週30時間を超えたり超えなかったりする場合の社会保険はどうなる?
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
社会保険とは、病気やけがなどによって働けなくなるリスクに備えるための公的保険の総称です。社会保険は正社員だけでなく、一定の要件を満たす場合はパートやアルバイトなどの短時間労働者も加入しなければなりません。
2016年10月から段階的に社会保険の適用範囲が拡大され、これまで未加入だった人も、加入対象となる場合があります。
当記事では、社会保険の適用範囲の考え方や、社会保険料の計算方法などを解説します。
目次[非表示]
- 1.社会保険は週30時間以上働く従業員に適用される
- 1.1.社会保険の加入要件
- 1.2.社会保険の対象外となるケース
- 2.2024年に拡大された社会保険の適用範囲について
- 3.週30時間を超えたり超えなかったりする場合の考え方
- 4.週30時間を超えている従業員を社会保険に加入させないとどうなる?
- 5.週30時間を超えたり超えなかったりする従業員の社会保険料の計算方法
- 6.週30時間を超えたり超えなかったりする従業員を雇う企業がするべき対応
- 6.1.労働時間の適切な管理と記録
- 6.2.社会保険の加入対象となる従業員がいるかの確認
- 6.3.社内への周知と従業員の意思確認
- 6.4.社会保険加入の手続き
- 7.まとめ
社会保険は週30時間以上働く従業員に適用される
社会保険は、パートやアルバイトなどの雇用形態でも、「1日または1週間の労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上」であれば、加入させる必要があります。
例えば、週休2日制で1日あたりの所定労働時間が8時間の正社員の場合、週の労働時間は40時間です。その4分の3以上となると、週30時間以上が目安となります。
ただし、週の労働時間が30時間を切る場合でも、一定の条件を満たす場合は加入対象となることがあるため注意が必要です。以下の2点について詳しく解説します。
- 社会保険の加入要件
- 社会保険の対象外となるケース
社会保険の加入要件
社会保険は、正社員以外でも一定の条件を満たす場合は加入しなければなりません。「1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上」の労働者は、報酬額や雇用形態を問わず社会保険に加入させる義務があります。
また、所定労働時間および1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3未満でも、以下の全てに該当する場合は、加入が必要です。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月の賃金が8.8万円以上
- 勤務期間が2カ月を超える予定である
- 学生ではない(休学中や夜間の学校へ通っている学生は加入対象)
- 特定適用事業所に勤務している
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大 対象となる事業所・従業員について」
アルバイトの社会保険加入条件については、「アルバイトの社会保険加入義務の条件や注意点とは?」でまとめているため、本記事と併せて参考にしてください。
社会保険の対象外となるケース
正社員以外でも、一定の条件を満たす場合は社会保険の加入義務があることを解説しました。しかし、以下に該当する場合は社会保険の対象外となります。
- 日々雇い入れられる者で、1カ月を超えない範囲で使用される者
- 2カ月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて使用されるに至った場合はその日から適用される)
- 所在地が一定でない事業所に使用される者
- 季節的業務(4カ月以内)に使用される者
- 臨時的事業(博覧会など)に使用され、6カ月を超えない者
なお、「所在地が一定でない」とは、演芸の興行に代表されるように、さまざまな場所を巡回するため所在地が定まらない事業所のことを指します。
参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
2024年に拡大された社会保険の適用範囲について
労働人口の減少が進む中、現在の社会保険制度を維持するためには、より多くの人が社会保険に加入する必要があります。
労働者にとっても、社会保険への加入は将来受け取る年金額が増えたり、万が一のときの生活が保障されたりといったメリットがあります。
2022年9月以前の社会保険制度では、パートやアルバイトなどの短時間労働者の加入が義務づけられていたのは、従業員数が501人以上の企業でした。
しかし、2022年10月の法改正で従業員数が101人以上の企業が加入対象となり、2024年10月からは従業員が51人以上の企業が対象となります。
現在家族の扶養に入っている人でも、法改正後の加入条件に該当すると家族の扶養から外れて社会保険に加入し、保険料を支払わなければなりません。
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週30時間を超えたり超えなかったりする場合の考え方
