【テンプレート付】入社承諾書の法的効力はある?企業側のポイントも解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
せっかく内定を出して人員確保ができたと思ったら辞退され、別の候補者を探さなくてはならなくなってしまった。あるいは、内定者に「その件は聞いていない」「採用時と違う」などと主張されトラブルを経験されたケースはありませんか。
こうしたお悩みがある採用担当者の方に、入社承諾書の活用をご紹介します。
入社承諾書の発行により期待できる効果や留意点、記入内容とテンプレートもご紹介します。
目次[非表示]
- 1.入社承諾書とは
- 1.1.入社承諾書と内定承諾書の違い
- 1.2.入社承諾書を発行する目的
- 1.3.入社承諾書を発行するタイミング
- 2.入社承諾書に法的拘束力はある?内定者は辞退可能?
- 3.企業が内定者に入社承諾書を発行するメリット
- 3.1.入社の意思を確認できる
- 3.2.内定辞退のリスクを減らせる
- 4.【テンプレート付】入社承諾書に記載すべき項目と書き方
- 4.1.必ず記載すべき項目
- 4.2.必要に応じて記載すべき項目
- 5.入社承諾書作成におけるありがちなミス事例
- 5.1.入社日に誤記がある
- 5.2.契約条件が不明瞭
- 5.3.重要な条項が省略されている
- 5.4.署名や日付が抜けている
- 5.5.文書のフォーマットにミスがある
- 6.入社承諾書について企業側が知っておきたいこと
- 7.入社承諾書以外に企業が内定者に発行すべき書類
- 8.内定辞退を減らすためには
- 9.まとめ
入社承諾書とは
入社承諾書とは、採用選考の結果、内定通知を出した応募者に入社の意思を確かめる目的で発行する書類です。内定者に署名捺印をもらい、提出を受ける流れが一般的です。
企業側が応募者側に選考結果や労働条件の通知を行いますが、最終的に入社・辞退は応募者に決定権があります。採用側には、一度内定を通知した応募者を確実に入社させないと採用計画に狂いが生じ、企業活動に支障をきたす可能性もあります。
入社承諾書は新卒採用でも、中途採用でも内定通知を出した者から提出を受けます。ただし、新卒の場合は所属する学校で卒業を条件とする旨の記載が必要です。
入社承諾書と内定承諾書の違い
結論から言えば、実質的に両者は同じです。どちらも内定を通知した応募者に入社の意思を書面で承諾してもらうものです。
内定承諾書は、企業から内定通知を受けたことに対し承諾し、入社承諾書は入社を承諾する違いはあります。
しかし、例えば内定承諾書に「私は貴社に採用が内定されましたので、卒業後は貴社へ就職することを承諾いたします。」などの記述例もあるため、同じと考えてよいでしょう。
入社承諾書を発行する目的
入社承諾書を発行する目的は大きく分けて2つあります。1つは内定の辞退を防止するためで、もう1つは自社と内定者の間で不要なトラブルを避けるためです。
前者は、採用活動には多大なコストと時間がかかるため、せっかく内定者を決めても辞退されると企業から見ればいわば損害です。入社承諾書の提出を受ければ、はっきりと入社の意志を確認でき、辞退者を減らす期待が持てます。
後者は、労働条件などの基本的な内容を書面化し、内定者にも内容を確認してもらったうえで、入社してもらうことで不要なトラブルを回避できます。
入社承諾書を発行するタイミング
入社承諾書を発行するタイミングは、内定を通知するタイミングと同じケースが一般的です。労働条件など基本的な条件を提示し、内定者は確認のうえ署名・捺印して提出します。
自社が第一志望なら、すぐに提出ができるはずです。内定を通知後1週間から1カ月程度の期間内で提出を受けるようにしましょう。
入社承諾書の発行目的は、入社意思の確認と内定辞退者の削減です。内定後にすぐに意思を固めてもらうようにしましょう。
入社承諾書に法的拘束力はある?内定者は辞退可能?
