税法上の扶養とは?配偶者特別控除についてもわかりやすく解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
税法上の扶養とは、家計を支える納税者に扶養される配偶者などの年収が103万円以下の場合に、納税者の年収から配偶者などの扶養人数に応じて扶養控除額を差し引くことができる制度です。
本記事では、2017年度の税制改正で見直された配偶者特別控除についても解説します。記事を読むと、税法上の扶養とは何かが分かるようになります。4つの年収の壁についても紹介しているので、最後までご覧ください。
目次[非表示]
- 1.税制上の扶養とは
- 1.1.そもそも「扶養」とは
- 1.2.税制上の扶養の対象者
- 1.3.税制上の扶養による控除の仕組み
- 2.税制上の扶養に入るためにはどうしたらいい?
- 3.税制上の扶養で配偶者が受けられる控除
- 4.社会保険上の扶養とは
- 4.1.社会保険上の扶養の対象者
- 5.税制上・社会保険上の扶養で起こり得る「年収の壁」について
- 6.税制上・社会保険上の扶養に関して企業が注意する点
- 7.まとめ
税制上の扶養とは
税制上の扶養とは、扶養される方(被扶養者)の年収が103万円以下の場合に、納税者の年収から扶養人数に応じた扶養控除額を差し引くことができる制度です。この場合、被扶養者には、所得税および住民税は課税されません。
扶養される方の年収が103万円を超えると、扶養から外れるため原則納税が必要です。ここでは以下の3つについて解説します。
- そもそも「扶養」とは
- 税制上の扶養の対象者
- 税制上の扶養による控除の仕組み
そもそも「扶養」とは
扶養とは、自分の収入だけでは生計が成り立たない方を家族や親族が支えることです。家族を扶養している方や家族に扶養されている方は、税制上でも優遇されます。扶養には、ここで述べる「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」があります。
「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の特徴は、以下の通りです。
税制上の扶養 |
|
社会保険上の扶養 |
|
「社会保険上の扶養」の詳細については、後述します。
税制上の扶養の対象者
税制上の扶養の対象者(扶養親族)は、原則的には以下の4つの要件を全て満たす方です。
- 6親等内の血族と3親等内の姻族または、都道府県知事から養育の委託をされた児童や市長村長から養護の委託をされた高齢者
- 納税者と生計が同一
- 年間所得金額の合計48万円以下(給与所得者の場合は、年収103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者で1年間に一度も給与支払いを受けていないまたは、白色申告者の事業専従者に該当しない
対象者かどうかは、その年の12月31日の現況で4つの要件全てを満たし、かつ16歳以上であるかどうかをもって判断します。
参考:国税庁『「親族」の範囲』
税制上の扶養による控除の仕組み
扶養控除とは、納税者に税法上の控除対象扶養親族がいる場合、一定金額の所得控除を受けられることです。
納税者本人に扶養する方がいるケースでは、単身者より生活費が多くかかると考えられます。
扶養控除は、扶養者の所得から被扶養者の区分及び人数に応じて定められた控除額を差し引くことで、扶養者の税負担を軽減するという制度です。
扶養控除の金額は下表の通りです。
親族の区分 |
控除額 |
一般の控除対象扶養親族:その年の12月31日の年齢が16歳以上 |
38万円 |
特定扶養親族:その年の12月31日の年齢が19歳以上23歳未満 |
63万円 |
老人扶養親族(同居老親等以外):その年の12月31日の年齢が70歳以上 |
48万円 |
老人扶養親族(同居老親等):その年の12月31日の年齢が70歳以上 |
58万円 |
参考:国税庁「扶養控除」
老人扶養親族では、同居の方の控除額が同居以外より10万円多いです。
税制上の扶養に入るためにはどうしたらいい?
