ガバナンスとは?意味やコンプライアンスとの違いを分かりやすく解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
近年、企業におけるガバナンスの重要性がますます高まっています。しかし、「ガバナンス」という言葉自体は聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ガバナンスの意味やコンプライアンスとの違い、ガバナンスを整備するメリットなどを分かりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.ガバナンスとは
- 1.1.ガバナンス効果とは
- 1.2.ガバナンス強化とは
- 1.3.コーポレートガバナンス・コードとは
- 2.ガバナンスと他の類似語の違い
- 3.企業がガバナンスで整備しなければならない項目
- 3.1.組織体制の整備
- 3.2.内部統制システムの構築
- 3.3.情報開示と透明性の確保
- 3.4.経営の監督機能強化
- 3.5.ステークホルダーとの関係構築
- 4.ガバナンスを整備するメリット
- 4.1.不正・不祥事を未然に防げる
- 4.2.企業やステークホルダーの利益につながる
- 4.3.企業価値が向上する
- 4.4.経営効率の改善
- 4.5.イノベーション創出力の向上
- 5.ガバナンスを整備しないことによるリスク
- 5.1.不正行為や不祥事の発生
- 5.2.経営リスクの増大
- 5.3.ステークホルダーとの関係悪化
- 6.ガバナンスの強化方法
- 6.1.内部統制を構築する
- 6.2.社外からの監視体制を整える
- 6.3.従業員にコーポレートガバナンスを浸透させる
- 6.4.テクノロジーを活用する
- 7.ガバナンス強化のロードマップ例
- 7.1.フェーズ1:現状分析と計画策定(3~6カ月)
- 7.2.フェーズ2: 基盤整備(6~12カ月)
- 7.3.フェーズ3:組織体制の強化(6~12カ月)
- 7.4.フェーズ4:プロセス・システムの改善(9~18カ月)
- 7.5.フェーズ5:人材育成と文化醸成(12~24カ月)
- 7.6.フェーズ6:モニタリングと継続的改善(継続的)
- 8.ガバナンス強化のために使えるツール
- 9.実際にガバナンス強化を行っている企業事例
- 10.ガバナンスの最新トレンド
- 11.まとめ
ガバナンスとは
ガバナンス(Governance)とは、組織が目標を達成し、長期的な発展を遂げるために必要な、意思決定の監督・評価体制を指します。英語では「統治」「統制」「管理」などを意味し、組織活動を円滑に制御するための仕組みとして機能します。
企業におけるガバナンスは「コーポレートガバナンス」などと呼ばれ、経営の透明性と公正性を確保し、ステークホルダーの利益を最大化するための仕組みとして重要視されているのです。
ガバナンス効果とは
ガバナンス効果とは、ガバナンスを適切に実施することで得られる企業や組織のメリットを指します。
具体的な効果としては、以下のようなものが挙げられます。
- 不正・不祥事を未然に防げる
- 企業やステークホルダーの利益につながる
- 企業価値が向上する
- 経営効率の改善
- イノベーション創出力の向上
ガバナンス強化とは
ガバナンス強化とは、企業や組織の運営において監督や管理の仕組みを改善し、より効果的に機能させることです。
近年、企業不祥事が相次いで発生していることを踏まえ、ガバナンスの強化は企業経営においてますます重要になっています。
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードは、上場企業が健全なガバナンスを実現するための基本原則をまとめた指針です。英語ではCorporate Governance Codeと表記されることから、頭文字を取って「CGコード」と呼ばれることもあります。
このコードは、株主の権利・平等性の確保、適切な情報開示と透明性、取締役会の責務など、5つの基本原則から成り立っています。
出典:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)」
ガバナンスと他の類似語の違い
ガバナンスとよく混同される言葉に「コンプライアンス」「内部統制・内部監査」「リスクマネジメント」「ガバメント」があります。それぞれの違いは、以下の通りです。
用語 |
説明 |
コンプライアンス |
法令や規則、倫理規範などを順守すること |
内部統制・内部監査 |
企業が不正やミスを防ぎ、経営の健全性を確保するための仕組み |
リスクマネジメント |
企業が事業活動に伴うリスクを識別、分析、評価、対応、監視すること |
ガバメント |