入社承諾書に労働者側に強い拘束力はありません。
内定者に入社を確かめる書類であり、労働契約そのものを定める書類ではありません。つまり、入社承諾書を提出後でも内定者は入社の辞退は可能です。辞退しても労働法や民法などの法律に違反したとはいえません。
理由は、憲法22条第一項で職業選択の自由を保障しているからです。
しかし、入社前日など直前に辞退されても困るため、民法627条1項により、入社日の2週間前までなら辞退が可能です。
企業と内定者の信頼関係を築く大事な書類ですが、労働者を強く拘束できるものではなく、最終選択権は内定者にある点に留意しましょう。
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企業が内定者に入社承諾書を発行するメリット
内定者の入社意思を確かめ、内定辞退者を減らせるのがメリットです。
自社の採用活動が計画通りに進む可能性が高まります。特に中途採用では、現場は人員補充を急いでいるケースも多いでしょう。
内定を通知した者に、確実に入社してもらうために有効といえる手続きです。
入社の意思を確認できる
内定者が、複数の企業に応募していることは珍しくありません。いくら面接で自社を第一志望と言っていても、実際の意志は別であるケースはよくあります。
したがって、内定通知後に入社承諾書を提出してもらい、署名・捺印を受け、入社の意向を確かめるのです。
入社承諾書には、特別な理由がない限り入社を約束する内容の文面を記載をしておきましょう。
内定辞退のリスクを減らせる
企業は採用に多くのコストをかけています。新卒の場合、「就職白書2020」(リクルート就職みらい研究所調べ)によると平均採用単価は1人当たり90万円から95万円が相場です。
したがって、せっかく内定者を出しても、辞退されると予算や時間など採用計画に狂いが生じてしまいます。
中途採用で、辞退者が経営幹部候補の場合は、経営方針にも大きな影響を与えかねません。計画通りの採用は人事採用担当者の責務です。
参考:就職白書2020
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【テンプレート付】入社承諾書に記載すべき項目と書き方
ここでは、入社承諾書に記載すべき項目とその書き方について説明します。
必ず記載すべき項目
項目 |
書き方 |
作成年月日 |
承諾書の記載日(内定者の承諾日) |
入社年月日 |
内定者が実際に入社する予定日 |
題名 |
入社承諾書とあらかじめ記載 |
企業名 |
自社の正式社名 |
代表者名 |
社長名を正式な肩書で記載 |
入社承諾の意思を伝える文言 |
内定を承諾し、入社するという文言をあらかじめ記載 |
内定取り消し事由 |
新卒の場合で、期限までに卒業できない場合、提出書類等の虚偽が判明した場合など記載しておく |
内定者の署名捺印欄 |
日付、署名、捺印欄 |
赤字のところだけ、内定者が記載すべき項目で、残りは自社であらかじめ記載しておきます。
必要に応じて記載すべき項目
- 返送期限:内定の有効期限など設定したい場合
- 契約条件:給与、勤務地、業務内容等を明確にしたい場合
- 内定取り消し事由に該当した場合、異議を申し立てない旨
- 入社承諾書提出後は正当な理由なく入社を拒否しない旨
- 指示された書類は滞りなく返送する旨
- 住所等、記載事項に変更があった場合はすみやかに連絡する旨
- 身元保証人の署名捺印
入社承諾書は任意の書類であり、決まった記載内容があるわけでなく、各企業が何を重視するかで記載項目は変わります。
記載項目が少なく曖昧だと、トラブルの元になりかねませんし、あまり盛り込みすぎても、かえって内定者が入社承諾を躊躇(ちゅうちょ)するかもしれません。
自社の採用環境やコンプライアンスなどバランスを考えて作成しましょう。
入社承諾書のテンプレートはこちらからダウンロードできます。
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入社承諾書作成におけるありがちなミス事例
内定者には入社承諾書を発行する際、記入例などを同封し、誤解を生じさせない工夫をしましょう。自社では、トラブル防止の観点で記載内容に留意しましょう。
入社日に誤記がある
入社日に誤記があると、こちらが入社を期待している日に出社しないような事態になりかねません。総務担当や配属現場でも入社日にあわせて準備をしています。
誤記があれば、訂正の上、再提出させるなど内定者には徹底しましょう。
契約条件が不明瞭
契約条件に関しては、不明瞭だとトラブルの元になります。中途採用、パート・アルバイトなどで勤務地、業務内容に限定がある場合や、出勤日・休日・給与など基本的な事項を記載すると良いでしょう。
「労働条件通知書で提示された内容で貴社に入社することを誓約します。」など記載する方法もあります。
重要な条項が省略されている
自社が入社承諾書で確認が重要と考える項目は省略せずに記載しておきましょう。
たとえば、試用期間、解雇条件、秘密保持義務などが挙げられます。後々のトラブルを防止するためです。
署名や日付が抜けている
内定者に入社する意思を確認するための書類であり、相手側の署名捺印は必ず記載を依頼しましょう。
日付は特に和暦か西暦かはあらかじめこちらから指定して書くようにします。日付は入社承諾書の提出日を書くように指示しましょう。
文書のフォーマットにミスがある
フォント・誤字・脱字や文章全体のバランスなど入社承諾書のフォーマットにミスや統一感がないと、信用にかかわります。必ず社内で推敲、校正などを経て発行すべきです。
