働き方の多様化や収入面の不安などを背景に、副業を始める方が増えています。副業で得た収入について、「所得税はいくらかかるの?」「確定申告は必要?」などの不安がある方もいるのではないでしょうか。
本記事では、副業で得る所得の種類と所得税の計算方法を解説します。
副業で確定申告が必要となる基準や確定申告をしたほうがよいケース、副業の所得税に関する注意点も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
副業で得る主な所得の種類
副業で所得税がいくらかかるかを理解するには、副業で得た収入がどの所得に該当するのかを知る必要があります。
「収入」が事業などで得た売上そのものを指すのに対し、「所得」は収入から必要経費などを差し引いた金額のことです。税金の世界における利益のようなイメージです。
所得は、所得税法によって10種類に区分されており、それぞれ所得の計算方法などが異なります。副業で得る主な所得には、主に給与所得や雑所得、事業所得などがあります。
所得の種類 | 内容 |
給与所得 | お勤め先から受け取った給与・賞与など |
雑所得 | 副業にかかる原稿料やアフィリエイト収入など |
事業所得 | 事業から生じた収入 |
副業で雇用契約を結んでいる場合は「給与所得」、結んでいない場合は「雑所得」や「事業所得」に該当するのが一般的です。
例えば、副業でパート・アルバイトをしており、給与を受け取っている場合は給与所得に該当します。また、個人ブログでアフィリエイト収入を得ている方や、業務委託契約を結び、原稿料として報酬を受け取っている場合は雑所得です。
雑所得に該当する副業の例
・原稿料や講演料 ・フリマアプリ ・フードデリバリー ・動画配信 ・アフィリエイト ・民泊 ・カーシェアリングなど |
ただし、副業でも社会通念上「事業」と認められる場合は、事業所得となる場合があります。
副業でかかる所得税の計算方法
所得税は、1年間に生じた個人の所得に対して課税される税金です。副業にかかる所得税は、以下の流れで計算します。
1. 所得金額を求める 2. 所得控除を差し引いて課税所得金額を求める 3. 所得税額を算出する |
①所得金額を求める
所得金額の求め方は、所得の種類によって異なります。副業で得た収入がどの所得に該当するかを把握したうえで所得金額を計算しましょう。
副業で得た収入がよく該当する給与所得、雑所得、事業所得について、計算方法をくわしく解説します。
給与所得
給与所得の金額は、収入から必要経費を差し引く代わりに、あらかじめ所得税法で定められた給与所得控除額を差し引いて求めます。
給与所得=収入金額(源泉徴収される前の金額)-給与所得控除額
給与所得控除額は、以下のとおりです。
給与等の収入金額(※) | 給与所得控除額 |
~1,625,000円 | 550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円 | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円~ | 1,950,000円 |
例えば、本業が会社員・副業がアルバイトの場合、所得の区分は本業・副業ともに給与所得です。この場合、本業・副業の収入を合計し、給与所得控除を差し引いた金額が給与所得の額となります。
(※)給与等の収入金額は、お勤め先から受け取った源泉徴収票に記載されている「支払金額」を見ればわかります。
雑所得
一般的に、副業でフリマアプリやアフィリエイト、原稿料などの収入を得ている場合は、雑所得に該当します。雑所得の求め方は以下のとおりです。
雑所得=総収入金額-必要経費
必要経費にできるのは、以下を満たす費用です。
1. 収入を得るために直接要した費用 2. その年に生じた販売費、一般管理費、その他業務上の費用 |
例えば、以下のような費用が考えられます。
・業務で使用するスマホの通信料金 ・取引先との打ち合わせのための交通費や飲食代 ・事務用品(名刺など)の購入費用 ・業務で使用する書籍代 ・業務に関わる保険料(自動車保険など) ・商品の原材料費など |
なお、自宅を仕事場にしている場合の家賃や光熱費などは、面積や時間などで按分し、業務に関する部分のみを必要経費に計上します。
事業所得
副業でフリマアプリやアフィリエイト、原稿料などの収入を得ている場合、規模や継続性などから社会通念上「事業」と認められる場合は、事業所得に該当します。事業所得の計算方法は以下のとおりです。
事業所得の金額=総収入金額-必要経費