労働時間の考え方については、以下の3つを理解しておく必要があります。
- 週30時間の基準は労働契約上の所定労働時間
- 残業などでたまたま30時間を超えても加入義務は生じない
- 継続的に30時間を超える場合の対応
それぞれについて詳しく解説します。
週30時間の基準は労働契約上の所定労働時間
労働時間の判断は、雇用契約書に記載された所定労働時間が基準となります。そのため、週によって労働時間に差があり、30時間を超えて働いたり働かなかったりといった場合でも、すぐに社会保険の加入や脱退の義務が生じることはありません。
一度社会保険の適用となったら、同じ働き方をする限りはその後も継続して被保険者であり続けます。
しかし、雇用契約は双方の合意により変更できます。雇用契約を変更し、週の労働時間を減らすことによって、社会保険へ加入しない選択が可能です。
社会保険の加入の要否は「正社員」「パート」「アルバイト」などの雇用形態で区別するのではなく、雇用契約書上の所定労働時間で判断する点に注意が必要です。
残業などでたまたま30時間を超えても加入義務は生じない
先に述べた通り、労働時間の判断は、雇用契約書上の所定労働時間が基準となります。そのため、残業などでたまたま週30時間を超えて働いたとしても、ただちに加入義務は発生しません。
反対に、すでに被保険者となっている労働者の労働時間が業務の都合などで一時的に週30時間を下回ったとしても、すぐに資格喪失しない点を理解しておきましょう。
ただし、詳細は後述しますが、継続的に労働時間が週30時間を超える場合は加入対象となる場合があるため、注意が必要です。社会保険は、要件を満たせば本人が希望しなくても加入しなければなりません。加入の要否の判断は、特定の月だけを見て判断するのではなく、継続性がポイントとなります。
継続的に30時間を超える場合の対応
前項で説明した通り、業務の都合などにより、一時的に週30時間以上働くことがあっても、ただちに社会保険に加入する必要はありません。
しかし、今後も継続して週30時間以上の勤務が続くと予想される場合は、加入義務が発生します。
労働者本人が社会保険への加入を希望しない場合は、週の労働時間を30時間未満になるように調整する必要があるでしょう。
なお、社会保険の加入を回避する目的で雇用契約書の労働時間を調整しても、実労働時間が長ければ、契約期間の途中であっても社会保険への加入義務が発生するため、注意が必要です。
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週30時間を超えている従業員を社会保険に加入させないとどうなる?
事業主は、社会保険の加入要件を満たした労働者を社会保険に加入させなければなりません。加入条件を満たしているにもかかわらず、故意に社会保険に加入させない事実が発覚した場合、事業主と労働者双方にペナルティーが与えられる恐れがあるでしょう。
事業主に対しては、健康保険法第208条に基づき、最大で6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
実際に懲役や罰金が科されるケースは、虚偽の申告をしたり、検査や指導に従わなかったりといった悪質な場合がほとんどです。
参考:e-Gov法令検索「健康保険法」
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週30時間を超えたり超えなかったりする従業員の社会保険料の計算方法
社会保険料は、それぞれ計算方法が異なります。保険料率の改訂が行われる場合もあるため、注意しなくてはなりません。以下の社会保険料の計算方法を解説します。
- 厚生年金保険料
- 健康保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
厚生年金保険料
給与に対する厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率18.3%を乗じて計算します。例えば、標準報酬月額が12万円の場合、12万円×18.3%=2万1,960円です。
厚生年金保険料は事業主と労働者で折半するため、2万1,960÷2=1万0,980円がそれぞれの負担額となります。
年金制度については、2004年の年金制度改正において、給付と負担の両面にわたる見直しが実施され、新たな年金財政のフレームワークが出来上がりました。
その中で、厚生年金保険料率は段階的に引き上げられることが決定し、2004年10月から毎年0.354%ずつ引き上げられてきました。この引き上げは2017年9月に終了したため、保険料率は今後も18.3%の見込みです。
健康保険料
健康保険料は、厚生年金保険料と同様に、標準報酬月額に健康保険料率を乗じて計算します。健康保険料率は、協会けんぽの場合は都道府県ごと、健康保険組合の場合は規約ごとに異なります。
なお、協会けんぽの保険料率は、都道府県ごとの年齢構成や所得水準などの差を考慮した上で、各都道府県の加入者1人あたりの医療費に基づいて計算されています。保険料率は毎年改訂されるため、確認が必要です。
例えば、東京都の協会けんぽに加入している標準報酬月額が12万円の人の場合、令和6年度の保険料率は10.0%なので、保険料は12万円×10.0%=1万2,000円です。
保険料は事業主と労働者で折半するため、1万2,000÷2=6,000円がそれぞれの負担額となります。
