固定残業代とは?みなし残業代との違いやメリット・デメリットを解説
こんにちは。スキマバイト募集サービス「タイミー」ライターチームです。
固定残業代(みなし残業代)とは、企業があらかじめ決めた一定時間分の残業代を、毎月定額で支給する制度のことです。過度な労働や違法な残業を連想させるなど悪いイメージを持たれることもありますが、適切な運用がなされれば、企業にとっても従業員にとっても有益な制度です。
本記事では、固定残業代の基本的な仕組みから、みなし残業との違い、企業が固定残業代制にするメリット・注意点について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.固定残業代とは
- 2.企業が固定残業代制にするメリット
- 2.1.支出計画を立てやすくなる
- 2.2.残業代を計算する手間が省ける
- 2.3.従業員の業務効率化につながる
- 3.企業が固定残業代制にするデメリット
- 3.1.人件費が高くなる可能性がある
- 3.2.長時間労働が慢性化する可能性がある
- 4.固定残業代の計算方法
- 5.企業が固定残業代制にする際の注意点
- 5.1.従業員の同意を得る
- 5.2.就業規則に明記する
- 5.3.求人情報に明記する
- 5.4.労働基準監督署への届出
- 5.5.定期的な見直し
- 6.固定残業代に関するよくある質問
- 7.まとめ
固定残業代とは
を指します。別名「みなし残業代」とも呼ばれ、労働契約において、一定時間分の残業代が給与に組み込まれる形で支払われます。
この制度を導入するためには、就業規則や雇用契約書などにその内容を明記し、従業員に十分に説明することが義務付けられています。
また、固定残業時間には法的な制約はないものの、法定労働時間を超える時間外労働については36協定による制限があり、1カ月の上限は45時間、年間では360時間です。固定残業時間を設定する際には、36協定に違反しない45時間以内の範囲で設定しましょう。
なお、固定残業代はあくまで想定された残業時間分の支給に過ぎません。もし、事前に想定されていない時間外労働が発生した場合、その分の残業代をきちんと計算して支払う必要があります。
固定残業代とみなし労働時間制の違い
固定残業代とみなし労働時間制は、似ているようで実際には異なる制度です。固定残業代は、事前に定めた時間分の残業代を毎月の給与に組み込んで支給する仕組みで、例えば「月35時間分の残業代が含まれている」といった形で契約に明記されます。
これに対してみなし労働時間制は、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ設定した時間分の労働を行ったものとして扱い、給与を決定します。例えば、外勤の営業職など、勤務時間を正確に計測しにくい職種に適用されます。
両者の違いとして、固定残業代制では、事前に定められた時間を超えて残業が発生した場合、その超過分の残業代を別途支払う義務がありますが、みなし労働時間制では設定した時間を超えて働いたとしても、超過分の残業代は発生しないのが特徴です。
項目 |
固定残業代 |
みなし労働時間制 |
制度概要 |
毎月一定時間分の残業代を固定して支給する制度 |
あらかじめ規定時間分、働いたとみなす制度 |
対象 |
残業代として支給 |
労働時間の扱い |
残業代 |
実際の残業時間が少なくても支給され、超えた場合は追加支給あり |
残業代は支払われないが、休日出勤や深夜労働に対する割増賃金は支給あり |
企業が固定残業代制にするメリット
企業が固定残業代制を導入するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、3つのメリットを詳しく解説します。
支出計画を立てやすくなる
企業が固定残業代制を導入する大きなメリットの1つは、残業代が毎月一定額に固定されることで、予算管理がしやすくなる点です。通常、残業時間が月によって変動すると、その分の人件費も上下し、予算の見通しが立てにくくなります。
その点、固定残業代制を採用すれば一定の残業代が毎月の給与に含まれているため、月ごとの人件費の予測がしやすくなります。これにより、長期的なコスト管理が容易になり、経営計画に基づいた安定した財務運営が可能です。
特に、人件費が経営の大きな割合を占める企業にとっては、変動費を抑え、収支を明確にできるので、コスト面でのリスクを軽減する効果も期待できるでしょう。
残業代を計算する手間が省ける
固定残業代制を導入するもう1つのメリットは、残業代の計算にかかる手間が大幅に軽減されることです。
従来の賃金制度では、残業時間が毎月変動する場合、その都度、従業員ごとの残業時間を計算し、それに基づいた残業代を算出しなければなりませんでした。
しかし、固定残業代制を採用することで、あらかじめ一定時間分の残業代が給与に含まれているため、個別に残業時間を計算する必要がなくなります。特に、多くの従業員を抱える企業では、この作業の効率化が業務全体の効率向上につながります。