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入社承諾書について企業側が知っておきたいこと
入社承諾書の提出を受ければ、内定辞退者を減らせる効果が期待できますが、内定者を拘束はできません。
一方、いったん内定を提示すると企業から内定の取り消しは非常に難しくなります。内定は労働条件の成立要件で、内定の取り消しは解雇とみなされるからです。
入社承諾書提出=必ず入社というわけではない
入社承諾書の提出で、入社の意思を確認できます。しかし、労働者に対する強い法的拘束力がないため、内定者の入社を約束するわけでもありません。民法627条1項により、内定者は入社日の2週間前まで辞退が可能です。
企業は内定後も、例えば入社式やオフィス見学会、あるいは社員だけのSNSネットワークに招待するなど細かくフォローが必要です。企業側から内定者に何らかのコミュニケーションを通じて、早く入社したい、と思わせる工夫をしましょう。
企業側から内定を取り消すことは難しい
入社承諾書の「内定取り消し事由」に該当しない限り、正当な理由なく内定の取り消しはできません。内定で労働契約は成立しているため、内定取り消しは解雇とみなされます。
業績悪化などで人員整理がやむを得ない場合、法的な整理解雇の要件を満たせば内定取り消しは容認されますが、ハローワークに届け出が必要です。
内定取り消し理由が悪質な場合は、求職活動をする学生の適切な職業選択の支障になります。その場合、厚生労働省から事業所名が公表されるケースもあるため留意すべきです。
入社承諾書以外に企業が内定者に発行すべき書類
企業が内定者に発行すべき書類は、いくつかありますが、ここでは以下の3点を挙げておきます。
- 内定通知書
- 労働条件通知書
- 機密保持誓約書
上記4つのうち、機密保持誓約書は内定者に約束してもらう書類なので、入社承諾書同様に相手の署名捺印をもらいます。
内定通知書
内定を知らせる書類です。内定通知書を発行し、内定者に入社意識を高めさせ、辞退を防ぐなどの効果が期待できます。
一方、企業はいったん内定を通知すると労働条件が成立したとみなされます。内定を書面で残さず、口頭などで済ませると、後から言った言わないのトラブルにもなりかねません。
内定を出していないのに、内定と言われたなどと応募者から主張されるようなケースもありえます。したがって、内定通知書の発行は義務ではありませんが、こうしたトラブルの防止にも役立つでしょう。
内定通知書について詳しく知りたい方は「内定通知書の必須項目は?法的効力はある?」の記事もあわせてチェックしてみてください。
労働条件通知書
労働条件通知書は具体的な労働条件を記載し、内定者に発行する書類です。企業は労働者を雇用する際に労働条件を明示するよう労働基準法第15条で定められています。
本書も後々のトラブル防止のため原則、書面で明示するよう労働基準監督署は指導しています。
記載すべき主な労働条件は以下の通りです。
- 契約期間(期間の定めがある場合、契約更新の基準)
- 就業場所
- 業務内容
- 始業・終業の時刻・早出・残業等の有無、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期
- 退職に関する事項(懐古の自由を含む) など
参考:労働基準監督署
機密情報保持誓約書
機密情報保持誓約書は、業務上知り得る情報を外部に漏らさないように内定者に約束させる書類です。
例えば、内定者が新商品の情報をレストランで友人と会話し、偶然隣でライバル会社の担当者が聞いていたとします。
ライバル会社がその情報を基に新商品を上回る商品を開発したとすれば企業には大きな損害が発生してしまいます。
特に、新卒採用の場合、企業の機密保持の概念に対する理解はまだ低いと考えられるため、よく理解を得るようにしてください。書類の名前は秘密保持誓約書などと称するケースもありますが、同じ意味です。
内定辞退を減らすためには
内定辞退者を減らすためには、内定後も内定者への丁寧なコミュニケーションが重要です。新卒のように内定を通知してから、実際の入社まで日数が空いている場合、自社に迎え入れる姿勢を見せましょう。
新卒の場合、他の内定者とともに入社後は「同期」として入社後も切磋琢磨してもらわなければなりません。入社までに内定者同士の親睦会を開催するのも良いでしょう。
工場見学会・現場見学会など実際の職場を見学してもらい、職員と会話するなど、内定者に早く入社したいと思わせる方法もあります。
内定者にインターンやアルバイトで短期雇用を経験してもらう企業が増えています。いずれも現場職員と学生がダイレクトにコミュニケーションを取るため、相互理解に役立ちます。
内定後の不安を解消するために、内定者に安心感を与えるのがポイントです。
人材確保の方法について詳しく知りたい方は「人材確保の方法とは?課題とポイントを押さえて成功させよう!」の記事をチェックしてみてください。
まとめ
入社承諾書は内定者に対する強い法的拘束力はありませんが、内定者に入社の意思を固めさせる効果が期待でき、内定辞退も防げます。
内定通知書・労働条件通知書・機密保持誓約書なども発行し、入社までに内定者とトラブルにならないようにしましょう。
しかし、書面のみで内定辞退者を減らすのには限界があります。内定後も内定者と丁寧なコミュニケーションを通じ、相手の不安を解消するように努めるなど、相互理解を図っていきましょう。
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