試用期間中の解雇は可能?予告の要否や理由・注意点を徹底解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
本記事では、試用期間中の解雇についてをはじめ、試用期間解雇の可能性や法的根拠、適切な手続きを解説します。
解雇できる場合の理由は、能力不足や勤務態度の問題などが顕著であることです。記事を読めば、不当解雇を避けるためのポイントや実際の事例も取り上げているので、企業の立場から試用期間解雇の全体像を把握できるようになるでしょう。
目次[非表示]
- 1.試用期間中に従業員を能力不足で解雇することはできる?
- 1.1.試用期間中の解雇
- 1.2.試用期間満了後の解雇
- 1.3.本採用の拒否
- 2.そもそも試用期間とは
- 2.1.試用期間中の雇用条件について
- 2.2.試用期間中の労働条件について
- 3.試用期間中に従業員を解雇する場合の理由
- 3.1.能力不足が顕著である
- 3.2.勤務態度に問題がある
- 3.3.けがや病気で働けなくなった
- 3.4.経歴詐称などの問題が発覚した
- 4.試用期間中の解雇で不当解雇となるケース
- 4.1.①適切な指導なしの解雇
- 4.2.②一方的な判断による解雇
- 4.3.③手続き違反の解雇
- 4.4.④新卒・未経験者の能力不足による解雇
- 5.試用期間中の解雇でトラブルを防ぐために企業がすべきこと
- 5.1.試用期間の満了時までは適切な指導・教育を行う
- 5.2.原則30日前に解雇の予告・通知をする
- 5.3.即日解雇したい場合は解雇予告手当を支払う
- 5.4.必ず離職票を発行する
- 6.試用期間中の解雇手続き
- 7.試用期間中の解雇に関する実際の事例
- 7.1.解雇が認められた事例
- 7.2.解雇が認められなかった事例
- 8.試用期間中の解雇についてよくある質問
- 8.1.Q1. 試用期間中の解雇は即日可能?
- 8.2.Q2. 能力不足での解雇は失業保険の対象になる?
- 8.3.Q3. 試用期間中の解雇を避けるためのベストプラクティスは?
- 8.4.Q4. 試用期間中の従業員にも有給休暇はある?
- 8.5.Q5. 試用期間の延長は可能?その場合の注意点は?
- 9.まとめ
試用期間中に従業員を能力不足で解雇することはできる?
試用期間中の解雇は、一定の条件下で認められます。ただし、単なる能力不足だけでは不十分です。
解雇には、社会通念上相当と認められる合理的な理由が必要となります。特に新卒社員の場合、高度な能力を求めるのは難しく、適切な指導が行われたかどうかも重要です。
以下では時系列で解説します。
- 試用期間中の解雇
- 試用期間満了後の解雇
- 本採用の拒否
解雇の際の注意点とともに見ていきましょう。
試用期間中の解雇
試用期間中の解雇は慎重に判断すべき問題です。能力不足を理由とする場合、企業は適切な指導と改善の機会を提供する必要があります。日々の労務管理と従業員教育が重要です。
これらを怠ると訴訟リスクが高まります。解雇の有効性は、繰り返しの指導にもかかわらず改善が見込めない場合、解雇を避けるために他の担当業務への配属替えもできないという場合に認められますが、その判断基準は司法に委ねられます。
企業は最善を尽くした上で、なお改善が見られない状況を明確に示せるよう、慎重かつ計画的に対応してください。
試用期間満了後の解雇
試用期間中の解雇と比較すると、試用期間満了後の解雇は異なる特質を持ちます。能力不足を理由とする場合、企業側の裁量がより広く認められる傾向にあります。
これは、試用期間中に従業員の適性や能力を十分に評価する機会があったためです。
そのため、通常の解雇よりも比較的容認されやすい状況にあります。ただし、解雇の正当性を示すためには、適切な評価プロセスと明確な理由の提示が不可欠です。企業は慎重に判断し、法的リスクを最小限に抑える必要があるでしょう。
本採用の拒否
本採用の拒否は、試用期間終了時に従業員を正式に採用しないことを意味し、法的には解雇と同様に扱われます。本採用の拒否に関する重要なポイントは以下の通りです。
- 本採用の拒否は解雇と同等の扱いを受け、労働基準法に基づく一定の制限が適用
- 本採用を拒否するには、単なる能力不足だけでは不十分で、客観的に妥当と認められる理由が必要
【三菱樹脂による採用拒否事件の最高裁判決】
試用期間中の解雇(本採用拒否)は、採用時には分からなかった事実が試用期間中に明らかになり、その従業員を継続して雇用することが適当でないと客観的に判断される場合にのみ認められるとされています。
そもそも試用期間とは
試用期間は、企業が新規採用者の適性を見極める重要な期間です。この間、企業は従業員の能力、勤務態度、チームへの適合性を評価します。
ここでは、試用期間中の雇用条件と労働条件について解説します。
試用期間中の雇用条件について
試用期間中の雇用条件は、企業によって異なります。本採用時と同じ条件を適用する場合もあれば、給与や待遇に差をつけるケースなどさまざまです。