国家における統治機構の総称 |
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企業がガバナンスで整備しなければならない項目
組織体制の整備
組織体制の整備は、ガバナンス強化の基本です。明確な役割分担や責任の所在を定め、経営陣から現場まで一貫した運営ができる体制を構築する必要があります。
具体的には、以下の整備が求められます。
- 取締役会の構成と機能強化
- 社外取締役・社外監査役の設置
- 執行役員制度の導入
- 各種委員会(指名委員会、報酬委員会など)の設置
内部統制システムの構築
内部統制システムの構築は、企業の業務プロセスを適切に管理し、リスクを低減するために重要です。明確な手続きと管理体制を整えることで、業務の信頼性と効率を高められます。
具体的には、以下の整備が必要です。
- リスク管理体制の整備
- コンプライアンス体制の強化
- 内部通報制度の充実
- 情報管理体制の構築
情報開示と透明性の確保
企業がステークホルダーからの信頼を得るためには、情報開示と透明性の確保が不可欠です。企業は経営状況やリスク情報を適時かつ正確に公開しなければなりません。
そのためには、以下の取り組みが必要です。
- 適時・適切な情報開示体制の整備
- 統合報告書やESG情報の開示
- 株主・投資家との対話促進
経営の監督機能強化
経営の監督機能強化も、ガバナンス強化における重要項目の1つです。経営陣の意思決定が公正かつ透明性を保つための仕組みを整えることが求められます。
具体的には、以下の整備が必要です。
- 監査役会または監査委員会の機能強化
- 内部監査部門の設置と強化
- 第三者による外部監査の実施
ステークホルダーとの関係構築
企業は、株主や従業員、取引先、地域社会など、多様なステークホルダーとの良好な関係を築くことが重要です。ステークホルダーの意見を積極的に取り入れ、持続可能な経営を目指すことで、企業価値の向上を図ります。
また、社会貢献活動や環境保護への取り組みを通じて、企業の社会的責任を果たすことも求められます。
具体的には、以下の整備が必要です。
- 従業員の労働環境整備
- 取引先との公正な取引関係の構築
- 地域社会への貢献活動
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ガバナンスを整備するメリット
不正・不祥事を未然に防げる
ガバナンスの整備は、経営陣や従業員による不正や不祥事の予防に効果的です。一度でも不祥事が起こると、従業員はもちろん、顧客や取引先、株主などのステークホルダー全員に悪影響を及ぼします。
管理と監視の仕組みを企業内に確立し、しっかりとしたガバナンスを実施することで、不正行為による経営の混乱を未然に防ぐことができます。
企業やステークホルダーの利益につながる
ガバナンスの整備は、企業やそのステークホルダーにとって大きな利益をもたらします。適切な意思決定や透明性の確保により、投資家や顧客の信頼を得られ、結果として企業の競争力と市場価値が向上します。
また、従業員の満足度も高まり、企業全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
企業価値が向上する
企業がガバナンスを強化することで、不正行為を監視する体制が整い、経営戦略や財務状況の透明性が向上します。不正や情報漏えいを防ぎ、透明性と公正さを持つ優良企業としてのイメージを確立できます。
最近では、このような透明性を確保している企業が支持される傾向にあり、投資家からの評価も高まっています。企業価値が上がれば、投資家からの出資や融資の増加にもつながるでしょう。
経営効率の改善
ガバナンスの整備は、経営効率の改善にもつながります。明確な役割分担と責任の所在を定めることで、意思決定の迅速化と実行力の強化が図れます。また、内部統制の強化により業務プロセスが標準化されれば、無駄を削減し、コスト効率も向上するでしょう。
近年、企業を取り巻くリスクは複雑化・多様化し、リスクマネジメントが重要となっています。ガバナンスを整備することで、リスクマネジメント体制を強化し、リスクを低減することも可能です。
イノベーション創出力の向上
ガバナンスの整備は、イノベーション創出力の向上にも寄与します。例えば、リスク管理が整備された企業では、リスクが事前に把握され、適切な対策が講じられているため、従業員は失敗を恐れずに新しいプロジェクトに挑戦しやすくなります。
リスクテイクを伴う新規事業への積極的な取り組みも可能になり、新たなビジネスチャンスを開拓できるでしょう。
また、適切な情報開示とステークホルダーとの信頼関係により、外部からの支援や協力も得やすくなり、持続的なイノベーションが推進されます。