税制上の扶養に入るには、納税者本人である扶養者が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を本業の勤務先へ提出する必要があります。
申告書の様式と記載例は、国税庁のホームページからダウンロードし印刷が可能です。勤務先の担当課でも入手できるでしょう。
注意点として、申告書の提出期限はその年の最初の給与支払の前日であることです。当初に提出した申告書の内容に異動があれば、異動日以降の最初の給与支払日の前日までに、異動申告書を提出しましょう。
申告書の提出先は、給与の支払者である本業の勤務先の担当課です。
参考:国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」
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税制上の扶養で配偶者が受けられる控除
納税者が受けられる控除には、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2つの控除があります。
本制度は2017年度の税制改正で見直されています。今一度確認しておきましょう。
配偶者控除
配偶者控除は納税者本人に配偶者がいる場合、一定の所得控除を受けられる制度です。控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えれば、配偶者控除を受けることはできません。
控除対象配偶者は、以下の4つの要件を全て満たす方です。
- 民法に規定する配偶者(内縁関係は除く)
- 納税者と生計同一
- 年間所得金額の合計が48万円以下(給与所得者の場合は、年収103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者で1年間に一度も給与支払いを受けていないまたは、白色申告者の事業専従者に該当しない
対象者かどうかは、その年の12月31日の現況で4つの要件全てを満たしているかを判断します。
控除額は以下の通りです。
控除を受ける納税者本人の |
控除額 |
|
一般の控除対象配偶者 |
老人控除対象配偶者 |
|
900万円以下 |
38万円 |
48万円 |
900万円超950万円以下 |
26万円 |
32万円 |
950万円超1,000万円以下 |
13万円 |
16万円 |
参考:国税庁『配偶者控除』
配偶者特別控除
配偶者特別控除は、上記の控除対象配偶者の4要件のうち①・②・④を満たしている方で、年間合計所得金額が48万円超133万円以下である方が対象です。
その他にも配偶者に配偶者特別控除の適用がないなどの3つの要件が、国税庁「配偶者特別控除」の「配偶者特別控除を受けるための要件」の中で「(3)~(5)」に記載されています。
配偶者控除と同様に、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えれば、配偶者特別控除を受けることはできません。
参考:国税庁『配偶者特別控除』
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社会保険上の扶養とは
社会保険上の扶養とは、社会保険に扶養される者(被扶養者)として入ることをいいます。
社会保険の適用範囲は順次拡大しているので、2024年10月から従業員数51人以上の中小企業でも対応が必要です。2020年改正年金法により、下表の通り変更されています。
対象/要件 |
2016年10月から |
2022年10月から(2020年改正年金法) |
2024年10月から(2020年改正年金法) |
従業員数(厚生年金保険の適用対象者数) |
常時501人以上(義務的適用) |
常時101~500人 |
常時51~100人 |
短時間労働者の労働時間 |
週の所定労働時間が20時間以上 |
||
短時間労働者の賃金 |
所定内賃金月額8.8万円以上 |
||
短時間労働者の雇用期間 |
1年以上使用される見込みがある |
2カ月を超えて使用される見込みがある(通常の被保険者と同様) |
|
短時間労働者の条件 |
学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象) |
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」
社会保険が適用されれば、これまで扶養の範囲内で勤務していた賃金月額8.8万円以上のパートなどの従業員にも、保険料の負担が発生します。賃金月額8.8万円には基本給や諸手当は含まれるものの、賞与を始め交通費や残業代は含まれていません。
また、扶養から外れるのは次の2つのケースです。
【①扶養の範囲を超えたケース】
従業員の年収が、後述する「年収130万円の壁」を超えると被扶養者の適用除外となり、従業員自らが国民健康保険に加入することになります。
