2022年施行!産後パパ育休とは?育休との違いや給付金など解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
2022年に、新たな子育て支援制度である「産後パパ育休」がスタートしました。しかし育児休暇にはさまざまな種類があり、それらの違いが分からない人もいるでしょう。
この記事では、産後パパ育休の仕組みと、企業が行うべき手続きを中心に解説します。企業の責任者は記事を参考にして、従業員が働きやすいと感じる環境づくりに生かしてください。
目次[非表示]
- 1.2022年に施行された「産後パパ育休」とは
- 1.1.産後パパ育休と育休の違い
- 1.2.産後パパ育休とパパ・ママ育休プラスの違い
- 2.産後パパ育休施行の背景にある男性の育休取得の現状
- 3.産後パパ育休を取得するための手続き
- 4.産後パパ育休による社会保険料免除・給付金について
- 4.1.社会保険料免除について
- 4.2.給付金(出生時育休給付金)について
- 5.産後パパ育休を導入するために企業がすべきこと
- 5.1.就業規則の改定
- 5.2.育休取得状況の公表(従業員が1000人を超える場合)
- 5.3.従業員への説明・意向確認
- 5.4.体制の整備
- 6.育休から復帰するパパのために企業がすべきこと
- 6.1.従業員との面談を実施する
- 6.2.育児休業等取得者終了届を提出する
- 6.3.育児休業等終了時報酬月額変更届を提出する
- 6.4.養育期間標準報酬月額特例申出書を提出する
- 7.産後パパ育休に関するよくある質問
- 8.まとめ
2022年に施行された「産後パパ育休」とは
「産後パパ育休(出生児育児休業)」とは、2022年10月に「改正育児・介護休業法」の施行により新設された制度です。これまでの「パパ休暇」(2022年9月末に廃止)を進化させた制度といえます。
期間は子どもが出生してから8週間以内で、4週間ずつ2回に分けて取得できます。従業員が個別に労使協定から合意が得られたら、育休中にも制限付きで就業できるのも特徴の一つです。
対象者は原則として、日雇い労働者以外の男性従業員とされています。女性でも養子縁組などの理由で産休を取得していなければ、産後パパ育休の申請が可能です。したがって、実子のみならず、養子を育てる際にも対象となります。
有期雇用労働者である場合、以下の条件も満たす必要があります。
「子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」
参考:厚生労働省「時育児休業制度) Ⅱ-2-1 産後パパ育休の対象となる労働者」
参考:厚生労働省「有期雇用労働者の育児休業や介護休業について」
産後パパ育休と育休の違い
産後パパ育休と育児休暇(以下、育休)は、別の制度です。
育休は期間が長めに設定されており、子どもが1歳になるまで休業できます(最長で2歳になるまで延長可)。回数は子ども1人につき原則1回です。
申請期限にも違いがあり、産後パパ育休は休業する2週間前までに行わなければなりません。一方で育休は、原則として1カ月前から申請できます(延長は育休が満了する2週間前まで)。加えて従来の育休は、期間中の就業は基本的に認められていません。
参考:山形労働局 雇用環境・均等室「育児・介護休業法のポイント」
産後パパ育休とパパ・ママ育休プラスの違い
2010年6月に作られた「パパ・ママ育休」も、積極的に活用したい子育て支援制度の一つです。夫婦の双方で育休を取得した際に、最大で子どもが1歳2カ月になるまで期日を延長できます。
ただし「パパ・ママ育休プラス」は、育休取得日数自体を増やせるわけではありません。あくまで期日の延長のみが認められた制度であるため、子どもが1歳2カ月になるまで利用するには、夫婦のどちらかが取得時期を遅らせる必要があります。事業者は産後パパ育休もなるべく一緒に取得させ、夫婦で力を合わせて子育てできるようにサポートしましょう。
参考:厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」
産後パパ育休施行の背景にある男性の育休取得の現状
産後パパ育休が施行された背景として、男性の育休取得率と取得日数が挙げられます。厚生労働省による「「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)」から現状を紹介しましょう。
まず同調査の結果では、男性の育児休暇取得率は46.2%です。ただし、この結果はあくまで当該プロジェクトに参加した849社による数値であり、「令和4年度雇用均等 基本調査」では17.13%となっています。
さらに着目したいポイントが、育休取得率と取得日数に負の関係が見られることです。要するに取得率の高い企業ほど、取得日数は短いといった傾向があります。こうした現状を改善しつつ、男性も育児に参加しやすい社会にすることが産後パパ育休の目的です。
参考:厚生労働省「「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)」
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産後パパ育休を取得するための手続き
産後パパ育休を従業員に取得させるには、従業員と企業側の各々で手続きが必要です。ここでは、双方の立場から見た手続きのプロセスを説明します。従業員がスムーズに産後パパ育休を取得できるように、事業者はしっかりと手順を対象者に伝えましょう。
従業員が行う手続き
従業員が産後パパ育休を希望した場合は、従業員に「(出生時)育児休業申出書」を提出してもらいます。期限は原則として休業の2週間前までであるため、事業者はその旨もあらかじめ周知しておくとよいでしょう。様式は、厚生労働省が用意しているテンプレートを使うのをおすすめします。内容を自社で使えるように改め、共有フォルダーに保管しておいてください。
