令和6年|標準報酬月額とは?調べ方・計算方法など分かりやすく解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
社会保険料や年金保険料の計算基準となる「標準報酬月額」は、従業員の給与を基に算出され、保険料や将来の年金額に影響を与えます。本記事では、標準報酬月額の仕組みや、対象となる報酬項目について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.標準報酬月額とは
- 1.1.標準報酬月額の対象となる報酬
- 1.2.標準報酬月額の対象とならない報酬
- 2.標準報酬月額が決定・改定するタイミングと手続き方法
- 2.1.定時決定|毎年7月ごろ
- 2.1.1.定時決定の際の手続き方法
- 2.2.随時改定|給料が変わったとき
- 2.2.1.随時改定の際の手続き方法
- 2.3.資格取得時|新しい従業員が入社したとき
- 2.4.資格取得時の際の手続き方法
- 2.5.育児休業等終了時|産前産後や育休が終わったとき
- 2.5.1.育児休業等終了時の際の手続き方法
- 3.標準報酬月額の調べ方
- 3.1.給与明細から逆算する
- 3.2.計算ツールを使う
- 4.標準報酬月額の計算方法
- 5.標準報酬月額に関するよくある質問
- 6.まとめ
標準報酬月額とは
標準報酬月額は、社会保険料や年金保険料の計算の際に計算の基準とする月額報酬のことです。個人の給与や各種手当を含む月々の報酬額に基づいて決定され、区切りのよい金額の幅で分割された段階に分けられます。
標準報酬月額は、健康保険や厚生年金保険の支給額の決定に重要な役割を果たし、保険料や将来受け取る年金額にも影響します。
標準報酬月額の決定のタイミングは、基本的には年に一度です。なお、報酬が大きく変動した場合には随時見直されます。例えば、昇給やボーナス支給などで報酬が変更になった場合には、同時に保険料の調整も実施します。
保険料は、事業主と従業員が折半して負担しているので、標準報酬は従業員にとっても企業にとっても影響があります。
標準報酬月額の対象となる報酬
標準報酬月額の対象となる報酬は広範囲です。金銭で支給されるものだけでなく、現物で支給されるものも報酬に含まれます。
具体的には、以下のような項目があります。
- 基本給(月給・日給など)
- 残業手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 役職手当
- 能率給
- 特別勤務手当
- 勤務地手当
- 家族手当
- 扶養手当
- 休職手当
- 単身赴任手当
- 継続支給される見舞金
- 年4回以上のボーナス(賞与)
- 通勤定期・回数券
- 食事
- 社宅・寮
- 業務に直接関係ない服
- 自社製品
- その他、定期的に支給される報酬や物品
一般的に、毎月支払いが発生する項目については「報酬」となります。なお賞与については、年4回以上であれば、報酬とみなされます。年3回以下の場合は標準賞与額の対象です。
標準報酬月額の対象とならない報酬
一般的に月ごとに受け取らず、臨時収入とみなされる手当は報酬には該当しません。
- 大入袋
- お年玉
- 病気見舞金
- 災害見舞金
- 退職手当
- 出張旅費
- 交際費
- 慶弔費
- 傷病手当金
- 年3回以下のボーナス(賞与)
- 労災保険の休業補償
- ユニホーム、作業着(業務に必要なもの)
- 見舞品
- 祝い金
- 食事(本人負担額が厚生労働大臣の定める価額から算定した額の3分の2以上の場合)
- その他、臨時の収入とみなされるもの
なお、賞与に対しては別途、賞与支払届に基づく社会保険料の算定が行われます。
標準報酬月額が決定・改定するタイミングと手続き方法
標準報酬月額が決定するタイミングは、大きく「定時決定」と「随時改定」があります。また、資格を取得したときや育児休業で復帰した場合にも標準報酬額の決定が必要です。それぞれの条件に分けて、タイミングと手続き方法を紹介します。
定時決定|毎年7月ごろ
定時決定は、勤務を継続している人の標準報酬月額を毎年見直すために行われる手続きです。毎年1回、7月1日現在で事業所に在籍している被保険者の4〜6月分の平均報酬額を計算し、その年の標準報酬月額を決定します。定時決定された標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年8月まで標準報酬月額として、適用されます。
ただし、以下の3つのどれかに当てはまれば、算定基礎届の提出が不要です。
①6月1日以降に資格取得した方
②7月改定の報酬月額変更届を提出する方
③8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方
定時決定の際の手続き方法
事業主は、毎年7月10日までに雇用している全被保険者について「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届/厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎届」を、管轄の年金事務所か事務センターへ提出します。なお、現在はインターネットを通じた電子申請が推奨されています。
