リスクマネジメントとは?重要性・具体例・関連資格などを解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
ビジネスでは内部・外部かかわらず、さまざまなリスクが生じるものです。事業を順調に継続していくためには、これらのリスクを事前に見つけて適切に対処する「リスクマネジメント」が欠かせません。
本記事では、リスクマネジメントの定義からその重要性や具体例、関連資格について詳しく解説します。リスクマネジメントを適切に実践することで、企業の健全な運営を行い、予期せぬトラブルに備えましょう。
目次[非表示]
- 1.リスクマネジメントとは
- 1.1.リスクマネジメントと類語の違い
- 1.1.1.危機管理
- 1.1.2.リスクアセスメント
- 1.1.3.リスクヘッジ
- 1.1.4.クライシスマネジメント
- 1.1.5.ISO31000 リスクマネジメント規格
- 2.リスクマネジメントの重要性
- 3.企業で起こりうるリスクの種類
- 3.1.戦略リスク
- 3.2.財務リスク
- 3.3.オペレーショナルリスク
- 3.4.コンプライアンスリスク
- 3.5.レピュテーションリスク
- 3.6.情報セキュリティリスク
- 3.7.環境リスク
- 3.8.政治的リスク
- 3.9.人材リスク
- 3.10.技術リスク
- 3.11.市場リスク
- 4.業界別のリスクマネジメント事例
- 5.リスクマネジメントのプロセス
- 5.1.1. 組織の現状確認・整備
- 5.2.2. リスクアセスメント(特定・分析・評価)
- 5.3.3. リスクへの対応
- 5.4.4. モニタリング・改善
- 6.よくあるリスクマネジメントの失敗例と解決方法
- 6.1.責任者がいない
- 6.2.社内の体制が整っていない
- 6.3.リスクが不明瞭になっている
- 6.4.情報共有が足りていない
- 7.リスクマネジメントに役立つ資格
- 8.効率的にリスクマネジメントするためにおすすめのツール
- 8.1.RiskWatch
- 8.2.RSA ARCHER
- 8.3.IBM OpenPages GRC
- 9.まとめ
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、潜在的なリスクを特定・分析し、適切な対策を講じることで損失を回避・軽減する経営手法です。企業活動には、商品開発の失敗や顧客情報の漏えい、自然災害など、さまざまなリスクが存在します。これらのリスクを放置すると、事業運営に大きな打撃を与え、場合によっては企業存続の危機に陥る可能性もあります。
リスクマネジメントは、こうしたリスクを事前に察知し、適切な対策を講じることで、予期せぬ事態を未然に防ぐことを目的としています。
リスクマネジメントと類語の違い
危機管理
危機管理とは、予期される危機や予測できない緊急事態が発生した際に、迅速かつ適切に対応するための一連のプロセスを指します。防げる危機があれば事前に予防策を講じることが理想ですが、自然災害や外部要因による事故など、自力で防げない危機も少なくありません。
そのため、危機管理では「危機発生時にどのような対策を取れば被害を最小限に抑えられるか」「迅速な復旧を実現するために何が必要か」を中心に検討します。
リスクアセスメント
リスクアセスメントは、潜在的なリスクを特定・分析し、その発生確率と影響度を評価するプロセスです。リスクマネジメントの初期段階において行われ、以下のステップで実施されます。
- リスクの特定
- リスク分析
- リスク評価
リスクアセスメントは、定性的な分析と定量的な分析を組み合わせて行われます。
定性的な分析では専門家の経験や知識に基づいてリスクを評価し、定量的な分析では過去のデータや統計情報などに基づいてリスクを評価します。
リスクヘッジ
リスクヘッジとは、将来起こるかもしれないリスクを予測し、影響を回避したり最小限に抑えたりするための具体的な対策を講じることです。リスクマネジメントの一環として位置付けられており、特定のリスクを対象としている点がポイントです。
なお、企業が直面しうるリスクには、自然災害やテロ、戦争などの環境リスク、資金調達の困難や負債といった財務リスク、訴訟などの法的リスクなどがあります。
クライシスマネジメント
クライシスマネジメントは、企業が直面する重大な危機(クライシス)を効果的に管理するための活動全般を指します。日本語では「危機管理」とも呼ばれます。
ISO31000 リスクマネジメント規格
ISO31000は、国際標準化機構(ISO)が制定したリスクマネジメントに関する国際規格です。この規格は、業種や規模にかかわらず、あらゆる組織に適用可能であり、リスクマネジメントの枠組みやプロセスを包括的に示しています。
