エンパワメントとは?最新動向やメリット・進め方などを徹底解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
エンパワメント(エンパワーメント)という言葉をご存じでしょうか。「力や自信を与えること」で、組織の中の個々人が潜在的な力を最大限に引き出す、という意味があります。ビジネスの場では、自らの意思で自発的・能動的に行動することを言います。
本記事では、エンパワメントとは何かについてと、メリット・デメリットを解説します。導入した企業の成功事例も3つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.エンパワメントとは
- 2.ビジネスの場でエンパワメントが重要視されている理由
- 3.エンパワメントの企業動向
- 4.企業がエンパワメントを導入するメリット
- 4.1.従業員の主体性やモチベーションを向上できる
- 4.2.素早い意思決定ができるようになる
- 4.3.次世代リーダーを育成できる
- 5.企業がエンパワメントを導入するデメリット
- 6.エンパワメントの導入を成功させるための2つのアプローチ
- 7.エンパワメントを導入する手順
- 7.1.1. 全体への共有
- 7.2.2. 共感の取得
- 7.3.3. 情報開示・権限委譲
- 7.4.4. アフターフォロー・改善
- 8.エンパワメントの導入事例
- 9.まとめ
エンパワメントとは
エンパワメントとは「力を与える」「自信を与える」ことで、権限移譲を表す言葉です。組織を構成員である一人一人が本来有する潜在的な力を引き出し、自らの意思で自発的・能動的に行動するマネジメントスタイルとしても使用されます。
エンパワメントは、20世紀の米国での公民権運動や1980年代の女性の権利獲得運動の中で生まれた言葉といわれています。
エンパワメントが生まれた背景には、変化の激しい時代でのビジネス環境に対応する必要があり、人材育成の必要性に迫られている一面もあるでしょう。
福祉や介護業界で使われる「エンパワメント」とは意味が違う?
エンパワメントは、介護や福祉業界では権限移譲の意味ではなく、福祉・介護サービスを受ける方に自身で決断させる意味を持っています。サービスを受ける方には、障害を持つ方も含まれます。
介護や福祉業界では、サービスを受ける側は受け身になりがちです。そしてサービスする側には、自分の意見を主張しづらい面があります。
サービスする側が優しく手を差し伸べ過ぎると、介護や福祉サービスを受ける側が本来できることまで奪ってしまうことにつながりかねません。積極的な参加を促す意味で、自分自身でできる自信を与えようとしています。
障害者雇用について詳しく知りたい採用担当者の方は、「障害者雇用制度とは?メリットや義務・助成金や納付金などを徹底解説」を確認してください。
エンパワメントの原則8つ
筑波大学の国際発達ケア「エンパワメント研究所」によると、エンパワメントは人々に生きる勇気を湧き出させる「湧活」だと言います。
エンパワメントの原則は、下記の8点としています。
- 目標は当事者が選択
- 主導権・決定権は当事者が保有
- 問題点・解決策も当事者が考慮
- 当事者は失敗・成功を分析して、学びと力をつけるきっかけにする
- 行動を変えるため、内的な強化因子を当事者・専門家がともに発見し増強
- 問題解決過程での当事者の参加促進により、個人の責任感を向上させる
- 問題解決過程をサポートするネットワーク・資源の充実を図る
- 当事者のウェルビーイング意欲を向上させる
ビジネスの場でエンパワメントが重要視されている理由
ビジネスの場でエンパワメントが重要視されている理由には、大別して次の2つが挙げられます。
1つ目の理由は、VUCA(ブーカ)時代が到来したためです。VUCAとは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧(あいまい)性の4つから成り、未来を予測しにくい状況を示す言葉に使われます。スピーディーな意思決定で、先行き不透明な時代に対応し生き残らなければなりません。
2つ目の理由は、次世代の若手人材の育成が喫緊の課題であるためです。少子高齢化の急激な進行に伴って人手不足が慢性化するとともに、日本経済の低迷が今後も予想されるため、若手人材の育成を急ぐ必要があります。
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エンパワメントの企業動向
立命館大学社会学研究科の論文によると、エンパワメントを経営に取り入れている企業と特色は下表の通りです。
企業名 |
事業の強み |
エンパワメント経営の特色 |
京セラ |
情報通信などのテクノロジー重視 |
「アメーバ経営」でトップが従業員へ権限移譲する構造的アプローチ |
ヤマト運輸 |
