
育休中の所得税:知っておくべき基礎知識と手続き
育児休業を取得すると、気になるのが所得税の扱いです。育休中は給与が減額または無給となるため、所得税の計算や納税に影響が出ます。この記事では、育休中の所得税に関する基本的な知識から、必要な手続きまでをわかりやすく解説します。育休期間を安心して過ごすために、所得税の仕組みを理解し、適切な対応を行いましょう。
産休・育休中に受け取れる給付金
産休・育休期間中は、生活をサポートするための様々な給付金制度が設けられています。これらの給付金は、出産や育児による経済的な負担を和らげ、安心して休業期間を過ごせるようにするためのものです。主な給付金としては、出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金などが挙げられます。
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産にかかる費用を援助することを目的として支給されるものです。妊娠85日(4ヶ月)以上で出産した場合に、加入している健康保険や国民健康保険から受け取ることができます。原則として、お子さん一人につき原則50万円(令和5年4月1日以降)が支給されます。双子など多胎児を出産した場合は、その人数分の金額が支給されます。
出産手当金
出産手当金は、出産のために仕事を休み、その間給与が支払われない場合に支給されます。出産日または出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの期間について、給与のおおよそ3分の2相当額が支給されます。具体的な支給額は、以下の計算式に基づいて算出されます。
1日当たりの支給額: 【支給開始日以前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均額】÷30日×(2/3)
※支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、定められたいずれかの低い方の金額を用いて計算されます。
育児休業給付金
育児休業給付金は、1歳未満のお子さんを育てるために育児休業を取得した被保険者が対象です。給付金を受け取るには、休業開始日前2年間に、賃金支払いの基礎となる日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要となるほか、一支給単位期間中の就業日数が10日以下、または就業時間が80時間以下であるなどの条件を満たす必要があります。
給付金の額は、原則として休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(育児休業開始から180日まで)、それ以降は50%となります。ただし、給付金には上限額と下限額が設定されており、給付率67%で支給日数が30日の場合、それぞれ月額で323,811円と60,581円です。
出典:育児休業給付の内容と支給申請手続(令和7年8月1日改訂版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf
会社によっては休業期間中に給与が支給されるケースも
会社によっては、独自の福利厚生の一環として、産休・育休期間中に給与を支給する制度を設けている場合があります。自社の規定を確認してみましょう。
各種給付金には所得税は課税されない
出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金といった給付金は、所得税の対象とはなりません。
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1400_qa.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191_qa.htm
知っておきたい!産休・育休中も住民税の支払いは必要
産休・育休中は収入が減ることが多いですが、住民税は前年の所得に応じて算出されるため、休業中であっても納税義務が生じます。住民税は、都道府県民税と市町村民税で構成されており、その年の1月1日時点での居住地に納める必要があります。前年に収入があった場合は、産休・育休中であっても住民税を納める必要があります。
6月1日から12月31日の間に産休に入る場合
6月1日から12月31日の間に産休に入る場合、その年の住民税は通常通り、給料から天引きされます。ただし、休業期間中は給与が減額されたり、支給されないこともあるため、一括徴収や普通徴収への変更が必要となるケースがあります。
翌年1月1日から5月末日までに育児休業を開始する場合
翌年の1月1日から5月末日までの期間に育児休業を開始される場合、前年の所得にかかる住民税は、育休開始前にまとめて徴収されることがあります。もしくは、納付方法がご自身で納める普通徴収に切り替わる場合もあります。
納付が難しい場合はお住まいの自治体へご相談を
住民税の納付が経済的に厳しい状況であれば、お住まいの自治体に相談することで、税金の減額や納付期限の猶予といった措置を受けられる可能性があります。経済状況や個々の事情を考慮し、柔軟な対応をしてもらえる場合があります。
育児休業期間中の社会保険について
育児休業期間中も、引き続き社会保険には加入した状態となりますが、健康保険料や厚生年金保険料については免除される制度があります。ただし、雇用保険料は給与の支払いが無ければ納める必要はありません。
育児休業中も社会保険への加入は継続
育児休業中も、健康保険や厚生年金といった社会保険への加入状況は継続されます。これにより、医療サービスを受けたり、将来年金を受け取る資格を維持することができます。
健康保険・厚生年金保険料の免除