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ガバナンスを整備しないことによるリスク
不正行為や不祥事の発生
ガバナンスが整備されていないと企業内の監視体制が行き届いていないので、社内に不正行為や不祥事が発生するリスクが高まります。管理者が不正に気付けず、会社内部の不正を防止できません。
具体的には、以下のような不正や不祥事が発生する可能性があります。
- 経営陣による独断的な意思決定
- 組織ぐるみの不正隠蔽(いんぺい)
- 従業員による横領や会計不正
- 製品品質データの改ざん
これらの不正行為は、企業の財務に大きな損害を与えるだけでなく、場合によっては刑事罰の対象となることもあります。
経営リスクの増大
ガバナンスが不十分な企業では、経営リスクが増大します。意思決定プロセスが不明確であったり、リスク管理体制が整っていなかったりする場合、予期せぬトラブルや市場の変化に対応できません。企業は競争力を失い、持続的な成長が難しくなる可能性があります。
具体的には、以下のようなリスクが高まります。
- 不適切な経営判断による損失
- コンプライアンス違反による法的制裁
- 情報漏えいやサイバー攻撃への脆弱(ぜいじゃく)性
ステークホルダーとの関係悪化
ガバナンスが整備されていないと、ステークホルダーとの関係悪化につながるリスクもあります。適切な情報開示や透明性が確保されない場合、株主や顧客、従業員からの信頼を失うことになりかねません。
なによりも従業員のモチベーションが低下するため、生産性や業績に影響を及ぼします。
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ガバナンスの強化方法
内部統制を構築する
ガバナンスの強化には内部統制の構築が欠かせません。内部統制が適切に機能しなければ、透明性のある情報開示は困難です。企業内で順守すべきルールを設定し、そのルールに基づいて業務が行われているかを監視・指導する体制をつくることが重要です。
社内ルールの設定に困った場合は、コーポレートガバナンス・コードを参考にするとよいでしょう。
社外からの監視体制を整える
経営層や社員による不正を防ぐためには、第三者の視点を取り入れた監視体制が有効です。独立した社外取締役や監査役、報酬委員会などを設置し、企業の経営活動を客観性を持って評価できる体制を導入することで、ガバナンスを強化できます。
第三者による監視は、株主や投資家の視点からも企業経営の透明性を高め、信頼性の向上につながります。
従業員にコーポレートガバナンスを浸透させる
ガバナンス強化には、従業員の意識向上が重要です。従業員にガバナンスの重要性を理解してもらい、実際に行動に移すことで初めてガバナンスが効果を発揮します。
周知の際には「なぜガバナンスが必要なのか」「どのような体制や取り組みを行っているのか」を伝えることが大切です。意義や目的がきちんと伝われば、従業員は自発的にルールに沿って行動するようになるでしょう。
テクノロジーを活用する
ガバナンス強化には、テクノロジーの活用も大切です。デジタルツールやシステムを活用することで、業務の効率化と透明性の向上が期待できます。
例えば、リスク管理システムや内部統制ソフトウェアを使うことで、データの一元管理やリアルタイムな監視が可能になります。ガバナンスの効果を最大限に引き出せるでしょう。
ガバナンス強化のロードマップ例
フェーズ1:現状分析と計画策定(3~6カ月)
ガバナンスを強化するためには、段階的なアプローチが効果的です。まずは、企業の現状を徹底的に分析し、ガバナンスの強化計画を策定します。内部統制やリスク管理体制の現状を評価し、課題を洗い出してください。その後、具体的な改善目標とスケジュールを設定し、経営陣の承認を得たら計画を正式にスタートします。
【フェーズ1の具体的な流れ】
- 現状のガバナンス体制の評価
- ステークホルダーの期待の把握
- ガバナンス強化の目標設定
- ガバナンス強化計画の策定
- 経営陣の承認取得
フェーズ2: 基盤整備(6~12カ月)
次に、企業のガバナンス方針を確立し、内部統制やリスク管理体制の基盤を整備しましょう。行動規範や倫理規程の整備を通じて、全従業員が従うべきルールを明確にし、コンプライアンス体制を強化します。
【フェーズ2の具体的な流れ】
- ガバナンス方針の策定・改訂
- 行動規範・倫理規程の整備
- 内部統制システムの構築・強化
- リスク管理体制の整備
- コンプライアンス体制の強化
フェーズ3:組織体制の強化(6~12カ月)
フェーズ2と並行して、組織体制の強化を進めます。取締役会の構成や機能を見直し、ガバナンスの質を向上させましょう。社外取締役や社外監査役を設置・増員することで、役員の意思決定が法令違反やモラルの欠如を防ぐことを目指します。