また、労務担当者の作業負荷が軽減され、人的リソースを他の業務に充てられる点も大きなメリットといえるでしょう。
従業員の業務効率化につながる
固定残業代制の導入は、従業員の業務効率化を促進することにもつながります。残業代が定額で支給されることで、従業員にとって無駄に残業時間を引き延ばすメリットがなくなり、効率的に業務をこなそうという意識が高まります。
「一定以上の残業代が発生しないから、早く終わらせよう」という意識が芽生え、自然と時間外労働が抑制され、生産性の向上が期待できるのです。このような意識改革は、組織全体としての成長にも寄与します。
また固定残業代制は、長時間労働に依存する働き方を見直す契機となり、従業員に対しては成果を重視した働き方が求められるようになります。これにより、単に時間をかけて働くのではなく、質の高い仕事を短時間で行うスキルや責任感が養われるでしょう。
結果として、個々の従業員のパフォーマンス向上が組織の競争力を高める一因となり、企業全体にとっても大きなメリットがもたらされると考えられます。
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企業が固定残業代制にするデメリット
ここからは、企業が固定残業代制を導入するデメリットについて詳しく見ていきましょう。
人件費が高くなる可能性がある
固定残業代制を導入する企業にとって、最も大きなデメリットの1つは、人件費が高くなる可能性がある点です。
固定残業代制では、事前に定めた時間分の残業代を毎月支払いますが、実際の残業時間がその設定時間より少ない場合でも全額を支払わなければなりません。従業員がほとんど残業をしなかった月でも企業は一定の残業代を支給し続けることになり、無駄な支出が発生することになるかもしれません。
さらに、実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合には、超過分の残業代を追加で支払わなければならず、結果として人件費がさらに増加するリスクがあります。固定残業代制を適切に運用するには、従業員の業務内容や残業時間をしっかりと管理し、過度なコスト負担を防ぐための工夫が必要です。
長時間労働が慢性化する可能性がある
長時間労働が慢性化するリスクがあることも、デメリットの1つです。
一定時間分の残業代が給与に含まれていることから、管理者側が「その時間内なら残業しても問題ない」と誤解しやすくなる可能性があります。
さらには、「既に残業代が支払われているのだから、従業員はその時間まで働くべきだ」という誤った認識が広がり、定時退社をしにくい雰囲気が職場にまん延することもあるでしょう。
しかし、固定残業代制度はあくまで時間外労働の一部を包括的に支払う制度であり、残業を推奨するものではありません。労働基準法では、1日8時間、週40時間が基本的な労働時間の上限とされています。
従業員に無駄な長時間労働を強いることがないよう、管理者の認識を正し、労働時間の適切な管理を徹底することが不可欠です。
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固定残業代の計算方法
固定残業代を計算する際は、まず基本給から1時間当たりの賃金を割り出す必要があります。計算方法は「給与総額÷月の平均所定労働時間」です。月平均の所定労働時間は、「(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12カ月」で算出できます。
1時間当たりの賃金が分かったら、次に固定残業代の計算に移ります。
労働基準法に基づき、法定労働時間を超えた時間外労働には割増賃金を支払う義務があるため、固定残業代を算出する際には、割増率1.25倍(企業によって変動あり)を適用します。
具体的な計算式は以下の通りです。
固定残業代=1時間当たりの賃金×固定残業時間×割増率
たとえ固定残業時間内に収まった場合でも、法定休日に働かせた場合には割増率35%以上、深夜(22〜5時)の場合は25%以上の割増賃金を追加で支払わなくてはなりません。
労働の種類 |
支払条件 |
最低割増率 |
時間外 |
法定労働時間(8時間/日、40時間/週)を超えた場合 |
25%以上 |
時間外労働が限度時間(45時間/月、360時間/年を超えた場合) |
25%以上 |
|
時間外労働が60時間/月を超えた場合 |
50%以上 |
|
休日 |
法定休日に勤務させた場合 |
35%以上 |
深夜 |
22~5時の間に勤務させた場合 |
25%以上 |
参考:厚生労働省「しっかりマスター割増賃金編」
また、実際の残業時間が事前に定めた固定残業時間を超えた場合には、超過分の残業代を別途支払う義務があります。固定残業代は正しく計算し、適切に支給しましょう。
アルバイト・パートにおける残業代の計算方法を知りたい方は、「パートの残業代の計算方法は?支払い条件・手当・割増賃金についても解説」の記事も併せてチェックしてみてください。
