
算定基礎届とは?書き方や提出方法、注意点などを分かりやすく解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
「算定基礎届」は、企業が毎年提出する重要な社会保険関連書類です。この届出は、従業員の標準報酬月額を決定し、それに基づいて社会保険料を算出するために使用されます。
本記事では、算定基礎届の基本的な内容、作成方法、提出手続き、そして注意すべきポイントについて詳細に解説します。正確に対応し、適切な保険料算定と円滑な手続きを行いましょう。
目次[非表示]
- 1.算定基礎届(定時決定)とは?
- 2.算定基礎届と月額変更届(随時改定)の違い
- 3.算定基礎届の対象者
- 3.1.算定基礎届提出の対象となる人
- 3.2.算定基礎届提出の対象とならない人
- 3.2.1.6月30日までに退職した人
- 3.2.2.6月1日以降に被保険者となった人
- 3.2.3.7月改定の月額変更届を提出する人
- 3.2.4.8・9月に随時改定が予定されている人
- 4.標準報酬月額の対象となる報酬
- 4.1.標準報酬の対象となるもの
- 4.2.標準報酬の対象とならないもの
- 5.標準報酬月額の算出方法
- 6.算定基礎届の書き方と流れ
- 6.1.1. 支払基礎日数を記入する
- 6.2.2. 通貨と現物支給額および合計を記入する
- 6.3.3. 総計額を記入する
- 6.4.4. 平均額を記入する
- 6.4.1.パート・アルバイトのケース
- 6.4.2.年間平均で算定基礎届を算出するケース
- 7.算定基礎届を作成する際の注意点
- 8.算定基礎届の作成を外部に依頼する際のポイント
- 9.もし算定基礎届を出さなかったらどうなる?
- 10.まとめ
算定基礎届(定時決定)とは?
「算定基礎届(定時決定)」とは、従業員の社会保険料を適正に計算するための年次手続きです。企業は毎年4月から6月の3カ月間の給与データを基に、この届出を作成します。この過程で決定される標準報酬月額は、健康保険や厚生年金保険の保険料計算のベースになる要素です。
具体的には、3カ月間の給与総額を平均し、それを所定の等級表に当てはめて標準報酬月額を決定します。この手続きの目的は、給与変動を保険料に反映させることと、実際の収入と保険料の乖離(かいり)を防止するためです。
企業は7月10日までにこの届出を日本年金機構へ提出し、これにより9月から翌年8月までの1年間の保険料が確定します。
算定基礎届と月額変更届(随時改定)の違い
算定基礎届と月額変更届は、どちらも社会保険料の計算に関わる重要書類ですが、その用途と提出時期が異なります。
算定基礎届は年に一度の定期的な見直しに使用され、7月1日時点の全被保険者が対象です。一方、月額変更届は年間を通じて必要に応じて提出され、固定給与に大きな変動があった場合に使用されます。
算定基礎届は4月から6月の3カ月間の給与を基に作成され、7月10日までに提出が必要です。月額変更届は、昇給や降給など、基本給や固定手当に変更があった場合に随時提出します。
これら2つの届出を適切に使い分けることで、従業員の実際の収入と標準報酬月額の差を最小限に抑えられます。
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算定基礎届の対象者
算定基礎届の対象者は、原則として7月1日時点で社会保険に加入している全従業員です。ただし、いくつかの例外があるので注意してください。ここでは、対象となる人とならない人について詳しく説明します。
算定基礎届提出の対象となる人
算定基礎届の提出対象には、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも含まれます。また、育児・介護休業中の従業員や病気による休職中の方も、社会保険の被保険者であれば算定基礎届の提出対象です。
注目すべき点は、70歳以上の従業員も算定基礎届の提出が必要なことです。厚生年金保険に加入していなくても、健康保険の被保険者であれば提出の対象となります。
このように、幅広い雇用形態や年齢層の従業員が算定基礎届の対象となることを理解しておいてください。
算定基礎届提出の対象とならない人
以下のケースに該当する従業員は、算定基礎届の対象外です。
- 6月30日までに退職した人
- 6月1日以降に被保険者となった人
- 7月改定の月額変更届を提出する人
- 8・9月に随時改定が予定されている人
各ケースについて詳しく説明します。
6月30日までに退職した人
6月30日までに退職した従業員は、7月1日時点で在籍していないため、算定基礎届の対象外です。届出書類に名前が印字されていても、給与情報を記入する必要はありません。
ただし、退職に伴う資格喪失手続きは別途行わなくてはならないので、注意しましょう。
6月1日以降に被保険者となった人