産前産後休業および育児休業期間中は、健康保険と厚生年金保険の保険料が免除される制度があります。この免除を受けるためには、会社が所定の手続きを年金事務所で行う必要があります。
雇用保険料は無給期間は不要
雇用保険料は、原則として給与から控除されるため、産休や育休によって給与が支払われない期間は、雇用保険料を納める必要はありません。
産休・育休期間中の社会保険料の免除
産休・育休中は、社会保険料が一定期間免除されます。この制度は、休業中の経済的なサポートとなり、負担を軽減する効果があります。
社会保険料免除の対象期間
社会保険料が免除される期間は、以下の通りです。
産前産後休業期間:産前産後休業の開始月から終了日の翌日の属する月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)
育児休業期間:育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月
例として、お子様の誕生日が8月10日の場合、産前休業開始日から1歳の誕生日前日である8月9日まで育児休業を取得すると、社会保険料は7月分までが免除対象となります。社会保険料は月単位で計算されるため、免除期間も月単位となります。
給付金への影響について
産休や育休期間中に社会保険料が免除されたとしても、健康保険から給付される手当金などは通常通り支給されますのでご安心ください。また、将来受け取る年金額が減額されるようなこともありません。
免除される社会保険料の合計額
実際に免除される社会保険料(ご自身で負担する分)がどれくらいになるのか、具体的な金額をシミュレーションしてみましょう。ここでは、以下の条件を仮定します。
お住まいは愛媛県で20代
協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入
社会保険料の免除対象期間は13ヶ月
毎月の給与(報酬月額)は25万円
この条件の場合、健康保険料としてご自身が負担する金額は月額1万3234円、厚生年金保険料は月額2万3790円となります。したがって、1ヶ月あたりの免除額は合計3万7024円となり、13ヶ月間では48万1312円もの社会保険料が免除されることになります。
社会保険料免除の申請手続き
社会保険料の免除を受けるためには、以下の手順で手続きを行う必要があります。
従業員から会社への申し出
産休や育休の取得予定が決まったら、まず従業員の方から会社(事業主)にその旨を申し出てください。会社によっては、所定の申請書を提出する必要があるかもしれません。この際、出産予定日や育児休業を取得する期間などを正確に伝えるようにしましょう。
事業主による年金事務所への手続き
従業員が産前産後休業に入った場合、事業主は「産前産後休業取得者申出書」を、育児休業に入った場合は「育児休業等取得者申出書」をそれぞれ年金事務所に提出する必要があります。
保険料免除の開始時期と期間
社会保険料の免除は、原則として産前休業を開始した月から適用されます。免除対象となるのは、従業員本人だけでなく、事業主が負担する社会保険料も含まれます。具体的な期間の例として、以下のようなケースが挙げられます。
出産予定日:8月10日
産前休業期間:6月30日~8月10日
産後休業期間:8月11日~10月5日
育児休業期間:10月6日~翌年8月9日
この場合、産休期間中の6月から9月と、育休期間中の10月から翌年7月までの合計14ヶ月分の社会保険料が免除されます。
休業終了時の届け出(予定変更の場合)
当初予定していた育児休業期間よりも早く職場復帰する場合、事業主は「育児休業等取得者終了届」を年金事務所に提出します。ただし、育休取得者の代替要員を雇用している場合など、育休の短縮が認められないケースもありますので、事前に勤務先の担当部署に確認することが重要です。
2022年10月以降の社会保険料免除に関する変更点
2022年(令和4年)10月に行われた健康保険法の改正により、育児休業期間中の社会保険料免除の条件が一部変更されています。
改正前の社会保険料の免除制度
これまでの制度では、育児休業が始まった月から、終了日の翌月の前月までが社会保険料免除の対象期間でした。つまり、月の最終日が育児休業期間に含まれていれば、その月に支払われる給与や賞与に対する社会保険料が免除されていました。しかし、この制度では、育児休業が月をまたぐかどうかで社会保険料の免除の有無が決まってしまうという問題点がありました。例えば、1ヶ月に満たない短い育児休業を月の途中で取得した場合、社会保険料は免除されませんでした。また、賞与が支給される月の末日に育児休業を取得すると、賞与にかかる社会保険料が免除されるため、短期間の育児休業を取得するケースで不公平感が生じるという課題もありました。
改正後の社会保険料の免除制度
上記のような問題点を考慮し、2022年10月から育児休業期間中の社会保険料免除の条件が変更されました。
月額保険料について
改正後は、育児休業を開始した月の末日が育児休業期間に含まれる場合に加え、その月に14日以上育児休業を取得した場合も社会保険料が免除されるようになりました。
賞与保険料について
賞与にかかる社会保険料については、1ヶ月を超える育児休業を取得した場合にのみ免除されます。例えば、7月に賞与が支給される場合、社会保険料の免除に関する取り扱いは以下のようになります。
育休が来年なら賢くふるさと納税を活用
育児休業中は、多くの場合、収入が減少します。そこで有効なのがふるさと納税です。この制度を利用すれば、実質2,000円の自己負担で、応援したい自治体から返礼品を受け取ることができます。育休に入る前に年間の収入を見積もり、適切な寄付額を設定することで、翌年の住民税を軽減することが可能です。
共働き夫婦、配偶者控除を受けることで節税は可能?