ただし、以下の3つのどれかに当てはまれば、算定基礎届の提出が不要です。
①6月1日以降に資格取得した方
②7月改定の報酬月額変更届を提出する方
③8月または 9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方
随時改定|給料が変わったとき
定時決定で決定した標準報酬月額は、原則その年の9月から翌年の8月まで1年間適用されます。この間に、基本給や毎月必ず支払われる手当などが昇給・減給で大きく変動した場合には、随時改定が行われます。これは、報酬が実態とかけ離れないようにするための措置です。
以下の3つの条件を満たした場合に、随時改定が必要になります。
給与が上がるか下がるかして固定的賃金の変動があった
変動月から3ヵ月間の平均報酬から算出した標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額に2等級以上の差が発生している
変動月からの3ヵ月間について、支払い基礎日数(給与計算の対象となる日数)が全て17日以上ある
※特定適用事業所に雇用される1週間の所定労働時間または1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者の場合は、3カ月ともに支払基礎日数が11日以上であれば、随時改定の対象
昇給や減給の他、給与体系が変更されたり手当が支給された場合や日給制が月給制に変わった場合は、随時改定の必要があるか確認する必要があります。
また、以下の場合は随時改定の対象になりません。
休職による休職給を受けている場合
基本給が上がっても残業が減ったり住宅手当が減っても引っ越しで通勤経路が長くなって支給されるなどで、標準報酬月額が2等級以上上下した場合
随時改定の際の手続き方法
随時改定の手続きは、事業主が「報酬月額変更届」を、管轄の年金事務所または事務センターに提出します。変更が適用されるのは、昇給(降給)後、4カ月目以降です。また、改定された標準報酬月額は、6月以前の改定では当年の8月まで、7月以降では翌年の 8月までの各月に適用されます(再び随時改定がある場合を除く)。
資格取得時|新しい従業員が入社したとき
従業員が新しく雇用された際には、標準報酬月額の資格取得時決定が行われます。これは、従業員が社会保険や厚生年金に加入する際に、その月の報酬に基づいて標準報酬月額を決定する手続きです。この額は、入社時の給与や手当を基にして決定され、その後の保険料や年金額に影響します。
資格取得時の際の手続き方法
雇用のタイミングで資格取得時決定が実施されます。
適用期間は以下の通りです。
5月末までに雇用された場合:その年の8月まで
6月から12月末までに資格を取得した場合:翌年の8月まで
その後は、年に1回定時決定で標準月額を見直します。
資格取得時決定は、事業主は従業員を被保険者として雇用した日から5日以内に、「被保険者資格取得届」を提出しなければばりません。提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所に直接届け出る他、郵送や電子申請も使用できます。
標準報酬月額が決定されると、被保険者資格取得確認を実施した旨の通知と、最終的な標準報酬月額が記載された標準報酬決定通知書が送付されます。
育児休業等終了時|産前産後や育休が終わったとき
育児休業や産前産後休業が終了した日に、満3歳未満の子を養育している被保険者は随時改定に該当しなくても、標準報酬月額の改定が可能です。
これには以下の条件を満たす必要があります。
- これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額※との間に1等級以上の差が生じる※標準報酬月額は育児休業終了日の翌日がある月以降の3カ月分の報酬の平均額に基づき算出
- 育児休業終了日の翌日がある月から3カ月のうち、少なくとも1カ月は支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である
これは育児休業等終了後に短時間勤務や残業免除などが実施されると報酬の支給額が減少することが多いためです。
育児休業等終了時の際の手続き方法
従業員からの申し出があった場合、雇用主は速やかに「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届」を管轄の年金事務所か事務センターに提出します。
改定後の標準報酬月額は、育児休業等終了日の翌日のある月から3カ月間に受けた報酬の平均額に基づき決定し、4カ月目から適用されます。
なお、適用期間は以下の通りです。
- 1月から6月末までに雇用された場合:その年の8月まで
- 7月から12月末までに資格を取得した場合:翌年の8月まで
その後は、年に1回定時決定で標準月額を見直します。
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標準報酬月額の調べ方
標準報酬月額は、給与や各種手当を基に毎年計算されます。給付金の支給概算月額を計算したい場合など、標準報酬月額を知りたいときの方法を2つご紹介します。
給与明細から逆算する
給与明細から標準報酬月額を逆算できます。
