
残業時間の平均はどのくらい?労働基準法によるルールや上限などを解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
ブラック企業や過労死といった問題が起こっている中、わが国では長時間労働をより厳しく取り締まるようになりました。特に事業主側が注意しなければならないのが、部下の残業時間の管理です。
この記事では、日本の労働者の平均残業時間について解説します。併せて上限規制や具体的な管理方法もまとめているので、事業主は参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.労働基準法により定められている残業の定義とは?
- 2.法定内残業や法定外残業との違い
- 3.日本の残業時間の平均は?
- 4.残業時間が多い職種と少ない職種
- 5.2024年4月から適用された残業時間の上限規制について
- 5.1.違反となる残業時間
- 5.2.特別条項の上限は月100時間未満
- 5.3.上限規制の例外となる事例
- 6.上限規制違反となる具体例
- 6.1.36協定を締結せず残業してしまう
- 6.2.年間7回以上の時間外労働が月45時間を超えてしまう
- 6.3.月の残業が合計100時間以上
- 7.残業時間の管理方法
- 7.1.残業時間の基準を設定する
- 7.2.勤怠管理ツールを導入する
- 8.残業時間を減らすための対処法
- 8.1.業務体制の効率化を図る
- 8.2.残業を許容する文化を改善する
- 9.残業が適法になるか・違反疑惑がある場合に行うべきこと
- 9.1.36協定を締結しているか確認する
- 9.2.労働基準監督署に相談する
- 10.フレックスタイム制やリモートワークと残業の関係
- 11.まとめ
労働基準法により定められている残業の定義とは?
労働基準法における残業とは、「1日8時間または1週間40時間(法定労働時間)」を超えて労働することです。原則として法定労働時間を超えて、従業員に仕事させるのは許されません。ただし「労使協定(36協定)」を結べば、一定の範囲内での残業が認められます。
仮に従業員が残業した場合、会社側は25%以上の割増賃金を支給しなければなりません。例えば時給1,500円で働く従業員が、3時間残業した場合、賃金は次のように計算されます。
1,500円/時間×3時間×1.25=5,625円
つまり上記のケースでの従業員の支給額は5,625円です。
なお、固定残業代について詳しく知りたい方は「固定残業代とは?みなし残業代との違いやメリット・デメリットを解説」の記事も併せてチェックしてください。
法定内残業や法定外残業との違い
残業には、大きく分けて法定内残業と法定外残業の2種類があります。
種類 |
意味 |
法定内残業 |
所定労働時間を超えているが、法定残業時間は超えていない |
法定外残業 |
所定労働時間および法定残業時間を超えている |
このうち割増賃金が適用されるのは、従業員が法定外残業をしたときです。例えば、ある従業員の契約内容が10〜17時(昼休憩1時間)の6時間勤務だったとしましょう。
当該条件において、従業員が18時まで残業しました。昼休憩の1時間を差し引くと、勤務時間の合計は7時間です。所定労働時間は1時間オーバーしていますが、法定労働時間の1日8時間は超えていないので、割増賃金を支払う必要はありません。
一方で20時まで残業すれば労働時間が9時間となり、1時間分の割増賃金を支払わなければならなくなります。
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日本の残業時間の平均は?
厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」によると、日本の全従業員における平均残業時間は月に10時間です。この数値は、あくまで企業が定めた所定労働時間を基準に算定されています。
全体の残業時間は令和2〜3年にかけて大幅に上昇しているものの、それ以降は減少しつつあるのが特徴です。
さらに雇用形態別に見たときの残業時間は、次のように示されています。
雇用形態 |
残業時間(所定外労働時間) |
前年比 |
一般労働者 |
13.8時間 |
−0.4% |
パートタイム労働者 |
2.2時間 |
1.6% |
パートタイム労働者の月の残業時間は、平均で2.2時間程度です。しかし前年と比較すると、1.6%も上昇していることが判明しました。
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残業時間が多い職種と少ない職種
転職サービスdodaが実施した「平均残業時間ランキング」の結果の一部を抜粋してまとめました。
残業時間が多い職種
職種 |
月の残業時 |
プロデューサー、ディレクター、プランナー |
42.2時間 |
設計監理、コンストラクションマネジメント |
39.1時間 |
建築設計、デザイン、積算、測量 |
31.1時間 |
残業時間が少ない職種
職種 |
月の残業時間 |
一般事務 |
10.6時間 |
秘書、受付 |
11.4時間 |
医療事務 |
12.0時間 |
このように、職種によっても残業の実態は異なるのが実情です。全体的に納期が厳しく、頻繁にクライアント対応が求められる仕事は残業が多い傾向にあります。またイベントやキャンペーンの開催により、タイミングによって残業が多くなるケースもあるでしょう。
一方でシフト制を徹底しており、業務の効率化が進んでいる職場では残業時間が比較的少なくなります。働き方や環境を見直し、従業員の負担を軽減させることも残業を減らす上で大切です。
参考:転職サービスdoda「平均残業時間ランキング」