一部の企業では、試用期間中は給与を低く設定し、本採用時に正規の待遇に引き上げることもあります。
また、最低賃金を下回る給与設定は原則として認められませんが、都道府県労働局長の許可を得れば、最低賃金の2割減までは可能です。
ただし、この措置は試用期間中に労働者から離職されるリスクを高める可能性があるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
試用期間中の労働条件について
試用期間中の労働契約は「解約権留保付労働契約」として扱われ、企業側に一定の解雇権が認められます。
しかし、この権利は無制限ではありません。試用期間解雇の際も、客観的に合理性があり社会通念上相当と認められる理由が必要です。能力不足や勤務態度の問題など、解雇の理由が明確で客観的に説明できる場合でも、慎重な対応が求められます。
企業は、適切な指導や改善の機会を与えた上で判断すべきです。
試用期間中の労働条件は、原則として本採用後と同等であるべきですが、一部の条件に差を設けることも可能です。ただし、著しい差異は問題視される可能性があります。
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試用期間中に従業員を解雇する場合の理由
試用期間中に従業員を解雇する代表的な理由には、以下のものが挙げられます。
- 能力不足が顕著である
- 勤務態度に問題がある
- けがや病気で働けなくなった
- 経歴詐称などの問題が発覚した
それぞれの理由を見ていきましょう。
能力不足が顕著である
試用期間中の能力不足による解雇は慎重に判断すべきです。期待した業務能力や成果が得られない場合、解雇を検討することがありますが、安易な決定は避けてください。
未経験者や新卒者の場合、初期の能力不足は想定内であり、十分な指導と改善機会の提供が重要です。経験者でも、企業固有の業務に適応する時間が必要でしょう。
解雇を検討する際は、適切な指導の実施、能力不足の程度、客観的な評価基準の設定が不可欠といえます。
勤務態度に問題がある
試用期間中の従業員の勤務態度に問題がある場合、解雇を検討することがあります。正当な理由のない遅刻や欠席が繰り返され、指導しても改善が見られない場合は、解雇事由として認められる可能性があるでしょう。
ただし、単純に回数だけで判断するのではなく、適切な指導と改善の機会を与えることが重要です。
2週間以上の無断欠勤は、解雇予告不要と厚労省が認めています。しかし、企業側が適切な指導をせずに解雇した場合は不当解雇となるリスクがあるため、慎重に対応してください。
参考:厚生労働省「解雇予告除外認定申請について」(2ページ)
けがや病気で働けなくなった
試用期間中に従業員がけがや病気で働けなくなった場合、解雇の判断は慎重に行う必要があります。一時的な就労不能の場合、通常は休職措置を取ります。
業務上の事故による場合、療養期間とその後30日間は解雇できません。ただし、3年経過後も回復の見込みがない場合は、補償金の支払いで解雇が可能です。
復職の可能性がある限り、企業は軽作業からの段階的復帰など、可能な範囲でサポートするようにしましょう。
経歴詐称などの問題が発覚した
試用期間中に経歴詐称が発覚した場合、解雇の正当な理由となり得ます。応募時に提出した履歴書や職務経歴書の内容、保有資格に虚偽があれば、信頼関係の破綻につながります。
特に、必要な資格を偽って取得したと申告し、その資格が必須の業務に従事していた場合は重大な違反です。
このような状況では、企業は試用期間解雇を検討する可能性が高くなります。ただし、解雇の際は適切な手続きを踏む必要があり、慎重に対応してください。
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試用期間中の解雇で不当解雇となるケース
試用期間中の解雇でも、不当解雇となるケースがあります。以下の状況では、特に注意が必要です。
①適切な指導なしの解雇
従業員に問題がある場合、まず指導や注意を行うべきです。改善の機会を与えずに解雇すると、不当解雇のリスクが高まります。指導は口頭でも構いませんが、書面での通知の方が効果的といえます。後のリスク回避のために、どのような点に問題があり、どのような指導をしたのか、都度記録しておくことが大切です。
②一方的な判断による解雇
従業員の言い分を聞かずに解雇するのは危険です。問題の背景に正当な理由がある可能性も考えられるため、双方向のコミュニケーションが重要になるでしょう。従業員の言い分を聞いたということも、記録に残しておきましょう。
③手続き違反の解雇
試用期間開始後14日を経過した場合、解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。これを怠ると手続違反となりますが、最高裁の判例では、この違反だけでただちに解雇が無効になるわけではありません。
④新卒・未経験者の能力不足による解雇