共働き夫婦の場合、夫が配偶者控除を受けることで税負担を軽減できるケースがあります。ただし、控除を受けるには所得制限があり、妻の年間合計所得金額が58万円以下(給与収入のみであれば123万円以下)である必要があります(それ以上の場合、配偶者特別控除があります)。控除を受けることにより、夫の所得税や住民税が軽減される可能性があります。
育休を延長できる「パパ・ママ育休プラス」とは?
「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦が協力して育児休業を取得する場合に、育児休業期間を延長できる制度です。原則として、育児休業は子供が1歳になるまでですが、「パパ・ママ育休プラス」を利用すると、最長で1歳2ヶ月まで延長できます。利用にはいくつかの条件があり、夫婦それぞれが育児休業を取得することがその一つです。
育休に備えて、万全な準備を
産休・育休中は、経済的な不安を感じやすい時期です。しかし、国の支援制度や企業の福利厚生を最大限に活用することで、安心して休業期間を過ごすことができます。出産・育児に関する情報を集め、事前にしっかりと計画を立てておくことが大切です。
職場復帰後のことも視野に入れて準備を
育児休業からの復帰後の生活についても、事前に計画を立てておくことが重要です。保育施設の選定や入所の準備、時短勤務やフレックス制度の活用など、復帰後の働き方を具体的に想定しておくことで、円滑な職場復帰につながります。
まとめ
産休・育休期間中は、さまざまな税金や社会保険料の免除制度が利用でき、これらを有効に活用することで経済的な負担を軽減することができます。また、育児休業給付金やふるさと納税などの制度も活用しながら、安心して育児に専念できる環境を整えましょう。制度をきちんと理解し、必要な手続きを行うことで、経済的な不安を和らげ、充実した育児期間を過ごすことが可能です。産休・育休は、新しい家族を迎えるかけがえのない時間であると同時に、経済状況にも変化が生じる時期です。この記事でご紹介した税金や社会保険料の免除制度、各種手当、節税対策などをしっかりと把握し、賢く活用することで、安心して育児に集中できる環境を構築しましょう。制度を最大限に活用し、家族との大切な時間を有意義にお過ごしください。
よくある質問
質問1:育休期間中に住民税は支払う必要がありますか?
はい、住民税は前年の所得に応じて計算されるため、育休中であっても免除されるわけではありません。ただし、収入が著しく減少した場合は、お住まいの自治体に相談することで、減額や猶予などの措置を受けられる可能性があります。
質問2:育児休業給付金は課税対象になりますか?
いいえ、育児休業給付金は非課税所得として扱われるため、所得税は課税されません。また、社会保険料も免除となります。
質問3:社会保険料免除の手続きについて教えてください。
社会保険料の免除を受けるには、会社が手続きを行う必要があります。具体的には、事業主が年金事務所へ「産前産後休業取得者申出書」又は「育児休業等取得者申出書」を提出します。従業員の方は、産休や育休を取得する予定があることを、事前に会社へ伝えておくようにしましょう。