多様な物流サービスで消費者ニーズをキャッチ |
「セールスドライバー制度」で現場中心の構造的アプローチ |
ミスミ |
メーカー・流通事業 |
「企業家集団経営」で市場原理によるオープンなチーム作りで構造的アプローチ |
論文では、未来、リクルート、サントリーなどの企業も紹介されています。
参考:立命館大学社会学研究科「エンパワーメント経営はどの道を歩むべきか」
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企業がエンパワメントを導入するメリット
企業がエンパワメントを導入するメリットは、以下の3つです。
- 従業員の主体性やモチベーションを向上できる
- 素早い意思決定ができるようになる
- 次世代リーダーを育成できる
具体的に解説します。
従業員の主体性やモチベーションを向上できる
企業がエンパワメントを導入すると、目標を設定することでチームとしての力を発揮できます。経営サイドから従業員への権限移譲は、責任感の向上につながります。
従来では「自分がいなくても仕事は回る」と思っていた従業員も、権限を移譲されればモチベーションがアップします。言われた仕事だけしていた従業員も仕事に向き合うことで、主体性が向上するでしょう。
エンパワメントが進めば、従業員の主体性やモチベーションが向上し、ひいては離職率の低下へとつながる可能性が高まります。
素早い意思決定ができるようになる
現代のように状況の変化が早い中では、迅速な意思決定が必要です。企業がエンパワメントを導入していれば、権限は従業員側に近いため、素早い意思決定ができるようになります。
一刻も時間を無駄にしたくない中では、素早い意思決定は顧客満足度の向上につながります。ビジネスチャンスを逃さずに済むことが多くなるでしょう。
迅速に意思決定をすれば、生産性も向上します。今後は、従業員のアイデアを取り入れて時代に対応しなければ、会社も時代についていくのが難しくなります。
次世代リーダーを育成できる
企業がエンパワメントを導入すると、次世代リーダーの育成が可能です。次世代リーダーに求められるのは、自らの意思で自発的・能動的に行動するマネジメントスタイルです。
エンパワメントによって権限が移譲されれば、比較的若い世代の従業員にも責任感が生まれます。仕事の難易度が高まるごとに成長も早くなり、自立性も促されます。
責任感が生まれると、マネジメントスキルやリーダーシップなどの能力が、エンパワメントによって引き出されます。業務を進めていく上で自立型の人材育成へとつながり、次世代リーダーを育成できるようになっていくでしょう。
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企業がエンパワメントを導入するデメリット
企業がエンパワメントを導入するデメリットは、以下の2つです。
- 意思決定が属人化してしまう
- 全ての従業員のパフォーマンスが向上するわけではない
どのようなケースでデメリットとなるか、見ていきます。
意思決定が属人化してしまう
エンパワメントを導入することによって、素早い意思決定ができるようになる反面、特定の人にしかできない仕事が生まれて属人化する恐れがあります。
特に技術職の場合には、属人化の可能性が高まります。熟練した作業においては、特定の人にしかできないやり方となってしまいがちです。
少子高齢化の進行によって人手不足が進む中では、なおさらです。製造業などでは新技術への転換が早まっています。エンパワメントを導入することで、経験年数の浅い社員でも、熟練者に近い業務が実施できる立場になるでしょう。
任された業務を自分だけのものにしないために、意思決定が属人化しないように気を付けてください。
全ての従業員のパフォーマンスが向上するわけではない
企業がエンパワメントを導入したからといって、全ての従業員のパフォーマンスが向上するわけではありません。権限移譲に向かない従業員もいるためです。
権限を移譲されたことで、萎縮してしまう従業員もいるでしょう。権限移譲に向かない従業員の場合には、ストレスにつながることも珍しくありません。
その他、パフォーマンスが向上しない理由としては、与えられた課題をこなすのに慣れてしまっているからです。決して仕事が嫌いなわけではなく、黙々と作業をこなすのが得意な人も多いです。
エンパワメントを導入したら、従業員の様子をチェックしてください。面談が必要となる人もいるので、様子を見た方がいい場合もあります。
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エンパワメントの導入を成功させるための2つのアプローチ
ここからは、エンパワメントの導入を成功させるための2つのアプローチを紹介します。構造的アプローチと心理的アプローチの特徴を理解して、エンパワメントの導入を成功させましょう。
構造的アプローチ
