糸島市が推進する人材確保の新たな試み:「タイミー」との連携協定で中小企業の振興を目指す

タイミーは、スポットワークを通じた人材確保に関する協定を2024年6月に糸島市と締結しました。西日本での地方自治体連携は初となります。今回は、糸島市の商工振興課の中島さんと中村さんに連携協定の背景と今後の取り組みについて伺いました。

(右)福岡県糸島市 経済振興部 商工振興課 商工労働係 課長補佐 中島さん (左)福岡県糸島市 経済振興部 商工振興課 商工労働係 主査 中村さん

「人手不足で商工会の説明会にも出られない」という事業者の声。まずは直近の人手不足を解消しないと何もはじまらない

―まず福岡県糸島市の特長を教えてください。

商工振興課 商工労働係 主査 中村さん(以下:中村さん):糸島市は、県の最西部に位置する人口約10万人の市です。農業・漁業・畜産業が盛んで、県内外から安全・安心な新鮮でおいしい「糸島ブランド」として人気を得ています。

 

―糸島市には、どのような人材課題がありますか?

中村さん:人口は、2016年以降増加していているものの、20歳から24歳までの就職人口は極端な転出超過になっており、市内での労働力定着に課題が残っています。これまでの取り組みとしては、正社員雇用を増やすための就職面談会の実施や求人サイト「糸島しごとさがし」の運営、事業者向けの設備投資に関する支援が挙げられます。

商工会としては補助金の説明会なども開催しているのですが、事業者さんがなかなか参加してくれない。「なぜ来てくれないのですか?」と伺ったところ「忙しくてお店や会社を空けることができない。人手がいないから自分が動くしかない」といった声を多く聞きました。特に、糸島市内は従業員が20人以下の事業所が9割を占めており、従業員の急な休みがあると一時的に閉店を余儀なくされるケースも散見していたのです。

これは目の前の人手不足を解消しないと、説明会への参加や設備投資など事業者が次を考える余裕ができないと思い、これまでのやり方ではない人材獲得の方法を探していました。そんな中で「官民連携いとしまスタイル」の一環の取り組みとして公募案件を出しているときに出会ったのがタイミーでした。

 

 

タイミーを活用している事業者を見学。スポットワーカーがいることで生まれる余裕がある

―本日、実際にタイミーを活用している事業者(株式会社釜揚げ牧のうどん、株式会社イトキュー)にお話を伺ってみていかがでしたか?

商工振興課 商工労働係 課長補佐(以下:中島さん):タイミーさんからメリットとして伺っていた部分(引き抜き採用やマッチングスピード)について、経営者からリアルな声として聞けたのは、連携協定を締結して良かったなと思えました。今回見学した事業者は糸島市の中でも大きい企業さんだったので、もっと小規模な事業者にも積極的に使っていただきたいですね。

 

中村さん:一番印象に残ったのが、釜揚げ牧のうどんの畑中社長が仰っていた「雇う側もお試しで雇えるし働く側もお試しで働ける」という言葉です。書類や面接などのプロセスを省いて、まずはお試しで働いてみる。そこで事業者とワーカーのお互いの相性が合えば、長期雇用につながると言い、実際にタイミー経由での長期採用者が15名いらっしゃいました。まずは知ってもらう、関わりを持ってもらうのが大事ですよね。

また「人が入ってくれることで従業員の気持ちに余裕が生まれた」という話も多くの事業者に当てはまりそうです。無理をして疲弊してしまう部分の対策として、タイミーを活用するのも良いですね。スポットでワーカーさんが入ることで事業者の余裕が生まれる。生まれた余裕で新しいことや次のことを考える。そんな風にちょっとした余裕が生まれるだけでも、大きな変化になるんだろうなと思いました。

 

 

まずは商工業の事業者への浸透から。徐々に業種を広げていきたい

―今後、タイミーとどのような取り組みをしていきたいですか?

中村さん:将来的な広がりとしては、徐々に糸島市内の多様な業種に浸透させ、その後多様な層のワーカーさんへ浸透させていきたいです。現在は飲食業など商工業中心ですが、求人ニーズの高い農業や水産業、介護、保育にまで担当部署と協議しながら広げていければと考えています。

そのためにも、まずは一歩目として商工業の事業者への浸透が進むような取り組みを進めていきます。タイミーさんと一枚岩になって、事業者とワーカーそれぞれの理想のマッチングを生むよう引き続き努力していきます。

取材協力:福岡県糸島市
福岡県の最西部に位置する市。2010(平成22)年1月1日に旧前原市・旧志摩町・旧二丈町が合併し誕生した。農業・漁業・畜産業が盛んで、県内外から安全・安心な新鮮でおいしい「糸島ブランド」として人気を得ている。