【②従業員自らが社会保険に加入することになるケース】
従業員の賃金月額が8.8万円以上になると、従業員自らが社会保険に加入したことに伴い、扶養から外れてしまうケースが想定されます。
2つのケースによって扶養の範囲などを超えないために、労働時間の調整やシフトを少なくする方も出てくるでしょう。
社会保険への加入を希望しない従業員には、労働条件の変更に伴う労働時間および給与の管理を行うことが必要です。
参考:政府広報オンライン「社会保険の適用が段階的に拡大! 従業員数101人以上の企業は要チェック」
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
社会保険上の扶養の対象者
社会保険上の扶養控除の対象範囲は、主に家計を支える方の配偶者および3親等内の親族です。
さらに、3親等内の親族は、扶養者と別居でも扶養に入れる方と同居の必要がある方に分けられます。社会保険上の扶養の対象者を以下の表にまとめました。
【扶養者と同居していなくても扶養に入れる方】 |
【扶養者と同居している必要がある方】 |
被保険者の配偶者(内縁関係含む) |
義父母など【扶養者と同居していなくても扶養に入れる方】以外の3親等以内の親族 |
子、孫、兄弟姉妹(主に被保険者に生計を維持されている方) |
内縁の配偶者の両親 |
実の両親、養父母、祖父母、曾祖父母 |
内縁の配偶者の連れ子 |
他に収入の要件として、下記のものがあります。
配偶者や子どもでは、アルバイト・パート年収が130万円未満で、かつ扶養者の収入の2分の1未満であることが被扶養者として認められる要件です。
年収が130万円以上になると被扶養者とは認められません。
60歳以上では、年収が180万円未満かつ扶養者の2分の1未満であることが社会保険の被扶養者としての要件です。同居していない場合は、扶養者からの援助による収入額より少ないことが条件です。
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税制上・社会保険上の扶養で起こり得る「年収の壁」について
「年収の壁」とは、税制上や社会保険上での負担が生じないために年収を調整することです。
国は2023年10月から、パートなどの従業員が「年収の壁」を意識せず働けるように施策を打ち出しています。
以下では、4種類の「年収の壁」について解説します。
参考:政府広報オンライン『「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?』
参考:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
年収103万円の壁
年収103万円の壁は、所得税の課税対象の分岐点となる年収の目安を示します。パートなどで働く方の年収103万円の壁には、次の2つがあります。
- 年収103万円以下であれば、働いている本人の所得税は非課税
- 年収103万円以下であれば、パートなどで働く方の配偶者には配偶者控除が適用
年収103万円の壁は、税制上の年収の目安です。
年収106万円の壁
年収106万円の壁は、パートなどの従業員にとって社会保険加入の分岐点となる年収の目安を示します。
年収106万円を超えると、特定適用事業所で働く方は社会保険への加入が必要になります。
特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上となることが見込まれる企業等のことです。
【2024年10月からの加入対象者の要件】
従業員数(厚生年金保険の適用対象者数) |
常時51~100人(義務的適用) |
短時間労働者の労働時間 |
週の所定労働時間が20時間以上 |
短時間労働者の賃金 |
所定内賃金月額8.8万円以上 |
短時間労働者の雇用期間 |
2カ月を超えて使用される見込みがある(通常の被保険者と同様) |
短時間労働者の条件 |
学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象) |
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」
年収106万円の壁は、社会保険上の年収の目安です。年収106万円を超えた全ての方が、社会保険への加入が必須でないことに注意しましょう。
年収130万円の壁
年収130万円の壁は、年収106万円の壁と同様にパートなどの従業員にとって社会保険加入の分岐点になる年収の目安を示します。
年収130万円を超えると、短期労働者の加入対象となった事業所で働く方の全てが社会保険の扶養から外れます。自ら社会保険へ加入しなければなりません。
社会保険へ加入すれば保険料の負担はありますが、年金には厚生年金が上乗せされます。要件に該当すれば、傷病手当金や出産手当金などを受給できるメリットがあるでしょう。
年収150万円の壁