構造的アプローチとは、経営側の管理者から、部下である現場の従業員へ権限を付与することです。上司から部下にパワーを与えて、組織の活性化を図ります。その結果、部下の能力が十分に発揮できる環境を整えるアプローチです。
今まで管理者側が判断していた事項について、判断の権限を部下に移譲して重要な意思決定に参加させていきます。主体性を持って問題解決に当たるように、アプローチします。
従業員から仕事を丸投げされたとの誤解を抱かせないために、企業のビジョンと仕事の方向性を明確に説明しておきましょう。個人でなく一定の部署に対して、裁量を与えるアプローチもあります。
心理的アプローチ
心理的アプローチは構造的アプローチとは異なり、上司のように力のある者からパワーを与えられるのではなく、もともと自身の中にあると考えるアプローチです。
本来の自分自身が持っている、意欲・自己実現欲求・セルフイメージなどの心理面にアプローチします。
始めのうちは、少しずつ成功体験を重ねていってください。成功体験の積み重ねが、自分との約束を守ることにつながるため、能力を十分に発揮する上では大切なことです。
上司は部下に、少しずつ重要プロジェクトやプレゼンテーションを任せることを伝えれば、部下の仕事に対するモチベーションアップにつながるでしょう。
エンパワメントを導入する手順
エンパワメントを導入する手順は、以下の通りです。
- 全体への共有
- 共感の取得
- 情報開示・権限委譲
- アフターフォロー・改善
順に段階を踏んで進めていきます。
1. 全体への共有
まずは、自社でエンパワメントの推進を宣言し、全体に共有しましょう。順序としては、なぜ自社に必要かの理由を説明して、従業員の不安を解消するのが大切です。
従業員が多ければ、エンパワメント導入の説明会を実施します。
不安そうな従業員がいれば集まってもらい、ディスカッションで不安解消を図ってください。ポイントは、一方的に内容を伝えるのではなく、従業員からの意見を聞き、質疑応答の時間を確保することです。
最初に、分かりやすい実行プランを提示することが必要です。社内で心理的な安全性を確保した上で、全体へと共有していきましょう。
2. 共感の取得
全体への共有が終わったら、従業員からの理解を得るために権限移譲に対する共感が必要です。日頃から部下を信頼していることを言葉に出して伝えれば、エンパワメント導入への共感も得られやすくなります。
エンパワメントの導入説明への理解が不足しているようなら、個別に面談を行い、エンパワメント導入への共感を得るようにしましょう。
ただし、人によってエンパワメントの効果に対する考えにばらつきがあるので、決して無理強いはしないよう注意することが大切です。
3. 情報開示・権限委譲
全体への共有と共感が得られたら、いよいよ情報を開示して権限移譲のステップです。
企業は企業方針や経営戦略を明確に示して、人事や経理状況を開示して従業員を信頼していることを示しましょう。これにより、上司と部下との信頼関係が構築しやすくなります。
全ての従業員に開示すると情報漏えいのリスクもあるため、勤続年数を一定以上にするなど情報開示する範囲を定めた方が、企業防衛上の安全性が高いです。
情報開示が終了したら、権限移譲をスモールスタートで進めるのがおすすめです。最初から全てを任せるのは、従業員にも負担が多過ぎるとともに、失敗するリスクが大きいためです。
4. アフターフォロー・改善
エンパワメントの導入後は、アフターフォローなしの丸投げをしないことが重要です。当初は失敗を許容して、適切なタイミングでアフターフォローに入りましょう。
仕事の成果に対する判断基準を明確化し、報告・連絡・相談を忘れなければ、大きなミスも防げます。
PDCAで改善サイクルを回す回数を増やしていけば、測定・評価を繰り返し徐々に体制を整えることが可能です。
数をこなせば、従業員は失敗とともに成功体験を積めます。トラブルが起きた場合には、上司と部下が一丸となって再発防止策を策定してください。検証を継続すれば、次回につなげることができます。
エンパワメントの導入事例
エンパワメントを導入した企業の、3つの事例を見てみましょう。
企業名 |
ポイント |
内容 |
株式会社星野リゾート |
組織を一番大事に |
|
ザ・リッツ・カールトン |
顧客満足度の高いサービス提供が基本 |
|
スターバックス コーヒー ジャパン |
|
|
上記の3つは成功事例でもあります。
まとめ
企業がエンパワメントを導入するメリットは、従業員の主体性やモチベーションの向上・素早い意思決定・次世代リーダーを育成の3つが可能になることです。
エンパワメントを導入する手順には、①全体への共有、②共感の取得、③情報開示と権限委譲、④アフターフォローと改善の4つの段階があります。
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