6月1日以降に社会保険の被保険者となった従業員は、算定基礎届の対象外です。これは、加入時の手続きで翌年8月までの標準報酬月額が既に決定されているためです。
新規加入時の報酬額が9月以降の標準報酬月額として適用されますが、翌年の算定基礎届では対象となります。
7月改定の月額変更届を提出する人
4月に固定給与に変動があった従業員は、算定基礎届ではなく7月改定の月額変更届の対象です。これは、昇給や降給など、報酬に大きな変化があった場合に適用されます。
月額変更届を提出することで、新しい標準報酬月額がより早く反映されます。
8・9月に随時改定が予定されている人
8月または9月に随時改定が予定されている従業員は、算定基礎届の対象外です。これは、随時改定が定時決定よりも優先されるためです。
ただし、月額変更届の提出は必要です。算定基礎届には「随時改定予定あり」と記載し、後日の月額変更届提出を忘れないようにしましょう。この手続きにより、最新の報酬状況を反映した標準報酬月額が適用されます。
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標準報酬月額の対象となる報酬
標準報酬月額の算定には、従業員が労働の対価として受け取る金銭や現物給付が含まれます。ただし、臨時的な支給や実費弁償的なものは対象外です。以下で詳しく説明します。
標準報酬の対象となるもの
標準報酬の対象となる報酬には、基本給をはじめ、役職手当、通勤手当、住宅手当などの各種手当が含まれます。また、年4回以上支給される賞与も対象となります。
現物給付の場合、食事、社宅、通勤定期券なども標準報酬の対象です。これらは、労務の対償として定期的に支給されるものとみなされます。現物給付の価値は、各都道府県で定められた基準に従って金銭換算されます。
標準報酬の対象とならないもの
標準報酬の対象とならない報酬は、主に臨時的または一時的に支給されるものです。具体的には、見舞金、慶弔費、出張旅費、退職手当などが該当します。また、年3回以下の賞与も対象外です。
現物支給の場合、業務用の制服や作業着、見舞品などは含まれません。食事の現物支給については、従業員の負担額が一定基準を超える場合は対象外となるため、特に注意が必要です。
これらの報酬は、通常の労働の対価というよりも、特殊な状況下での支給や実費弁償的な性質を持つため、標準報酬月額の算定から除外されます。
参考:日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック令和6年度」(3・4ページ)
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標準報酬月額の算出方法
標準報酬月額の算出は、主に3つのステップで行われます。
まず、4月から6月の各月における支払基礎日数を確認します。これは、報酬が支払われる対象となる日数を指します。
次に、支払基礎日数が17日以上ある月の報酬総額を合計し、該当月数で除して平均額を算出します。ただし、短時間労働者の場合は異なる基準が適用されるため、注意してください。
最後に、算出した平均額を保険料額表と照合し、該当する標準報酬月額を決定します。この過程を経て、9月以降の新しい保険料が確定されます。
従業員の社会保険料に直接影響するため、この算出過程は正確に行う必要があります。適切に計算し、従業員の実際の収入に即した保険料を設定しましょう。
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算定基礎届の書き方と流れ
ここでは、算定基礎届の書き方を以下の4つのステップで説明します。
1. 支払基礎日数を記入する
「支払基礎日数」は、算定基礎届の重要な要素です。これは、4月から6月までの各月で報酬の支払対象となった日数を指します。記入方法は、給与の締め日と支払日によって異なります。
月給制の場合、通常は暦日数を記入しますが、締め日が月の途中にある場合は締め日の翌日から1カ月間の日数です。例えば25日締めの場合、4月の支払基礎日数は3月26日から4月25日までの31日間となります。
欠勤がある場合は、所定労働日数から欠勤日数を引いた日数を記入してください。パートやアルバイトなど短時間労働者の場合は、別途規定があるので注意が必要です。
正確な支払基礎日数の記入は、適切な社会保険料算出の基礎となるため、慎重に行いましょう。
2. 通貨と現物支給額および合計を記入する
算定基礎届の「通貨」「現物」「合計」欄には、支払基礎日数に対応する報酬を記入します。
通貨は基本給や手当など現金で支給された額です。
現物支給は、自社製品などを原則として時価換算して計算します。食事や住宅の場合は、日本年金機構の「全国現物給与価額一覧表」を参照し、1カ月分に換算した金額を記入します。
注意点として、都道府県や年によって現物給与の価額が異なるため、最新情報の確認は欠かせません。