年収150万円の壁は、税制上の配偶者特別控除の満額を受けられる、配偶者の給与所得等の収入金額となる年収目安の上限です。
配偶者特別控除の満額を受けるための年収目安は、配偶者のパート収入など給与所得等の収入金額の年収が103万円から150万円の間にあたります(納税者の合計所得年収が900万円以下の場合)。
配偶者のパート収入などの年収が150万円を超えるにつれて、配偶者特別控除の額は段階的に減少します。配偶者のパート収入などの年収が201.6万円以上になると、配偶者特別控除の適用を受けることができません。
参考:国税庁「年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき」
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税制上・社会保険上の扶養に関して企業が注意する点
税制上・社会保険上の扶養に関して企業が注意すべきことは、以下の3点です。
- 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書を用意する
- 年末調整を行う
- パート・アルバイトを雇用するうえでのポイントを押さえる
「扶養に入れる金額をオーバーしてシフトが組めなくなった」と慌てないためにも注意しておきましょう。
給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書を用意する
税制上の扶養に関して企業が注意すべきことの1つとして「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の早めの用意と記入が挙げられます。申告書は、年末調整の計算をする上で必要な書類であるためです。
原則として申告書の記入は1年に1度です。年末調整時期の間際になって、パートなどの従業員の方が慌てて申告書を記入するのは珍しくないでしょう。
記入誤りで「扶養枠を超えてしまった」という事態を避けるためにも、扶養枠内での働き方を希望するパートなどの従業員の方には、定期的に自身の年収の計算をしてもらう必要があります。
早めに申告書を用意して記入してもらえば、12月に向けてのシフト調整がスムーズに行く可能性が高くなるでしょう。
年末調整を行う
次に税制上の扶養に関して企業が注意すべきこととして、年末調整の際に従業員から正確な書類を提出してもらうことが大切です。企業の経営者や採用担当者は、従業員の家族構成の変化まで把握しづらいためです。
上述の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を早めにパートなどの従業員に提出してもらえば、年末調整事務では余裕を持ってチェックすることができます。
パートなどの従業員のうち、家族に学生の子どもがいる方は異動が多いため、特に気を付けてもらいましょう。
申告書の添付書類の中には、社会保険料の控除証明書などがあります。本人の手元に届くのは、毎年10月下旬から11月上旬です。届いた証明書を紛失すれば、再発行の手続きが集中しているため、取り寄せには時間がかかってしまいます。
企業にとっても年末の繁忙期に、年末調整の事務処理が重なってしまいます。
控除証明書などの電子的交付の推進は、企業と従業員双方の煩雑な手続きを軽減できます。企業で電子化の導入が進んでいないようであれば、年末調整の電子化などを検討されてはいかがでしょうか。
参考:国税庁「控除証明書等の電子的交付について」
パート・アルバイトを雇用するうえでのポイントを押さえる
パートやアルバイトを雇用する際に、新たに特定適用事業所に該当することとなった場合には以下の事前対応が必要です。
- 新たに加入対象となるパートなどの従業員をリストアップ
- 社会保険料増加の負担額を算出し、資金計画を立て保険料支払いへの備え
- パートなどの従業員には社会保険加入の理解を得るための制度説明が必要
扶養に入ったままの働き方を希望するパートなどの従業員もいます。社会保険の加入条件は複雑なため、丁寧な説明とともに社会保険への加入するケースと加入しないケースの選択肢も提示してあげましょう。
制度説明後に扶養枠内での働き方を希望するパートなどの従業員が多ければ、企業全体での人員配置の見直しをする必要があります。
新たに加入対象となる従業員には、社会保険の加入手続きとして「資格取得届」の提出が必要です。パートやアルバイトを雇用する際には、雇用前から社会保険適用拡大の理解を得るための制度説明書類などを事前に準備しておきましょう。
まとめ
税制上・社会保険上の扶養に関して企業が注意する点として、シフト調整をスムーズに行うために早めの申告書の記入・作成が必要です。これにより、余裕を持って年末調整を行うことに繋がります。
控除証明書などの電子的交付の推進や確定申告と年末調整の電子化などがまだであれば、検討するとよいでしょう。
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