雑所得と同様に、収入を得るために直接必要な費用や、販売費、一般管理費、その他業務上の費用は、必要経費として差し引けます。
②所得控除を差し引いて課税所得金額を求める
次に、所得金額の合計から所得控除の合計額を差し引いた「課税所得金額」を求めます。
所得控除とは、所得税額に納税者の事情を反映させる目的で所得から一定額を差し引ける制度です。全部で15種類の所得控除があります。
所得控除 | 対象となるケース |
基礎控除 | すべての納税者 |
配偶者控除 | 控除対象配偶者がいる場合 |
配偶者特別控除 | 配偶者の所得が48万円超で配偶者控除の適用が受けられない場合 |
扶養控除 | 控除対象扶養親族がいる場合 |
勤労学生控除 | 納税者自身が勤労学生である場合 |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親である場合 |
寡婦控除 | 納税者自身が寡婦である場合 |
障害者控除 | 納税者、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者にあてはまる場合 |
寄附金控除 | 国や地方公共団体などに一定の寄附金を支出した場合 |
地震保険料控除 | 地震保障の保険料を支払った場合 |
生命保険料控除 | 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済法上の共済契約にもとづく掛金等を支払った場合 |
社会保険料控除 | 社会保険料を支払った場合 |
医療費控除 | 1年間に支払った医療費が一定額を超える場合 |
雑損控除 | 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき |
所得控除額は、所得控除の種類によって異なります。
③所得税額を算出する
次に、課税所得金額に所得税率を掛けて所得税額を算出しましょう。
所得税では、所得が多くなるにつれて段階的に税率が高くなる「超過累進税率」が採用されており、所得税率は5%〜45%の7段階に分けられます。具体的には、以下の速算表を用いて所得税額を求めます。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
例えば、課税所得金額が500万円の場合、所得税額は以下のとおりです。
5,000,000円×20%-427,500円=572,500円
また、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける場合など、税額控除が適用される場合は、算出した所得税額から一定の金額を控除できます。所得から一定額を控除できる所得控除に対し、税額控除は算出した所得税額から一定額を控除できる制度です。
最終的に納付する税額は、税額控除後の「基準所得税額」に「復興特別所得税」を合わせた金額となります。なお、復興特別所得税とは、東日本大震災の復興に必要な財源を確保するために、2037年まで所得税額に付加される税金のことで、以下のように計算できます。
復興特別所得税=基準所得税額×2.1%
副業で確定申告が必要なのはいくらから?
副業の所得(給与の場合は収入)が20万円を超えると、確定申告を行う必要があります。確定申告とは、1年間に生じた所得に対する所得税をご自身で申告・納付する手続きです。
所得税は個人の所得に対してかかる税金であり、本業か副業かにかかわらず納付しなければなりません。日本では、ご自身で1年間の所得に対する所得税額を申告・納付する申告納税制度が採用されていますが、会社員の場合はお勤め先で年末調整をおこなうため、多くの場合ご自身での確定申告は不要です。
本業とは別に副業で収入を得た場合は、ご自身で申告する必要がありますが、申告手続きの負担を軽減する目的で、副業所得が20万円以下の場合は原則として申告が不要とされています。
ただし、所得控除を受けるなどの理由で確定申告をする場合は、副業の所得も含めて申告しなければなりません。
関連記事:「【税理士監修】単発バイトでも確定申告は必要なの?タイミーの場合は?〜契約形態と年収を確認しよう〜」
副業で源泉徴収されている場合は所得税が還付される可能性がある
副業所得が20万円以下の場合は、原則として確定申告が不要です。
ただし、副業がパートやアルバイトの方で、給与から所得税が差し引かれている(源泉徴収されている)場合は、確定申告をすれば所得税が還付される可能性があります。
毎月の給与から差し引かれる所得税の額は、源泉徴収税額表にもとづいて算出された概算の金額であり、多くの場合、実際に納めるべき所得税の額とは一致しません。