新卒や未経験者の場合、ある程度の能力不足は想定内のはずです。企業側には、十分な指導と改善の機会を提供する責任があります。
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試用期間中の解雇でトラブルを防ぐために企業がすべきこと
試用期間中の解雇でトラブルを防ぐために企業がすべきこととして、以下の4つが挙げられます。
- 試用期間の満了時までは適切な指導・教育を行う
- 原則30日前に解雇の予告・通知をする
- 即日解雇したい場合は解雇予告手当を支払う
- 必ず離職票を発行する
いずれも大切なので、1つずつ見ていきましょう。
試用期間の満了時までは適切な指導・教育を行う
試用期間中は、従業員の成長と適応を支援するための適切な指導と教育が不可欠です。企業は、業務遂行に必要なスキルや知識を丁寧に教え、改善の機会を十分に提供する必要があります。
繰り返しの指導や注意にもかかわらず、顕著な進歩が見られない場合にのみ、解雇の検討が正当化されます。
この過程を通じて、従業員の潜在能力を最大限に引き出し、試用期間解雇のリスクを最小限に抑えることが可能です。
原則30日前に解雇の予告・通知をする
試用期間中に解雇を行う際は、原則として30日前に書面で予告することが重要です。口頭での突然の通告は、従業員との深刻なトラブルを招く可能性があります。
特に会社都合の場合、従業員の納得を得るのは困難です。そのため、解雇予告通知書を作成し、少なくとも30日前に交付することを推奨します。
この手続きにより、従業員に心の準備と次の就職活動の時間を与え、円滑な退職につながるでしょう。
即日解雇したい場合は解雇予告手当を支払う
試用期間中に即日解雇する場合、原則として30日分の賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
ただし、試用期間が14日以内の場合は例外です。他に解雇予告手当の支払いが不要なケースには、短期雇用者や季節労働者、大規模災害による事業継続断念時などがあります。
懲戒解雇の場合も、労働基準監督署長の認定を受ければ手当は不要です。30日前に解雇予告を行った場合にも、解雇予告手当を支払う必要はありません。
必ず離職票を発行する
試用期間中の解雇であっても、離職票の発行は原則として必要です。
雇用保険被保険者が退職した場合、試用期間の有無や退職理由にかかわらず、企業は資格喪失届と離職証明書を作成し、ハローワークに提出する義務があります。退職日の翌日から10日以内に手続きを行い、離職票を退職者に交付しなければなりません。
ただし、従業員が交付を希望しない場合などの例外があります。
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試用期間中の解雇手続き
試用期間中の解雇手続きは、入社日からの期間によって異なります。以下に手順を説明します。
①解雇理由の明確化
能力不足や勤務態度の問題など、正当な理由を明確にします。
②入社日からの期間確認
14日以内か14日以降かを確認します。
【14日以内の場合】
- 解雇予告と解雇手当は不要
- 解雇理由を説明し、即日解雇可能
【14日以降の場合】
- 原則30日前に解雇予告
- 解雇予告通知書を作成し交付
- 30日前に予告できない場合、30日分以上の平均賃金の支払い
③離職票の発行
ハローワークに資格喪失届と離職証明書を提出し、離職票を発行します。
④最終給与の精算
未払い賃金の支払いや有給休暇の買い取りなど、精算します。
参考:E-GOV法令検索「労働基準法」(第20条・第21条)
試用期間中の解雇に関する実際の事例
試用期間中の解雇に関する実際の事例を、解雇が認められた事例と解雇が認められなかった事例に分けて解説します。
解雇が認められた事例
「東京電力事件」(1998年9月22日東京地方裁判所判決)は、慢性腎不全で入退院を繰り返していた嘱託社員が、出社日数が極端に少なくなったため解雇された事案です。
会社は、社員に対して数回の警告と指導を行い、最終的に「心身虚弱のため業務に耐えられない」として解雇を決定しました。
裁判所は、会社の解雇が就業規則に基づき、正当な理由と適切な手続きを踏んで行われたと判断し、解雇を有効と認めました。適切な手順と理由があれば、解雇が認められた事例です。
解雇が認められなかった事例
「ニュース証券事件」(2009年9月15日東京高等裁判所判決)では、証券会社に試用期間として6カ月間雇用された課長が、試用期間満了前に解雇されました。
課長は解雇の無効を主張し、地位確認や未払い給与の支払いを求めたものです。
裁判所の判断のポイントは以下の通りです。
- 3カ月間の成績だけで従業員としての資質を有しないと認められない
- 解雇には客観的・合理的理由がなく、社会通念上認められない
この事例では、解雇は合理的理由を欠き無効と判断され、地位確認請求は棄却されました。
試用期間中の解雇についてよくある質問
Q1. 試用期間中の解雇は即日可能?
