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譴責(けんせき)とは?戒告との違いや手続きの流れなど詳しく解説

こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。


もし自社の従業員が重大なトラブルを起こしたり、就業規則に違反するようなことを繰り返したりする場合、会社側は適切な手順を踏まえて「懲戒処分」を科すことがあります。

懲戒処分の内容は7種類あり、処罰の行動によって重さが異なります。今回は7種類の詳しい処分内容や、判断基準、注意点などを紹介します。特に経営者や人事関係者は最後まで読んで、今後の対応に生かしてください。

目次[非表示]

  1. 1.譴責(けんせき)とは
    1. 1.1.譴責と戒告(かいこく)の違い
    2. 1.2.譴責以外の懲戒処分
  2. 2.譴責処分の対象となる行動例
  3. 3.従業員に譴責処分を科す場合の流れ
    1. 3.1.1. 事実確認を行い譴責処分の対象となるか判断する
    2. 3.2.2. 本人に弁明の機会を与える
    3. 3.3.3. 通知書を作成・交付する
      1. 3.3.1.譴責処分の通知書テンプレート
    4. 3.4.4. 始末書を提出してもらう
  4. 4.従業員に譴責処分を科す際の注意点
    1. 4.1.客観的合理性と社会通念上の相当性を確認する
    2. 4.2.正当な流れで手続きを進める
    3. 4.3.公表の際にはプライバシーに配慮する
  5. 5.譴責処分を避けるための予防策
    1. 5.1.順守すべきルールの明確化
    2. 5.2.コミュニケーションの強化
  6. 6.まとめ

譴責(けんせき)とは

譴責とは、さまざまな種類がある懲戒処分の1つです。懲戒処分は、譴責の他にも戒告(かいこく)・減給・出勤停止・降格・諭旨(ゆし)解雇・懲戒解雇などが挙げられます。

譴責はその中でも比較的軽いといわれている処分内容で、会社規定で定められている就業規則を破った際に従業員に下されるものです。始末書の提出を求められたり、文書によって厳重注意されたりします。

また、譴責を受けた従業員は、昇給や昇格の際の評価にも影響が出てしまいます(会社の賃金規程で、勤勉手当等が支給対象外とされることも多くあります。)。比較的軽い処分とはいえ、会社からの評価・イメージダウンは防げないため、「就労規則で定められていることを知らずに破ってしまった」ということがないよう会社側はしっかり周知することが重要です。

譴責と戒告(かいこく)の違い

譴責と同じような比較的軽い処分内容の1つに、戒告(かいこく)があります。戒告とは譴責と同様、もしくは譴責よりもさらに軽い処分内容として位置づけされます。大きな差があるわけではなく、「譴責・戒告」と、ひとまとめにしている会社もあれば、譴責よりも戒告を最も軽い処分として設定している会社もあります。また、譴責に処された場合、就業規則によって、次回に懲戒処分となる行為を行った場合には、より重い処分がなされることが明記してある企業も一定数あります。

内容としては、基本的に口頭での厳重注意や文書での厳重注意がメインです。それぞれ分けている場合、始末書を提出するまでもないケースが多いでしょう。

しかし軽い処分とはいえ、戒告に関しても従業員の評価には影響が出てしまいます。懲戒処分であることには変わりないので、再発を防止するために会社側はきちんと教育・指導する必要があります。

譴責以外の懲戒処分

譴責以外の懲戒処分として、「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨(ゆし)解雇」・「懲戒解雇」などがあります。

減給はその名の通り給料を減額する処分ですが、減給の限度額が存在します。労働基準法第91条によると、平均賃金の1日分の半額を超えないことと、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはいけないと記されています。

出勤停止はしばらくの間自宅謹慎を命じるもので、降格は現状の役職をはく奪されたり、等級を下げたりする処分です。

また諭旨解雇とは、企業から解雇処分が告げられ従業員が自ら退職届を提出する解雇のことですが、懲戒解雇は企業から解雇予告なしで即時解雇できます。諭旨解雇であれば退職金を受け取れますが、懲戒解雇の場合、そうした受け取りができないことが多くなるでしょう。

懲戒処分について詳しく知りたい方は「懲戒処分とは?種類や会社側で必要な手続きなど分かりやすく解説」の記事も併せてチェックしてみてください。

参考:厚生労働省「労働基準法に定められているその他の規定


譴責処分の対象となる行動例

譴責処分となる行動例は、以下の通りです。

  • 正当な理由のない無断欠勤や遅刻などの勤務態度不良
  • 業務上の過失や度重なるミス
  • 軽度なハラスメント行為(セクシャルハラスメント・パワーハラスメント・モラルハラスメントなど)
  • 社内の風紀を乱すような行為
  • 身だしなみを整えるなどの服務規程違反
  • 就業規則違反
  • 私生活における違法行為