そのため、源泉徴収された所得税額が本来納めるべき所得税額よりも多い場合は、確定申告によって払いすぎた所得税が還付されます。
関連記事:「源泉徴収はアルバイトやパートにも関係ある?損しないために知っておきたいポイントを解説【社労士監修】」
副業の所得税に関するポイント・注意点
副業で得た所得にかかる所得税に関して、知っておきたいポイント・注意点を解説します。
・副業が事業所得なら青色申告が選択できる ・事業所得で赤字の場合は損益通算ができる ・副業所得が20万円以下でも住民税の申告は必要となる |
副業が事業所得なら青色申告が選択できる
副業で得た収入が事業所得に該当する場合は、青色申告による確定申告が行えます。
確定申告には青色申告と白色申告があり、青色申告を選択できるのは不動産所得、事業所得、山林所得がある一定の要件を満たす方のみです。
青色申告者は、複式簿記で記帳するなどの要件を満たすと最高55万円の「青色申告特別控除」が受けられるため、節税効果が期待できます。
事業所得で赤字の場合は損益通算ができる
事業所得に該当する副業で赤字が出た場合は、その他の所得と損益通算ができます。
損益通算とは、事業所得などの損失をその他の所得から控除できる制度です。副業が赤字の場合、本業の収入と相殺して所得税を計算できるため、納税の負担が軽減されます。
なお、損益通算の対象となるのは不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4種類です。
副業所得が20万円以下でも住民税の申告は必要となる
住民税は、所得税の確定申告とは異なり、収入の多さにかかわらず申告が必要です。確定申告をする場合は、その内容が市区町村に連携されるため、別途住民税を申告する必要はありません。しかし、副業の所得が20万円以下で確定申告を行わない場合は、別途市区町村へ住民税の申告をしなければなりません。
なお、住民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2つがあります。副業が事業所得や雑所得に該当する場合、普通徴収を選択すれば、副業で得た収入にかかる住民税をご自身で納付することが可能です。
一方、給与所得に該当する場合は、本業のお勤め先で特別徴収(給与から差し引いて徴収すること)されます。
「タイミー」の副業収入はどの所得に該当する?
「タイミー」で得た収入は主に給与所得に該当するため、受け取った報酬額から源泉徴収されることがあります。
そのため、「タイミー」の副業収入が20万円以下で、源泉徴収されている場合は、確定申告をすれば払いすぎた所得税が還付される可能性があります。また、「タイミー」の副業収入が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
「タイミー」は、副業としても利用可能なスキマバイトアプリです。
近年、副業を解禁する企業は増加を続けています。「タイミー」が実施した調査によると、「タイミー」を利用する会社員の65%が、2022年に副業として「タイミー」を開始したことがわかりました(※)。
また、「タイミー」利用者に占める会社員の割合は、2019年11月時点で16.7%でしたが、2022年5月には39.9%まで増加しています。
「タイミー」では、選考不要で条件が合えば最短1時間から数時間単位ですぐに働けるため、本業を続けながらスキマ時間を活用して副業をしたい方はぜひお仕事をチェックしてみてください。
「タイミー」における確定申告の具体的な手順については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:「税理士がわかりやすく解説◆今からでも遅くない!タイミーワーカーのための確定申告のやり方【セミナーレポート】」
(※)出典 タイミー株式会社「副業目的でタイミーを利用する会社員に関する調査」
まとめ
副業収入にかかる所得税額の計算方法は、副業で得た収入がどの所得に該当するかによって異なります。
一般的に、副業でお勤め先から給与を受け取っている場合は給与所得、雇用されていない場合は事業所得や雑所得に該当します。
確定申告が必要になるのは、副業の所得が20万円を超える場合です。また、副業で源泉徴収されている場合は、副業収入が20万円以下でも確定申告をしたほうがよい場合があります。副業所得の種類や所得税の仕組みを理解して、正しく申告・納税しましょう。
「タイミー」は、副収入を得る手段として多くの方にご利用いただいています。本業を続けながらスキマ時間で副収入を得たい方は、ぜひ「タイミー」アプリをダウンロードしてみてください。