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内定が取り消しになるケースは?違法ではない?実際の事例も紹介

こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。

企業が内定を出した後、さまざまな理由から内定を取り消さざるを得ない状況が発生することがあるでしょう。しかし、内定取り消しは違法とされるケースもあるため、慎重な対応が求められます。

本記事では、内定取り消しが認められるケースや違法となるケース、企業が内定取り消しを行う際に知っておくべき手続きやリスクについて詳しく解説します。企業の皆さんが適切に対応できるよう、必要な情報を網羅しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次[非表示]

  1. 1.内定の取り消しとは|違法になる?
  2. 2.【令和6年最新】内定取り消しの現状
  3. 3.内定を取り消しにできるケース(合法)
    1. 3.1.企業の経営悪化や業績不振
    2. 3.2.留年
    3. 3.3.経歴詐称や虚偽の申告
    4. 3.4.内定後の大きな病気や障害
    5. 3.5.内定後の犯罪行為
  4. 4.内定取り消しをできないケース(違法)
  5. 5.内定取り消しにする場合に企業はどんな手続きが必要?
  6. 6.内定取り消しによる企業側のリスク
    1. 6.1.内定者に訴訟を起こされる
    2. 6.2.厚生労働省に企業名を公表される
    3. 6.3.企業のイメージダウンにつながる
  7. 7.内定取り消しは裁判に発展する場合も!実際の判例も紹介
  8. 8.内定取り消しによるトラブルを回避するポイント
    1. 8.1.内定取り消しの理由は慎重に検討する
    2. 8.2.証拠が残らない口頭での連絡を避ける
    3. 8.3.就業開始予定時期の30日前までに連絡する
  9. 9.内定取り消しに関するよくある質問
    1. 9.1.内定者取り消しにした内定者から損害賠償を受けたらどうする?
    2. 9.2.人事が知っておくべき内定取り消しに関連する法律は?
  10. 10.まとめ

内定の取り消しとは|違法になる?

内定の取り消しとは、企業が一度内定を出した後に、その内定を撤回することを指します。この措置は慎重に行わなければならず、適切な理由と手続きが踏まれない場合は違法と判断されることがあるため、注意が必要です。法律上、内定取り消しは雇用契約の一方的な解除とみなされ、解雇とに準じた厳しい基準が適用されます。

企業が内定を取り消す際に最も重要なのは、客観的に合理的な理由が存在することです。具体的には、経済的な理由、内定者の重大な行為、あるいは虚偽の申告などが挙げられます。しかし、これらの理由があったとしても、取り消しの手続きが適切でなければ違法とされる可能性があります。


【令和6年最新】内定取り消しの現状

厚生労働省によると、令和5年6月末時点で、同年3月新卒者の内定取り消しを行った事業所は25カ所、内定が取り消された新卒者は42人に上りました。

過去10年間の内定取り消し状況を見てみると、平成26年の54人から令和2年の211人まで大きな変動があります。特に令和2年から令和3年にかけては、新型コロナウイルスの影響により内定取り消し数が急増しました。しかし、翌年の令和4年には50人、令和5年には42人にまで減少し、直近10年間で2番目に低い数字となっています。

内定取り消しを行った事業所を産業別に見ると、最も多かったのが製造業で10人、次いで卸売・小売業の8人、建設業の6人と続いています。取り消し理由として多かったのは「経営の悪化」であり、内定が取り消された新卒者の半分以上がこの理由に該当しています。

参考:厚生労働省令和5年3月新卒者内定取消し等の状況を公表します

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内定を取り消しにできるケース(合法)

企業が内定を取り消す際には、法的な基準を満たさなければなりません。ここからは、内定を取り消しにできる5つのケースを解説します。

企業の経営悪化や業績不振

企業の経営が悪化し、業績が著しく低下した場合、内定取り消しが正当化されることがあります。これは、企業が経営を維持するためにやむを得ない措置として認められるからです。

しかし、どんな場合でも認められるわけではなく、「整理解雇の4要件」を総合的に考慮し、これに準じて客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限ります。よって、単に先行きが不透明だからという理由での内定取り消しは許されません。

<整理解雇の4要件>

  • 人員削減の必要性
  • 解雇回避の努力
  • 解雇対象者の選定基準の合理性
  • 手続きの妥当性

参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」

留年

内定者が学校を卒業できなかった場合は、そもそも採用条件を満たしていないため、内定取り消しが認められます。例えば、単位不足などで卒業できない場合、それは学生側の責任となります。このような状況では、内定取り消しも避けられないと判断されるでしょう。

経歴詐称や虚偽の申告

経歴詐称や虚偽の申告があり、その内容・程度が職務に関連し「重大なもの」であった場合には、内定取り消しが認められる可能性があります。具体的には「高卒なのに大卒と偽る」「保有していない資格を持っていると偽る」「留学経験がないのにあると記載する」などです。