就業規則によって譴責処分の対象になるかどうかは異なりますが、上記のような行為が多発している場合や意図的に行われている場合などは、厳重注意をした上で、今後の対策について始末書にまとめて提出させている会社が少なくありません。

また、「会社の備品を壊した」や、「取引先に損害を与えるミスを起こした」といった業務上の過失やミスに関しても、軽微な内容であれば譴責処分の対象となるでしょう。

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従業員に譴責処分を科す場合の流れ

もし会社が従業員に対して譴責処分を下したいと思った場合、どのような流れで進めていけばよいでしょうか。今回は、事実確認を行い、対象になるか確認するところから始末書の提出までの流れについて詳しく解説します。

1. 事実確認を行い譴責処分の対象となるか判断する

まずは、対象となる従業員や事情を知っていると思われる関係者に今回の事由について話を聞きましょう。

例えばハラスメントなどが起きている場合、本人以外から情報を仕入れていることもあります。仕事をサボっているというような場合には、具体的に怠業を目撃した従業員から話を聞いたりしますし、社外での問題行動であれば問題行動のクレームを入れてきた人から話を聞いたり、業務マニュアルと違った業務フローで仕事をして客先に迷惑を掛けたりした場合には客先から話を聞いたり、場合によっては防犯カメラや写真などの証拠を集めます。必ずどうしてそのような事態が起きているのか、どういった内容なのか、正当な理由はあるのか、といった観点で確認していきます。

同時にハラスメントを受けている従業員からも事情を確認し、必ず双方の言い分をそろえておくべきです。どちらか一方の話を重視したり、情報が欠けていたりすると事実と異なる認識となってしまい、正確な処分ができなくなります。

他にも、欠勤や遅刻を繰り返す従業員には、欠勤や遅刻の都度正当な理由の有無を確認するなど、主観を入れずに事実確認をしていくことが重要です。

2. 本人に弁明の機会を与える

次に、本人からの弁明を聞きましょう。どのような事象であっても、正当な理由や複雑な背景が存在する可能性もあります。事実をベースに、どのような理由があってトラブルに発展してしまったのか聞かなくてはなりません。

弁明内容は必ず調書に残しておき、それを元に社内で譴責処分が妥当な処分内容なのか検討します。

もし不当な処分だと従業員から指摘された場合に備えて、聞き取り調査以外にも物的証拠を抑えておきましょう。例えばハラスメントの場合、「言った」「言わない」といった論争になると証明しにくくなります。現場にいた周りの従業員から話を聞いたり、録音やメール文書などを集めておいたり、誰が見ても納得するものを用意しておくことが重要です。

3. 通知書を作成・交付する

譴責処分を下すことが決まったら、通知書を作成しましょう。通知書には譴責処分の詳しい内容となぜ処分を下すのかという理由を明記します。これまで行った事実確認や証拠についても文書内に加えて、情報に過不足がないよう気をつけてください。

作成した通知書は本人に交付し、本人は文書内で詳しい処分内容を把握することになります。

譴責処分そのものは軽い処分ではありますが、再発防止のためにもしっかりと通知し、反省・改善してもらうものです。文書による交付とともに、上司からは口頭でフォローを入れておくとよいでしょう。

具体的にどういった文面で通知書をつくればよいのかについて、テンプレートとともに紹介します。

譴責処分の通知書テンプレート

譴責処分の通知書に記載する項目は、以下の通りです。

  • 処分対象の従業員氏名
  • 会社名および代表者名(もしくは人事部長名)
  • 処分日
  • 譴責処分であることの通知と内容
  • 譴責処分の理由
  • 就業規定上における根拠となる条文
  • 始末書の提出有無や方法、期限など

誰に向けて、どのような処分内容なのかを明記しましょう。また、「業務上の過失を指摘する」「業務における能力不足を指摘する」「パワーハラスメントについて注意する」など、処分内容によって記載するべき項目も若干異なります。

4. 始末書を提出してもらう

始末書を提出するよう要求している場合は、いつまでにどのような方法で提出するのか分かりやすく通知書に記載しておきます。

<始末書の内容>

  • 今回の事象について経緯の説明
  • 発生した理由や背景
  • トラブルにおける問題点、改善点の提示
  • 今後の具体的な対策

始末書は、上記の内容について従業員に自分で考えて書いてもらいます。上記の項目について教示しても構いませんが、具体的な内容を​​、会社側が指示することは、指導の意味がなくなりますので、行うべきではないでしょう。

万が一、始末書の提出を拒否したり、締切期限までに提出しなかったりした場合、追加の処分材料にすることもできるでしょう。

また、反省の余地が見られない文書を提出してきた場合、昇給や昇格などの評価にも大きく影響することを従業員に理解してもらう必要があります。

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従業員に譴責処分を科す際の注意点

従業員に譴責処分を下す場合、会社側は次の3つの点に注意してください。

  • 客観的合理性と社会通念上の相当性を確認する
  • 正当な流れで手続きを進める
  • 公表の際にはプライバシーに配慮する

客観的合理性と社会通念上の相当性を確認する

譴責処分に限ったことではありませんが、懲戒処分を下す際は必ず客観的な合理性と社会通念上の相当性があることが重要です。労働契約法15条には、上記を欠いている場合処分は無効になるとも明記されています。