参考:全国健康保険協会「令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」
介護保険料
介護保険料も、標準報酬月額に介護保険料率を乗じて計算します。介護保険の被保険者は、40歳から64歳の従業員です。
従業員が40歳になるタイミングを見落とさないようにしましょう。協会けんぽの場合、2024度の保険料率は1.6%です(全国一律)。
例えば、協会けんぽに加入している標準報酬月額が12万円の人の場合、12万円×1.60%=1,920円が介護保険料となります。
介護保険料は事業主と労働者で折半するため、1,960÷2=960円がそれぞれの負担額です。
参考:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」
雇用保険料
広義の社会保険には、労災保険と雇用保険の労働保険も含まれます。労働保険の保険料のうち、労災保険料は事業主が全て負担しますが、雇用保険は事業主と労働者で折半します。
雇用保険の加入条件は、「31日以上、引き続き雇用されることが見込まれる従業員」であることと、「1週間の所定労働時間が20時間以上である」ことです。
事業主は、条件を満たす従業員が1人でもいれば、雇用保険に加入しなければなりません。
雇用保険料は、給与に雇用保険料率を乗じて計算します。保険料率は、事業の種類によって異なり、毎年見直しが行われるため、確認が必要です。
なお、先に解説した厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料は標準報酬月額に料率を乗じて計算するため、著しい差異が生じなければ1年間を通じて保険料は同額となります。
それに対し雇用保険料は、残業手当や深夜手当の有無によって給与額が変動するので、毎月保険料の計算が必要です。
参考:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」
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週30時間を超えたり超えなかったりする従業員を雇う企業がするべき対応
従業員を雇う企業がするべき対応は、以下の4つです。
- 労働時間の適切な管理と記録
- 社会保険の加入対象となる従業員がいるかの確認
- 社内への周知と従業員の意思確認
- 社会保険加入の手続き
それぞれについて詳しく解説します。
労働時間の適切な管理と記録
従業員が社会保険の加入要件に該当するか否か把握するためには、事業主側が従業員の労働時間の適切な管理と記録をする必要があります。
労働時間の管理については、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に沿って実施します。
ガイドラインの中で、従業員の労働時間の管理は「客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」とされているため、企業によっては管理体制の整備が求められるでしょう。
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
社会保険の加入対象となる従業員がいるかの確認
社会保険の加入対象者を正確に把握することが大切です。短時間労働者を含めた従業員の賃金や勤務時間を確認し、社会保険の加入要件を満たすかどうか一人ひとり確認します。
パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、一定の条件を満たす場合は加入義務が生じるため、雇用形態にかかわらずチェックしてください。
新たに条件を満たす従業員の存在を把握できたら、速やかに加入手続きを進めるとともに、保険料を経費として計上します。
社内への周知と従業員の意思確認
これまで配偶者の扶養内で働いてきた従業員にとって、社会保険への加入は大きな変化です。事業主としては、社会保険に加入すると具体的にどのような点が変化し、どのようなメリットとデメリットが生じるのか分かりやすく説明する責任があります。その上で、労働者の意思を確認しなければなりません。
扶養内で働き続けたいといった理由で加入を望まない労働者がいる場合は、労使で話し合いの上、労働時間や勤務日数を調整し、週30時間を超えないような対応が事業主側に求められます。
社会保険加入の手続き
社会保険の加入要件を満たす従業員を把握し、本人から加入の意思が得られたら、社会保険の加入手続きを進めます。
健康保険および厚生年金保険に加入するためには、事業主が年金事務所に対して従業員の被保険者資格取得届を提出する必要があります。
提出期限は加入条件の発生から5日以内のため、速やかに手続きを進めてください。提出方法は、郵送・持参・電子申請などから選択が可能です。
まとめ
本記事では、週の労働時間が30時間を超えたり超えなかったりする場合の社会保険の取扱いについて詳しく解説しました。
2024年の社会保険の適用範囲拡大に伴い、新たに社会保険に加入しなければならない従業員が発生する可能性があります。万が一加入漏れが発生してしまうと、罰則が科されることがあるため、注意しなくてはなりません。
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