しかし、これらの経歴詐称や虚偽の報告が発覚したからといって、必ずしも内定取り消しが認められるとは限りません。例えば、高卒にもかかわらず大卒と偽っていたとしても、応募条件に「学歴不問」と明記しているなど、学歴が採用基準に含まれていない場合は、内定取り消しが認められないケースもあります。

内定後の大きな病気や障害

内定後に、入社に支障をきたすような大きな病気や障害を負った場合、内定取り消しが認められる可能性が高いでしょう。ただし、病気や障害の影響で「本当に仕事ができないのか」については慎重に判断しなければなりません。

というのも、新卒採用では、将来的に活躍できる人材を育成していくことを前提に採用します。治療すれば数カ月後には改善する見込みがある病気や障害であれば、業務への影響は少ないと判断されるため、内定取り消しの合理性・相当性は認められにくくなります。

また、他のポジションに移ることで業務遂行が可能な場合も、内定取り消しは難しいです。

内定後の犯罪行為

内定後の犯罪行為も、内定取り消し事由に該当します。もし犯罪行為をした者を雇い、その事実が明るみに出れば、企業イメージの低下につながりかねません。内定前の犯罪行為の場合、事前に知らされていれば選考の際に考慮できます。

しかし、内定後の犯罪行為に関しては事前に知ることは難しい上、企業にとって大きなリスクとなるため、内定取り消しの原因となる可能性が高いでしょう。

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内定取り消しをできないケース(違法)

内定取り消しが違法とされるケースには、2つの観点があります。

一つは、内定前に知り得た情報を理由に取り消す場合です。例えば、面接時に確認した学歴や職歴、健康状態などをもとに、後になって内定を取り消すことは不当とされます。

もう一つは、社会通念上妥当性が認められない場合です。内定取り消しには、客観的かつ合理的な理由が必要であり、世間一般的に受け入れられるものでなければなりません。たとえば、内定取り消しが入社の3日前に行われ、その理由が企業の業績悪化や倒産であったとします。しかし、3日で新たな就職先を見つけるのは極めて困難であり、通常の感覚では受け入れがたいでしょう。このように、社会一般的に理解しがたいと判断される場合、内定取り消しは違法と見なされることがあります。

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内定取り消しにする場合に企業はどんな手続きが必要?

内定取り消しを行う場合、以下の手順に従って手続きを進めます。

  1. 内定取り消し事由の検討
  2. ハローワークへ通知
  3. 内定取り消し通知書の送付
  4. 内定取り消し者のフォロー

まず、内定取り消しの理由が正当かつ合理的であるかを精査します。内定取り消しが本当に避けられない状況であるかをよく確認し、客観的に納得できる理由を持つことが重要です。

内定取り消しが決定したら、管轄のハローワークへ速やかに通知します。その後、内定取り消し通知書をできるだけ早く対象者に送付しなければなりません。この通知書には、内定取消を行う理由を記載しておくべきです。また、通知書は郵送やメールで送付できますが、確実に送付したことを証明するために、内容証明付きの郵便で送るのがおすすめです。

内定取り消しによる対象者の損失を考慮し、金銭補償などの誠実な対応が求められます。内定者が新たな就職先を見つけるためのサポートも含め、企業として誠意ある対応を心がけてください。

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内定取り消しによる企業側のリスク

以下では、内定取り消しに伴う企業側の主なリスクを解説します。

内定者に訴訟を起こされる

1つ目は、内定者に訴訟を起こされる可能性があるということです。内定は企業と内定者の間で労働契約が成立した状態に当たります。そのため、一方的な内定取り消しは法的な問題を引き起こす可能性があるでしょう。実際に損害賠償や慰謝料を求められるケースも珍しくありません。労働訴訟は、判決が出ると企業名も明らかになることが多いので、マイナスの影響は大きいと言えます。

なんらかの事業によりやむを得ず内定取り消しを行う際は、その理由を明確に伝え、内定者が納得するように努めることが重要です。また、内定者が次の就職先を見つけられるようサポートする姿勢も示し、「不当に内定を取り消された」と感じさせないよう配慮してください。

厚生労働省に企業名を公表される

2つ目は、厚生労働省に企業名を公表される可能性があるということです。一定規模を超えたり、不当・違法な内定取り消しを行うと、厚生労働省のWebサイトで企業名が公表され、今後の採用活動に悪影響を及ぼすことになります

企業名が公表されるのは、次のいずれかに該当した場合です。

  1. 2年度以上連続して行われたもの
  2. 同一年度内において10人以上の者に対して行われたもの
  3. 生産量その他事業活動を示す最近の指標、雇用者数その他雇用量を示す最近の指標等に鑑み、事業活動の縮小を余儀なくされているものとは明らかに認められないときに行われたもの
  4. 次のいずれかに該当する事実が確認されたもの
    ・内定取り消しの対象となった新規学卒者に対して、内定取り消しを行わざるを得ない理由について十分な説明をしなかったとき
    ・内定取り消しの対象となった新規学卒者の就職先の確保に向けた支援を行わなかったとき