ISO31000は認証を目的としたものではなく、その理念や手法を各組織の状況に応じて適用することが推奨されています。
700万人の働き手の中から希望のスキマバイト人材を探せるタイミーはこちら>>
リスクマネジメントの重要性
近年では、業務の複雑化や分業化が進み、それに伴ってアウトソーシングも増加しています。この結果、従業員による法令違反が企業経営に重大な影響を与える品質問題を引き起こしたり、外注先の業務停止が自社に連鎖的な影響を及ぼしたりと、新たなリスクが表面化しています。
また、グローバル化や情報化の進展によって事業環境も大きく変化しており、リスクが企業に与える影響は以前にも増して大きくなっています。こうした背景から、リスクマネジメントの重要性が高まり、企業はこれまで以上に積極的にリスク管理に取り組むことが求められているのです。
700万人の働き手の中から希望のスキマバイト人材を探せるタイミーはこちら>>
企業で起こりうるリスクの種類
戦略リスク
戦略リスクは、企業のビジネス戦略が市場環境や競争状況の変化に適応できない場合に生じます。市場環境の変化を読み違えたり、競合企業の動向を誤認したりすることによって、収益の減少や市場シェアの低下を招く可能性があります。
【主なリスク例】
- 市場変化への対応遅れ
- 競合他社の台頭
- 技術革新への追従失敗
- M&A・事業提携の失敗
- 新規事業展開の失敗
- ブランド価値の毀損(きそん)
財務リスク
財務リスクは、資金繰りの悪化によって生じるリスクです。売掛金回収の遅延や投資の失敗などの要因で資金不足に陥り、事業運営に支障をきたす可能性があります。
【主なリスク例】
- 資金調達困難
- 為替変動
- 金利変動
- 株価変動
- 信用リスク(取引先の債務不履行)
- 流動性リスク
- 資産価値の下落
オペレーショナルリスク
オペレーショナルリスクは、日常の業務遂行において発生するリスクです。こうしたリスクは、業務の中断や生産性の低下を引き起こす可能性があります。
【主なリスク例】
- 人的ミス
- システム障害
- 業務プロセスの不備
- 内部統制の欠陥
- サプライチェーンの混乱
- 品質管理の失敗
- 生産設備の故障
コンプライアンスリスク
コンプライアンスリスクは、法令や規制の順守に関連するリスクです。法令違反や規制不順守が発覚した場合、罰則や制裁を受けることがあり、企業の信頼性に大きな影響を及ぼします。
【主なリスク例】
- 法令違反
- 規制変更への対応遅れ
- 社内規定違反
- 贈収賄・腐敗行為
- 独占禁止法違反
- 個人情報保護法違反
レピュテーションリスク
レピュテーションリスクは、企業の評判やブランドイメージに影響を及ぼすリスクです。不祥事や製品の欠陥、顧客対応の不備などが原因で、企業の信用が失われることがあります。
【主なリスク例】
- 不祥事による社会的信用の失墜
- SNS上での炎上
- 製品リコール
- 顧客対応の失敗
- メディア報道による評判低下
情報セキュリティリスク
情報セキュリティリスクは、サイバー攻撃やデータ漏えい、内部不正などにより、企業の情報資産が損なわれるリスクです。顧客情報や機密情報が漏えいしたり、システムがダウンしたりすることによって、事業活動に重大な損害を与える可能性があります。
【主なリスク例】
- サイバー攻撃
- データ漏えい
- 知的財産権の侵害
- 機密情報の流出
- ランサムウェア被害
環境リスク
環境リスクは、自然災害や気候変動、環境規制の強化などにより、企業活動が影響を受けるリスクです。自然災害や環境汚染などによって、事業活動に支障をきたしたり、社会的責任を問われたりする可能性があります。
【主なリスク例】
- 自然災害(地震、台風、洪水など)
- 気候変動の影響
- 環境規制の強化
- 環境汚染事故
- 資源枯渇
政治的リスク
政治的リスクは、政治情勢の変化により生じるリスクです。例えば、政変や戦争などによって事業環境が不安定化したり、事業活動が制限されたりすることがあります。
【主なリスク例】
- 政権交代による政策変更
- 国際関係の悪化
- 貿易摩擦・経済制裁
- 戦争・テロ
- クーデター・政変
人材リスク
人材リスクは、重要な人材の流出や採用難、労働条件の悪化などにより、企業の運営に支障をきたすリスクです。例えば、優秀な人材が競合他社に移ることで、企業の競争力低下につながる恐れがあります。
【主なリスク例】
- 人材流出
- 人材獲得の失敗
- 従業員の不正行為
- 労働争議
- ハラスメント問題
- 人材育成の遅れ
技術リスク
技術リスクは、技術革新の遅れや技術の陳腐化、新技術の導入失敗などにより、企業の競争力が低下するリスクです。例えば、新技術の開発に失敗することで、市場での競争力を失うことなどが挙げられます。