2回に分けて休暇を取得する制度ですが、申請は1回でまとめて行います。従業員がまとめて申請しなかった場合、事業者は申し出を拒否できます。次のいずれかのケースに該当する場合は、産後パパ育休の取得ができない点も押さえておきましょう。
- 対象の子についてすでに2回の産後パパ育休を取得している
- (子ども一人について)取得日数が28日に達している
また産後パパ育休期間中に従業員が就業を希望するかもしれないので、労使協定の対応を事前に済ませてください。
参考:厚生労働省「時育児休業制度) Ⅱ-2-1 産後パパ育休の対象となる労働者」
企業側が行う手続き
産後パパ育休の申請を受けたら、企業は国と従業員の双方への対応が必要です。
国に対しては、主に以下の手続きを行います。
- 出生時育児休業給付金(育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書等の提出)
- 社会保険料の免除(健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届等の提出)
それぞれの申請期間は次の通りです。
- 出生時育児休業給付金:出生から8週間が経過した翌日〜2カ月後の月末
- 社会保険料の免除:育休取得期間中または終了日から起算して1カ月以内
従業員に対しては、申請を受理した旨および休業期間を申請後1週間以内に通知しましょう。仮に申請を拒否する際には、その理由を通知に記載しする必要があります。通知を怠ると大きなトラブルにつながりかねないので、しっかりと対応してください。
参考:日本年金機構「育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」
参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
参考:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き」
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産後パパ育休による社会保険料免除・給付金について
企業が行う手続きとして「社会保険料免除」「育児休業給付金」の申請があると説明しましたが、次にこれらの仕組みやメリットを解説します。従業員の生活において重要な制度となるので、事業者も内容をしっかりと理解しておきましょう。
社会保険料免除について
産後パパ育休に限らず、従来の育休期間中も被保険者本人負担分に加えて、事業主負担分も免除されます。
2022年9月までは、開始日の属する月と終了日の属する月が同じである場合、終了日が同月の末日に該当しない限り免除の対象にはなりませんでした。しかし同年10月以降は、開始日と終了日の属する月が同じでも、14日以上の育休を取得すれば社会保険料が免除されます。
加えて賞与(ボーナス)は、賞与支払月の末日を含み連続で1カ月以上の育休を取得したときに免除の対象となります。ただし産後パパ育休中に就業した場合、その日の分は免除されないので注意してください。
参考:日本年金機構「令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました」
給付金(出生時育休給付金)について
産後パパ育休を取得した際に、従業員が利用できる制度の一つが出生時育休給付金です。支給の対象になるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 休業開始前の2年間、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上(11日以上ないときは就業時間数が80時間)
- 休業中の就業日数が10日以下(10日を超える場合は、就業時間が80時間。休業期間が28日に満たない場合は日数に比例して短くなる)
支給額の計算方法は「休業開始時賃金(日額)×休業日数(上限28日)×67%」です。一方で事業者が賃金を支払うと、その額に応じて支給額の計算方法も変わります。「休業開始時賃金(日額)×休業日数」の80%以上の場合、出生時育休給付金は支給されません。
参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
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産後パパ育休を導入するために企業がすべきこと
産後パパ育休を導入するには、企業でも就業規則や体制を整えておくべきです。準備に際しての必要な手続きに加え、従業員に向けた周知方法を詳しく解説します。
就業規則の改定
企業が産後パパ育休を導入する際には、就業規則の改定を行わなければなりません。申請手続きの内容や取得できる育休期間を規則に定めましょう。
就業規則の規定内容は大きく分けて、「絶対的必要事項」と「相対的必要事項」の2つがあります。産後パパ育休は絶対的必要事項に該当するため、規定がなされていないと刑事罰が科せられることもあります(30万円以下の罰金)。
まだ改定できていない企業は、できる限り早めに対応してください。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) 120条1項」
育休取得状況の公表(従業員が1000人を超える場合)
従業員が1000人を超える企業であれば、産後パパ育休を含む育児休業などの取得状況を公表する必要があります。これは育児・介護休業法の改正に伴い、2023年4月から施行されています。この場合の「従業員」は常時雇用者を指しますが、雇用契約の形態は問われません。
一時的に1000人以下となる場合でも、平常時に当該基準を満たしていれば公表義務が課せられます。2025年4月からは、従業員数が300人超〜1000人以下の企業も対象となります。