参考:厚生労働省「新規学校卒業者の採用内定取消しの防止について」

企業のイメージダウンにつながる

3つ目は、内定取り消しによって企業のイメージダウンにつながる恐れがあるということです。近年、内定取り消しに遭った本人がSNSなどでその事実を公開することが増えています。たとえ具体的な社名は出されなくても、別のところから会社が特定されるリスクは否定できません。

さらに、企業に落ち度がない内定取り消しであっても、SNS上ではそういった背景が十分に伝わらず、「責任問題だ」「ひどい」という批判が高まりやすいです。その結果、企業の評判が大きく損なわれる可能性があります。


内定取り消しは裁判に発展する場合も!実際の判例も紹介

ここでは、内定取り消しが無効とされた大日本印刷事件の判例を紹介します。

【大日本印刷事件】
大手印刷会社の大日本印刷は、過去に新卒者の内定を取り消したケースがあります。理由は「陰気な印象がある」というものでした。内定者は文書で内定通知を受け、承諾書も提出していましたが、入社の2カ月前に「当初から感じていた陰気な印象が拭えない」として内定を取り消されたのです。

この内定取り消しに対して、内定者は「内定取り消しは無効」として法的措置を取ることにしました。裁判所は、内定者の主張を認め、「内定取り消しは合理的ではない」と判断。判決では「陰気な印象は内定時点で把握できたものであり、その段階で適格性を判断するべきだった」と指摘し、内定取り消しは無効としました。

参考:厚生労働省「裁判例」


内定取り消しによるトラブルを回避するポイント

ここからは、内定取り消しによるトラブルを回避するポイントを3つ解説します。

内定取り消しの理由は慎重に検討する

内定取り消しを行う前に、その理由が客観的かつ合理的であることを確認する必要があります。具体的には、内定者の健康状態や経歴に重大な問題が発生した場合や、企業の経営が著しく悪化した場合などです。

これらの理由が社会通念上相当と認められるかどうかを慎重に検討し、不当な内定取り消しとならないよう配慮しなければなりません。内定取り消しの理由が曖昧であったり、合理的でない場合、法的トラブルに発展するリスクが高まるので注意しましょう。

証拠が残らない口頭での連絡を避ける

内定取り消しを内定者に伝える際は、必ず書面で通知することが重要です。口頭での連絡は、後にトラブルとなった場合に証拠が残らず、不利な立場に立たされる可能性があります。

書面での通知には、内定取り消しの理由や背景を詳細に記載し、内定者が納得できるような説明を心がけてください。書面のコピーだけでなく、内容証明など強い証拠を残しておくと安心です。

就業開始予定時期の30日前までに連絡する

内定取り消し通知は解雇通知と同様、「労働基準法第20条」に基づき、内定者の就業開始予定時期の、少なくとも30日前までに行うことが義務付けられています。

これは、内定者が新たな就職先を探す時間を確保するためです。もし30日前までに通知しなかった場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。内定者の負担を軽減し、トラブルを未然に防ぐためにも、できる限り早めに通知することが重要です。

参考:労働基準法第20条


内定取り消しに関するよくある質問

最後に、内定取り消しに関するよくある質問とその回答を紹介します。

内定者取り消しにした内定者から損害賠償を受けたらどうする?

内定取り消しを行った結果、内定者から損害賠償を請求された場合、以下の方法で解決を図りましょう。

  • 内定者との協議・和解
  • 労働審判
  • 訴訟

基本的には内定者と直接協議し、和解を図ることが最も望ましいです。和解によって早期にトラブルを解決できる場合が多いため、内定者との誠実な話し合いが大切です。

協議や和解が難しい場合は、地方裁判所に労働審判を申し立てることができます。それでも解決しない場合は、最終的に訴訟で解決を図ることになります。

人事が知っておくべき内定取り消しに関連する法律は?

内定取り消しに関連する主な法律には、以下のものがあります。

これらの法律を十分に理解し、内定取り消しの際は適切に対応することが求められます。内定者とのトラブルを未然に防ぐために、人事担当者は常に最新の法令を確認し、適切な対応を心がけてください。


まとめ

本記事では、内定取り消しが認められるケースや違法となるケース、企業が内定取り消しを行う際に知っておくべき手続きやリスクについて詳しく解説しました。

内定取り消しは企業と内定者の双方にとって重大な事案です。取り消しの決定には、具体的な状況を慎重に検討する必要があり、容易ではありません。もし、内定取り消しに関する悩みを抱えている場合は、専門家の助言を受けることも検討しましょう。

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監修:弁護士 青栁剛史
監修:弁護士 青栁剛史
電車庫通り法律事務所 弁護士 青栁剛史|保有資格:弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号53006)、海事代理士(関東支部)、海事補佐人|第一東京弁護士会所属。都内の上場企業等の顧問事務所を経て独立。中小企業の企業対応を中心に、相続、交通事故、犯罪被害者対応に重点を置いております。頼れる町のアドバイザーを目指しています。

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