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企業が固定残業代制にする際の注意点
企業が固定残業代制を導入する際に気を付けたいポイントは、以下の通りです。
- 従業員の同意を得る
- 就業規則に明記する
- 求人情報に明記する
- 労働基準監督署への届出
- 定期的な見直し
1つずつ詳しく解説します。
従業員の同意を得る
固定残業代制を導入するに当たって重要な工程の1つが、従業員の同意を得ることです。この制度は従業員の給与体系に直接影響を与えるため、労働条件が明確に理解され、納得の上で合意が得られる必要があります。
企業側は、口頭だけではなく書面で説明し、固定残業代の仕組みや支払い条件、残業時間を超えた場合の対応について十分に理解してもらわなくてはなりません。合意がないまま導入すると、法的なトラブルが発生するリスクもあるので注意してください。
就業規則に明記する
従業員の同意が得られたら、就業規則にその詳細を明確に記載します。「通常の基本給」と「時間外労働に対する対価」を分けて記載し、従業員が理解しやすい形で明示しましょう。特に、固定残業代が何時間分の残業に相当するのかを明確に設定し、従業員に対してもその内容を正確に伝えることが重要です。
また、超過分の残業代は別途支給されることを規定として明記することも、トラブルを避けるために必要です。
求人情報に明記する
固定残業代制を導入する際には、求人情報に以下3つの内容を全て明記する必要があります。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
引用:厚生労働省
固定残業代の適切な求人表記がなされていない場合、法的な罰則こそないものの、従業員とのトラブルが発生するリスクがあり、過去には裁判で企業に未払い残業代の支払いを命じられたケースもあるため注意してください。
労働基準監督署への届出
固定残業代制を導入するに当たって就業規則の変更が伴う場合には、労働基準法に基づき、その内容を労働基準監督署長に届け出なければなりません。その際、労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて提出する必要があります。
届出の期限は特に定められていませんが、「遅滞なく」提出することが求められています。就業規則が変更されたら、速やかに届け出るようにしましょう。
参考:労働基準法第89条
定期的な見直し
固定残業代制を導入する際は、制度の運用が適正かどうかを定期的に見直すことが重要です。特に、実際の残業時間が固定残業時間と大きく乖離(かいり)している場合や、法律や規定に変更があった場合には、速やかに制度を見直さなくてはなりません。
これを怠ると、従業員に過度な負担をかけたり、法的な問題が発生したりするリスクが高まります。企業の健全な労務管理のために、定期的な確認と必要に応じた修正を行いましょう。
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固定残業代に関するよくある質問
固定残業代制については、さまざまな疑問が寄せられます。ここでは、特に頻繁に聞かれる質問について、詳しく解説していきます。
固定残業代制が「やめろ」「やばい」といわれる理由は?
固定残業代制が「やめろ」「やばい」といわれる理由はさまざまですが、その1つとして制度が適切に運用されていないことが挙げられます。
企業が固定残業代をあらかじめ支払っているため、従業員に過剰な労働を強要したり、超過分の残業代を支払わなかったりする問題が発生しやすいのです。
固定残業代制を導入する際には、法に基づいた適正な運用と、透明性のある説明が重要であり、そうでなければ従業員の不満やトラブルの原因となることがあります。
ホワイト企業でも固定残業代制を取り入れている?
固定残業代制が導入されているからといって、その企業がホワイトかブラックかを判断することはできませんが、ホワイト企業では固定残業代制を導入していないケースが多いでしょう。
その理由の1つは、固定残業代制に対してネガティブな印象を持つ人が少なくないことです。ホワイト企業を目指す企業では、そうしたイメージの影響を考慮し、制度導入を控える場合があります。
また、ホワイト企業では、通常の給与に残業代を上乗せする運用が一般的であり、固定残業代制を導入するメリットが小さいともいえます。
まとめ
本記事では、固定残業代の基本的な仕組みから、みなし労働時間制との違い、企業が固定残業代制にするメリットや注意点について説明しました。
固定残業代制度は、企業にとってコスト管理の効率化や業務効率化に寄与する一方で、適切に運用しなければ従業員の負担や法的リスクを生じさせる可能性があります。制度を導入する際には、労働基準法を順守し、従業員からの同意を得ることが欠かせません。また、定期的な見直しや法的な手続きも怠らないようにし、従業員が働きやすい環境を確保しましょう。
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