
育休中の年金:知っておくべき免除制度と将来への影響
育休中は、経済的な負担を軽減するための年金免除制度があります。この制度は、育児休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金・国民年金)の支払いが免除されるというもの。しかし、「免除」と聞くと、将来の年金受給額への影響が気になる方もいるのではないでしょうか。この記事では、育休中の年金免除制度の仕組みや条件、そして将来への影響について詳しく解説します。安心して育児に専念できるよう、知っておくべきポイントをしっかり確認しましょう。
産休・育休中の社会保険料免除制度とは
育児休業を取得する方の経済的な負担を軽減するため、産前産後休業および育児休業期間中は、社会保険料(健康保険・厚生年金保険・国民年金保険)が免除される制度があります。この制度は、加入している年金制度によって適用条件や免除される内容が異なります。免除された場合でも、将来受け取る年金額が減額されることはありません。会社員などが加入する厚生年金と、自営業者などが加入する国民年金では、免除の内容や手続きに違いがあります。産休は、出産準備や産後の体調回復のために取得できる休業であり、労働基準法では産前6週間、産後8週間と定められています。育休は、育児のために取得できる休業で、原則として子どもが1歳になるまで取得可能であり、保育園に入れない等の事情がある場合は2歳まで延長できます。
出典:2024/8/9 .日本年金機構.厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)
.https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20140122-01.html
社会保険料免除の条件:法改正による変更点
社会保険料免除の条件は、2022年10月に改正が行われました。改正前は、厚生年金の被保険者で、育児休業を取得していることが条件であり、育児休業開始月から終了月の前月まで、保険料が免除されていました。ただし、開始月と終了月が同じ月の場合、終了日が月末でない限り免除対象外となっていました。また、賞与については、育児休業期間中に月末が含まれる月に支給された場合は、保険料を支払う必要がありませんでした。改正後は、月額保険料について、育児休業終了月で14日以上育児休業を取得した場合も免除対象となり、要件が緩和されました。一方、賞与保険料は、賞与を支払った月の末日を含む連続した1ヶ月を超える育児休業を取得した場合に免除されるようになり、要件が厳格化しています。
出典:厚生労働省.育児休業等期間中の 社会保険料免除要件が見直されます。
.https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0729.files/ikukyu-chirashi.pdf
国民年金と厚生年金における免除内容の相違点
出産・育児期間中の保険料免除に関して、国民年金と厚生年金では免除される内容に違いが見られます。厚生年金保険の被保険者は、産前産後休業および育児休業期間中、社会保険料が免除されます。一方、国民年金の被保険者の場合は、産前産後の期間において、社会保険料が免除されます。いずれの場合も、保険料が免除されることで、将来の年金受給額が減ることはありません。
ただし、国民年金の場合、保険料免除期間は出産予定月(または出産月)の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合は出産予定月の3ヶ月前から6ヶ月間)に限定されています。
出典:2024/11/1.日本年金機構.国民年金保険料の産前産後期間の免除制度
.https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20180810.html
年金受給額への影響:免除期間の扱いについて
産前産後休業・育児休業期間中(育児休業は厚生年金のみ)の保険料免除について、免除期間は保険料を納付したものとして扱われます。そのため、保険料が免除されたとしても、将来の年金受給額が減ることはありません。
産前産後の国民年金保険料免除期間延長
2026年10月より、国民年金第1号被保険者に対して、産前産後の4ヶ月を超えた期間についても「育児期間中の社会保険料免除」を施行予定です。背景には、働き方の多様化があり、特に自営業者やフリーランスといった働き方を選択する方々の育児を経済的にサポートする狙いがあります。
保険料免除の対象は「子どもを養育する国民年金第1号被保険者」の全てです。多様な就労形態を考慮し、男性を含め所得要件や休業要件はありません。対象期間は子どもが1歳になるまでの期間で、母親は産前産後の免除期間に引き続く9ヶ月間が対象です。厚生年金と同様に、保険料は免除されても年金給付額は満額保障されます。
出典:日本年金機構.育児期間中の国民年金保険料免除
厚生年金保険料の免除を受けるための手続き
厚生年金保険に加入している方が、産前産後休業期間中の社会保険料免除を受けるためには、以下の手続きを行う必要があります。
まず、被保険者(従業員)が、産前産後休業を取得することを事業主(会社)に申し出ます。
次に、事業主は、被保険者の産前産後休業期間中、または休業終了日の翌日から1ヶ月以内に「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構に提出します。
また、育児休業期間中の社会保険料免除を受ける際にも、同様の手続きが必要です。
被保険者が育児休業の取得または延長を事業主に申し出ます。
事業主は、育児休業期間中または休業終了日の翌日から1ヶ月以内に「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
事業主は、厚生年金保険の被保険者が以下の育児休業等を取得するたびに、この手続きを行う必要があります。手続きが必要となるケースは以下の通りです。