また、支払基礎日数が17日未満の月でも、支給額は必ず記入してください。これらの正確な記入が、適切な社会保険料算出の基礎となります。
3. 総計額を記入する
算定基礎届の「総計欄」には、算定対象月の通貨と現物支給額の総合計を記入します。算定対象月とは、支払基礎日数が17日以上の月を指します。
例えば、4月と6月が17日以上で、5月が16日の場合、5月は対象外です。このケースでは、4月と6月の通貨および現物支給額のみを合計して記入します。短時間労働者の場合は、11日以上の月が対象となるため注意が必要です。
また、パートタイム労働者で17日以上の月がない場合は、15日以上の月の合計を記入しましょう。
正確な総計額の記入は、適切な標準報酬月額の決定につながるため、慎重に計算することが重要です。
4. 平均額を記入する
「平均額」欄には、総計額を算定対象月数で割った金額を記入します。
例えば、4月と6月のみが対象月の場合、総計を2で割ります。算出された平均額は、小数点以下切り捨てです。
この平均額が、標準報酬月額の決定基準となり、9月からの社会保険料計算に使用されます。正確な記入が重要なので、慎重に計算しましょう。
パート・アルバイトのケース
パート・アルバイトの算定基礎届記入には特別な規則があります。
支払基礎日数には実際の勤務日数を記入し、備考欄の「パート」または「短時間労働者」の項目に丸印を付けます。17日以上の月がある場合、それらを算定対象月とし、「パート」の項目に丸印を付けてください。
全ての月において支払基礎日数が17日未満の場合、15日以上の月を対象とし、同様に「パート」の項目に丸印を付けます。
全ての月において支払基礎日数が15日未満の場合は、従前の標準報酬月額が適用されます。一方で短時間労働者に該当する場合には、11日以上ある月を算定対象月とします。これらの規則を正確に適用することで、パート・アルバイトの適切な社会保険料算定が可能です。
年間平均で算定基礎届を算出するケース
年間平均での算定基礎届は、特定の業種や職種で4月から6月の報酬が年間の平均と大きく異なる場合に適用できます。具体的には、この3カ月の平均額と年間平均額に2等級以上の差があり、それが毎年継続して発生する見込みの場合です。
このケースでは、前年7月から当年6月までの1年間の平均報酬で申請が可能です。ただし、通常の算定基礎届の記入に加え、修正平均額欄に年間平均額を記入し、備考欄の「年間平均」の項目に丸印を付けましょう。
またこの申請には、事業主の申立書と従業員本人の同意が必要です。従業員は、報酬額と標準報酬月額を確認した上で同意欄に署名します。この特例により、より実態に即した社会保険料の算定が可能となります。
算定基礎届を作成する際の注意点
算定基礎届作成時の注意点として、4~6月に報酬支払いがない場合の対応です。
病気療養中や育児・介護休業などで3カ月とも報酬がない場合、直近の標準報酬月額がそのまま適用されます。これは、前年の標準報酬月額や入社時に決定された額などが該当します。
ただし、報酬支払いがなくても算定基礎届の提出は必須です。この点を見落とさないよう注意してください。従業員の社会保険料を正確に算出するために、慎重に対応しましょう。
算定基礎届の作成を外部に依頼する際のポイント
算定基礎届の作成を外部に依頼する際は、社会保険労務士へのアウトソーシングが適しています。社会保険関連書類の作成は、法律で社会保険労務士の独占業務と定められているためです。社会保険労務士は社会保険の専門家として、最新の法律や手続きに精通しています。
社労士に依頼することで、繁忙期の時間と労力を節約できるだけでなく、正確な手続きが可能になります。また、法改正にも迅速に対応してくれるため、安心して本業に集中できるでしょう。
もし算定基礎届を出さなかったらどうなる?
算定基礎届を提出しなかった場合、深刻な結果を招く可能性があります。提出期限を過ぎてしまっても、できるだけ早く提出してください。
長期間未提出の状態が続くと、年金事務所から催告状が送られ、それに応じない場合は罰則を受ける恐れがあるでしょう。具体的には、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される恐れがあります。
さらに、虚偽の届出や長期の未提出は、企業だけでなく、被保険者である従業員にも影響を及ぼします。
社会保険料が適切に算定できず、従業員の将来の年金受給額にも影響を与える可能性があるため、速やかに提出してください。
まとめ
算定基礎届は、社会保険料算出の基礎となる重要な書類です。4月から6月の報酬を基に標準報酬月額を決定し、毎年7月に提出します。
算定基礎届は正確に記入し、期限内に提出しなくてはなりません。対象者や記入方法、注意点を十分に理解し、適切に対応しましょう。
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