【フェーズ3の具体的な流れ】
- 取締役会の構成・機能の見直し
- 社外取締役の増員・多様性確保
- 各種委員会(指名・報酬・監査など)の設置・強化
- 執行役員制度の導入・改善
- 監査役会または監査委員会の機能強化
フェーズ4:プロセス・システムの改善(9~18カ月)
続いて、企業の意思決定プロセスや情報開示体制を整備し、効率化と透明性の向上を図ります。また、ITガバナンスの強化や業務プロセスの標準化を進めることで、業務の信頼性と効率を高めることも大切です。
【フェーズ4の具体的な流れ】
- 意思決定プロセスの明確化・効率化
- 情報開示体制の整備
- 内部通報制度の構築・改善
- ITガバナンスの強化
- 業務プロセスの標準化・可視化
フェーズ5:人材育成と文化醸成(12~24カ月)
ガバナンスは経営陣だけでなく、そこで働く全ての従業員に関わるものです。一人ひとりがコンプライアンスを順守し、社内ルールに従うためには、ガバナンスに対する意識を高めなければなりません。研修や教育を通じて、ガバナンスの重要性やその実践方法を従業員に啓蒙(けいもう)し、企業全体のガバナンス文化を醸成しましょう。
【フェーズ5の具体的な流れ】
- 役員・従業員向けガバナンス研修の実施
- ガバナンス意識の浸透施策の展開
- 人事評価制度へのガバナンス要素の組み込み
- ガバナンス人材の育成・登用
- オープンで透明性の高い組織文化の醸成
フェーズ6:モニタリングと継続的改善(継続的)
ガバナンスは、一度体制を構築しただけでは十分ではありません。モニタリングと改善を継続的に行うことが、ガバナンス体制の有効性を維持し、さらなる強化を実現するために重要となります。
【フェーズ6の具体的な流れ】
- ガバナンス指標の設定と定期的な測定
- 取締役会の実効性評価の実施
- ステークホルダーからのフィードバック収集
- 外部評価・第三者評価の活用
- ガバナンス体制の定期的な見直しと改善
ガバナンス強化のために使えるツール
GRCツール
GRCツールとは、企業のガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスに関する管理を効率化するツールです。リスク管理機能、コンプライアンス管理機能、内部監査・内部統制機能が備わっており、リスクを客観的な視点から、目に見える形で分析できるのが特徴です。
GRCツールを導入することで、ガバナンス体制を効率的に構築・運用でき、不正行為や不祥事の未然防止、経営リスクの低減、コンプライアンスの徹底に役立ちます。
IT資産管理ツール
IT資産管理ツールとは、企業が保有するIT資産(ハードウェア、ソフトウェア、ライセンスなど)を一元的に管理するためのツールです。ソフトウェアライセンス管理、ハードウェア管理、セキュリティ管理といった機能が搭載されており、IT資産の可視化によるコンプライアンス順守をサポートしてくれます。
内部統制システム
内部統制システムは、違法行為や情報漏洩などを防止し、企業を健全な状態で運営するためのツールです。業務プロセスの標準化、承認フローの管理、文書管理などの機能が搭載されています。業務の透明性向上、不正防止、監査対応の効率化などが期待できます。
実際にガバナンス強化を行っている企業事例
ここでは、ガバナンス強化に積極的に取り組んでいるエプソン株式会社の事例を紹介します。
同社は、「エプソンウェイ」という企業理念に基づき、持続可能な成長と企業価値の向上を目指してガバナンスの強化に努めています。取締役のうち6人を独立した社外取締役が占め、氏名と報酬委員会の長も社外取締役が担当しています。
これにより、公正で迅速な意思決定が可能となり、ガバナンスの実効性が向上しています。こうした取り組みが評価され、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2023」を受賞しました。
参考:エプソン株式会社
ガバナンスの最新トレンド
近年、企業を取り巻く環境は急速に変化しており、単なる利益追求だけではなく、社会課題の解決や持続可能性への貢献が求められています。この流れを受け「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて、企業のガバナンス体制にSDGsの要素を組み込む動きが加速しています。
上記以外にも、以下のようなトレンドも見られます。
- デジタルガバナンス
- パーパス経営とガバナンス
まとめ
本記事ではガバナンスの意味やコンプライアンスとの違い、ガバナンスを整備するメリットなどを詳しく解説しました。
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