【主なリスク例】
- 特許侵害訴訟
- 技術陳腐化
- 研究開発の失敗
- ITインフラの老朽化
- デジタルトランスフォーメーションの遅れ
市場リスク
市場リスクは、経済の変動や市場環境の変化、消費者の嗜好(しこう)変化などにより、企業の売上や利益が影響を受けるリスクです。例えば、不況により消費者の購買意欲が低下し、売上が減少することなどが挙げられます。
【主なリスク例】
- 需要の急激な変化
- 原材料価格の高騰
- 新興市場の成長鈍化
- 消費者嗜好の変化
- 代替製品の出現
700万人の働き手の中から希望のスキマバイト人材を探せるタイミーはこちら>>
業界別のリスクマネジメント事例
金融業界の事例
金融業界では、資産保護と経営の安定化を重視したリスクマネジメントが行われています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
リスクマネジメントの取り組み例 |
内容 |
リスク回避 |
高リスクな活動を避ける方針の策定 |
リスク軽減 |
分散投資やヘッジなどによるリスク影響の低減 |
リスク移転 |
保険購入などによる第三者へのリスク転嫁 |
リスク保有 |
一定のリスクを受容しつつ、緊急時対応計画の準備 |
定期的なリスク評価 |
ヒートマップやトレンド分析による脆弱(ぜいじゃく)性評価 |
包括的なリスク焦点 |
全機能領域とそれに関連するリスクへの対処 |
医療業界の事例
医療業界では、患者の安全とデータ保護を重視したリスクマネジメントが行われています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
リスクマネジメントの取り組み例 |
内容 |
患者安全システム |
医療ミス削減と患者安全向上のための臨床・管理システムの導入 |
サイバーセキュリティ対策 |
セキュアなシステムの整備、従業員教育による患者データ保護の強化 |
コンプライアンスプログラム |
法的・規制・償還要件の順守による組織の保護 |
先見的リスク管理 |
医療エコシステム全体を通したリスクの評価 |
製造業界の事例
製造業界では、生産ラインの停止や品質問題が大きなリスクとなります。こうしたリスクを回避・軽減するため、生産の安定と品質の確保を重視したリスクマネジメントが行われています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
リスクマネジメントの取り組み例 |
内容 |
GRC(ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス) |
リスクに先手を打つ包括的アプローチ |
リスク軽減計画 |
リスクの優先順位付けと、監査や保守プロトコルなどの管理策実施 |
報告・監視用デジタルツール |
リアルタイムリスク評価のためのソフトウェアやダッシュボード活用 |
リスクガバナンスフレームワーク |
方針、リスク評価フレームワーク、部門横断的な連携 |
700万人の働き手の中から希望のスキマバイト人材を探せるタイミーはこちら>>
リスクマネジメントのプロセス
1. 組織の現状確認・整備
リスクマネジメントを効果的に行うためには、まず組織の現状を把握することが重要です。
具体的には「リスクマネジメント業務を担う担当者がいるか」「リスク管理を支援するためのツールが導入されているか」などを確認しましょう。これにより、リスクマネジメントの実施体制と各メンバーの役割を明確にできます。
2. リスクアセスメント(特定・分析・評価)
リスクマネジメントを実行する体制が明確になったら、組織が直面する可能性のあるリスクを1つひとつ洗い出します。このステップでは、無視されがちなリスクや想像したくないリスクも含めて、あらゆるリスクを網羅的にリストアップすることが重要です。
続いて、リストアップされたリスクを発生確率と影響度で評価します。影響度の大小と発生頻度の多少によってリスクを分類し、各リスクの重大さを視覚化します。
リスク分析を終えたら、視覚化した情報をもとにリスクに対する優先順位を決定しましょう。発生頻度が多く影響度が大きいリスクが優先的に対応する必要があるリスクとなります。
3. リスクへの対応
リスクの優先順位をつけたら、次は具体的な対応策を考えていきます。
リスクへの対応策は1つではありませんが、代表的な対応策としては、以下6つの方法があります。
- 回避
- 損失防止
- 損失削減
- 分離・分散
- 移転
- 保有
4. モニタリング・改善
リスクマネジメントは継続的に行われる必要があります。リスク対応策の効果をモニタリングし、必要に応じて改善しましょう。また、新たに発生するリスクに対応するため、定期的なリスク評価と対応策の見直しを行うことも大切です。