①給与明細に記載されている全国健康保険協会管掌健康保険料の欄から、健康保険料の額を確認
② 所属している健康保険組合の健康保険・厚生年金保険の保険料額表を用い、健康保険料の額から逆算(介護保険2号被保険者とは、40~64歳で加齢による疾病により要介護状態になった人のことを指す)
なお、令和6年(2024)の保険料額表は協会けんぽ の「全国健康保険協会 令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」のページから確認できます。
以下は東京都の保険料額表です。
参考:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r06/r6ryougakuhyou3gatukara/
計算ツールを使う
標準報酬月額の算出に使用する健康保険料の金額は、オンライン上で提供されている計算ツールを活用して知ることもできます。
例えば、カシオが提供している健康保険料の計算のページでは、年度、年齢、報酬、事業所所在地などを入力すると、標準報酬額が計算できます。
以降は、給与明細から逆算します。
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標準報酬月額の計算方法
- 標準報酬月額の対象となる3カ月分の報酬の平均を出します。
(例)東京都:定期決定の場合
4月:基本給20万円+残業代2万円+住宅手当3万円 =25万0,000円
5月:基本給20万円+残業代1万5,000円+住宅手当3万円 =24万5,000円
6月:基本給20万円+残業代2万5,000円+住宅手当3万円 =25万5,000円
3カ月の平均額=(25万円+24万5,000円+25万5,000円)÷ 3 =25万円 - 保険料額表から標準報酬月額を求めます。
①報酬月額の該当欄を探す(例では、25万〜27万円)
②標準報酬月額を読み取る(例では、26万円)
参考:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表」
保険料額表は毎年更新されます。計算の際は最新のものを参照しましょう。
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標準報酬月額に関するよくある質問
標準報酬月額を取り扱う場合に、よく聞かれる質問に答えていきます。
厚生年金の保険料額表・標準報酬月額表を見たい
厚生年金保険料率は2017年9月以降、厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。ただし、厚生年金基金に加入している人の保険料は、基金ごとに定められている免除保険料率(2.4~5.0%)を控除した率になるので確認が必要です。
厚生年金の保険料額や標準報酬月額表は、全国健康保険協会(協会けんぽ)や日本年金機構の公式ウェブサイトに都道府県別のリンクが掲載されています。
参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表」
交通費(通勤手当)は標準報酬月額に含まれる?
交通費(通勤手当)は、報酬に含まれます。
厚生年金保険法でいう報酬とは、被保険者が事業主から労務の対償として支給される全てのものが該当します。ただし、3カ月を超える期間ごとに受けるもの(賞与)や出張旅費など、そのときにだけ臨時に支給されるものは含みません。
通勤手当は、3カ月分以上の金額を一括して現金または定期券などで支給する場合も想定されますが、これは支払いの都合です。通勤に必要な費用は日常的に定期的に必要であると考えられます。
そのため、3カ月を超える期間ごとに支給される場合であっても、交通費(通勤手当)は「報酬」に含まれるものとして取り扱われます。
ボーナス(賞与)は標準報酬月額に含まれる?
ボーナス(賞与)は、基本的に標準報酬月額には含まれません。標準報酬月額は毎月の定期的な給与を基準に計算し、3カ月を超える間隔を置いて年に数回支払われる賞与は別枠です。
ただし、賞与にも別途社会保険料がかかります。そのため、賞与が支給される際には「被保険者賞与支払届」を提出し、その金額に応じた保険料を計算します。
賞与に対する保険料の算定は支給額に応じて行われ、年金や健康保険の負担が生じますが、標準報酬月額には影響しません。なお、賞与が極端に多い場合、保険料には上限が設けられ、一定額以上の賞与には加算されない制度があります。
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まとめ
標準報酬月額は、社会保険や年金の計算に使用し、企業や従業員双方に大きな影響があります。年1回の定時決定だけでなく、随時改定や資格取得時、育児休業などが終了したときなどにも届け出が必要なので、遅れのないように対応しましょう。
標準報酬月額の届出は煩雑な業務です。このような煩雑な業務が人事の手続きが、重荷になっていませんか。人材管理に伴う煩雑な作業を軽減するためには、効率的な人材確保の手段として、スキマバイト募集サービス「タイミー」の利用がおすすめです。
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