公表方法は基本的にインターネットですが、国は厚生労働省のWebサイトである「両立支援ひろば」の利用を推奨しています。
参考:厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」
従業員への説明・意向確認
事業者は、従業員に産後パパ育休の説明をしっかりと行いましょう。説明会を開き、なるべく多くの従業員に周知することをおすすめします。説明時には、必ず産後パパ育休を取得するメリットにも触れてください。
また一人ひとりの従業員に対し、産後パパ育休に関する意向確認も必要です。あらかじめ取得の意向をチェックすることで、配置転換がスムーズに進みやすくなります。確認するときは、口頭ではなく書類上(もしくは電子回答)でアンケートを採るとよいでしょう。
体制の整備
従業員が産後パパ育休を取得しやすくするためには、企業が主体となって環境づくりを行う。育休に関する相談窓口を置き、従業員が気軽に相談できる体制を整備しましょう。また企業の方針を定期的に周知して、ほかの従業員にも理解してもらうよう促してください。
産後パパ育休の導入を進めるうえでは、他企業の導入事例を参考にすることも大切です。始めに事業者や担当者が事例をしっかりと調べ、周知する際に情報を併せて掲載しておくとよいでしょう。
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育休から復帰するパパのために企業がすべきこと
企業は従業員に産後パパ育休を取得させるだけではなく、復帰に向けた手続きもしっかりと行わなければなりせん。国に対する届け出も必要なので、不備のないように前もって準備してください。
従業員との面談を実施する
育休が明ける1、2カ月前および復帰してから2カ月後には、従業員と面談しましょう。面談時には職場へ復帰する日程に変更はないか、就業中はどのように保育を行うかなどをヒアリングします。
また、復帰後も子育てと仕事を両立するため、急な予定変更が生じる場合もあるでしょう。職場に配慮してほしいことをあらかじめ確認し、その後の就業状況についても情報を共有してください。
育児休業等取得者終了届を提出する
従業員が予定より早く職場に復帰するときは、「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」を日本年金機構に届け出る必要があります。提出期限は従業員の育休中、もしくは復帰後1カ月以内です。
この書類は、育休の期間を延長する場合にも用いられます。なお予定通りに職場へ復帰するのであれば、終了届の提出は必要ありません。
参考:日本年金機構「育児休業等終了予定日前に育児休業等を終了したとき」
育児休業等終了時報酬月額変更届を提出する
復帰した従業員から要望があれば、「育児休業等終了時報酬月額変更届」も日本年金機構に提出しましょう。これは復帰後3カ月以内の報酬が休業前と比べて下がったときに、4カ月目以降の報酬月額を改定できる書類です。
提出時期は特に定められてられていませんが、日本年金機構は速やかに提出するよう呼びかけています。短時間労働者の場合は、書類の備考欄に「短時間労働者」と記載してください。
参考:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
養育期間標準報酬月額特例申出書を提出する
従業員から申し出があった場合は、「養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」の提出も必要です。この手続きをすると、子どもの出生年〜3歳になるまで勤務時間が短縮した場合でも、育休前の報酬額に基づいて年金額が計算されます。
提出先は日本年金機構です。従業員の戸籍謄本や住民票の写しを併せて添付しましょう。
参考:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
産後パパ育休に関するよくある質問
ここからは、産後パパ育休に関する疑問を質疑応答の形で紹介します。この制度のみならず、従来の育休も含めた全体の課題や仕組みを把握しておくことが大切です。
パパはなぜ育休が取りづらい?
男性が育休を取りづらい要因として考えられるのは、職場内で環境や風土が整備されていないためです。日本では法改正がなされる前から、さまざまな子育て支援制度を実施しています。
しかし世間的に浸透しているとはいえず、育休を取得することにためらいを感じている人が少なからずいます。そのため事業者は積極的に環境を整え、ほかの従業員にも育休の重要性を周知していくのがいいでしょう。
産後パパ育休の給付金が10割になるのはいつから?
産後パパ育休の手取り収入が10割になるのは、2025年度からとなる見込みです。「異次元の少子化対策」に関わる政策として、国も着々と準備を進めています。
なお2024年時点では、休業前の賃金の67%が育児休業給付金として支給されますが、これを80%に高める予定です。社会保険料が免除されるのを考慮した際に、手取りが10割保証される計算となります。
産後パパ育休と育休を併用することはできる?
産後パパ育休は、従来の育休と併用するのを想定している制度です。これらの制度を併用すると、子どもが1歳になるまで合計で4回に分けて休めるように作られています。
夫婦で交代しながら育休を取得すれば、どちらも仕事と子育ての両方に力を入れられるでしょう。事業者は従業員に対して、しっかりと夫婦で話し合って決めるように促してください。
まとめ
少子化が加速する中、子育て家庭へのサポートは極めて重要です。従業員が育休や産後パパ育休を取得しやすいように、企業側も協力しなければなりません。
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