試用期間中の解雇は、入社後14日以内であれば即日可能です。
ただし、14日を超えた場合は原則として30日前の予告か、30日分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要となります。
能力不足や勤務態度の問題など、解雇理由が明確で客観的に説明できる場合でも、安易な即日解雇は避けて慎重に対応しましょう。
Q2. 能力不足での解雇は失業保険の対象になる?
試用期間中の能力不足による解雇でも、原則として失業保険の対象となります。ただし、以下の点に注意が必要です。
- 正当な理由による解雇であること
- 会社都合の解雇として扱われること(自己都合退職は給付制限期間などあり)
- 雇用保険の加入期間が離職日以前に1年6カ月以上あること
能力不足が客観的に証明され、適切な指導や改善の機会が与えられた上での解雇であれば、失業保険を受給できる可能性が高くなります。
ただし、詳細な状況によって判断が異なる場合があるため、ハローワークに相談してください
Q3. 試用期間中の解雇を避けるためのベストプラクティスは?
試用期間中の解雇を避けるベストプラクティスは、以下の通りです。
- 明確な評価基準を設定し、従業員と共有する
- 定期的なフィードバックと面談を実施し、改善点を具体的に伝える
- 適切な指導と教育の機会を提供し、能力向上を支援する
- 問題が発生した場合、早期に対応し、改善の機会を与える
- 客観的な評価記録を保管し、公平に判断する
- 試用期間満了まで十分な時間を与え、慎重に判断する
これらの取り組みにより、不当解雇のリスクを軽減し、従業員の成長を促せます。
Q4. 試用期間中の従業員にも有給休暇はある?
試用期間中の従業員にも、一定の条件を満たせば有給休暇が付与されます。
労働基準法では、雇入れの日から6カ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に対して、最低10日の年次有給休暇を与えることが定められています。
有給休暇の権利が発生する条件は、試用期間中であっても変わりありません。ただし、試用期間が6カ月未満の場合は、本採用後に条件を満たした時点で付与されることになります。
Q5. 試用期間の延長は可能?その場合の注意点は?
試用期間の延長は可能ですが、いくつかの注意点があります。
まず、就業規則や雇用契約書に延長の可能性が明記されていることが重要です。延長する際は、合理的な理由が必要で、その理由を従業員に明確に説明しなければなりません。
延長期間は常識的な範囲内にとどめ、過度に長期化しないよう注意が必要です。
また、延長を決定した場合は「試用期間延長通知書」を作成し、延長期間や理由を明記して従業員に交付しましょう。
まとめ
試用期間中の解雇は、一定の条件下で可能です。能力不足や勤務態度の問題、経歴詐称などが理由となり得ますが、不当解雇にならないよう注意が必要です。
企業は適切な指導・教育を行い、原則30日前に予告するなど、適切な手続きを踏まなければなりません。
解雇の際は、理由を明確に説明し、離職票を発行してください。また、即日解雇の場合は予告手当の支払いが必要です。試用期間中の従業員にも労働基準法が適用されるため、有給休暇の付与や労働条件の明示など、法令順守が求められます。
適切に対応することでトラブルを防ぎ、円滑な人材管理に努めましょう。
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