お子さんが1歳になるまでの育児休業
保育園に入れないなどの特別な事情がある場合の、1歳6ヶ月に達する日までの育児休業
保育園に入れないなどの特別な事情がある場合の、2歳に達する日までの育児休業
3歳になるまでの子を養育するための、育児休業制度に準じた措置による休業
産後パパ育休(出生時育児休業)制度を利用して取得する休業
国民年金保険料の免除を受けるための手続き
国民年金第1号被保険者の方が、産前産後期間の保険料免除を受けるためには、以下の手続きが必要です。
「国民年金被保険者関係届書(申出書)」に、母子健康手帳など、出産予定日を確認できる書類を添付します。
住所登録をしている市区町村役所の国民年金担当窓口に提出します。
この届け出は、出産予定日の6ヶ月前から行うことができます。また、すでに国民年金保険料の免除や納付猶予、学生納付特例が承認されている場合でも、手続きは可能です。
産休・育休期間中に受け取れる給付金
産休・育休期間中には、出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金といった給付金を受け取ることができます。出産育児一時金は、出産時に支給される一時金です。出産手当金は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの期間で、会社を休んで給与が支払われなかった場合に、1日あたり給与の約3分の2相当額が支給されます。育児休業給付金は、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した被保険者に対して支給されます。給付額は、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(育児休業開始から180日目まで)」で計算され、上限額と下限額が設けられています。2025年8月以降の金額(育児休業開始から180日目までの月額)は、上限額が323,811円、下限額が60,581円となっています。
出典:厚生労働省.育児休業等給付の内容と 支給申請手続
.https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf
産休・育休期間中の住民税について
産休や育児休業期間中であっても、住民税は納付が必要です。住民税は前年の所得に対して課税されるからです。6月1日から12月31日の間に産休を開始した場合、給与が支給されないため、自治体から送付される納付書を使って自分で住民税を納めます。1月1日から5月31日までに産休に入る場合は、産休前の最後の給与から5月までの住民税額が一括徴収されるのが一般的です。
育児休業期間中の企業型確定拠出年金の取り扱い
企業型確定拠出年金は、企業が従業員の資産形成を支援する目的で導入する福利厚生制度の一つです。原則として、育休期間中でも給与が支払われている場合は掛金が拠出されます。しかし、多くの企業では、育休期間中は無給となることが一般的です。育児休業や介護休業期間中の掛金について、事前に年金規約に停止できる旨を明記し、所轄官庁の承認を得ている場合は、掛金の拠出を停止することができます。加入者自身が加入を任意で選択できる「選択制企業型確定拠出年金」では、加入者が自身の収入から掛金を拠出します。この場合、育休中の掛金拠出は規約によって定められますが、一般的には休業期間中の掛金拠出は停止されることが多いです。
育休中に企業型確定拠出年金を継続する利点
育休期間中も企業型確定拠出年金の拠出を継続できる場合、効率的な資産形成が期待できます。企業型確定拠出年金は運用益が非課税となる税制上の優遇措置があるため、通常の投資よりも有利です。また、NISAの非課税投資枠のような上限がない(掛金には上限あり)ため、可能な限り多くの掛金を拠出することで、資産形成のスピードを上げることができます。運用期間が長ければ長いほど、また掛金が多ければ多いほど、複利効果も大きくなります。経済的に余裕のある加入者は、将来の老後資金形成のためにも、育休期間中も掛金の拠出を検討する価値があるでしょう。
育休中に掛金を拠出する際の注意点
育休期間中は給与が大幅に減少、あるいは無給となるのが一般的です。一定の条件を満たせば育児休業給付金が支給されますが、掛金が経済的な負担になる可能性も考慮し、家計の見直しを行い、収入と支出のバランスを調整することが大切です。お子様の誕生により、生活費は増加します。固定費の見直しや、食費・娯楽費などの支出項目をチェックし、無駄な出費があれば削減して家計にゆとりを持たせましょう。また、育休期間中は予期せぬ出費が発生することも考えられるため、万が一に備えた貯蓄を別途用意しておく必要があります。ご自身の資産状況や育休期間中の収支状況を総合的に判断し、企業型確定拠出年金の掛金を拠出できるだけの余力があるかどうかを確認しましょう。
まとめ
この記事では、産休・育休中の社会保険料免除制度が年金に与える影響や、具体的な手続きについて詳しく解説しました。会社員の方もフリーランスの方も、安心して出産・育児に臨めるよう、ぜひこの記事を参考にしてください。制度を正しく理解し、賢く活用することで、将来の生活設計における安心感につながります。
よくある質問
質問1:産休・育休期間中に社会保険料は免除されるのでしょうか?
はい、会社員の方が厚生年金保険の被保険者である場合、申請することで健康保険料や厚生年金保険料などの免除を受けることができます。
質問2:育児休業中に年金保険料が免除された場合、将来受け取る年金額は減額されますか?
現在の制度では、出産前後の休業期間と育児休業期間中に保険料が免除された場合、保険料をきちんと納めた期間として計算されます。
質問3:個人事業主(フリーランス)でも産休・育休中に年金保険料の免除は適用されますか?
個人事業主の場合、出産に伴う休業期間中は年金保険料が免除の対象となります。育児期間中の保険料免除制度は、2026年10月から施行予定です。