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2024年4月から適用された残業時間の上限規制について
2019年4月の法改正により、時間外労働に罰則が適用されました。建設業や医師などには、当該規定の適用が猶予されていましたが、2024年4月からこれらの業種も対象になります。会社の責任者は、上限規制の内容を押さえなければなりません。
違反となる残業時間
36協定を締結していない場合、労働時間は1日8時間または月40時間を超えてはなりません。つまり、法定外残業は一切認められません。36協定(一般条項)を結ぶと、月45時間または年360時間までの残業が認められます。
一方で36協定の特別条項を締結しているケースでは、上限が次のように変わります。
- 6カ月まで月45時間を超えられる
- 年720時間
- 月100時間(休日労働も含めて)
- 連続する2〜6カ月の平均残業時間が80時間(休日労働も含めて)
特別条項は、臨時的かつ特別な事情がある場合に限り締結が可能です。締結する際には、労働者の代表者あるいは労働組合と交渉しなければなりません。
特別条項の上限は月100時間未満
特別条項を締結していても、月の残業時間は100時間未満に抑える必要があります。平日の労働時間に加え、休日労働の分も含まれるので注意しましょう。
加えて企業は、「月45時間を超えるのは6回まで」「連続する2〜6カ月の平均残業時間は80時間」といった条件も守らなければなりません。仮に月の労働時間が90時間であっても、その状況が6カ月間も続くと、後者の規制を破ることになってしまいます。
さらに、特別条項が適用されるのは、あくまで臨時的で特別な事情があるとみなされるときです。日常的な業務においては、一般条項の月45時間または年360時間が上限となります。
上限規制の例外となる事例
特別条項が認められるには、以下の条件を満たしているかどうかがポイントです。
- 通常予見できない業務量の増加
- 緊急事態の発生など
例えば会社の製品に不具合が発覚し、消費者から回収する必要性が生じたとしましょう。この場合は予期しない出来事が発生しているため、特別条項が適用される可能性も高まります。
繁忙期についても、特別条項が認められると勘違いされることが多いですが、単なる繁忙は認められません。あくまで、予測できないことが重要です。
またシステムエラーも、予見できない緊急事態の1つです。早急に復旧しなければならないため、特別条項が認められやすいでしょう。
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上限規制違反となる具体例
従業員とともに仕事する中で注意しなければならないのが、気付かずに上限規制を破ってしまうことです。ここで紹介する具体例に違反すると、6カ月以下の懲役または30万円未満の罰金に処される可能性があるため、注意しなければなりません。
36協定を締結せず残業してしまう
まず注意すべきポイントは、36協定を締結せずに残業させていないかどうかです。従業員に残業させるのが避けられないのであれば、36協定を結ぶ必要があります。
しかし労働者が以下の条件に当てはまる場合、36協定を締結しても残業は認められません。
- 18歳未満である
- 妊娠中または出産後1年未満の女性が残業しないことを請求した場合
- 育児または介護をしている者が残業しないことを請求した場合で、事業の正常な運営を妨げる事情がないとき
18歳未満はごく一部の例外を除いて、妊産婦の従業員が従事したくないという請求があった場合、深夜労働や休日労働を命じるのも禁止されています。育児や介護をしている従業員が従事したくないという請求をした場合には深夜労働が認められず、月24時間・年150時間を超えた残業も禁止されているので気をつけましょう。
年間7回以上の時間外労働が月45時間を超えてしまう
年間7回以上にわたって月45時間を超える残業があることも、上限規制違反となるケースの1つです。例えば、ある従業員の労働時間が、次のように記録されていたとします。
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
48h |
30h |
47h |
50h |
10h |
10h |
48h |
47h |
50h |
0h |
48h |
20h |
月ごとに見てみると、45時間を超える残業時間が7カ月あります。月100時間以上、年間720時間の要件には達していませんが、上記のケースは上限規制違反です。日頃から従業員の残業状況をチェックし、年6回の上限を超えないようにしてください。
月の残業が合計100時間以上
月の残業時間が合計100時間以上であることも、上限規制違反に該当します。例えば1月から11月まで、残業時間を10時間以内に抑えたとしましょう。11月まで順調に残業時間を抑えていても、最後の12月で100時間を超えたら上限規制違反で罰則の対象となります。
特に気をつけなければならないのが、時期によって仕事が忙しくなるタイミングです。学習塾を経営している会社であれば、冬の時期は冬期講習や受験シーズンで教室を開ける機会が増えるかもしれません。
一定の時期だけ忙しくなり、かつ非常事態に見舞われている会社は上限を超えやすくなるので、管理を徹底してください。
残業時間の管理方法
残業時間に気を配っていても、従業員側も気付かずに時間を超過する恐れもあります。こうした失敗を防ぐには、管理方法から徹底しなければなりません。以下では、どのように残業時間を管理すればよいかを解説します。
残業時間の基準を設定する
残業時間を管理する上で、採用したい対策の1つが基準の設定です。労働基準法のルールを守りつつ、自社でも独自に残業できる時間を設けてください。