よくあるリスクマネジメントの失敗例と解決方法
リスクマネジメントは企業にとって重要な取り組みですが、適切に実施されないと、かえってリスクを増大させてしまう可能性もあります。
ここでは、よくあるリスクマネジメントの失敗例と、その解決方法を紹介します。
責任者がいない
まず、1つ目は責任者がいないといったケースです。リスクマネジメントを成功させるためには、明確な責任者が必要です。責任者が不在だと、意思決定が遅れたり、担当者が不明瞭になったりして、リスクマネジメントがうまく機能しません。
このような状況を解決するためには、経営層が率先して取り組み、リスク管理責任者を明確に定めることが重要です。また、責任者がリスク管理プロセス全体を監督し、迅速に意思決定できる体制を整える必要があります。
社内の体制が整っていない
2つ目は、社内の体制が整っていないケースです。リスクマネジメントを効果的に行うためには、組織全体でリスク管理に取り組むための体制を整備する必要があります。しかし、社内の体制が整っていない場合、情報共有が不足したり、意思決定が遅れたり、リスク対応が実行されなかったりなど、さまざまな問題が発生します。
リスク管理規程やリスク管理マニュアルを作成し、リスク管理に関するルールを明確にする他、リスク管理に関する研修を実施し、全従業員の意識を高めることが重要です。
リスクが不明瞭になっている
3つ目は、リスクが不明瞭になっているケースです。どのリスクに対処すべきかが不明確だと、効果的な対策を講じられません。
こうした問題を解決するためには、リスクアセスメントを実施し、特定されたリスクの発生確率と影響度を評価することが大切です。
情報共有が足りていない
4つ目は、情報共有が足りていないケースです。リスクマネジメントは、組織全体で取り組む必要があります。情報共有が足りていないと、各部署がバラバラな対策を講じたり、重要な情報が関係者に伝わらず、適切な対応が遅れたりしてしまう可能性があります。
こうした状況を打開するには、リスクに関する情報を定期的に社内で共有し、全員がリスクの状況を把握できるようにすることが重要です。特に、リスク管理に関する定例会議や報告書の作成が効果的です。
リスクマネジメントに役立つ資格
リスクマネジメントを実施する上で必須となる資格はありませんが、リスクマネジメント関連するスキルを身に付けることで、リスクをより深く理解し、適切な対策を講じられます。
以下は、リスクマネジメントの実務で役立つ資格です。
- 情報処理安全確保支援士
- 公認リスク管理監査人(CRMA®)
- 公認情報システムリスク管理者(CRISC)
効率的にリスクマネジメントするためにおすすめのツール
RiskWatch
参考:RiskWatch
RiskWatchは、企業全体のリスクを効果的に管理するためのリスク管理ツールです。リスクの追跡や評価、可視化に優れ、直感的なダッシュボード機能が搭載されています。
このツールを活用することで、企業はセキュリティリスクを組織全体で共有し、最新技術を用いて体系的に管理できるようになります。
また、RiskWatchは無料トライアルを提供しているため、初めてリスク管理ツールを導入する企業でも気軽に試せるでしょう。
RSA ARCHER
参考:RSA ARCHER
RSA ARCHERは、GRCを支援する統合リスク管理プラットフォームです。
このツールでは、リスクの特定、評価、対応を一元管理できるため、組織全体で統一されたリスク管理プロセスを実現できます。また、カスタマイズ可能なダッシュボードとレポート機能により、リアルタイムでのリスク状況の監視が可能です。
IBM OpenPages GRC
IBM OpenPages GRCは、AI駆動型の拡張性の高いGRCツールです。このツールでは、リスクの特定から対策の継続、レポートの作成までの一連の業務を一任できるため、リスク管理プロセスの簡素化と最適化を実現できます。
また、IBM OpenPagesは高い拡張性を持ち、さまざまなクラウド環境で使用できるため、デバイスや場所に制約されない柔軟な運用が可能です。
まとめ
本記事では、リスクマネジメントの定義からその重要性や具体例、関連資格について詳しく解説しました。
リスクマネジメントの知識をしっかりと身に付け、効果的な対策を講じることで、企業の価値を守り、向上させられます。手法はさまざまですが、自社の現状に最適なリスクマネジメントを選び、実践していけるようにしましょう。
求めるスキルや条件に合った人材を募集したい企業には、スキマバイト「タイミー」の利用がおすすめです。
タイミーなら無料で求人掲載ができ、無駄なコストをかけずに人手を集めることが可能です。タイミーの掲載料金や募集できる職種について知りたい方は、「お問合せフォーム」から連絡してみてください。