つまり「従業員のこれまでの行いを踏まえて合理的な判断になっているか」という点や、「前に就業規則に記載されていない内容を指摘していないか」といった社会通念上の相当性を加味した内容になっているか、注意深くチェックする必要があるということです。

懲戒処分は会社が持つ正当な権利ですが、非行と処分のバランスが取れない処分をしたり、嫌がらせ目的のように濫用してはいけません。実際に過去の事例として「ダイハツ工業事件(大阪高裁昭和55年12月24日判決)」において懲戒処分は無効であると判断された事例や、就業規則の記載不備を指摘する「フジ興産事件」などの判例があります。

参考:e-Gov法令検索「労働契約法
参考:厚生労働省「⑱ 懲戒解雇の有効性
参考:全国労働基準関係団体連合会「ダイハツ工業事件
参考:全国労働基準関係団体連合会「フジ興産事件

正当な流れで手続きを進める

処分内容を決めて、執行するまでには会社が決めた正当な流れに沿って手続きを進める必要があります。事象が発生した際に、上司の独断で始末書を書かせたり、勤務停止処分を下したりといったことをしてはなりません。

今回解説したように、まずは事実確認をし、多くの人から意見を集め、正当な判断を下す必要があります。もし正当なステップを踏まずになんらかの処分を行った場合、不当な懲戒処分とみなされて「無効」になってしまうこともあるでしょう。

従業員に、起きてしまった事象を受け止めて、再発につながらないよう反省・改善してもらうためにも、正当な手続きを経て進めることが重要です。

公表の際にはプライバシーに配慮する

懲戒処分の内容を社内で公表する場合、個人のプライバシーや名誉保護にも目を向けてください。正当な処分内容であることはもちろんですが、処分に至った内容や理由まで公表する必要はありません。

例えばハラスメントにおいて譴責処分を下す場合、対象者の名前が公表されないように努めたり、具体的な内容が明るみに出ないようにしたりといった配慮が求められます。処分対象の従業員にとって、社会的な信頼を大きく損ね、信用低下につながるため、慎重に情報を扱う必要があるのです。

改善を求めて処分を下したのに「処分後に会社に居づらくなってしまい、思わぬ形で退職してしまった」ということもあります。従業員のプライバシーを守った上で適切な形で公表することが重要です。

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譴責処分を避けるための予防策

会社としても、譴責処分を従業員に科すのは避けたいところではないでしょうか。そこで譴責を避けるために日頃から心がけてもらいたい予防策について2点紹介します。

  • 順守すべきルールの明確化
  • コミュニケーションの強化

順守すべきルールの明確化

まずは、会社側から従業員に対して求めるルールをしっかり明文化しておきましょう。ルールがあいまいなまま、上司によって言うことが違ったり、状況によってルールが変わったりしてしまうと従業員からの信頼を失ってしまいます。

トラブルが発生した時にどのような対処を行うべきか、統一化されたルールを就業規則や従業員が確認する掲示板等に明記しておき、誰もが共通の認識を持てる状態を目指してください。

また、譴責をはじめとする処分が下されるケースについても、「どういった場合にどういった処分が科されるのか」を分かりやすく表記しておきます。例えば「役員は許されるが、メンバーの社員は同じことをしても許されない」といった不平等があってもいけません。

入社のタイミングだけではなく、定期的に機会を設けて社員全員に周知することが、譴責処分を増やさないための対策となるでしょう。

コミュニケーションの強化

次に、社内コミュニケーションを強化することも重要です。普段からオープンなコミュニケーションを意識することで風通しの良い職場づくりにもなり、問題が発生する前に見つけられたり、適切な解決方法をアドバイスし合えたりします。

例えば遅刻が多発する前に、改善策を一緒に考えて実行するなど、処分に至る前に対策ができれば、快適な職場がつくりやすくなります。

業務態度についての評価面談や、フィードバック・相談の場を設けることで、上司も部下の状況を正確に把握でき、部下も上司に自分の状況を理解してもらえていると安心してもらいやすくなるでしょう。

社内コミュニケーションの強化は、譴責処分を増やさないだけではなく、社内活性化や定着率向上など多くのメリットをもたらす取り組みです。

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まとめ

本記事では、懲戒処分の1つである「譴責処分」の詳しい内容や手続きの流れについて紹介しました。比較的軽い処分内容とはいえ、従業員の評価に関わる重要な処分です。トラブルに発展しないように正確に理解した上で、予防に努めましょう。

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監修:社労士 涌井好文
監修:社労士 涌井好文
涌井社会保険労務士事務所 社労士 涌井好文|平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録し、企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動。退職時におけるトラブル相談など、労働者からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めています。近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っています。

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