例えば36協定の特別条項を結んだ場合、1カ月の残業時間は100時間未満が上限となります。1カ月の残業時間を80時間未満に抑えるなど、社内でも基準をつくるとよいでしょう。
このような基準は、従業員全員に周知しなければなりません。基準を超えそうな従業員がいたら、一人ひとりにしっかりと注意してください。口だけの目標にするのではなく、注意指導した記録を作り保管するなど、社内全体で守ろうとする意識づけが大切です。
勤怠管理ツールを導入する
勤怠管理ツールの導入も、従業員の残業時間を管理する上で役立ちます。勤怠管理ツールのメリットは、従業員ごとの労働時間をリアルタイムでチェックできる点です。
日頃の業務に追われていると、従業員全員の状況をチェックする時間が取れないでしょう。人間の目だけでは、見落としや確認ミスも防ぎきれなくなります。
ツールによっては、残業時間をオーバーしそうな従業員がいるときにアラートで教えてくれます。未然に上限規制違反を防げる点で便利です。ツールによって搭載されている機能が異なるので、有効だと感じたものを選んでください。
残業時間を減らすための対処法
残業時間を減らすためには、各自の業務量や社内環境から見直す必要があります。いくら従業員に呼びかけても、根本的な部分が改善されなければ問題は解決できません。特に意識したい対処法についてまとめます。
業務体制の効率化を図る
残業時間を減らすには、業務体制の効率化を図ることが大切です。従業員に業務を割り当てる際には、属人化に注意しなければなりません。専門性が高い業務においても、特定の従業員に集中させるのではなく、複数人で担当できるようにしましょう。
さらにツールを積極的に導入するのも、効率化を目指す上で必要な取り組みの1つです。一定のコストはかかるものの、単純作業をツールに任せることで一人ひとりの負担を減らせます。
残業を許容する文化を改善する
残業を許容する文化を、社内でなくすことも残業時間の減少につながります。残業が問題視される前は、むしろ長時間労働が称賛される時代もありました。価値観をアップデートできていない人の中には、いまだにサービス残業を良しと考える人がいるかもしれません。
しかし会社側はこうした風土を改善し、長時間労働は禁止するといった立場をとらなければなりません。善意でサービス残業をしている従業員がいたら、責任者は止めさせるように指導してください。
残業についてさらに詳しく知りたい方は「派遣社員に残業依頼はできる?時間上限や残業代の計算方法についても解説」「パートの残業代の計算方法は?支払い条件・手当・割増賃金についても解説」の記事もご覧ください。
残業が適法になるか・違反疑惑がある場合に行うべきこと
従業員に残業をさせているけれど、適法か違法かの判断が難しいと感じる場合もあるでしょう。もし会社の業務体制に違反疑惑があるときには、いくつかチェックすべき項目があります。
36協定を締結しているか確認する
まず確認すべきポイントは、36協定を締結しているかどうかです。具体的な確認方法として、以下の3つがあります。
- 作業場に収納されているファイルなどを確認
- パソコンの共有ファイルを確認
- 人事部と相談
36協定の存在を確認できたら、会社の実態がその内容に違反していないかを調べてください。定期的に実態を照らし合わせ、常に適法な状態を目指しましょう。
労働基準監督署に相談する
労働者のみならず、事業主側も残業問題について労働基準監督署へ相談できます。相談する際には、資料をしっかりとまとめて何を聞きたいかを明確にしてください。
働き方改革が進む中で、解決できない悩みが少なからずあるはずです。従業員とトラブルが起きる前に、労働基準監督署からアドバイスをもらった方が望ましいでしょう。
フレックスタイム制やリモートワークと残業の関係
従業員の労働時間を調整する方法として、フレックスタイム制の導入があります。フレックスタイム制とは、総労働時間の範囲内で始業時刻と終業時刻を自由に変更できる制度です。(なお、フレックスタイム制の導入には、就業規則等の制定手続が必要です。)
フレックスタイム制で残業の対象になるのは、原則として以下の清算期間内の労働時間の合計が法定労働時間の総枠を超えた場合とされています。総枠の計算式は、次のとおりです。
「1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間の暦数÷7日」
清算期間は労働すべき時間を定める期間であり、最長3カ月までとなっています。仮に清算期間が1カ月を超えた場合、法定時間外労働に当たるのは次のいずれかに該当するときです。
- 1カ月単位での週平均の労働時間が、50時間を超えている
- 清算期間全体での週平均の労働時間が、40時間を超えている
さらにリモートワークにおいても、過剰な残業を防がなければなりません。オフィスではなく在宅での仕事が基本になるため、勤怠管理により力を入れる必要があります。まずは就業規則がリモートワークに適しているかを確認し、勤怠管理ツールの導入も検討しましょう。
まとめ
日本の残業時間を見てみると、正規雇用者では前年よりもやや下がりました。一方でパートタイム労働者の場合は、残業時間が増えているのが実態です。
繁忙期に残業が発生するのは仕方ない側面もありますが、労使協定のルールは守らなければなりません。従業員の健康状況を守ることも、会社にとって重要な責務であるためです。
残業時間を管理する上では、自社でも明確に基準を定めるのをおすすめします。もし一時的に人手が足りていないのなら、スキマバイト募集サービス「タイミー」がおすすめです。タイミーに興味のある方は、お問合せフォームから気軽に問い合わせてみてください。