なシステムを導入するのではなく、既存の表計算ソフトなどを活用して管理を行う。

  • 担当者の明確化: 有給休暇の管理担当者を決め、管理業務を集約する。

  • 従業員への周知徹底: 有給休暇の制度や申請方法について、従業員にわかりやすく説明する。

  • 相談しやすい環境づくり: 従業員が有給休暇の取得に関して、気軽に相談できる雰囲気を作る。

まとめ

有給休暇の取得義務化は、従業員のワークライフバランスを向上させ、企業の生産性向上にも貢献する重要な取り組みです。企業は、制度を正確に理解し、適切な対応を行うことで、法令遵守と従業員の満足度向上を両立させることが可能です。この記事で解説した内容を参考に、自社の有給休暇制度を見直し、より働きがいのある職場環境を構築してください。有給休暇の取得義務化は、単なる法令順守だけでなく、従業員のwell-beingを向上させ、組織全体の活性化につながる重要な取り組みです。企業は、この記事で紹介した情報を参考に、有給休暇の取得を促進するための具体的な対策を実施し、従業員が心身ともに健康で、創造的な働き方ができる環境を整備しましょう。そうすることで、従業員満足度が向上し、結果として企業の成長にも貢献するでしょう。

よくある質問

質問1:有給休暇の申請時に、会社へ理由を告げる必要はあるのでしょうか?

基本的に、有給休暇を取得する理由を会社に申告する義務はありません。有給休暇は労働者に認められた権利であり、その理由によって取得の可否が左右されるものではありません。ただし、業務に影響が出る可能性がある際は、休暇の時季変更を打診されるケースがあります。

質問2:有給休暇を時間単位で利用することはできますか?

労働者と使用者間の合意(労使協定)がある場合に限り、時間単位での有給休暇の取得が認められています。ただし、時間単位で取得できる有給休暇の日数には、年間5日までという上限があります。

質問3:退職時に有給休暇が余っている場合、会社は買い取ってくれるのでしょうか?

法律では、会社に有給休暇の買い取りを原則認めていません。しかしながら、会社によっては、退職する従業員に対し、未使用の有給休暇を買い取る制度を設けている場合があります。会社の就業規則などを確認するか、人事担当部署に問い合わせて確認してみましょう。

監修:社労士 西岡秀泰
監修:社労士 西岡秀泰
西岡 秀泰(にしおか ひでやす) 西岡社会保険労務士事務所 代表 生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険や損害保険等の販売。 その後、社労士事務所を開設し労働保険や社会保険を中心に労務全般について企業をサポート。日本年金機構の年金相談員を兼務。 「ひと」が抱えるさまざまなリスクや悩みに有効な制度や金融商品を、社会保険労務士とFPの立場から紹介します。

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